まぶらほ  無限の魔力

 

 

 

 

出会い編

第九話 寮まで引越し

 

 

洋館に着いていた凛は刀を手に瞑 想をしていた。

 

目を瞑り、刀を正眼に構えて和樹 達に呼ばれて話したときのことを思い出す。

 

『さっき、言ったけど全てが悪 いってわけではないんだ』

 

和樹は千早が言った店に凛を呼 び、話をしている。

 

『刀捌き、足捌き、間合いの取り 方、残身の残し方・・・どれも正直言って問題はないくらいに凛ちゃんの剣は完成されてるって言える。あくまで僕の眼から見てだけどね』

 

『なら何が・・・』

 

『気持ちの問題かな』

 

千早はレモンティーを口に運びな がら言った。

 

『何か見ていると動きが硬くて迷 いがあるのよね。何でもないことなのに変に腹を立てたりしてすぐに力任せに刀を抜く。自分の痛いところを突かれるとすぐに刀でそれを止めようとする』

 

『それは・・・・・・』

 

『あまりプライベートには突っ込 まないけど自分が認めたくないところを突っ込まれると人って否定しようとするからね。自分が嫌いな人が自分の隠している部分、隠したい部分を表に出せる人 だったりするように、本当はそうしたいけど何かがそれを邪魔している』

 

『・・・・・・・・・』

 

『僕も子供の頃そんなことがあっ たからね。なんとなく分かるんだけど、それを今まで引きずってきちゃった、違うかな』

 

『・・・・・・・・・』

 

沈黙が肯定を意味していた。

 

『結局すぐにはできないことだか ら、少しずつ慣れるしかないんだけどね。さっきも言ったけどただ闇雲に力を無理まわしてもそれはただの破壊者だ。今持っている自分の力を何に使うものなの か、何のために使うのかよく考えることだよ』

 

『何かあったら相談には乗るから ね。あたし、これでも人生経験は豊富だから』

 

『・・・はい』

 

そういうと凛は店から出て行っ た。

 

(・・・・・・・・・)

 

ゆっくりと目を開け、刀を一度鞘 へと納める。

 

(私は悩みなんてない!)

 

自分を無理納得させるように凛は 刀を抜いた。あの時から自分は誰にも頼らずに生きていくと決めたのだ。そのために家を出たのだと・・・

 

凛は洋館の柱を次々と斬ってい く。

 

(・・・斬りやすい・・・)

 

和樹から直された刀を受け取って その刀のバランスと切れ味に凛は驚きがあった。

 

いくら打ち直したからといってこ こまで刀の質が上がるものなのか・・・・・

 

『刀が泣いている』

 

和樹の言葉が頭を過ぎる。

 

(私は刀の使い方が荒いの か・・・)

 

決して刀の手入れを怠っているわ けでもない。だが自分の心のどこかが刀を毛嫌いしているのではと凛は和樹達と話をした後考えなくもなかった。

 

「はぁっ!」

 

最後の太い柱を、迷いを断ち切る かのように斬った。

 

次の瞬間、柱が次々と倒れ支えを 失った洋館が崩れ始めた。

 

崩れる洋館の残骸に巻き込まれな いように避けながら凛は外へ飛び出した。

 

「・・・・・・・・」

 

崩れていく洋館が見ながら凛は自 分の刀を見る。

 

刀の刃は欠けてはいないが所々 擦ったような跡が残っていた。

 

「!?」

 

刀を見ていた凛は崩れた洋館のほ うを見た。そこからはまがまがしい妖気が次第に強くなってきていた。

 

「な、何だ!?」

 

地面が揺れだしさらに妖気が強く なった。そして地面から何かが飛び出した。

 

「シャァァァ 〜〜〜〜〜〜〜・・・・・・」

 

巨大な大蛇が凛へと向かって襲い 掛かってきた。

 

凛はとっさに体を倒して大蛇の突 進を避けたが地面へと倒れこんでしまう。

 

「くっ!」

 

(速い!)

