(注意:これは、第3次スー パーロボット大戦αのネタバレの小説なので、クォヴレーシナリオを攻略してからお読みになってください。でないと、恐らく内容が解からないと思います)

話の時間的には、シナリオ 55:「まつろわぬ神」クリア後です。

 


 

 

 

 

銀河の中心地……数千年の栄 華を誇り、銀河に名を馳せたゼ・バルマリィ帝国……その本星であるバルマー星………バルマー戦役から続いた戦いを終結させるために訪れた地球の最強部隊α ナンバーズ……

アカシック・レコードから齎 されるアポカリュプシスを防ぐために……共存を求めてきた彼らではあったが、バルマーの支配者:霊帝ルアフによって戦いは始まり……代行者であったルア フ、そしてそれに叛旗を翻した宰相のシヴァー=ゴッツォと彼の率いるゴラー・ゴレムとの戦闘………

激しい戦闘の末、αナンバー ズによってシヴァーの駆るゲペル・ガンエデンは倒され、バルマー星は降り注ぐ流星雨によって滅亡した。

だが、ゼ・バルマリィの民は 生き延びていた……シヴァーの秘めたる熱い想いを次ぎ、ゼ・バルマリィ帝国を導く者……ズフィルードの巫女:アルマナ=ティクヴァーであった。

 

 

バルマーの民を乗せたフーレ 数隻を伴い、αナンバーズの各艦はバルマー星近隣の宇宙で修理を進めていた。

これから、銀河の宇宙怪獣の 巣である中心点に向かって進攻しているエルトリウムら銀河殴り込み艦隊と合流し、最終作戦に参加しなければならないのだ。

そのために、整備班などは忙 しく駆け回るなか、パイロット達はバルマー星での激戦の疲れを癒す束の間の休息を取っていた。

そんななか、フーレの旗艦の 一室で、突然に指導者というまったく以前とは正反対の立場になったアルマナが侍従であり護衛でもあるルリア=カイツに尋ねていた。

「ルリア……ひとつ訊いてい いかしら」

「何でしょう、姫様?」

「………殿方は、どうやった ら喜んでくれるのでしょう……?」

まったく自然に発せられたそ の言葉に、堅物のルリアは噴出した。

 

 

 

第3次スーパーロボット大戦α

皇女の想いと決意

 

 

 

思わず咳き込むルリアにアル マナは覗き込むように尋ねる。

「ルリア……大丈夫?」

「は、はい……し、しかし姫 様…なにを突然………」

あまりに予想外の突拍子もな いことに声が上擦っている。

「あ、それは……その…ほ ら、私って今までずっと王宮暮らしだったからその辺のことはルリアが詳しいかなって……」

しろどもに取り繕うアルマナ にルリアはどこか辛そうに表情を顰める。

確かに……生まれてすぐにズ フィルードの巫女としての運命を持ったアルマナ……無論、それはなによりも誇りと名誉あることだ。それをアルマナは悲観もせず、またそんなアルマナにルリ アは忠誠を誓っていた。

そして……巫女としての力の ためにずっと閉鎖的な空間でしか生活できなかったために、アルマナは己の全てを押し殺さなければならなかった。

そんな生のなかでも一度だけ でも己の眼で世界を見てみたい……そんな好奇心が彼女に運命の出逢いを齎してくれた。

「姫様が気に掛けているのは クォヴレーのことですか?」

ルリアがそう問うと、アルマ ナは頬を軽く染めて眼を見開く。

「え? あ、その…べ、別に あの方のことでは…………」

否定しようと必死だが、その 態度からもはやバレバレであった。そんな普段は見ることのできなかったアルマナの様子にルリアも微かに笑みを浮かべずにはいられない。

クォヴレー=ゴードン……α ナンバーズの一員であり、最強と謳われるαナンバーズのなかでも主力メンバーたる人物………

だが…その正体はゴラー・ゴ レムに所属していたハイブリット・ヒューマン……アイン=バルシェムという工作員だった。だが、彼は記憶を失い…本来の使命を忘れ……アラドやゼオラ…… そして多くの要因が彼の者の運命を変えてしまった。

