魔法少女リリカルなのは

THE MAGIC KNIGHT OF DARKNESS

Act.01   Awake 〜黒衣の剣士〜

 

 

 

(どこだ……俺は…死んだの か…………)

ハッキリと知覚できない闇の なか……恭也は夢見心地のままの表情で意識を彷徨わせる。

その刻……恭也の視界に現わ れる蒼く輝く宝石………

(アレは……あの時に拾っ た……)

そう……それは恭也に見覚え があったもの……コンサートホールの警備時…ちょうど美沙斗が侵入する少し前に見つけた蒼い宝石……コンサートホールを訪れた誰かが落とした物と思い、懐 に入れてそのままあの戦闘に突入した………

だが……何故、その宝石が自 分の眼の前で浮かんでいるのか……………微かな意識のなか…ボウッと見据える恭也の前で………宝石が突如輝き出す………恭也の視界に飛び込んでくる光 景…………

それは……どこかの風 景………そのなかに現われる影………それは…恭也にとっては眼を疑うもの……SFやアニメにしか登場しないような怪物………

その怪物の前に飛び込んでく る白い人影……その姿を確認した瞬間、これまでまともに動いていなかった恭也の思考が動き始めた。

(なのは……っ!?)

光景のなかに映る怪物と戦う 白い服装に身を纏った少女は…間違いなく恭也の妹であるなのは……だが、そのなのはは手に杖のようなものを構え…そして、先端の赤い宝玉が輝き……そこか ら放たれる閃光………

閃光が異形の怪物を貫き…そ して……怪物の姿が消え……その後から浮かび上がる蒼い輝き………

(……っ)

恭也はまたしても息を呑 む……映像のなかに浮かび上がっている宝石は…今、自分の眼の前にあるものとまったく同じもの…………

その宝石を、なのはが手に取 り、安堵の笑みを浮かべている。

その光景に冷静を誇る恭也の 頭も半ばパンクし掛けている……妹がなにか漫画に登場するような魔法使いのごとく戦っている光景……混乱するなという方が無理であった。

その困惑する恭也の前で…… 浮かぶ宝石が突如発光し始め……恭也はそれを見やり…そして、映像の向こう側でも同じようになのはの手に持っている宝石が輝いている。

まるで、共鳴するかのごと く…………

刹那……宝石が一際眩い閃光 を発し……恭也の意識はそのなかに吸い込まれるように消えていく………

身体を熱が駆け巡る……まる で……内に何かが流れ込んでくるような………脳裏に…鳥を思わせる影と小太刀のような影が浮かび上がる。

(な、何だ……っ?)

突如浮かぶ光景に戸惑う恭 也……その刻……恭也は声を聞いた………いや…耳で聞いたというよりも直接頭に響いたような感覚………

 

――――――我らが命…永劫 にマスターのもの……………

―――――Awake.Infinity......

 

響く言葉に恭也はさらに混乱 する。

(マスター……?)

何のことかさっぱり解からな い……だが……それに逡巡する間もなく………恭也の意識はその熱と光のなかに呑み込まれていった………

 

 

 

 

夜の静寂が覆う森のな か………突如、蒼白い閃光が浮かび……それがやがてどんどん形作られ…人型を成す。

完全な人型を成すと…粒子が 周囲に拡散し、その後からは一人の少年が現われ…その場に倒れ込む。

「うっ……ぐっ」

少年はやや苦しげに身じろぎ した後……身体を起こす。

「ここは……俺は…生きて… いるのか………?」

呆然とする頭のなか……立ち 上がる少年の眼に飛び込んできたのは、薄っすらとする森の木々……そして…ぼんやりと佇み…自分が生きていることを自覚する。

「助かった…のか……あの爆 発で………」

少年は記憶を巡らせる……確 か…爆弾を抱えて…その後、爆弾で吹き飛ばされたはずだが…と……少年は感覚を確認するように己の手を見やり…眉を寄せた。

「うん? 俺の手…なにか小 さいな…それに……妙に視線が低い………」

自分は結構長身な方だ……な のに周囲に聳える木々は自分よりも果てしなく高く見える。それにこの手…妙に違和感を憶えながら、身体を触る……そして…自分の身体が妙に小さいのに気づ いた。

