注)このエンディングは、掲載した前後半の読者の皆様の投票によって決まったもの です。

 

 

 

 

 

円盤皇女ワるきゅーレ  十二月の夜想曲

特別編第二章   時を越えた願い

 

 

激闘の戦いが繰り広げら れ……それから一週間後………

羽衣町の郊外に存在するユリ アーヌがシスターを務める教会があった。

その教会では、今日行われる ウェディング・エンゲージの広告用写真のために準備に追われていた。

まあ、撮影ということもあっ て人は少ないが……教会の正面ドアから引かれた赤いバージンロードの周囲では、撮影用の機器を用意する猫耳侍女部隊……メームが指示したらしいが、メーム は今回用事で欠席らしい。

それらを横眼でやや悔しそう に見詰めるのは、今回の敗者達……ワルキューレ、リカ、秋菜、ライネ、コーラスの5名だ………

コーラスとライネはビリを 競ってしまった。秋菜は後半の料理のポイントが高かったものの、前半の歌の失点をカバーできず、4位に甘んじてしまった。リカは意外な奮戦を見せるも、総 合的に3位。そして、ワルキューレはまさに互角の接戦だった。

料理の品目で同点は得るも、 その前の歌の品目でのポイントの差で、惜しくも2位になってしまい、やや落ち込み気味だった。

まあ、自分の想い人が形だけ とはいえ、他の女性と結婚式を行うというのは気分が良いものではない。

そんなドヨーッとした暗い雰 囲気が漂う一画とは裏腹に、教会の中の控え室では………

 

 