そのクォヴレーとアルマナの 出逢いはクォヴレーがゴラー・ゴレムに捕えられた時であった。脱出しようとしたクォヴレーがアルマナを人質にし、逃げ去った。

それが始まりであった……… 今まで彼女の周りにはズフィルードの巫女という立場でしか見ない者達しかいなかった。

そんな彼女にとってクォヴ レーの存在は衝撃だった……バルシェムという運命に抗うクォヴレーに、微かな憧れを抱いたのかもしれない。

その後……幾多の邂逅を繰り 返し、今日に至る。

巫女という運命から離れ…今 度は自らの意志で進まねばならない立場となったアルマナ……そんな彼女が誰かを気に掛けるというのはある意味年頃の少女としては当然のことかもしれない。

「ああ、そうじゃなくて…… その、あの方の力が、この先の私達にとって必要な……」

クォヴレーの能力はすくなく とも群を抜いている……戦闘能力に情報収集能力…確かにこれから先のゼ・バルマリィの民が歩むことになる苦難の道を思えば、クォヴレーは是非とも力を貸し てもらいたい………

そう考えていたルリアだった が、アルマナの表情が微かに曇っているのに眼を顰めた。

「………ルリア…私は、でき るのならあの方に傍にいてもらいたい………これから先もずっと…私の傍で支えてもらいたい」

表情が微かに顰まり……俯く アルマナ………決意したこと…ゼ・バルマリィの民を護る…それは決して変わらない……だが、アルマナにはまだその責任が重い………そんな彼女にとって傍で 支えて欲しいと思ったのがクォヴレーであった。

それは……ほのかな恋心…… そして独占欲………だが、アルマナはそれを自覚していない。

それゆえにその想いを持て余 している。

そんなアルマナの想いにルリ アはどこか苦笑を浮かべ………

「そうですね……では、この 戦いが終わった後…姫様の口からその願いを伝えてはどうでしょう?」

ルリア自身もずっと自らの使 命に殉じていたためにそういった想いとは無縁であった。だが、たとえなんの役に立たなくてもなにかでアルマナを助けたいと彼女は考えていた。

αナンバーズはこれから最後 の作戦に臨む……アポカリュプシスを防ぐために………全ての命を賭けて………無論、ルリアもそれには同行し、最後まで見届ける覚悟だ。

だが、戦場にはもしもがあ る……このままなにも言わずにアルマナとクォヴレーが分かれてしまえば、二度と話せる機会が失われるかもしれない。

それは、アルマナにとっては 耐え難い苦痛となるだろう。

「………聞き届けて、くれる でしょうか?」

不安げな……それいて臆病な 表情を小さく呟く。

今まで決して望めなかったも の……それへの羨望と恐れ………それがアルマナの勇気を推し留めていた。

「解かりません……ですが、 伝えなければなにも伝わりません………万が一にクォヴレーが姫様の願いを聞き届けなくても、伝えずに後悔されるよりはいいかと」

やってしまった後悔よりも、 やらずにいた後悔の方が後で辛いものがあるだろう……その結果が、どんなに辛くても……一歩を踏み出さなければ、なにも変わらない…なにも始まらな い………

暫し逡巡していたアルマナ だったが、ルリアはそんなアルマナに勇気を促す言葉を紡ぐ。

「クォヴレーは今ラー・カイ ラムにいます……そして、じきにこの宙域を発つでしょう」

その言葉に、アルマナは決意 を固めた。

「ありがとう、ルリア…… 私、いってきます」

眩しいばかりの笑顔を浮かべ てその場を去るアルマナに、ルリアはどこか妹の成長を喜ぶ姉のような表情を浮かべていた。

 

 

 

αナンバーズの一隻…… ラー・カイラムの格納庫の一画では、クォヴレーが一人黙々と愛機であるディス・アストラナガンの整備を行っていた。

イングラム=プリスケンの託 したオリジナルのアストラナガンと同等かそれ以上の能力を持つ機体……だが、そのために内部構造には謎が多く、ラー・カイラムの整備班でも迂闊に触れず、 結果…クォヴレーが中枢の整備を受け持つことになっている。

