「ドォーーーミノォオオーーーーーーーーーーーーーー!!!」


「はぁぁぁーーい!!」


世界から隔離された場所。

自在法と呼ばれる不思議の術法によって世界から外れた場所で、“彼ら”はいつものように『実験』を行っていた。


「ェエーーーークセレェェント、エェーキサイティィィィング!!!ごぉーらんなさいなこの精緻にして機能美あぁふれる配列式!!」


「すすすごいです、すばらしいです。教授の真理を探求する飽くなき姿勢!ドミノはカンドーしておりますです!!」


耳障りな金切り声が部屋に反響する。

自らを学究の徒と称する彼らが目指すのは、この世の理を解き明かす事。

紅世より渡り来て1000年余り。

彼とその従僕は、己が探究心を満足させるためこの世を巡り続けた。


ある時は人間と共に自在式を開発し、


ある時は『紅世の徒』と共に自在法を構築し、


ある時は人間を喰らい、ある時は『紅世の王』を屠ってきた。


彼の行動原理は、己が『探究心』を満たす、それだけに集約される。

時には人間を、時には同胞たる“徒”を、彼は己が『実験』の贄として滅ぼした。

欲望に忠実で周囲を省みぬその有り様は、フレイムヘイズ達が憎悪する紅世の徒の姿そのものでありながら、同胞を省みぬほど欲望に忠実

であったが為に、本来仲間であるはずの徒からは忌避された。


「そぉぉーーーーれでは起動!!こぉーのエェーキサイティィィィングな稼動の様、しぃぃーかと見届けなさい!!」


まるでオーケストラの指揮者にでもなったかのように、彼は両手を縦横に、見せつけるように振るう。

腕一振りごとに、壁に、床に、果ては空間にまで描かれた緑色の紋章が轟々と炎を吹き上げ、光を放ち始める。


……それは彼らが『いつも』行っている、無聊を慰めるために、探究心を満たすために行う『実験』のひとつ。


……終わってしまえば歪みだけが残され、人も、徒も残らない。


……その筈だった。




“ある不確定要素”を内包した自在式が彼の予想を超えた反応を示すまでは。




「ンんんんんんンンンン!!!?こここぉぉーれはいったいどおぉおしたことでしょう!!」

「きょきょきょ教授ううううう!!!???」


マスコットのような従僕が顔色を変える。


「封ぅー絶内になぁぁああにか侵入したよぉぉーですね?」

「え!?えええええええええええええええ!!???」


ガララララッ。


大声で騒いでいるところに突然、部屋の扉が開き、実験失敗の元凶たる闖入者が入ってきた。


「……!?な…あ、あんたたち人の部屋に入り込んで何やってるんだ!?」


その人間、いや、トーチだろうか?

中学生くらいのその少年が驚きの声をあげた直後、捻じ曲げられた自在法が発動した。

爆音と閃光を縦横に放ちながら少年『坂井悠二』の勉強部屋は緑の炎に包まれた。




































灼眼のシャナ 存在なき探求者

第0話





































1時間後。



「なるほど。君たちは『紅世の徒』というのか。それで、僕の部屋に『封絶』とかいう結界を張って『実験』をしていたと。」


『そぉーの通り!!もぉーのわかりがよくて助かりましたよ。』


「ふんふんなるほど……って、納得できるかあああ!!!!!!」


くわっと目を見開き、近くを漂っていたマスコットっぽいイキモノを蹴り飛ばす。


「のほおぉぉぉおぉ!!???」


「ったく。それで、この状況について詳しく説明願いたいんだけど。」


スーパーボールみたく部屋中を跳ね回るその可笑しな生物のことはとりあえず無視して、そいつの主人らしい男に問う。

もっとも、男といっても悠二には姿が見えず、確認できるのは声だけだ。

頭がおかしくなったとしか思えないが、声は何と『自分の頭の中』から聞こえてくる。


『よぉーろしい、よぉーく聞きなさい。』



その説明は僕から日常というものを奪い取った。



『紅世の徒』



『フレイムヘイズ』



『自在法』



『トーチ』



…そして『ミステス』



『紅世の徒』が行った自在法に巻き込まれ、僕がミステスになってしまったこと。

自在法の失敗によって、どういうわけか施術者である『徒』が僕の体に憑依してしまったこと。


自分が既に人間では無いなどといわれて平静を保てる者がいるだろうか?

まして自分が人間をやめる事になった元凶が目の前にいるというのに。



「そ、それじゃ何か?あんたらが僕の部屋に上がりこんで勝手に始めた『実験』とやらのせいで、僕はミステスなんて物になってしまった

…と?でもってアンタに憑り付かれたと?」


『正ェー確には、自ぃぃぃ在法の動力源として君を喰らったときに、偶ぅー然宝具が転移してきて君はミステスになったのです。君の宝具

の存在が私の精ぇー密極まりない自在式に突然割り込んできたため自在式が改変され、予ぉー期せぬ効果をもたらしたって事です。』


「ふ、ふざけるな!!それじゃこれから一生こんな電波を受信しながら生きてかなきゃならないのか!?勘弁してくれよ…。」


『で、でぇーんぱとは何ですか!?この世紀の大天才にして紅世屈指の頭脳と謳われたワタシに向かってっ!!』


「ふん、大天災の間違いじゃないのか?」


「きょ、教授に向かって何てこというんですか貴方は!」


「うっさい、お前はお呼びで無いわ!!」


「のっのほおおおお!!??いたいいたいいたい止めてくださいよおおぉぉ!!」


スリッパの裏でげしげしと蹴たぐり回されながらマスコットが悲鳴を上げている。

…というか僕ってこんなキャラだったっけ?

なんだか、さっきからやたらとハイテンションなんだけど。


『むう、おぉーそらく私が君の中に入り込んだ事で君という人間を構成する存在がどぉーこか変異を起こしたようですね。』


「さらっと恐ろしい事言うなあああああ!!」


ほとんど半狂乱になって足元に転がるマスコットを何度も蹴りつける悠二だった。



「ひいいいいいい、いたいいたいいたいですってばああああ!!!」








これが坂井悠二と、『探耽究求』と呼ばれた『紅世の王』との出会いだった。









この日、坂井悠二の『穏やかな』日常は終わりを告げたのだ。












後書き。



全く何やってるんでしょうね私は。プロットも無しにその場の思いつきだけで書こうとするからこんなことに…ブツブツ

えーと、こちらの作品なんですが最近UPした『灼眼のシャナ 存在亡き者』のリメイク版です。

というか、まだ4話までしかできて無いのにリメイクとは…恥知らずにも程があるというか何と言うか。

『存在亡き者』についてですが、書いたものを自分で読み返しているうちに気づいたんですが、悠二が自在法を使える以外ほとんど原作と

変わり映えの無い展開になってしまうのです。

そこで、『存在亡き者』の外伝として考えていたものを、登場人物を一新して終幕までの展開を考えて最初から書き直してみました。

ペースは遅くなりますがどうかお見捨てなきよう。





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