爆煙の中から地上に姿を現すジェ ミナス02。カガリの乗る機体であった。

「地表に出たのか!?」

モニターに移るコロニー内部。カ ガリは周囲を確認する。

「あれは・・・・・・・地球軍のMS!? それにもう一機、あれ はオーブのか?」

見慣れないMSの数々。四機のMSはそれぞれに対峙していた。

『おい、誰が二号機に乗ってい る!?』

「うわっ!? 誰だ、お前!?」

いきなり通信がつながり、それに 驚くカガリ。通信をつないだのはカナードだった。彼にしてみれば、自爆させたと思っていた機体が現れたのだ。驚くのも無理はない。

『お前、関係者じゃないな? な ぜその機体に乗っている!?』

「わ、私だって好きで乗ったん じゃない! これはその、成り行きで・・・・・・・・」

『チャンスってか!』

カナードとカガリが会話している 隙をつき、ラスティのストライクルージュがカナードのアスクレピオスに襲い掛かる。

『くっ! 邪魔だぁっ!』

ビームサーベルとアーマーシュナ イダーがぶつかり合う。だがその勝敗は見えていた。ビームサーベルに切り裂かれる。

『やっぱ無理!? これって物凄 くまずいかも!』

『ラスティ! いったん後退す る! このままここで戦っても被害が大きくなるだけだ! それにバッテリーも長くは持たないぞ!』

『ってもよ、アスラン! あいつ が見逃してくれるか?』

敵意をむき出しにする相手だ。見 逃してくれるとは到底思えない。

『僕があいつをひきつける。その 間にアスランとラスティは撤退して!』

『キラ!? 何を言ってるんだ!  いくらお前でもその装備じゃ無理だ!』

キラの言葉にアスランが声を荒げ て制止する。いくらキラがザフト軍でも指折りのパイロットでも装備が違いすぎる。ナイフ一本とバルカンだけで勝てる相手ではない。

『でも誰かが足止めしないと逃げ られない! だから二人は先に行って!』

『んな無謀なことを俺らがやらせ ると思ってんの? それじゃあ他のやつに合わせる顔がないっしょ?』

『ラスティ・・・・・・・』

『ラスティの言うとおりだ。キ ラ。俺はお前を見捨てない。絶対にな! 全員で帰るぞ!』

「アスラン・・・・・・・・う ん!」

力強く返事をするキラ。それにあ わせるように二人もモニター越しに顔を見合わせる。彼らに迷いは無い。みんなで帰ると約束したから。

『うっし! じゃあ行くか!』

『ああ!』

『うん!』

三機は陣形を取りアスクレピオス を追い込もうとする。

『ちっ、話は後だ! 今は目の前 の敵が先だ。お前は動くなよ!』

「えっ? えっ?」

パニックになりかけるカガリを尻 目に、彼らの戦いは白熱していく。イージスは両腕に装備されたビームサーベルを振るい、アスクレピオスのビームサーベルを受け止める。

その攻防の隙を付いて、左右から キラとラスティのストライクとストライクルージュが襲い掛かる。

『いくら装甲が強固でも!』

『関節なんかの駆動系を狙ってや れば!』

『ちっ! 鬱陶しい!』

息のあったコンビネーションにカ ナードは苦戦する。アスクレピオスはイージスよりも性能は上だろうが、他にも注意を払わなければならない相手がいるため、そちらにも意識を向けなければな らない。かなり不利な状況であった。