「おーい、クォヴレー ―――――! 飯行こうぜ―――――!!」

下から聞こえてきた声に振り 返ると、そこにはビルトビルガーとビルトファルケンの整備を終えたアラドとゼオラの姿があった。

「……いや、まだ整備が残っ てる。先にいってくれ」

淡々とした……静かな声で呟 く。

「でも、貴方ずっと掛かりっ きりじゃない……少しは休むのもパイロットの務めよ」

「そうそう、腹が減っちゃ戦 はできないって」

「あんたは食べすぎ!」

すかさず突っ込むゼオラにア ラドは表情を引き攣らせる。

今現在、3機で小隊編成を組 んでいるゼオラにとっては、チーム内のメンタルも重要だと考えている。

だが、そんな気遣いに微笑を 浮かべると、やんわりと制する。

「いや……アラドが我慢でき ないようだ。俺も整備を終わらせたらすぐにいく……ゼオラ、アラドが食べ過ぎないように見張っててくれ」

冗談めいた言葉を返され、ア ラドとゼオラは一瞬眼を剥くも……アラドはやや落ち込んだように俯き、ゼオラは笑みを浮かべる。

「ちぇ、どうせ俺は大食いだ よ」

「はいはい……あんたは少し 自制しないとね……じゃあ、後でね」

「ああ」

そのまま軽く会釈すると、ア ラドとゼオラの姿は格納庫から消えていった……整備班も今は小休憩に入り、格納庫内は静まり返っている。

そんななかで、静かにコン ソールを叩く音だけが響く。

その時、クォヴレーの耳に足 音が聞こえてきた……工作員として調整されているクォヴレーの五感は並みの人間より敏感だ。

そのまま振り返ると……そこ には予想外の人物が佇んでいた。

「………アルマナ?」

忘れもしない容姿に見間違え るはずがない……だが、フーレにいるはずの彼女が何故ここにいるのか……首を傾げるクォヴレーにアルマナの声が聞こえてきた。

「あの……クォヴレー…少 し、よろしいですか?」

「……ああ」

なにか相談事であろうか…… と、やや眉を顰めてディス・アストラナガンの足元に降り立つと、アルマナに向き直る。

「どうした?」

表情を乱さず……いつもの ポーカーフェイスのクォヴレーに対し、アルマナはその視線に耐えられず、眼を逸らし…言葉を口のなかで彷徨わせる。

やはり、いざ意中の相手を前 にするとなかなか話せない……アルマナもそんな例に漏れなかったようだ。

そんなアルマナの乙女心に気 づきもせず……クォヴレーは戸惑う。

「何かあったのか……脈拍が 随分上がっている。身体の調子が悪いのなら、動かない方がいい……今のお前はゼ・バルマリィの民にとって必要な人物だ」

そう発したクォヴレーに、ア ルマナはどこか表情を顰める。

「クォヴレーにとっても…… 私は、ゼ・バルマリィの姫ですか?」

なにか哀しかった……そう やって特別扱いを受けることが……なによりもクォヴレーに……だが、クォヴレーはそのまま言葉を続ける。

「お前はお前だ……アルマナ =ティクヴァーという者以外ではないだろう。以前言っていたズフィルードの巫女とやらの運命はお前が自分で断ち切った……今のお前には、護るべきものがあ る……それはお前の強さだ」

護るものがあれば、どこまで も強くなれる……クォヴレーはそう知った……だからこそ、同じように定められた運命を断ち切り、そして自らの意志で護るものために戦う選択をしたアルマナ の決意への敬意と気遣い………

