まぶらほ  無限の魔力

 

 

 

 

修学旅行編

第一話

 

 

「だ〜る〜い〜・・・・はぁ 〜〜、紅茶の香はいいな〜・・・でも、だり〜〜」

 

教室の机に力なく倒れ込んだ和 樹。

 

少し前にあった戦いの疲れが未だ に抜けきらずに身体中の骨、筋肉がギシギシと音を立てて唸鳴りを上げている。

 

それを忘れようと紅茶を飲んでい る。だが、缶でなくティーセットが置いてあるのが不思議で仕方がない。

 

「体が重いわね」

 

そしていつもは元気で明るい笑顔 を見せている千早も和樹同様に疲れた表情をしていた。

 

だがやはり、机の上に置かれてい るティーカップセットはどこから出したのか?

 

不思議で仕方がないが深く突っ込 まないで置こう。

 

「私なんか、今考えれば生きてい ただけでもラッキーよ」

 

沙弓はしみじみと今自分が生きて いることをかみ締めていた。

 

和樹達はつい数日前まで入院しあ る事件で受けた傷を癒していたのだがその疲れが平和な日常に戻り、緊張の糸が緩んだ瞬間どっと押し寄せてきた。

 

「式森君・・・呪いを消すことに は成功したって聞いたけど、まだ退院しないの?」

 

「成功はしたけど・・・でも精密 検査のために入院は当分の間は続くし、体中の筋力が落ちきって硬くなっているからそれをほぐしながら徐々に筋力をつけていったりって・・・・・・まあ色々 あるからリハビリも必要なんだよね。完全に回復するのはもう少し先かな。詳しい話は蘭に聞いたほうがよく分ると思うよ」

 

「そう。でも、よかったわね」

 

「お兄ちゃんも凄く嬉しそうだっ たしね」

 

和樹と千早は幸せそうな二人の姿 を見て自分達も嬉しく思っていた。すぐに日常生活に入ることはできなくても、今生きていることを二人は幸せに思っているのが周りから見ても分った。

 

「当分何もないといいんだけど な。少し骨休めしたいよ」

 

「じゃあ、気分転換にカラオケで も行こうか?」

 

カラオケ好きの千早が真っ先に声 を上げた。好きな曲、アーティストの番号は暗記してしまうほどのカラオケ好きである。

 

「そうね。久しぶりに私も歌おう かな」

 

「最近行ってなかったからね。 はぁ〜、お茶が美味しい兄さん達も誘おう・・・・・・あっ、病院のカラオケルームでカラオケ大会開こうか?」

 

なぜ病院にカラオケルーム が・・・・・・突っ込む人はいなかった。

 

「お兄ちゃんの氷室総介聞きたい な」

 

GRAYの『SOUL LOVE』もまた歌ってもらいたいね

 

「私は式森君の『ignited-イグナイテッド-』がいいわ」

 

・・・・・・何はともかく三人は 命を懸けた戦いから日常生活に戻ってきたことを強く感じた。

 

 

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・だが和樹達の 平和はそう長くは続かなかった。

 

運がいいのか悪いのか、私立葵学 園の二年生の修学旅行シーズンがやってきたのである。

 

修学旅行とは学生生活の中の楽し みの一つであり、大きな行事の一つである。だが今の和樹にとっては拷問に近い行事であった。

 

(また・・・京都・・・もう 嫌・・・・・・・)

 

(あぁ〜、治ったはずの傷が痛み 出してきたわ・・・・・・蘭に見てもらおうかしら)

 

一体なぜ、しかもつい最近行って 来たばかりの京都に再び行かなければならないのか。それもいい思い出など一つもなかったのに・・・・・・

 

「お前ら、忘れてたけど修学旅行 の話があるぞ」

 

二年B組担任の伊庭かおりがいき なり話をし始めた。自称吸血鬼といっているゲームおたくである。彼女が授業中に手にしている教科書の中にはいつもゲーム機が入っていることは既に皆が知っ ていることである。

 

「行き先は予定通り京都だ。向こ うで雅を味わうために行くらしいぞ。喜べお前ら!」

 

『・・・・・・・・・』

 

(シクシクシクシク( Д`)・・・・・・)

 

(・・・・・・夜空の星に手を伸 ばし♪ あなたの輝く愛をつかみたい♪)

 

特に反応はなかった。

 

そして一人は心で涙し、もう一人 はポエムを作り現実逃避に走ろうとしていた。それを全く気にせずかおりは話を進める。

 

「ちなみに二クラス合同で自由行 動の班を作って行動する。B組は私が引いたアミダくじによりF組と一緒になった。だから、係りなんかもF組と話し合って決めることになるぞ」

 

かおりの言葉にB組が素直に頷く か・・・・・・

 

否、頷くわけがない。とプ全の 如くクラスからヤジが花火工場が爆発したかのように飛び出した。

 

「ふざけるなっ!」

 

「陰謀だ!」

 

「職員室に火を付けろ!」

 

「誰かが校長を裏で操るんだ!」

 

自分のことしか考えていないB組 のメンバーはいつものように騒ぎ始めた。

 

しかしクラスが騒ぐなか仲丸が声 を上げた。

 

「ちょっと待てみんな! これは チャンスだ!!」

 

「・・・どういうことだ」

 

「つまりだ。係りを決めるときに B組は簡単な仕事を取るんだ。そしてF組には面倒な係りをやらせる。さらにやつらがその係りをまっとうできなかったらどうなる?」

 

