魔法少女リリカルなのは

THE MAGIC KNIGHT OF DARKNESS

Act.00   Destiny 〜邂逅〜

 

 

 

果てしなく続く闇のなか…… 永劫とも取れる闇のなかにポツンと浮かぶもの………

それは……一冊の 本……………

表紙に十字の紋様が施された 一冊の古びた本………全てが遮断された静寂のなか……突如本が光を放つ。

光が収まり…やがて本がひと りでに小刻みに痙攣し始める………震えていた本がバンと勢いよく開かれ、ページが凄まじい速さで捲られていく………

ページが捲られるなか……内 側より………二つの光が解き放たれる……いや……まるで本から弾き出されたような飛び出し方……

次の瞬間、本はバタンと閉じ られ……二つの弾き出された光は本の前に暫し浮遊していたが……やがて……流れるように本から離れ………闇のなかに消えていく………

再び戻った静寂のなか……本 はまた微かに光を発する………

 

『守護…士……ファ…ト…… ログ…ム……失敗……防衛……ラム………破損………再…築…………構築…開始………』

 

本から静かに響く途切れ途切 れの機械的な声……静寂の支配する闇のなか………本はその闇に溶け込んでいく…………

幾年…幾星………それらが動 き出す………運命に導かれて…………

 

 

 

 

海鳴にあるコンサートホー ル………クリステラソングスクールのコンサートを狙ったテロ……その華やかな舞台裏では…激しい戦闘が繰り広げられた………

黒ずくめの青年:高町恭也は 傷を押さえながら、弟子であり、妹でもある美由希とその母親である御神美沙斗の戦いを見守っていた。

壮絶な運命が隔ててしまった 母娘……そして、美由希の命を懸けた戦いに美沙斗は敗れ…己の過ちに涙し、二人その哀しみを分かち合っていた………

だが、そこへ別の気配が割り 込むのを恭也は感じ取った。

美由希と美沙斗は気づくのが 遅れた……その場所へと飛び込んできたのは黒服の男……突如、懐から取り出したものに眼を見開く。

それは……爆弾………威力が どれ程かは解からない……だが、それは恭也にとって忌むべき象徴…かつて、自分の一族を全滅させた龍の常套手段なのだから………

爆弾を放り投げ、男は素早く その場から去っていく。だが、恭也はその男を追うよりも爆弾を拾い上げ、懐に抱えてその場から駆け出す。

「恭ちゃん!?」

「恭也!?」

美由希と美沙斗の驚きの声が 響くが……恭也は構うことなくその場から全速力で去っていく。

この爆弾の威力がどれ程かは 解からないが、なんとしてもこの場での爆発は阻止しなければならない。

ようやく蟠りが解け、和解し た美由希と美沙斗……そして、今ホールで歌うフィアッセ達のためにも……これは防がねばならない…自身の命と引き換えにしても………

ホールから飛び出した恭也は 懐に爆弾を抱え込む…自分の身体でどれだけ弱められるかはたかが知れているが……それでもこれだけ離れれば、少なくとも死人は自分独りで済む。

ホールの外に拡がる夜空…… それを見上げながら、恭也は自嘲気味な笑みを浮かべる。

(これでいい………これで… 少なくとも…今度は護れたんだ………父さん…今、そっちにいくよ)

悔いがないと言ったら嘘にな るが…少なくとも後悔はない………自分の手で…今度こそ護れたものがあるのだから………

美由希はもう自分の助けは要 らない……母親がいる……そして…家族がいる………

(さよなら……皆………)

内にそう呟いた瞬間……爆弾 が閃光を発し……だが、それと同時に恭也の内ポケットから蒼白い閃光がこもれた。

「………っ!?」

眼を見開く恭也……だが…そ れを知覚するより早く……爆発の熱が感覚を襲い…それと同時に不思議な感覚に包まれた。

爆発した恭也の身体ごと…… 蒼白い閃光が覆い………次の瞬間……恭也の姿はもう存在していなかった…………

ただ風だけが……静かに吹き 荒れていた……………

 

 

 

 

―――――感じる………この 気配………誰かが干渉している…………

―――――Yes. Our Master.....

 

虚無の漂う空間に光が満ち る。

円形にに覆われたデルタの陣 が展開され……その光は2つに分かれ、2つの魔法陣の中心に突如現われる蒼白い閃光………

蒼白い閃光と……魔法陣が干 渉する………

エネルギーの共鳴………そし て……二つの魔法陣の中心に光が満ち…やがてそれが形作られていく…………

片方の魔法陣からは……二振 りの小太刀の形状をしたもの…………そして…もう片方から……光の鳥を模すような閃光が発せられるも、それはやがて人の形態を取り……銀色に輝く髪……そ してスラリと伸びた長身の女性へと変貌する………

魔法陣の上に立つ銀髪の女 性……その眼が…ゆっくりと開かれる………数度瞬き、開かれた瞳は……真紅の宝石のような輝きを放っていた………

女性はそのまま蒼白い光へと 腕を翳す……そして…蒼白い閃光はやがて人の形となる……女性の腕のなかに収まり、光が拡散する。

その下から現れたのは……黒 髪の少年………眠る少年に向けて…女性が微笑む。

 

―――――ようやく……お逢 いできました………我々の……マスター………

 

静かに呟き…女性が少年を抱 き締め……そして……魔法陣がより大きく拡がり…そのなかへと彼らを誘う………

 

――――――我らが命…永劫 にマスターのもの……………

―――――Awake.Infinity......

 

 

次の瞬間………魔法陣のなか に全ては消えた…………

これが……出逢い……………

運命に導かれし……そして… 運命によって選ばれし彼らの…………始まり…………

 

 

 

 

 

 

それは…あり得なかった邂逅………

刻の流れのなかで起こる出逢いの一 つ………

紡がれる出逢いが別の物語を作り出しま す……

 

 

「俺は…恭……不破恭だ」

 

 

「貴方は…誰?」

 

 

「必要とされていないのかもしれない… でも私は……」

 

 

「うち、あんたと初めて逢った気せえへ んわ」

 

 

「我らが魂…未来永劫……マスターの僕 です……」

 

 

 

運命が変わります……それは新たなる未 来へ………

 

私は出逢います……黒い剣士に………

そして…それによって紡がれる物 語…………

 

 

 

魔法少女リリカルなのは THE MAGIC KNIGHT OF DARKNESS

始まります……

 

 

 

 

 

 

To Act.01 Awake 〜黒衣の剣士〜

 


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