『邪魔だ!』

『させるか!』

アスクレピオスとイージスのビー ムサーベルのぶつかり合いが、激しい火花を散らす。

「すごい・・・・・・・・」

そんなMS同士の戦闘をカガリはただ固 唾を呑んで見守っていた。四機のMS同士の戦いは誰も見たことの無いほどに高レベルだった。

そんな中、コックピット内に表示 されるいくつものモニターに映像が映る。

見慣れたヘリオポリスの無残な風 景と変わり果てている。炎が上がり、建物は崩壊している。またそんな中に動く人影を見た。

それは逃げ回る人々。その中に は・・・・・・・

「! サイ! トール! ミ リィ!」

モニターには瓦礫の中を逃げる友 人達の映像が映し出されていた。

彼らはMS同士の戦闘に巻き込まれない ように必死で逃げていた。だがそれでも戦闘の余波はやってくる。MSが戦うたびに地面はゆれ、崩壊しかけていた建物が崩れていく。

恐怖に脅える友人達の姿。

「!!」

カガリは眼を見開き、目の前で戦 い続けているMS達を睨む。

「お前らやめろ! ここにはまだ 人がいるんだぞ!」

カガリは力の限り叫ぶ。だがそれ が聞き入れられるはずも無い。

「くそっ! お前らぁっ!」

ペダルを拭かせ、機体を動かす。 自分が何とかしなければ。考えるより先に身体が動いた。アクセルを踏み、機体を前方に動かす。

逃げている友人をかばうように。 彼らのほうにMSがこれ以上行かな行かないように。

「「「「!?」」」」

そのジェミナスの動きに驚愕した 四機は、何とか後方に飛び退く。

「こんなコロニーの中で、戦闘を するなぁっ!」

叫びとともにジェミナスは拳をス トライクルージュに叩き込む。

『うわっ!?』

殴りつけられたストライクルー ジュはそのまま大きく倒れこむ。

『ラスティ!』

『このっ!』

アスランは機体を動かし、そのま まジャミナスへと突進していく。

「何か武器は!?」

『ピピピ、ビームライフルとバル カン。背中にビームサーベルが二本!』

ハロが情報を機体から読み取っ て、カガリに知らせる。それを聞いた彼女は迷うことなく背中のビームサーベルを抜く。

「これ以上、コロニーの中で好き 勝手やらせないぞ!」

『!?』

アスランは通信機越しに敵の機体 のパイロットと思われる声を聞いた。どうやら回線が開かれていたようだ。

だがそんなことよりも驚いたの は、その声だ。その声は先ほど不本意な再会を果たしたカガリのものだったのだから。

『お前、カガリか!?』

「! アスラン!?」

カガリのコックピットにも無線の 声が響く。

『やっぱり、やっぱり君だったの か?』

「アスラン! 何でお前がそんな ものに! それになんでヘリオポリスを!」

『君こそなんでそんなものに乗っ ている! まさか地球軍にでも入ったのか!?』

「違う! 私は!」

『カガリ! 横!』

「!?」

ハロの言葉にとっさにモニターを 見る。そこには迫り来るストライクルージュが映っていた。

『アスラン! よそ見してっと危 ないって!』

ストライクルージュの攻撃がジェ ミナスを襲う。

『やめろ! ラスティ!』

『へっ!? 何で俺が怒鳴られる の!?』

事情を知らないラスティは、アス ランになぜ怒鳴られたのかわからず困惑している

『どこを見ている! お前達の相 手はこの俺だ!』

『こいつ! まだ!』

再び激突しあうカナードのアスク レピオスと、キラのストライク。

『キラッ! ああっ、もう! な んでこう厄介ごとばかり!』

悪態をつきながらもキラの援護に 向かうラスティ。しかし武装のほとんど無いこの二機ではアスクレピオスの相手は難しい。

『そろそろ消えろ!』

『って、あんたもしつこいな!  しつこい奴は嫌われるっしょ!』

ラスティも巻き込んだ戦いが再発 した。だがそんな中、アスランのイージスとカガリのジェミナスはただ呆然とにらみ合うだけだった。

 

 

 

 