白いタキシードを着込んだ和 人が、緊張気味に困惑していた。

未遂になったが、以前にも一 度、ヴァルハラ星で似たような状況になった和人もやはり、こういった格好には慣れていないらしく、表情が引き攣っている。

「あの……やっぱり、僕はこ ういう格好は………」

「別にそんな謙遜することな いわよ、番台さん……凄く似合ってるわよ」

戸惑う和人にユリアーヌはニ コニコ顔で答える。

和人は、頭痛を憶えながらも 渋々反論を止め、軽く溜め息をついた。

「ほらほら……これから結婚 式をする新郎なのに…そんな暗い顔してちゃダメよ」

「でもこれって、ただの広告 用のモデルじゃ……」

「あら? それでも形だけは ちゃんとやるんだし……」

まあ、指輪の交換や誓いの口 付けは流石にしないが……それでも、これから新しい門出を迎えるという二人の姿を撮らねばならないのだ。

沈んだ顔でやられても困る。

「それよりも、そろそろ花嫁 の衣装合わせも終わるから……ほら、来て」

「うわっ!」

グイッと腕を引っ張られ、和 人はそのまま新婦の控え室の前へと案内される。

教会の別室にある木造の大き な扉……

「ほら、入って入って」

ユリアーヌが促すと、和人は 緊張した面持ちで扉をノックする。

「どうぞ」

中から透き通ったような声が 響き、和人が恐る恐るドアを開けると………次の瞬間、思わず眼を見開いて呆然となった。

部屋の中には、椅子に腰掛け る今回の花嫁役を務めるゴーストの姿……

だが、いつもの黒いコートで はなく、ワルキューレと同じ純白のウェディングドレスに身を包み、頭から薄っすらとしたヴェールを被り、その手にはブーケが握られている。

「和人さん……似合います か?」

薄く化粧が施された表情の頬 をやや赤く染め、躊躇いがちに尋ねる。

「あ、その………よく、似 合ってると思うよ………」

上擦った声でなんとか答え返 す……ぎこちないその態度にユリアーヌはやや呆れたように失笑を浮かべ、ゴーストは微笑を浮かべて眼を伏せた。

今更ながらだが、ゴーストは 憧れのワルキューレと瓜二つの容姿だけに、流石の和人も照れているのか、無言のまま俯いてしまう。

「ほら、番台さん、しっかり しなさい! 花嫁をエスコートしないと…」

そんな和人の背中を叩き、ユ リアーヌが急かすと、和人はぎこちない動きでゴーストに近付く。

ゴーストはどこか、潤んだ瞳 でその手をゆっくりと上げ、和人がそれを引く。

その姿は、まるで姫の手を取 る騎士のようだ。

そのまま立ち上がると、ゴー ストはそのまま腕を和人の腕に絡ませる。

強く腕を抱き締め、ゴースト は身を預ける。

「嬉しいです……和人さ ん………たとえ形だけでも………貴方と結ばれて」

切ない響きが混じる声……和 人もドギマギする心を抑え、なんとか平常を保つ。

「その……僕が相手なんかで よかった………?」

「……和人様だから、私は嬉 しいんです……もう、永遠にこんな刻がこないと思っていましたから………」

瞳が不安げに揺れ、握り締め る力が強まる。

永い刻に渡って時のブリザー ドを封じ続けたゴーストを生み出した4人のヴァルハラ皇女達の想い……

誰かを好きになることも…誰 かを心から愛することも……そして、愛する人と過ごす時間さえ奪われた哀しい想い……それが今なお、ゴーストの中で渦巻いている。

だからこそ……離したくはな かった………この温もりを………

そんな切なげなゴーストの表 情から、和人もやや傷ましげな表情を浮かべたが、やがて吹っ切ったように明るく話し掛けた。

「さぁ、いこう!」

「……はいっ」

その瞬間、ゴーストの顔が太 陽のように明るく輝いた。

 

 

教会の鐘が鳴り、侍女部隊が 紙吹雪を舞わせる中………教会の入口から、腕を組んだ和人とゴーストが現われる。

和人は緊張気味だが、ゴース トの方はいかにも待ち焦がれた幸せを得た花嫁の表情そのものであり、その姿に権利を得られなかった者達は悔しげに見詰めるだけである。

特にワルキューレは頬を軽く 膨らませるような勢いだ。

二人はそのままバージンロー ドを歩き……最高の瞬間を収めようとユリアーヌがカメラを構えて見守る。

バージンロードの中間まで来 ると、ゴーストは最高の笑顔を浮かべ、ブーケを投げた。

宙を舞うブーケ……それに向 かって走る今回、権利を得られなかった一同………

本番では、絶対にその隣で微 笑むことを胸に誓って……

その姿を和人は苦笑混じり に……ゴーストは穏やかな笑みを浮かべて見詰める。

「やっぱり……貴方はそうい う風に笑った方がいいですよ」

哀しい業を携えた憂いのある 表情ではなく、心から笑う表情……それは、ワルキューレとも違った美しさがある。

「……ありがとう……和 人……」

そのまま頭を和人の肩に預 け、二人はそのまま佇むのであった………

 

 

 

【おまけ】

後日……この日撮られた写真 が広告となって羽衣町の全域に貼られた。

和人の腕を取り、ブーケを投 げるゴーストの姿が映った写真を貼られた広告………

恋人との幸せを噛み締めるそ の表情に、羽衣町の女の子が憧れ、ユリアーヌの件はうまくいったものの………

たとえ演技とはいえ、これで はまるで公に恋人であることを表明しているような事態に、和人の周囲はまた騒がしくなる………

振り回される和人を眺めなが ら、ゴーストは穏やかな笑みを浮かべてその写真を眺めるのであった………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【後書き】

突発的に始めたワるきゅーレ の小説……今回は、皆様に投票していただいた結果、ワルキューレ・ゴーストのエンディングを書かせてもらいました。

流石に、全員のエンディング を書くのは無理だったので……皆様に投票でエンディングを決めてもらおうと、今回は投票という新しい試みをやってみました。

協力してくれた管理人の堕天 使には、ホントに多謝(^^

今回のSSは、企画から皆様 の意見を反映させた読者参加型にしてみました……自分が望むのは、感想よろしくお願いします……来ないと、次に書く気力が沸かないもので……(ダメな奴だ な………)

感想と要望の量によっては、 別のキャラのエンディングも検討しますので、なにとぞよろしくお願いします。

ではでは……SEEDの方も よろしく…風の聖痕の方は最近、全然ですが………



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