 

凛は刀を構え大蛇との距離を取り 立ち上がろうとする。

 

だが大蛇の尾が凛の死角から襲い 掛かった。

 

「しまった!」

 

凛は腕を絡め取られてしまい腕の 自由を奪われる。さらに大蛇は凛の身体を絞め付けようとしているのか、身体を徐々に覆っていく。

 

(う、動けない・・・・・)

 

凛は身体を絞め上げられ握力が無 くなっていき手から刀が落ちた。

 

「・・・・あっ・・ああ・・・」

 

大蛇は凛を絞め殺そうとさらに強 く絞め上げようとする。凛は骨が軋むような激痛に耐えながらも次第に身体の力が無くなっていく。

 

ミシミシと骨が軋む音が耳に聞こ えてきそうである。

 

凛の意識が消えようとしたそのと き大蛇がいきなり凛の体を離した。

 

大蛇の身体は何か衝撃を受けたよ うに弾き飛ばされ洋館の残骸の中へと落ちていく。

 

「・・・・・・」

 

凛は消えかけていた意識を戻して 何が起こったのかを知ろうと身体を起こす。

 

締め上げられていた身体が痛むが それほど酷くはないようだ。

 

「何だか最近、ピンチの人を助け ることが多いな・・・・・・」

 

「・・・・・・し、式森!?」

 

「あっ、大丈夫だった、凛ちゃ ん」

 

凛の前には大蛇の落ちていったほ うを見ている和樹が立っていた。

 

「ごめんね。これでも早く着たん だけど」

 

「や、山瀬先輩!?」

 

凛が声のしたほうを振り向くとい つの間に着たのか千早が立っていた。

 

「ああ〜、派手に飛んだな、あの 大蛇」

 

「!? レオン!!」

 

上を見上げると羽を羽ばたかせな がらレオンが腕を組んで大蛇のほうを見ていた。

 

「ああ〜〜、わらわの甲冑 が・・・」

 

「はぁ・・・ はぁ・・・・・・・・・いっ、一体どうなってるの?」

 

「だっ、だから私を・・・無視し ないでください!!!」

 

和樹達に遅れてエリザベート、玖 里子、夕菜がやってきた。玖里子と夕菜は和樹達のスピードに無理矢理着いてきたため額に大粒の汗をかいて肩で息をしている。

 

ガラッガラッ!!

 

「・・・・・・シャァァァ 〜〜〜〜〜〜〜」

 

瓦礫の中から大蛇はその身体を起 こし和樹の方を睨みつけた。その格好は今にも飛び掛ってきそうな雰囲気である。

 

「千早、後よろしく」

 

「了解!」

 

『ビシッ!』っと和樹に向けて敬 礼すると千早は凛を玖里子たちのいるほうへと運んだ。

 

「・・・・・よかった。骨は折れ たりしてないわね、打撲しているところが何箇所かあるけどこれなら治癒魔法ですぐに治るわ」

 

そういうと、千早は前髪を止めて いるヘアピンを外してそれを手に持ちながら凛へ治癒魔法をかけ始めた。

 

「や、山瀬先輩、今はあの大蛇 を!?」

 

「千早、相手は上級妖魔なんで しょ、和樹一人じゃ!」

 

「玖里子さん私達が!!」

 

三人は慌てて千早に言うが千早は 全く慌てる様子もない。槍を飛び出していこうとする夕菜と玖里子の前に出し二人を止めた。

 

「二人とも落ち着いて、大丈夫 よ。上級妖魔じゃ今の和樹君の相手じゃないわ。でも今回はちょっと相手に気を遣わなくちゃいけないわね」

 

「気を遣う?」

 

「調べて分ったことなんだけど、 あの大蛇、元は妖魔じゃないから」

 

千早の言葉に凛をはじめ、玖里 子、夕菜、エリザベートが驚きの表情を浮かべた。

 

「見てれば分かるわよ」

 

 

 

 

 

 

 

千早が凛を離れたところに運んだ のを確認した和樹は大蛇へと向かって走り出した。

 

(ただの妖魔なら一撃なんだけ ど・・・・)

 

「シャァァァァァ〜〜〜〜〜」

 

「ふっ!」

 

大蛇が口を開けて飛び掛ってきた のを、上体をそらしてうまくかわす。

 

「君は殺すわけにはいかないから ね!」

 

身体を空中で回転させ大蛇の胴体 へ踵落しを放つ。地面へと叩きつけられた大蛇は悶絶するような仕草を見せるがすぐに和樹へと飛び掛る。

 