「なんなんだよ、あれ!?」

トールやミリィは必死で逃げ回っ ていた。突如出現したMS達から。崩れ落ちる瓦礫の山。崩壊する建物。迫り来るMS

「そんなこと俺にもわからない よ! けど走るんだ!」

最年長のサイが他の三人を誘導す る。だが人の何倍もある巨体のMSから逃げるのは至難の業だ。その歩幅もどれだけの差があるのか。

「う、うわっ!」

「きゃっ!」

と、そんな時カズイが道端に落ち ていた石に躓いてしまった。さらにその後ろを走っていたミリィも、カズイに足を取られ転倒してしまう。

「ミリィ! カズイ!」

二人が倒れたのに気が付いたサイ とトールは二人の下に走ろうとする。だがそれよりも前に、瓦礫が崩れてきた。

それはちょうど二人に向かい落下 してきていた。タイミング的に間に合わない。

「ミリィ!」

「カズイ!」

トールとサイは叫ぶ。

「う、うわぁっ!」

「きゃぁぁぁぁぁ!!!!」

倒れる二人も迫り来る瓦礫を見て 恐怖に身を縮こませる。だが二人に迫る一つの影があった。それは倒れている二人の下につくと、彼らを抱え上げすぐにその場から走り抜けた。

「・・・・・・・・大丈夫で す?」

「あっ、はい・・・・・・・」

問いかけられた言葉にミリィは少 し放心しながらも答える。彼女を脇に抱えていたのは一人の金髪の女性だった。少しウェーブの巻いた長い金髪を背中まで伸ばした女性。整った顔立ちで、男な らまず間違いなく振り向くと言うほどの美貌だった。

「ここは危ないです。すぐにここ から離れましょう」

女性はそう言うと二人を抱えたま ま、サイとトールを従えてその場から走り去った。

 

 

 

 

その頃…ドックに面した司令ブー スへと飛び込んだナタルはその惨状に言葉をなくしていた。

爆発によって正面のガラスは砕け 散り、僅かに点灯する非常灯のみが薄暗い部屋を照らす。

だが、動く者などなにもない。

散らばる瓦礫の間にはブースにい た士官や兵士達の制服が無残に漂い、その前方に艦長の遺体を見つける。

「誰か…生き残っている者はいな いのか!?」

ナタルの悲痛な叫びに応えるもの はいない。

その時、別方向のドアが壊され、 そこから一人の人物がライトを片手に入ってきた。

「バジルール少尉!ご無事でした か?」

ライトに照らされたナタルは眼を 覆いながら相手を確認する。

ライトを片手に寄ってきたのは アーノルド=ノイマン曹長であった。

 

 

 

 

戦場に信号弾が打ち上げられる。 信号弾に応じてジンが後退していく。それは後退の合図だった。

「引き上げる?」

ムウはその行動に疑問を浮かべ る。この状況で撤退とは向こうの意図が読めない。しかしすぐに違った思考が流れ込んでくる。

「いや…まだ何か……これは!」

何かに気付いたムウは態勢を立て 直すべくゼロを発進させる。

そして…ヴェサリウスから発進す る一機のMS。ザフトの指揮官機である白く塗装されたシグーだ。そのコックピットにはクルーゼの姿があった。

「私がお前を感じるように…お前 も私を感じるのか…不幸な宿縁だな…ムウ=ラ=フラガ」

憎悪と奇妙な笑みを浮かべ呟くと 共に、一路、ヘリオポリスへと向かうのであった……

 

 

 

 

 

コロニー周辺を慎重に気を払いな がら動くゼロ。コックピットのムウの額にも汗が流れる。

「!!」

その時、敵意を感じる。眼を向け た方向には…コロニーの影に隠れていたシグーがライフルを放ってきた。それを急加速してよけながらムウは相手を感じ取る。

「貴様…ラウ=ル=クルーゼ か!!」

これまで何度も戦場で渡り合って きた宿敵。

だが…何故か、ムウはその存在を 感じ取れる……五感よりも深い場所で感じる相手の気配。

シグーに回り込み、ガンバレルを 展開するが、シグーは悠々とかわす。

「お前は何時でも邪魔だな、ムウ =ラ=フラガ! もっともお前にも私がご同様かな!!」

皮肉げに呟き、クルーゼはシグー をヘリオポリス内へと向ける。

「くっ、奴め! ヘリオポリスの 中に!!」

舌打ちをしながらムウもその後を 追ってヘリオポリス内に突入する。

 

 

 

 