「そうよこれはチャンスだわ。F 組が係りをまともにできない。だがB組は係りをまっとうしている。F組の面目丸つぶれよ!!!」

 

仲丸の考えに和美も乗る。クラス 大半が目がいっちゃっている。まともなのは和樹と夕菜(?)と沙弓くらいである。

 

「・・・・・・悪どい・・・つい でにB組らしい」

 

「このクラスなら当たり前だと 思ってしまえるから感覚が狂うね」

 

「むしろ大人しくするほうがこの クラスだと怖いと思う」

 

「・・・もう、どうでもいいよ」

 

机の上には魔法で姿を消したレオ ンとカイ言いたい放題言っている。自分のクラスだということも忘れ、和樹がどうでもよさそうに机に突っ伏した。だが嫌な予感を感じた和樹は顔を上げると行 動を起こした。

 

「次の時間はF組との話し合いの 時間だ。六人の班だから基本的に三人位でコンビ作っとけ、男女のバランス考えろよ。じゃぁ・・・・・・・・・おいっ、どこに行く式森、杜崎!」

 

仲丸達の言葉を無視して話を続け ていたかおりが和樹と沙弓を呼んだ。

 

かおり曰く、B組唯一の真ともコ ンビ。

 

『・・・はひぃ!』

 

何かこの日一番の嫌な予感を二人 は感じ取ったためこっそり教室を抜け出そうとしていた所を捕まる。だがその予感が当たっているかのように学校の前を霊柩車が通っていった。更に門の側の塀 の上では黒猫がマツケンサンバを踊っていた。

 

(・・・・・・・・・)

 

(・・・・・・・・・)

 

ギギギギギギギギギギギギギ ギ・・・・・・

 

二人はゆっくりとお互いの顔を合 わせそのままさび付いた機械のような音を立てながらかおりの方へと顔を向けた。

 

「そんじゃあ! 式森、お前中心 になって決めてくれ!!」

 

かおりはよろしくとばかりに手を 上げて片目をつぶる。だが和樹にとっては極刑以外のなにものでもない。

 

「先生、保健室に行って来ていい ですか!! 朝から胃の調子が悪くて!! というより行かせてください!!」

 

和樹はこの場から逃げ出すために かおりに叫ぶ。

 

はっきりいって冗談じゃすまな い。このクラスをまとめるには胃薬がいくらあっても足りない。しかも疲れがピークに達している今の和樹には拷問どころか死刑宣告であった。

 

「却下! 一番B組に染まってな いお前がいなくなったら修学旅行当日になっても決まるものも決まらん、ここは犠牲になってくれ。じゃぁ、よろしく!」

 

「ちょっと待てください、それ理 由にも説明にもなってないですよ。 僕だけて一体何ができるって言うんですか!? あなたそれでも教師か!? しかも犠牲ってなんですか! おい、こ らーーーー! ゲームマニア、吸血鬼!! 教師の恥!! 飲兵衛! 僕はこのクラスの犠牲になる理由なんてないんだぁぁぁっっ!!」

 

和樹の反論も聞かずに、かおりは ゲームに夢中になっていたりする。これを職務放棄と言わずになんと言うのだろうか? 微妙にどこかのキャラの名言に似た言葉が混じっているが気にしないで 置こう。

 

自分達の言葉が届かないと分った のか反論を諦め、和樹は溜め息をつきながら嫌々ながらも黒板の前に立つ。疲れている身体に鞭を打って気力で身体を動かした。

 

沙弓はそれをさらに疲れた顔を見 ていた。両手両足に百キロの重りをつけられたように身体が重かった。

 

しかし、チャンスとばかりに教室 を出ようとした沙弓に和樹から声が掛かる。

 

「杜崎さん、手伝ってくれるよ ね」

 

「ちょっと目眩がするか ら・・・・・・」

 

そう言ってドアを開けて外に出よ うとする沙弓。その彼女の耳に女声の和樹の声と黒板を描く音が聞こえてきた。

 

「『ラヴ♡ラヴ♡ラヴゥゥ♡ 

あなたと会った瞬間からわたしの 心はめっちゃラヴ♡ラヴ♡

わたしの心も体もすべてあなたに 奪われてしまったのDA! のだ! のだ!

イ・ワ・ユ・ル あたしの心はハリーケーンカトリーナの如く、が 吹き荒れているのっん! (*/∇\*)イ ヤッッーーーン!!』」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ギィャァァァァァァァァァァァァァァァーーーーーーッッッ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

沙弓は血の涙と悲鳴を上げながら 黒板に書かれた文字を目にも留まらぬ速さで消し去った。

 

「はぁっ、はぁっ・・・ はぁっ・・・・・」

 

「手伝ってくれる?(**)ニッコリ

 

これでもかと言わんばかりの満面 の笑みだが悪魔の微笑みに見えた。

 

沙弓は後にそう語ったそう な・・・・・・

 

「喜んで!」

 

即答で沙弓は答えた。この状態の 和樹に逆らうのは死を意味することを経験から知っている。

 

沙弓の返事を聞いた和樹は表情を 一変させ深々とため息を付いた。

 

このとき沙弓は別の意味で深々と ため息を付いていたりする。

 

二人は一瞬のうちに二十は歳を とったような気がした。

 