「・・・・・・あまり痛い思いさ せたくはないんだけど」

 

大蛇を避けると掌底を大蛇の頭部 へと叩き込んだ。さらに大蛇の身体を蹴り飛ばす。

 

(やっぱり取り付かれているぶん 変に打たれ強い・・・・・・)

 

本気ではないにしろ、動きを止め るくらい強く大蛇を打ちのめしているのに全く効いている様子がない。

 

大蛇は地面へと着くと和樹に向 かって何かを吐いてきた。

 

「シャァァァァ〜〜〜〜!!」

 

「!?」

 

和樹は横に飛んで大蛇が吐いたも のを避ける。するとそこは硫酸を欠けられたように煙を上げて溶け出した。

 

「・・・・・・早くしないとみん なが危ないな」

 

和樹はそういうと大蛇へ走り出 す。大蛇は硫酸のような液を和樹へと吐くが和樹はそれを全て避けていく。

 

だが次の瞬間千早の声が響いた。

 

「凛ちゃん危ない!!」

 

「!?」

 

和樹は上空へと飛ぶ。下を見ると 凛が自分の落とした刀へと走り出していた。

 

凛は刀を拾ったがそこへ大蛇の硫 酸のような液が吐かれる。

 

(やばい!)

 

和樹が止めに入ろうとするが今か らでは間に合わない。

 

凛も目を瞑って諦めたかのように 身を縮めた。そしてそのまま凛は煙に巻かれた。

 

「凛!」

 

「凛さん!」

 

煙が凛の周りを包んで周りが見え なくなる。夕菜と、玖里子が凛の下へ走りだそうとするが千早がそれを止めた。

 

「大丈夫、凛ちゃんは無事よ」

 

「何言ってるの!?」

 

「あの液を浴びたら!!」

 

「直接体に浴びなければ大丈夫で しょ?」

 

『えっ!』

 

煙が次第に晴れていく、するとそ こには結界のような光が浮かび上がった。

 

「・・・・・・レオン」

 

来ていいはずの痛み、苦しみが来 ず自分は死んだのかとも思ったが手にした刀の刃が掌に食い込んで血が滲み微かな痛みを感じた。凛は瞑っていた目を恐る恐る開くと小さな影が自分の前に映っ た。それがレオンだと気づいたのはすぐである。そして自分の周りは薄い膜が張られている。

 

「はぁ〜・・・危なかった」

 

レオンは和樹と、千早のサポート をかねて両方に注意を払っていたので凛が飛び出した瞬間すぐに動くことができたのである。

 

「凛、無茶しすぎだよ」

 

レオンから注意される。普段の自 分なら文句の一つでも言い返すところだが・・・・・・

 

「す、すまない・・・・・あ、あ りがとう・・・」

 

凛は自分で言って驚いた。こんな に素直にお礼が言えたのはいつ以来だろうかと・・・・・

 

「どういたしまして・・・カズ!  早く大蛇、除霊して上げなよ、いい加減に!」

 

レオンは和樹に向かってなに遊ん でいるんだと文句を言う。

 

「行き成り、除霊したらまずいと 思ったんだよ!」

 

僕だって考えているんだとレオン へ言い返す。

 

「少し熱いけど我慢してね」

 

そういうと和樹の右手に炎が召喚 された。だがその炎は赤い炎ではなく黄金の色をした炎である。

 

「なっ!! あれは・・・・神凪 の浄化の炎・・・」

 

凛はなぜ神凪家の者しか使えな い、浄化の炎である黄金の炎を和樹が使えるのかと驚きを隠せないようだ。

 

「邪の力を滅せよ!!」

 

大蛇に向かって黄金の炎が放たれ 炎は大蛇を飲み込んだ。

 

大蛇が炎の中でもがき苦しんでい る様子が見れたがすぐにその姿が消え、それと同時に黄金の炎も消えた。

 

「・・・す、すごい」

 

凛は自分が手も足もでなかった大 蛇を一瞬にして倒した和樹に驚きを隠せない。

 

それを見ていた夕菜、玖里子も驚 愕の表情を浮かべている。

 

「やったの?」

 

「すごいです、和樹さん!」

 