「なっ……なんだ、これ は!?」

自分の身体が小さくなってい ると……気づいた少年:高町恭也は驚きの声を上げる。

明らかにおかしい……ハッキ リとは解からないが…自分の身体が小さくなっている。いったいなにがどうなっているのか……混乱の極みに達しようとしていた恭也だったが…その時、胸元の ポケットから何かが零れ落ちた………

地面に転がったそれは……蒼 い宝石………それを拾い上げながら…恭也は半ば虚ろだった記憶が甦る。

闇のなかで見たなのはが戦う 光景……そのなかにも出てきたこの宝石………

(アレは確かになのはだっ た……それに俺のこの身体………いったい、どうなっているんだ……それよりも、ここは……)

答が出ないことは多々ある が……まずは自分の現在の状況を確認しようとした。

見渡す限りの森だが……深い 樹海というわけではなさそうだ…すぐ近くから車の音が響いてくる。

それを頼りに森のなかを歩 き……やがて抜けた恭也の視界にはネオンに彩られる街並みが見えてきた。

「街か…しかし、この姿では 補導されかねんし………」

なにより、ここが何処かハッ キリしない以上、動き回るのは得策ではない。

「仕方ない…取り敢えずはこ こで夜を明かすしかないか………」

あまりにいろいろあり過ぎ て、思考がまともに働かない……それに、なにか身体が酷く疲労を訴えている。ここは野宿して、朝になってから行動した方がいいだろう。

近くで休める場所はないかと 見渡そうとした瞬間……右手に持つ宝石が突如、光を放ち始めた。

「何だ……っ!?」

突然のことに逡巡するより早 く……恭也は感じ取った殺気に身を捻った。

小さくなってはいたが、どう やら反応は鈍っていなかったらしい……跳躍してかわし、振り向いた恭也は眼を見開いた。

そこに佇んでいたのは……黒 ずんだ巨大な狼のような生物………

「な、なんだこれは……」

あまりに現実味のない光景に 恭也は呆然となるが……それより早く狼が腕を振るい、爪が襲い掛かる。

「くっ!」

なんとか寸ででかわした が……服が切り裂かれている。

「くそっ、素手じゃ分が悪 い……っ」

愛刀の小太刀は愚か、携帯し ていた暗器類もない…今の恭也は武器もない少年でしかない。

だが、狼は容赦なく襲い掛か る……歯噛みする恭也……その刻…脳裏に声が響いた。

 

―――――Call Me. Master......My Name.........

 

響いてきたのは……聞き覚え があるもの………恭也は無意識に……叫んだ。

「インフィニティ……っ!」

 

―――――recognition.Infinity Satnd By Ready.Set Up.

 

恭也の首筋に掛かっていたペ ンダントの先端の十字架が突如光を発し……その十字架から解き放たれる二対の閃光が恭也の手の中に収まり、形を造る。

光が消え……恭也は自身の手 のなかに握られている二振りの小太刀に眼を見開く。

「これは……っ!?」

今まで自分が使っていた小太 刀とまったく違う形状……刀身がなく、柄の部分だけだが…その柄も通常より長い………銀に輝くその柄………そして、その鍔部分に輝く黒曜石のような宝石… それが光り輝く。

 

―――――My Name Infinty Device.Masters Sword.

 

「インフィニティ……俺の 剣…………っ」

呆然としていた恭也は敵の存 在を一瞬忘れ、注意が逸れていた……唸り上げる狼…噛み付きかかろうとするも、突如割り込んだ影が恭也を抱え、飛び立つ。

目標を逃した狼の牙が大地を 抉る。

そして……恭也は自分が抱き かかえられていることに気づき…その相手を見やり、息を呑む。

銀色に靡く髪……吸い込まれ そうな真紅の宝石のような輝きを放つ瞳………

「大丈夫ですか、マス ター?」

恭也に振り向いた女性は、優 しげに微笑んだ。

「君は………」

「私はティア……貴方を護る もの………」

静かに呟き……ティアと名 乗った女性は着地すると、恭也を降ろす。だが、そこへ向けて爪を振り上げた狼が襲い掛かるも……ティアは視線を鋭くし…腕を振り上げる。

その腕の先に魔法陣のような ものが形成され、魔法陣から鎖が解き放たれ……狼の身体に纏わり付き、動きを拘束する。

「マスター…バトルジャケッ トを!」

「……?」

ティアの言葉に恭也は困惑す る。だが、それを察して今一度ティアは叫ぶ。

「両手のデバイスを掲げ、バ トルジャケットと叫んでください!」

必死な物言いに……恭也は意 を決して両手の小太刀を掲げ………そして叫び上げた。

「バトルジャケット!」

 

―――――All Right.Battle Jacket Set Up.