帰りは胃薬と栄養ドリンクを買っ て帰ろうと二人の考えはこのとき一致した。下手したらこの時間の間に穴が開くかもしれないが・・・

 

「はぁ〜〜」

 

「うぅ〜〜〜〜」

 

二人はさらに深く・・・深 〜〜〜〜〜〜〜くため息をついた。

 

「・・・・・・はぁ〜・・・え 〜、伊庭先生から言われたので僕らが中心になって決めていきます。それじゃ、なんか決め方に案がある人は言ってください」

 

「はい!」

 

待ってましたとばかりにすぐさま 夕菜が挙手をした。

 

「・・・・・・宮間さん」

 

嫌々夕菜をさした。何を言うかは 大体想像がつく。

 

「和樹さん一緒の班になりましょ う」

 

「・・・・・・誰か(真ともな) 案はありませんか?」

 

「手を上げてどうぞ!」

 

予想通りの夕菜の意見をさらっと 流して先を進める。夕菜が『ギャーギャーヾ(*Д´*)"』わめいているが一々気にしていたらB組では生きていけないう。

 

そんな中、核弾頭がゆっくりと発 射台に設置された。

 

「式森!」

 

「なに? 仲丸、何か案ある の?」

 

「俺とお前は親友だよな!」

 

「神に誓って違う」

 

「二人で夜通し語り合った仲だよ な。二人は最高のコンビと言われたことも会ったよな」

 

「生まれてこの方一度も語り合っ てないし、コンビなんか組んだ覚えは全くない。誰かま・と・も・な意見ない?」

 

「式森、俺の話を聞け!」

 

「・・・仲丸、それ以上僕に何か を言うなら僕は君を撃たなければいけなくなる!」

 

「誰の台詞だ!!」

 

「今の君は話しの進行の邪魔なん だ! なら倒すしかないじゃないか!!!」

 

「式森君、落ち着いて、それキャ ラ的にあなたの台詞じゃないわよ。ここで言うなら『守りたい話し合いがあるんだ!』よ」

 

冷静に突っ込んでいる が・・・・・・沙弓、どっちもどっちだぞ・・・・・・

 

とりあえず沙弓に止められ和樹は 一度深呼吸をし、再び話しだした。

 

「・・・誰か意見をどうぞ」

 

「式森、裏切る気か?」

 

「デタラメ言ってんじゃないわ よ!」

 

和美が騒ぎ出した。和樹はしまっ たと思った。仲丸と和美、この二人がぶつかり合ったらB組は止められない。それは一年のころから変わらない概念として植えつけられていた。

 

「そうやって既成事実を作り上げ ようなんて、なんてあくどいの!!」

 

「黙れ、俺達の友情にひびを入れ ようとするな」

 

「もともと修復不可能の亀裂が 入ってるでしょうが! とにかく、あんたの意見は通さないわよ」

 

(・・・いや、クラス自体が既に 崩れきっているんじゃないかな・・・・・・)

 

(何か段々どうでもよくなってき た・・・・・・・)

 

和樹と沙弓は不意にそう思った。

 

前に立っている和樹と沙弓を忘 れ、和美の声に『そうだそうだ』とクラスから賛同する声が沸いた。

 

「ならどうやって決めるんだ」

 

「女子は女子で決めるわよ」

 

「まて、何主導権を握ろうとして やがるんだ! 腹黒女が!!!」

 

「あんたと比べたら天使みたいな もんよ。マックロクロスケのほうがあんたよりまだ白いわ!!」

 

(和美って意外と馬鹿だった の?)

 

もはや、B組に和樹と沙弓のこと を見ている人はいなかった。夕菜は未だに和樹に声を上げているが・・・・・・

 

「和樹さぁーーーん!」

 

「平等にジャンケンにすべき だ!」

 

「プレーオフを作らないと納得が いかない」

 

「仲丸と松田をこの話し合いから はずせ!」

 

「時間の無駄だぞ!」

 

「キシャーーーー!!!」

 

「どこかに閉じ込めろ!」

 

「御厨! 薬を作れ、二人を眠ら せるんだ。いやいっそ殺せぇぇっっーーーー!!!」

 

「ダイナマイト持って来い!!」

 

「九龍鞭!!」

 

「諏訪園が悪魔召喚したぞ!」

 

「デビルキシャーーー!!!」

 

「ギャーーーー!!!」

 

類は友を呼ぶと言う言葉をどこか で聞いたことがある。

 

修学旅行の話し合い(?)はB組 のほとんどが自分の意見が一番として参加した話し合いとしてスタートした。その光景はヨーロッパのフーリガンや暴力団の島争いの比ではない。

 

言うなればクラス全員による天下 分け目の合戦、関ヶ原か、天王山か・・・・・・

 

これを止められる人はどこにもい ないだろう。

 

ドコォォォーーン!!

 

・・・・・・・・・いた。

 

黒板の前に立つ二人。だが二人の 後ろに黒板はおろか壁さえもなかった。ただ煙と黒板と壁であったであろう残骸が後ろにはあり、隣のクラスの生徒が何事かと驚愕の目でこちらを見て固まって いた。

 

何人か巻き添えを喰らい瓦礫の下 になっているが突っ込まないで置こう。

 

この現状を作った二人は何かを 殴ったような体勢で止まっていた。

 

言うまでもなく和樹と沙弓であ る。

 

そして二人はそれぞれ動き出し た。

 

ガシッ!