夕菜が和樹の下に近づき飛び付こ うとした瞬間に動きが止まった。そして見る見るうちに顔が青く染まっていく。

 

「ギィャァァァァッッ!!」

 

何か怖いものを見たか、この世の 終わりを見たかのように夕菜が悲鳴を上げた。

 

「・・・・・・そんなに怖いか な」

 

和樹の腕には白い色の蛇が巻き付 き舌を出しながら夕菜のほうを見ていた。

 

対する和樹は蛇の頭を撫でながら 笑っていたりする。

 

「式森・・・」

 

「和樹、その白蛇は?」

 

凛は平気そうだが、玖里子もどこ か腰が引けている。

 

「あの大蛇の正体はこの場所に住 んでいた白蛇だったんです。洋館ができたことで住む場所を追い出されてそれで邪に心を奪われてしまったんでようね。だから浄化の炎で邪の部分だけを消して 元の姿に戻してあげたんですよ」

 

白蛇は和樹に感謝しているのか下 をペロペロさせながらよくなついたペットのように大人しくしている。

 

「つまり、この場所の守り神みた いなもの?」

 

「まあ、そんなもんです」

 

和樹の横では『かわいい』とかい いながら千早が白蛇と遊んでいる。

 

夕菜は和樹に近寄りたいが蛇がい るためか半径三メートル以内に入ってこようとしない。

 

「さてと、後はエリザの甲冑を探 さないと、どこら辺に置いてあったかエリザ分かる?」

 

エリザベートに大体の場所を聞き 全員で甲冑を探し始める。

 

その間も白蛇は和樹の肩に巻きつ いて離れようとしない。どうやら自分を救ってくれた和樹になついてしまった様である。そのため夕菜は白蛇を射殺さんばかりの目つきで睨んでいた。

 

・・・・・・軽い嫉妬もあるのか もしれない。

 

「あっ、カズ。この下に冑みたい なのが見えるよ」

 

レオンが大きな瓦礫の下を覗き込 みながら和樹を呼んだ。

 

「エリザ、ちょっと確認してみ て」

 

レオンが覗き込んでいたところか らエリザベートは幽霊の特典をいかして瓦礫の間をすり抜けて行き確認する。

 

「間違いない、あれじゃ!」

 

「よし、みんな僕の後ろに下がっ て!」

 

全員を後ろへ下がらせると和樹は 眼を閉じて手をかざす。

 

「魔法で取り出すのは簡単だけ ど、少し訓練しないとね」

 

そういうと和樹が手を向けている 瓦礫が浮き上がった。

 

軽く、人よりも大きな瓦礫が、和 樹が手を動かすだけで移動される。

 

「千早、あれって・・・」

 

「先ほど魔法を使わないようなこ とをいいましたけど・・・」

 

玖里子と凛は和樹の言葉を逃さず 聞いていて疑問に思ったことを千早に聞いた。

 

「今、和樹君が使っているのは 『気』よ」

 

『気!』

 

「そう、『魔法』じゃなくて 『気』。気って言うのは生きているものなら全てに流れているもの、生命や意思、心の状態に深くかかわるものを言うの。映画なんかでは『フォース』とかいっ てつかっている映画があるでしょ、いわゆる中国の『気功』なんかもそれと同じだけど和樹君はそれを使うことができるの、あたしも少しだけど使うことできる し」

 

そういうと千早は手をかざして集 中する。そして近くにある小さな瓦礫を浮かせて見せた。

 

「ふぅ・・・これは相当訓練しな いと使うことができないものなの、でも使いこなせば車みたいに重いものや、今和樹君が持ち上げている瓦礫だって持ち上げることが可能よ。もちろんそれ以外 にも使い方はあるけどね。例えば魔法を使わない治癒とか」

 

「何だか分からないけど私には使 えないものってことね」

 

「本当にそんなものが?」

 

玖里子は千早の言葉に驚きつつも 使えなくては意味がないとお手上げ状態である。

 

凛は話では聞いていたようだが、 迷信かなんかだと思っていたのだろう。それを実際に目で見ることは初めてだったので驚きを隠せないようだ。

 

「もうすご過ぎます、和樹さ ん!!」

 

もう何でも和樹のすることならす ごいという風にしている夕菜は放って置こう。

 

「ああ〜〜わらわの甲冑 が・・・」

 