クォヴレーが自分を特別と見 たのではなく……同じように扱ってもらえたのが嬉しかったのか、アルマナも微かに笑みを浮かべる。

そして……無言が続いていた が、やがて意を決してアルマナが尋ねる。

「あの……クォヴレーは、こ の戦いが終わったら………どうするつもりなのですか?」

唐突に問われた質問に…… クォヴレーは一瞬眼を瞬き、言葉を呑み込む。

「この戦いが終わったら…… か…考えたこともなかったな」

やや困惑した面持ちでディ ス・アストラナガンを見上げる………どうあれ…創造主を…きょうだい達を裏切った自身に、居場所などあるのかと……そう考えたこともあった……だが、今は 護るべき仲間達がいる………そして……

クォヴレーの内に宿る意 思………イングラム=プリスケンの使命………それを次ぎ、果たすことがクォヴレーの次なる使命かもしれない……

だがそれは、孤独で永遠の 道………仲間達との別離を意味する。

それでも構わないと思う…… そうやって生きることが、彼の仲間達を護ることへと繋がるなら………だがそれも、全てが終わりを告げてからだ。

そんな考えを抱き、どこか遠 くを見ていたクォヴレーに、アルマナはなにかうすら寒い疎遠感を憶える。

このまま、クォヴレーが消え てしまいそうな……自分の手の届かない場所へといってしまうような恐怖……アルマナは絞り出すように声を出した。

「あの…クォヴレー! も し、よろしければ……私と…!」

刹那…アルマナの言葉に被せ るように、警報が格納庫に轟いた。

息を呑み、ハッと顔を上げる クォヴレーと戸惑うアルマナの耳に、ブライトの通信が響いてきた。

《バッフ・クラン軍接近!  総員第一戦闘配備!!》

「バッフ・クラン……!」

銀河に覇を馳せるゼ・バルマ リィ帝国と同等…いや、それ以上の戦力を誇るバッフ・クラン軍……バルマーが崩壊したのを見て好機とばかりに仕掛けてきたのか………

だが、どの道戦闘は避けられ ない。

「アルマナ、お前は早くバル マーの艦に戻れ! そしてすぐにここを離れろ!」

有無を言わせず叫ぶと、クォ ヴレーはそのままディス・アストラナガンに乗り込もうとする。

だが、アルマナは動揺す る……まだなにも伝えていない…ここで行かせたら、必ず後悔する……それがアルマナの胸に渦巻き…思わず叫んでいた。

「ま…待って、クォヴ レー!」

彼女らしからぬ制止の声 に……思わず動きを止め、振り返るクォヴレー……そんなクォヴレーの向かって、アルマナは真剣な面持ちで呟いた。

「約束してください……ま た、逢うと…………私、まだ貴方と話したいことがたくさんあります。だから……必ず、また逢うと…」

縋るような視線と言葉……そ れに対し、クォヴレーは逡巡していたが、やがて身を翻してそのままアルマナに再度歩み寄る。

そして……アルマナの前に跪 くと…その手を取り……甲に向けて口付けをした。

その行為に……顔を赤く染め るアルマナ…………

だが、固まるアルマナを前に すっと立ち上がると……クォヴレーは身を翻し、ディス・アストラナガンに乗り込んでいく。

コックピットに収まったクォ ヴレーは機体を起動させ……悪魔の要望を持つ天使はそのまま歩き出す。

その背中を……アルマナは静 かに見守る。

モニターに映るアルマナ に……クォヴレーは静かに囁いた。

「………約束はできない」

誰に聞こえることもなく…… 消えていく言葉とともに………ディス・アストラナガンは戦いの宇宙に舞う…………

 

 

 

堕天使は舞う………

罪の十字架を背負い て…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【後書き】

クスハルート、そしてクォヴ レールートをクリアして何気に思いついたネタ……なんか、キャラの性格変わってるような………(爆

ネタバレ含みすぎなので、 クォヴレールートをクリア後にお読みください。

SEEDの執筆やらずになに やってんだ自分………今回の第3次αはやはりボリュームが厚い! さらに物語の謎にも触れるのでなお熱い!

まだ未プレイの方は是非とも クスハかクォヴレーをお勧めします。

ではでは………次の更新まで にはなんとかSEEDを書き上げねば。

 


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