 

和樹は仲丸、沙弓は和美を連れて 無言のまま廊下に出て行く。

 

「この馬鹿野郎 がぁっっーーーーーーーーーーー!!!!」

 

「あなたって人 はぁぁっっーーーーーーー!!!!!」

 

ドガァッ! バキッ! ガシャ ン! ドドドッ! ズガァン!

 

「ギャァァァァーーーーーー!!」

 

「ヒィィィィィーーーーーー!!」

 

ビクッ!!

 

二人の怒鳴り声・・・・・・どこ かで聞いたことのあるような台詞とともに廊下から何かを殴る不気味な音と共に仲丸と和美の悲鳴(奇声)が聞こえてきた。それを聞きB組全員は恐怖を感じず に入られなかった。このときクラス内の温度が五℃下がったらしい。

 

『・・・・・・・・・・(B 組)』

 

しばし無言の状態が続いた。

 

ガラァ

 

五分後、出て行ったときと同じよ うに和樹が仲丸、沙弓が和美を連れて教室に戻ってきた。このとき二人には傷一つ付いていなかった。

 

だが、その顔は青く頬がこけて、 さらにブツブツと何かをつぶやいていた。

 

「もういやだ。金なんか要らな い。ただ生きたい・・・・・・」

 

「お金なんかいい。殺さないで、 私を一人にして・・・・・・」

 

金に関しては目がない二人が金な んかいいと言っているのを聞いてB組は耳を疑いさらに先ほどよりも恐怖を感じた。

 

たった五分の間に一体二人に何が 起きたのか?

 

そして、和樹がゆっくりと教壇の 前に立つと笑顔でこう言った。

 

「くじ引きで決めるけど、何か反 論のある人は?」

 

ブンブンブンッ!!

 

全員首を音がするくらいに横に 振った。本能的に悟った。今の二人には逆らうなと・・・・・・

 

どこぞのアニメの生徒会長が言っ ていたが一人を見せしめにとはまさにこのことであろう。

 

この後、すんなりと班は決まっ た。和樹と沙弓の平和的(?)話し合いによって・・・

 

「それじゃこの班で決定です」

 

黒板にはそれぞれくじ引きによっ て決まった班ごとに名前が書かれていた。

 

「杜崎さん、黒板メモっておい て! ボールペンで、ついでに魔法で書き直しが出来ないようにして厳重に保管しておいて。厳重にね!」

 

「任せない。この拳に誓うわ!」

 

「ならば問う! 杜崎さん!」

 

「ええっ!」

 

「『流派! 東方不敗は!』」

 

「『王者の風よ!』」

 

「『全新系列!』」

 

「『見よ!! 東方は紅く燃えて いる!!』」

 

・・・・・・・・・何がやりたい のだこの二人は・・・?

 

沙弓は黒板をノートに写し始め た。

 

「細かなところはF組と話しなが らまた変わるかもしれないけど、基本的にはこれでいきます。い・い・で・す・ね!」

 

『はいっ!!!』

 

和樹の言葉に誰も異議を唱えな かった。唱えられなかったと言ったほうがいいだろう。

 

和樹から発せられた殺気がB組全 員に向けられて恐怖で動くことなんてできなかったんだから。

 

この日和樹と沙弓の立場がB組の 中で変更された。

 

危険人物、決して二人を怒らせる なと・・・・・・

 

 

 

 

 

 

ちなみにF組との係り決めのとき も和樹と沙弓がB組のストッパーとなって話をまとめた。

 

教員達はこれを『式杜の奇跡』と 言って学校の歴史にしるし代々語り継いだのであった。

 

 

 

 

 

 

ちなみに仲丸と和美は何をされた かと言うと・・・・・・

 

「な、何だ、式森。俺達は今大事 な話を・・・・・・」

 

「そうよ。B組の未来がかかった 大事な話し合いを・・・・・・」

 

「・・・バ増が・・・・・・」

 

「・・・・・・黙 り・・・・・・」

 

二人の言葉が終わる前に、和樹、 沙弓の喉から押し殺した声が漏れた。

 

「はっ?」

 

「えっ?」

 

2人が何を言っているのか解ら ず、仲丸と和美は間の抜けた表情を浮かべた。

 

この場に他の人がいたら、驚いて 腰を抜かしていただろう。いつも大人しい和樹と沙弓が眉間に深いしわを刻み口が残虐非道な笑みを浮かべていた。

その姿はいつもの2人からは全く 想像出来なかった・・・・・・

 

「この馬鹿野郎 がぁっっーーーーーーーーーーー!!!!」

 

「あなたって人 はぁぁっっーーーーーーー!!!!!」

 

「人がいつも大人しくしてれば調 子に乗りやがって舐めとんのか――――このシャバ憎がぁ!」

 

「やかましいのよ! いつもいつ も問題起しやがって周りがどんだけ迷惑受けてると思っているのよ、この豚が!」

 

「ぎゃぁぁぁぁぁっっ!!」

 

「ひぃぃぃーーーーーーーーーー!!」

 

二人がまるで人が代わったかのご とく荒々しくしゃべりだすと同時に仲丸は髪をつかまれ壁に叩きつけられ、和美は沙弓に胸倉をつかまれ高々と持ち上げられた。

 

「や、止めろ〜式もりぃ〜〜〜」

 

「沙弓許してぇぇ〜〜〜〜」

 