驚いていた三人にエリザベートの 悲痛な声が聞こえてきた。

 

「ああぁ〜〜〜、ボコボコじゃ 〜〜」

 

甲冑は周りの瓦礫に押しつぶされ たのか擦った跡は当たり前、ボコボコに凹み、部分部分によってはペシャンコになっている部分もあった。

 

「とりあえず全部集めて、魔法で 直してあげるから」

 

「右足はどこじゃ〜〜!!」

 

「あっ、剣見っけ! ・・・折れ てる・・・」

 

レオンが岩を動かしながら甲冑の 見つからない部分を次々と見つけていった。

 

数分後、甲冑は全て見つけること ができた。

 

ほとんど和樹とレオンが残りは見 つけたのだが・・・・・・

 

「エリザ、僕の額に手を当てて甲 冑の壊れる前の形を頭の中にイメージして」

 

「わかったぞ」

 

「・・・・・・OK、イメージは わかった」

 

和樹は甲冑を地面へ並べると魔法 を使う。

 

光に包まれた甲冑は次第に元の形 へと修復していく。十秒も掛からないうちに甲冑は元に戻った。

 

「おおおおぉぉぉぉぉっ!!」

 

エリザベートは喜びの声を上げ る。

 

「どこか、おかしなところはな い。手直しするけど」

 

「大丈夫じゃ、完璧じゃ! わら わの甲冑が元に戻ったぞ!!」

 

エリザベートは直った甲冑を見て それに釘付けである。

 

「さてと、あと一つ。玖里子さん 朝霜寮移動して欲しいって言ってましたけど、どこに移動したらいいんですか?」

 

「えっ、やってくれるの!?」

 

玖里子は断られるとばかり思って いたのか和樹の言葉に驚きの声を上げる。

 

「ただでとは言えませんけどね。 本来なら僕が家の仕事をするときは上級以上の妖魔が相手ですからさっきの除霊も普通の除霊よりは額が高くいくんですよ」

 

「・・・どれくらいになるの?」

 

「式森家は他の退魔の家系、神 城、杜崎、神凪、石蕗がよく知られていますがそこで対応できない仕事を受け持ちますから、一つの仕事に一人につき安くて百万位ですね」

 

「何だ、それくらい・・・」

 

「でも、僕や千早、レオンが行か される場合、金額は・・・・・・壱千万近いですね」

 

「い、壱千万!!」

 

「もちろん、一人につき・・・」

 

「一人!!」

 

言葉を失う玖里子。仕事のレベル は置いて、つまり本当なら自分は三千万近く払わなければならない人材を使ったのである。

 

「まあ、今回の除霊は気にしなく ていいですよ」

 

「そ、それで、寮を動かすのはど れ位でやってくれるの?」

 

「そうですね、とりあえず、エリ ザの新しい住まい探してください。それと行ってみたい店があるんでそこ奢ってください」

 

「えっ・・・それだけでいい の?」

 

和樹の言葉に玖里子は耳を疑っ た。百万や二百万くらいは当然と覚悟していた玖里子はあまりの安さに驚きを隠せない。

 

「あくまでさっきの金額は式森家 を通しての金額ですから、学生のうちはそんなお金と手仕事使用とも思いませんし、それほど大変なことじゃないですから」

 

「・・・・・あのね和樹、それあ んただから大変じゃないって言えるんだと思うわ」

 

さらりと言ったが、今から和樹に 頼もうとしていることは玖里子からしてみればかなり大変なことである。

 

「それで、どう動かしますか?」

 

「そうね。どうせなら朝霜寮と彩 雲寮をくっ付けちゃってもらえるかしら」

 

「・・・あの〜・・・・不味くな いですか? それって・・・」

 

何言い出すんだこの人はという感 じで和樹は玖里子を見た。

 

千早、レオン、凛も言葉を失って いる。

 

ちなみに夕菜は・・・・・・

 

「いやぁぁぁぁぁ!! もうすご 過ぎですぅぅぅ!!」

 

狂ったように叫んでいた。という よりすでに狂っている・・・

 

そのためもう誰も相手にしていな かったりするのであった。

 

「でも、そこしか移動できる場所 ないのよ。それに夕菜ちゃんも同じ寮の中なら文句言ったりしないだろうし、くっ付けちゃえば誰も文句言えないでしょ!!」

 