 

恭也の言葉に呼応し……両手 の小太刀が光を発し、恭也を包んでいく。眼を見開く恭也だったが、光が消え去った瞬間……恭也は漆黒のズボンにアンダースーツ…そして肩にアーマーのよう なプロテクターを装着した漆黒のメタルジャケットを纏っていた。

自分の姿に呆気に取られてい た恭也だったが……両手の小太刀から声が響く。

 

―――――Master.Command, please.

 

命令をと発する小太刀に恭也 はやり方が解からず戸惑うが……内心に呟く。

(刃が欲しい……っ)

その恭也の意図を察したよう に……小太刀が光を発する。

 

―――――Yes.Saiver Mode.

 

刹那……小太刀の刀身に光の 刃が形成される。

息を呑む恭也……だが、それ を確認するや否や……鎖に縛られている狼に向けて駆け出す。

跳躍するイメージを浮かべた 瞬間……身体が羽のように舞い上がった。

そして…光の刃を……狼に向 けて叩きつけた。

次の瞬間……光が黒ずんだ身 体へと衝撃を走らせ………狼は声を張り上げる。狼の身体から……何かが放出された。

「アレは……」

着地した恭也は、その浮かび 上がったものに眼を見開く。

浮かび上がったのは……自分 の懐に持つ宝石と同じもの………ティアが叫ぶ。

「マスター、封印を!」

「あ、ああ……封印!」

半ば反射的に声を上げ……小 太刀を振った瞬間、小太刀の柄の部分が動き、弾丸の薬莢のようなものが弾き出された。

恭也の足元に……デルタに囲 まれた円陣の魔法陣が形成される。

 

―――――Yes.Sealing Receipt Number ]]X

 

光の刃が伸び……捕獲されて いる狼に衝撃波が貫通する。刹那、狼の身体が砕けるように消え…その後には小さな一匹の犬と……その上に浮かぶ蒼い宝石のみ………

そして…その蒼い宝石はまる で意志を持っているかのように恭也の手に収まる。

もう驚きを通り越して半ば現 実逃避をしそうなぐらい、恭也にとっては非現実的な光景の連続だった………だが、それでもなんとか正気を保っていられるのはやはりある程度の耐性があった からだろう。

声が出ない恭也に向かっ て……ティアは跪き、頭を下げる。

「お見事です……マス ター……」

声を掛けられ、ようやく恭也 は我に返り…咳き込まんばかりの勢いで問い掛ける。

「いったい、君は何者なん だ…いや、それ以前にここは………俺は…いったい……」

「貴方様は、我が主……我ら を眠りより目醒めさせし主…………私の名はティア……そして…マスターの手に収まるのは、マスターの剣……インフィニティ………」

静かに答えるティア……そし て、それに呼応して恭也の手のなかのインフィニティと呼ばれた小太刀も答え返す。

 

―――――Yes.My Mater.

 

「そして…………我ら、未来 永劫…貴方様の守護騎士……………」

ぎこちないながらも微笑む ティア……恭也はその笑顔を呆然と見入る………

風が吹き荒れる……それは… 運命の始まりの風…………

 

 

数奇な運命を辿りし恭也 と……ティア、インフィニティ………彼女らは邂逅した………

 

 

 

 

 

 

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【次回予告】

 

それはいつもと変わらない 朝……でも…新たな出逢いの予感………

夢のなかで出逢った黒い剣 士………

 

そして…私達は出逢いま す……それは、新たなる物語のプレリュード…………

 

次回、魔法少女リリカルなの は THE MAGIC KNIGHT OF DARKNESS

Contact 〜出逢い〜」

ドライブ……イグニッション


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