「しゃーしぃわ!(やかましい)  そんなんで止められんならB組の暴動もすぐおさまるわ! この馬鹿憎が! 舐めとんのか、あぁ!」

 

「そんなんで許されると思ってん のか、あんたは! 今までのどれだけあたしが涙を飲んできたか体に教えたるわ! この猫かぶり金亡者女がぁ!」

 

本当にこの場に人がいたら二人の 変貌に言葉を失っていただろう。

 

確実に・・・いや間違いな く・・・・・・

 

見た目、大人しそうな雰囲気の和 樹と沙弓が見せた本性に言葉を無くすことは間違いない。ここに来て二人は完全に壊れてしまった。

 

「ギャァァァーーーーーー!!!」

 

「オラオラオラ、逃げんなやネズ ミ男が! 地の果てまでぶっ飛ばしたるわ!!!」

 

「許し てぇぇぇーーーーー!!!」

 

「神に代わってシバいたるわ、化 け猫がぁぁーーーーー!!」

 

意味不明な方言や言動をまき散ら しながら和樹と沙弓の拷問は続くのであった。

 

その時間約五 分・・・・・・・・・三分の時点で二人は意識が朦朧としていたりする。

 

そして五分の拷問が終了した。

 

「ああぁ〜〜〜、すっきりした。 式森君、よろしく」

 

「ふぅ〜〜〜、わかった」

 

和樹は魔法で仲丸と和美の傷を治 す。同時に服についた血などもきれいに消えた。

 

「・・・・・・・・・もういや だ、いやだ・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・ごめんなさ い、ごめんなさい・・・・・」

 

こうして二人は平和的に(?)見 事更生(?)されたのでした。

 

「ああ〜〜本当にすっきりした」

 

「すがすがしいわ」

 

そして和樹と沙弓はストレス発散 ができとても気分がよかったとか・・・・・・

 

 

 

 

 

 

さらに余談だが仲丸と和美は三日 後にはいつもの二人に戻っていたとか・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

修学旅行出発の日

 

葵学園の二年生ご一行様は東京の 新幹線ホームから京都に向かって出発した。

 

B組とF組の合同の班を乗せた車 両は最後尾とその一つ前の車両にされていた。理由、B組が他の乗客に迷惑をかけないためである。

 

「おーい、聞けー、お前ら。特に B組!」

 

かおりが私語をしている生徒達に 向かって言った。

 

「いいか、もうここはあんた達の 縄張りは離れた。ここからはおとなしく普通の高校生でいろよ。葵学園は世間じゃ品行方正成績優秀の学校ってことになってるんだからね。京都の重要文化財盗 もうとか舞妓さんナンパしようなんて考えるんじゃないよ! B組はただでさえ『最下層クラス』『葵刑務所特別官房』って言われてるんだからね。私は学年主 任の説教聞いて、仕返しに階段から落とすのにもう飽きて、次の仕返し方法考えている最中なんだから、考え付くまでもうそんなことさせんじゃないよ」

 

(あんた、そんなことやってたの か!!)

 

何人かの生徒が(特にF組の生 徒)かおりの言葉に呆れ返った。

 

「それと清修学園と設楽ヶ原高校 も修学旅行みたいだから、B組の人は話しかけたりしたら窓ぶち割って強制途中下車させるからな!」

 

そういうとかおりはゲームを始め た。(またかよ!)

 

B組の生徒はまだ文句を言ってい る。

 

「あぁ〜、やかましい」

 

和樹はイヤホンを取り出すと音楽 を聴き始めた。そうでもしないとやってられない。

 

しばらくすると前の座席が半回転 して和樹達と向かい合わせになった。

 

「やれやれ、で、何の曲聴いてる の?」

 

千早がちょうど和樹の前に座って いた。班を決めたときにうまく千早と一緒になれるように裏工作したのは言うまでもない。和樹の班には千早、沙弓の御なじみのメンバーにB組の服部昌也とF 組の相馬と石川映子の六人の班である。

 

ちなみにリーダーは千早、副リー ダーは和樹である。

 

「こう喧しくちゃ、バラードは聞 けないからハードロック系の曲。全く昌也はよく寝られるよ」

 

和樹の隣では自称忍者の昌也が目 をつぶって寝ていた。だが一緒になったのが昌也で本当によかったと思っている。

 

仲丸や和美とならないで良かっ た。夕菜とも別の班になり和樹としては心が休まる班である。

 

(苦労した甲斐があった。偉い ぞ、僕!)

 

しみじみ思う和樹であった。心の 中では自分に金メダルを上げていたりする。班が決まったときに、仲丸達は和樹から夕菜を離すことができて喜んだが、夕菜が暴れたのは言うまでもない。

 

「クッキー持ってきたんだけど食 べる?」

 

「食べる、食べる!」

 

和樹は千早からクッキーをもらっ て口の中に入れる。千早はお菓子作りも得意でよく試作品を昔は食べたもんだ。そのときも始めて作ったとは思えないくらいおいしかったのをよく覚えている。

 

小学校の頃はたまに失敗作があっ たが・・・・・・・・・ただそんなときもレオンが平気な顔をして食べていた。

 

「みんなもどうぞ!」

 

「じゃ、遠慮なく!」

 

「ありがとね」

 

「いただきます」

 

そういって、映子が口の中に次々 とクッキーを放り込む。その光景は掃除機がごみを吸い取るがのごとき速さである。

 