先手必勝とばかりに玖里子は寮を くっ付けてしまい教師達やその他の反対を無理やり収める気のようだ。

 

「玖里子さん、でも問題が起きる んじゃないですか?」

 

凛は玖里子の意見に反対のようで ある。

 

「凛ちゃんの言う通り、くっ付け るとなると構造上問題が起きることもありますよ。僕は建物内の構造を全て把握してるわけじゃないんですから、どこかの部屋と部屋がつながったりとか、色々 問題が起きますよ」

 

「大丈夫、その辺はあたしが何と かするわ。あんたに移動してもらえば内装工事と細かな工事するだけですむから、お金そっちに回して問題解決させるわ」

 

「・・・・・それなら問題ないで すね」

 

「いいんじゃない」

 

「分かりました」

 

玖里子の言葉に凛、千早、和樹は 納得した。

 

「それじゃ、くっ付けますね」

 

そういうと和樹は意識を集中させ る。そして和樹の手に青い光が集まり出した。

 

その光を朝霜寮へと向かわせ寮を 包み込むと彩雲寮の方へと手で誘導するように動かす。

 

地面が軽く揺れそれと同時に朝霜 寮が彩雲寮の方へと移動した。それと同時に地面の揺れは治まり静かになる。そして後には見事一つになった朝霜寮と彩雲寮があった。

 

「一応くっ付きましたけ ど・・・」

 

『キャァァァァァッッッッッッッ!!!!!』

 

「・・・・・・あぁ〜あ、やっぱ り何か問題が起きたみたいですね」

 

「大丈夫、大丈夫!!! 問題な し、英語で言ったら『NO PROBLEM!!』、これだけやってくれれば上出来よ!! OK!! よっし、三分の一の予算浮いたわ。この仕事大成功 よ!!!」

 

腰に手を当てて大笑いする玖里 子。

 

その後ろでは・・・・・・

 

「本当に・・・大丈夫なんでしょ うか?」

 

「どうかしらね」

 

「内装工事やるとか言っておいて 本当にやるのかな?」

 

「何か、旨く丸め込まれたような 気が・・・私はしてならないんですが・・・」

 

「事実上、先輩の思った通りに なってるしね」

 

「まだ悲鳴が聞こえるよ。ヤバイ よね、これ・・・」

 

「一体、どんな風にくっ付けたん だ?」

 

「とりあえず、部屋をつぶさない ようには注意してくっ付けたはずけど、それ以上は部屋の位置とかよく分からないし」

 

「朝霜寮と彩雲寮じゃ、構造が違 うからね。無理ないわよ」

 

「確かに、 違っていたな」

 

「いつまで笑っているつもりだ ろ」

 

ボソボソと話をする和樹、千早、 凛の視線にも気づかず玖里子は未だに高笑いを続けていた。

 

「オ〜〜〜ホホホホホホホホホ ホッ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

結局、夕菜は和樹の部屋ではなく 彩雲寮に入る事になった。

 

エリザベートは玖里子に憑いてし まったので和樹が頼み彼女の家に居候させてもらうこととなった。どうやら玖里子が母親に似ていたらしく、玖里子も利用したという罪悪感からか無理に断るこ とができなかった。よって、エリザベートは玖里子の家に部屋を一室もらいそこで新たな生活を始めたのであった。和樹が助けた白蛇は式森家本家の土地にある 森の中で新たな生活を始めた蛇は喜んで森の中で今はのびのびと生活している。

 

ちなみに千早の部屋が和樹の部屋 の隣にくっ付いてしまったのは和樹の計算したことなのか、偶然なのか本人達しか知らない。

 

もちろん、このとき夕菜が暴れ大 暴走したのは言うまでもない・・・・・・

 

 

 

 

『レオンのインフィニティールー ム!』

レオンで〜〜す!

朝霜寮と彩雲寮合体!! 

和樹と千早の部屋も合体!!

計算したに決まってるでしょ!!  本人達は否定してますがその日の夜から部屋の模様替え始めたりしてました。でも部屋が広くなったので僕としてはよし!

次から神城家編へ入ります。

僕も活躍する編なのでお見逃しな く!!

 

 


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