爆発に巻き込まれ、斜めに傾いた アークエンジェル……

アークエンジェルのブリッジにて ナタルとノイマンの姿があった。

「無事だったのは…艦にいた数名 のみです。もっとも、全員が工員ですが…」

悔しげに呟くノイマン。

「状況は…ザフト艦はどうなって いる?」

「解かりません…私共も、周辺の 状況を確認すのが精一杯で……」

ナタルは無言でアークエンジェル のシステムを起動させる。

ブリッジ内に光が灯り、艦の状態 を示す画面が表示される。

レッドシグナルが点灯しているの はほんの数ヶ所で、さして重大な被害はなかった。

伊達に地球軍の新造戦艦ではな い。その強度は今までの戦艦とは比べ物にならないのだ。

「流石はアークエンジェル…これ しきのことで沈みはしないか」

「ですが…港口側は瓦礫が密集し てしまっています」

たとえ無事でも、閉じ込められて しまったことには変わりない。動けない船など何の意味も無い。新造戦艦といえども、それは同じだ。

ナタルは苦悶を浮かべながら通信 回線を開く。だが、回線にはノイズが走っていた。それはNジャマーの影響である。

「まだ、通信妨害が続いている… ということはこちらが陽動……」

そこでナタルはある考えに至る。

「ザフトの目的はモルゲンレーテ ということか!」

自ら辿り着いた結論に愕然した。

「くそ! あちらの状況は… 『G』はどうなったのだ! これでは何も解からん!!」

彼女は知らない。Gは全機奪取されたことを。この コロニーでオーブ軍の最新鋭機が戦闘を続けていることを。

 

 

 

 

 

アスクレピオスと二機のストライ クが戦闘を続ける中、カガリとアスランはお互いに秘匿回線で通信を続けていた。Nジャマーの影響下であっても、これだけの至近距離であれば通信も可能である。

「なんで、なんでアスランがこん なことを・・・・・・・! あの優しかったお前がなんで!」

吐き出すような思いでカガリは叫 ぶ。信じられなかった。三年前に離れ離れになった彼とこんな形で再会するなんて。

しかも優しかった彼がザフトの兵 士となり、このコロニーを襲撃しているなど、信じられなかった。信じたくなかった。

『・・・・・・状況もわからない 地球軍がこんなものを作るからだ! それに中立とか言っておいてその開発に協力したオーブも同罪だ! 俺はプラントを護るために戦っている!』

アスランの言葉にカガリは愕然と する。確かにオーブは中立と言いつつもこんな兵器の開発に着手していたのだ。ザフトから見れば敵同然である。

『戦争が長引けばそれだけ犠牲も 増える。それなのに地球軍は、オーブは、ナチュラルはまだ戦火を拡大したいのか!?』

「ち、違う! オーブはそん な・・・・・・・・」

『それになぜカガリがそんなもの に乗っているんだ! なぜ地球軍の味方をする!? やっぱり君もナチュラルだからか!?』

「違う! 私はそんなつもりは無 い! アスランと、ザフトと戦う気はわたしには・・・・」

そう、彼女がこの機体に乗ったの は偶然でしかない。カガリ自身、戦いたいと思って乗ったのではない。だがそんなことをアスランが気づくはずも無い。

『すぐにその機体から降りろ!  でなければ、俺が君を撃たなければならなくなる!』

「!」

『俺の任務はその機体の奪取、ま たは破壊だ! だから、すぐにその機体から・・・・・・』

だがアスランが言い終わる前に、 イージスに向かい攻撃が仕掛けられた。

『ふん、貴様がその機体を破壊す る前に破壊してやるさ!』

キラとラスティが押さえていたは ずのアスクレピオスが、いつの間にかイージスに牙をむく。

『くっ! キラ、ラスティ! 無 事か!』

『大丈夫! けどバッテリーがそ う長く保ちそうもないよ!』

『同じく! あと十分も保ちそう に無いみたいだ!』

彼らは長く戦いすぎた。それに武 装もエネルギーを搭載したバックパックも無い状況で、よくここまで粘ったものだ。

(これ以上の戦闘は無理 か・・・・・・)

アスランは冷静にそう判断する。 これ以上の戦いは無理だ。武装も乏しい二機ではこの相手は倒せない。

(しかしなぜ相手のMSはこんなにバッテリーが保つ んだ!?)