「映子・・・あなたの口って、ブ ラックホールと繋がってるんじゃない」

 

千早が呆れながら映子に言う。

 

「ヒドーイ! そんなふうに言わ なくてもいいでしょ!」

 

「ならもっと味わって食べてよ。 丸呑みしてるようにしか見えないわよ」

 

ドラえもんのどらやき食いかよ。

 

余談だが、のび太が以前ドラえも んの腹の中に入ったときどらやきはそのままの形で発見された。本当に余談である。

 

相馬や沙弓が味わいながらクッ キーを食べている。いつの間にか昌也も起きてクッキーに手を伸ばしていた。香ばしい匂いにつられて起きたようである。

 

「味わってるよ!」

 

「誰が見ても噛まずに飲み込んで るようにしか見えないわよ。ドラえもんみたいよ」

 

「・・・ねえ、千早」

 

沙弓が千早を呼ぶ。網棚を周りに 分からない程度に指差している。

 

(ああ、大丈夫よ、バックの中に 一緒に入れてあるから)

 

念話で千早が言うと沙弓はわかっ たという顔をして窓の外を眺め始める。

 

そのころバックの中では・・・・

 

「狭い・・・」

 

「我慢するしかないだろ。そうし なくちゃクッキー食べられないんだから」

 

修学旅行について来たレオンとカ イがバックの中でクッキーを食べていた。

 

そこまでしても食べたい千早の クッキーの味っていったいどれほど美味しいんだ。

 

(二人ともがんばるよなぁ〜)

 

和樹が網棚のバックを見ながら、 そんなことを思った。

 

和樹達を乗せて新幹線は西にひた 走っていった。

 

 

 

 

 

 

 

東京駅を出て三時間ほど経ち、新 幹線は色々な意味で無事京都に着いた。

 

京都駅を出ると、学校の用意した 観光バスに乗りそのまま初日の観光となった。バスは立派なもので座席も大きくゆったりしていて、

 

クラス全員が乗っても、ゆったり したものであった。座席は班ごとに決めており、和樹たちは真ん中の辺りに座っていた。座席の振り分けは和樹の隣に千早、その横の座席に沙弓と映子、その後 ろに昌也と相馬で割り振って座っている。

 

ちなみに運悪く夕菜の班が同じバ スになってしまった。

 

(・・・背中が痛いなぁ・・・)

 

夕菜が和樹と千早の後ろの座席に 無理矢理陣取って座って睨んでいるので和樹はのんびりすることができない。

 

「和樹さん、これから行くとこっ てどこですか?」

 

さっきから、ずっとこの調子であ る。のんびり景色も観れやしない。

 

「・・・・・清水寺だよ(ちなみ にこれ三十回目だよ)」

 

「『清水の舞台から飛び降りる』 で有名ですよね」

 

和樹は適当に頷こうと考えたがそ うすると三十一回目の『次どこですか?』が来るに決まっているので自分の知識を使うことにする。

 

「知ってる? 実際に飛び降りて る人いるんだよ」

 

「え、そうなの?」

 

千早も驚いた様子である。

 

「清水の舞台の高さは十三メート ルあるだけど、生存率は八十五.四パーセントと高くて、十代、二十代に限れば九十パーセントの確率で生きてるんだよ。江戸時代で確認されている数は二百三 十四件。最年少は十二歳で最年長は八十歳代だったかな。京都の人が一番多いけど他の県の人も何人かいるみたいだよ。ことわざができた理由は『江戸時代に庶 民の間で観音信仰が広まり、清水観音に命を託し、飛び降りて助かれば願い事がかない、死んでも成仏できるという信仰から、飛び降り事件が続いたのだろ う』ってお寺では話してるみたい」

 

「そうなんだ」

 

「和樹さんよく知ってますね」

 

「昔、本で読んだことがあったん だ。僕は『音羽の滝』のほうが興味あるけどね」

 

音羽の滝とは音羽の山中より湧出 する清泉で金色水とも延命水ともよばれ、天下五名水や日本十大名水の筆頭にあげられる。ちなみにここから清水寺の名前がおこったのである。

 

「夕菜は来たことないの?」

 

「私、どこに住んでも、なれる前 に引っ越しちゃいましたから」

 

ちょっと残念そうに夕菜が言っ た。

 

やがて清水寺に近くなり、バスは 二年坂側の駐車場に止まった。有名な観光地なので他にも何台かのバスが止まっていた。

 

「全員いるわね」

 

千早が班の人数を確認し、石畳の 道を歩き出した。他の班はB組の生徒が足を引っ張ってるらしくまだ動き出さないでいた。

 

「まともな班でよかった」

 

「まったくだ」

 

レオンとカイはバスに乗ったとき からバックから出してもらい、今は和樹の足元をカイが歩いている。レオンは頭の周りを飛んでいる。ついでに二人とも小さなリュックを背負っていたりする。

 

結構距離があるが、和樹達の班は 平然としていた。三年坂、清水坂を歩き本堂が見えくる。

 

檜皮葺の屋根に寄棟造りの構造、 大きく張り出す舞台が音羽山を背にとてもきれいであった。

 

和樹達がしばらく待つとやっと全 ての班が集まった。

 

かおりが集合場所と時間を言う と、生徒達はバラバラになって歩き出す。

 

千早が先頭に立ち敷地内を見学す る。

 

「千早、こっちに行ってみよう」

 

千早のあとを歩いていた映子が千 早の手を取って神社の裏手に回った。

 

「ちょっとどこに行くの?」

 

「いいからいいから!」

 

半ば強引に引っ張られていかれ る。仕方なく和樹達も離れてはいけないと着いて行く。良縁祈願と書かれた石段を登ると境内にひざほどの高さの石が置いてあった。

 

『恋占いの石』と看板がしてあ り、注連縄が巻かれていて、同じような石が十〜二十メートル離れた場所にあった。

 

映子がその石のすぐ横に立った。

 

「ここから、目を閉じて歩いて向 こうの意思にたどり着くと恋の願いがかなうんだって」

 

「なるほど、これが目的だったの ね。それでは、和樹君説明お願い」

 

ここぞとばかりに千早は和樹に説 明を頼む。

 

「はいはい。ここは本堂の裏手に あって石にも載っているように地主神社って言うんだ。その石は守護石で『めくら石』とも呼ばれていて、いつからはっきりしないけど本格的には江戸時代のこ ろからだろうな。浅井了意が著した『出来斎京土産』に載っていた覚えがある。でも、室町時代の『清水寺参詣曼荼羅』にも画かれているから相当昔からあるみ たいだよ。一方の石からもう一方の石へ、目を閉じたまま歩いて無事にたどり着くことができれば恋がかなう。誰かの助けを借りれば、人のアドバイスを受けて 恋愛が成就するとされている。もともと、目隠しをした者が手探りで、一定の距離をおいたものにたどり着けるかどうかで願の成就を占うという行為は、神様に お伺いを立てる古い方法だったんだ」

 

「へぇ〜」

 

「なるほどね」

 

『ほぉ〜〜!』

 

皆、和樹の説明を夢中になって聞 いていたようである。周りの一般の参拝者まで和樹の説明を聞いて頷いていた。

 

「それじゃ私から行くよ」

 

映子は目をつぶるとゆっくりと足 を踏み出し歩き出した。途中、斜めにそれそうになりながらも何とか向こう側につくことに成功する。

 

「千早もやってみなよ」

 

「もう願いかなってるんだけどな 〜」

 

そう言いながら、千早は目をつ ぶって歩き出す。千早にとってこの位の距離を歩くなんて朝飯前である。何せ目隠しをしたままで和樹の斬撃を避けるとんでもない特訓をしているのだから簡単 に向こう側につく。

 

「沙弓もやってみなよ。せっかく だから」

 

薦められるが儘に沙弓も挑戦す る。もちろん簡単に成功し相馬と昌也も記念にとやってみる。

 

最後に和樹も目をつぶってやって みる。ゆっくりと歩き出すと横から何かが迫ってくるような感覚があったので、それを避ける。

 

さらにあちらこちらから攻撃を受 ける。何やら爆発音も聞こえてきた。和樹はそれを全て避けきり向こう側についた。

 

〔注意:和樹だからできたことで す。良い子のみんなは決して真似しないでね(できるか!!)〕

 

目を開けると夕菜を始めとして仲 丸や和美その他B組の生徒が息を切らしていた。まるで四十二.一九五キロを全力で走った後のように疲れきっていた。

 

「・・・・・・何やってるの?」

 

何ごともなかったかのように和樹 が聞く。

 

「愛の鉄槌です!」

 

「正義の鉄槌だ!」

 

「神の鉄槌よ!」

 

「何で?」

 

「お前に幸せは必要ない」

 

「何で石を爆破しなかった の!?」

 

和樹が成功した原因の罪の擦り合 いが始まった。

 

夕菜も参加しての大乱闘になり出 したので和樹たちはこっそりその場を後にした。

 

「成功!」

 

「僕も!」

 

騒ぎの中(魔法攻撃の雨の中)、 レオンとカイもちゃっかり成功していたりする。これくらい出来なきゃ和樹の式神なんてやってられない。

 

ちなみに『恋占いの石』ならびに 地主神社は和樹が『瞬歩』を使い夕菜および仲丸達を一瞬にして殲滅したことにより破壊されることなく次の日を迎えられたのであった。

 

 

 

 

 

 

 

仲丸達を気絶させたままの状態で 放っておき、和樹達は本堂に向かった。何かを売る声が聞こえたが騒ぎに参加しなかったB組の生徒が模造品を売りさばいていた。

 

「それでは歴史博士の和樹君、誰 がこの寺建立したんだっけ?」

 

「はいはい、お任せを。今の本堂 は徳川家光が再建したものだけど、もともとは宝亀九年(七百七十八)、平安時代の始めの頃、都が遷都して間もない頃に大和国子島寺の僧・延鎮上人が、夢の お告げで霊泉を訪ねてたどりついたのが、今、清水寺の建つ音羽山で、そこにはこの山に篭って数百年も修行を続けているという行叡居士という修行者がいたん だ。行叡は「自分はこれから東国へ旅立つので、後を頼む」と言い残し、去っていった。延鎮は、行叡居士が残していった霊木に観音像を刻み、草庵に安置し た。これが清水寺の始まりでその二年後くらいに鹿を捕えようとして音羽山に入り込んだ坂上田村麻呂は、修行中の延鎮に出会った。田村麻呂は妻の高子の病気 平癒のため、薬になる鹿の生き血を求めてこの山に来たのであるが、延鎮より殺生の罪を説かれ、観音に帰依して観音像を祀るために自邸を本堂として寄進した らしい。ちなみに田村麻呂は蝦夷征伐とかで知られている征夷大将軍の田村麻呂だよ。田村麻呂が蝦夷征伐から帰れたのは観音の加護の賜物とも言われているん だ」