アスクレピオスのバッテリーはか なりの容量であった。オーブの開発した独自のバッテリーシステム。それにアスクレピオスはフェイズシフト装甲ではない。そのため被弾してもエネルギーを食 うことは無い。また常時システムを展開していないので、バッテリーの消費もない。

そこが勝敗の分かれ目でもあっ た。

(カガリのことだけでも気がかり だって言うのに、こんな奴の相手なんか!)

イージスとアスクレピオスのビー ムサーベルが激しくぶつかり合った。

 

 

 

 

 

それと時を同じくして、コロニー 内にではクルーゼのシグーとムウのメビウス・ゼロが攻防を繰り返した。クルーゼはコロニー内部にもかかわらずライフルを後方のゼロに向かって放つ。

「くっ! 正気か! こんな所 で!!」

舌打ちしながらかわすムウ。ゼロ はリニアガンで応戦するが、シグーはそれを易々とよけ、逸れた弾はコロニーを破壊する。シグーはコロニーの遮蔽物の影へと身を隠していく。

「この辺で消えてくれると嬉しい んだがね…ムウ!!」

遮蔽物を突破すると同時にライフ ルを放つ。

銃弾がゼロのガンバレルを貫き、 それに連動して数個のガンバレルも爆発するが、間一髪切り離しに成功し、ゼロは加速する。

 

 

 

 

 

アークエンジェルのブリッジにて 艦長シートに座るナタル。

「艦を発進させるなど…この人員 では無理です」

ノイマンは抗議するが、ナタルは 作業の手を止めず、逆に叱咤する。

「そんな事を言っている間に、ど うすればいいのかを考えろ。モルゲンレーテではまだ戦闘が続いているかもしれんのだぞ…それをここに篭って、見過ごせというのか!」

その言葉に口を噤む。同時にドア が開き、残りの人員が入ってくる。

ジャッキー=トノムラ伍長、ロメ ル=パル伍長、ダリダ=ロー=ラパ=チャンドラU世伍長。

「連れてまいりました」

「シートにつけ、コンピューター の指示通りにやればいい」

「はいっ!!」

3人は分かれ、それぞれのシート に着く。

「外にはまだ、ザフト艦がいま す…戦闘など、出来ませんよ」

「解かっている…艦起動と同時に 特装砲の発射準備…できるな、曹長?」

その言葉にノイマンは諦めたよう にシートに着く。

「発進シークエンス・スタート… 非常事態のため、プロセスC−30からL−21まで省略……主動力オンライン!!」

「出力上昇…定確まで……450 秒」

アークエンジェルにエネルギーが 伝わっていくが、元々エネルギー充電も十分にされていなかったため回るのが遅い。

「長すぎる!…ヘリオポリスとの コンジットの状況?」

状況を打破するため、ナタルは アークエンジェルとヘリオポリスとの接続ラインを確認する。

「あ……生きてます!」

「そこからパワーを貰え…コン ジット、オンライン!パワーをアキュムレーターに接続」

「接続を確認…ブロー正常、定確 まで……20秒!」

「生命維持装置異常なし」

「CICオンライン」

「武器システムオンライン… FCSコンタクト…地場チェンバー及びペレットディスペンサー……アイドリン正常」

「外装衝撃ダンパー、最大出力で フォールド!」

「主動力コンタクト…エンジン異 常なし。アークエンジェル全システムオンライン……発進準備完了!」

モニターに『AII OK  NETWORK』の文字が浮かび上がる。

「気密隔壁閉鎖…総員、衝撃及び 突発的な艦体の破壊に備えよ……微速前進、アークエンジェル発進!」

アークエンジェルのブースターノ ズルが展開し、そこから火が噴く。

そしてゆっくりとその白い機体を 発進させていくのだった……

 

 

 