 

「なるほどね」

 

「よく知ってるわね。そんな細か なことまで・・・」

 

千早と横で聞いていた沙弓が感心 していた。ついでに一般の参拝者達まで説明を聞いていたりする。

 

話をしていると少し離れたところ から、夕菜がやってきた。どうやら気絶から目覚めた後再び再開された争いが治まったようである。

 

「か、和樹さん、このお寺って誰 が作ったんですか?」

 

「い、今の本堂は徳川家光が再建 したものよ。元は坂上田村麻呂よ」

 

夕菜の後を追ってきた和美が説明 する。どちらも息が上がっている。息を整えて和美が説明を始めた。

 

「鹿狩りとかをしてたら、 延・・・エンジンに出会ったとか」

 

「外国の方ですか?」

 

「エンジンって言うくらいだか ら、内燃機関よ。とにかく、殺生を止めてエンジンを量産して輸出に精を出しなさいって告げたのよ。田村麻呂は感銘を受けて寺を作ったそうよ。それが今の自 動車大国日本の基礎になったの」

 

夕菜が和美の説明を聞いて不思議 そうな顔をする。

 

「なんか卑しい人だったんです ね」

 

「そうよ。でなきゃ、私達だって ここにはこないわよ」

 

和美の説明に和樹達は呆れ返る。 罰当たりにもほどがある説明だ。

 

「延鎮が聞いたら殴りかかってき そうだな・・・・・・」

 

「殴るくらいで許してくれたらい いけど・・・・・・呪われたりしないわよね」

 

「そういう悪い霊ではないけど、 それ位しても仕方ないかな、この場合・・・・・・」

 

おそらく問答無用で攻撃くらいさ れるでしょう。それでもまだましだと思う。

 

「と、言うより夕菜ちゃんあのま までいいの?」

 

「それはさすがに不味いと思う な」

 

「後で説明しなおしておくわ」

 

「頼むよ、千早」

 

こうして初日の見学は終わった。

 

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

奈良東大寺大仏殿にて

 

「凄い大きいです」

 

夕菜が大仏を見上げて大きさに驚 いて声を上げた。

 

「世界最大の木造建築物だから ね」

 

「でも、燃やされてなくなったこ となかったかしら?」

 

「平重衡だったかしら」

 

「一回目は重衡だよ。それと戦国 時代の千五百六十七年三好・松永の戦いにも焼失しているからこの大仏は三代目にあたるんだ。大仏の高さは天平時代と同じ・・・・・・うん、同じだったな。 ちなみに頭の部分が江戸時代、胴の部分が鎌倉時代、台座の部分が天平時代に直されたものが残っているんだ。ちなみに右手でいきとし生けるものの全ての恐れ を取り除き、左手で願いをかなえることを意味しているんだ。だけど創建当時の奈良時代の堂に比べて、間口・・・つまり幅が三分の二に縮小されていて講堂、 食堂、東西の七重塔なんかも再建されないでその跡しか残念だけど現在は残っていないんだ。それとここは日本の文化に多大な影響を与えてきた寺院であり、聖 武天皇が当時の日本の六十余か国に建立させた国分寺の本山にあたる「総国分寺」と位置づけられて作られたんだ」

 

「へぇ〜」

 

「あっ、あとみんな奈良の大仏っ て呼んでいるけど『東大寺盧舎那仏像』東大寺金堂(大仏殿)の本尊なんだ。大仏の正式名称は「盧舎那仏坐像」、大仏殿の正式名称は「東大寺金堂」っていう んだ。ちなみに聖武天皇は最初大宝律令によって国造りを目指していたんだけど、それではいけないということに気がついてかつて都から追放した行基と話して 協力することにしたんだ。大仏造りでは災害や協力者であった行基が死去したりいくつものハプニングがあったんだけどそれを乗り越えて完成させたんだ。そし て大仏に目を画く時の筆には紐が付けられていてそれは大仏造りに関わった人達みんながもつほどの長さがあって完成したその喜びを全員で喜んだって言われて いるんだ。ちなみに大仏造りに関わったのは二百六十万人、当時の人口の半分の人数なんだよ。以上説明終わり」

 

和樹先生の大仏講座でした。

 

「和樹さんあれはなんですか?」

 

夕菜が奥の柱に穴が開いているの を発見した。

 

「あれって大仏の鼻の穴と同じ じゃなかったかな?」

 

「そう、あれを潜ると幸運になる とか頭がよくなるって」

 

和樹君の豆知識またまた炸裂。

 

「へぇ〜」

 

・・・・・・・・・・・・

 

『なら仲丸どうぞ!!!』

 

「どういう意味だ、お前 ら!!!」

 

周りにいた全員から仲丸は柱の穴 へと押し込まれるのであった。

 

 

 

 

『レオンのインフィニティールー ム!』

こにゃにゃちわ〜

どうもお久しぶり、レオンでござ いま〜す。

カズ達は修学旅行で京都へとやっ てまいりました。いや〜、博識なカズに黒いカズと色々なカズが見る事ができました。

これからも色々なカズが出てくる 余寒がしてならないなぁ〜・・・

次もお楽しみに!

 

 


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