未だ戦闘を繰り広げるゼロとシ グー。

残った最後のガンバレルを展開す るが、シグーは上から急降下し、ガンバレルを蹴り付ける。

それによってガンバレルは破壊さ れ、ゼロは残ったリニアガンで攻撃する。

しばらくすると視界が開けた。コ ロニーの内部。居住区が窺えるがそこはすでに破壊されていた。黒煙の立ち上る地区。そこにムウは、同じくクルーゼも視線を向ける。

そこでは数機のMSが戦闘を繰り返してきた。

「五機!? なんであんなに残っ てるんだ!?」

「ほう、あれが例の新型か」

ムウは驚きながらその光景を眺め る。クルーゼはムウの隙を付き、加速しながらそのMS郡に向かう。

「連合か、それともオーブか。そ の性能確かめさせてもらうぞ!」

クルーゼのシグーは標的をジェミ ナスに向けた。それに割ってはいるかのように、スラスターを吹かせてアスクレピオスは飛翔する。

「雑魚が!」

「早い!」

クルーゼもいきなりの相手の性能 に驚愕した。速さや反応速度など、どれをとっても向こうのほうが数段上だった。しかし機体の性能だけで勝敗が決まるのではない。

「機体の性能が勝敗を決めるので はないと言うことを教えてやろう」

クルーゼは不敵に笑いながら、強 化APS弾を装備したライフルを連射する。

「そんなものが効くか!」

弾は確かに命中した。だがアスク レピオスにダメージを与えられた様子はない。

「ちっ、強化APS弾でも無理 か・・・・・・」

舌打ちをしながら彼は迫り来る、 サーベルによる攻撃を必死で回避する。

「アスラン、ラスティ、キラ。君 達はこの隙に撤退したまえ」

自分に相手の攻撃が集中している 間に、クルーゼは部下に対して撤退の命令を出す。

『えっ、隊長!?』

『けどいくら隊長でも!』

『そうですよ!』

「反論は許さない。今ここで、君 達とその奪取した機体を失うわけにはいかないのだよ」

『ですが・・・・・・』

「アスラン。早くしたまえ。これ は、命令だ」

『・・・・・・・・・・了解しま した』

クルーゼの命令とあれば無視する わけには行かない。彼はモニター越しにちらりとカガリの乗るジェミナスを見る。

(カガリ・・・・・)

ギリッと悔しげに歯をこすり合わ せる。このまま彼女を放っておくなどできなかった。しかし軍人ならば命令は絶対である。苦悩しながらも、アスランは機体を操作する。

『・・・・・・・撤退する』

短くそう呟くと、彼はコロニーを 脱出すべく、スラスターを吹かせる。同時にキラとラスティもそれに続く。

『・・・・・・・アスラン』

『何も言うな、キラ。俺 は・・・・・』

通信をつなげてきたキラにアスラ ンは苦々しげに答える。もう一度会いたいと思っていた人との再会が、まさかこのような形で起こるとは、彼にも予想できなかった。

(カガリ・・・・・・・)

遠ざかる大地。そしてMS。アス ランは心の中で小さく呟くしかできなかった。

 

 

 

「ちっ、逃がすか・・・・・・」

撤退していく三機を忌々しげに見 つめるカナード。エネルギーも心もとなくなってきたものの、まだまだ戦闘は続行可能だ。

「だが先に貴様から片付ける!」

「確かに機体の性能は高い。それ にパイロットの腕も中々だ。しかしまだまだ甘い!」

クルーゼはカナードの攻撃をまる で先読みするかのように回避し続ける。猛々しい攻撃はそれだけで読みやすい。

歴戦のつわものであるクルーゼに してみれば、カナードの荒々しい攻撃はそれだけ読みやすいのだ。もっとも、これは近接兵器しかもたないからなのだが。

「その機体とそのパイロット、厄 介だ。ここで沈んでもらおう!」

「ふざけるな! 死ぬのは貴様 だ!」

二機は激しくぶつかり合う。そん な中、カガリは一人、ジャミナスのコックピットでその戦闘を見守るしかできなかった。

「くそ! どうすれ ば・・・・・・・・」

悪態をつく。無力で何もできない 自分に怒りさえ覚える。ビームライフルを構え、ロックをつけようとするが、高速戦闘中の二機では簡単に捕まえることはできない。

ドカァァァァァァンンンン ン!!!!

凄まじい爆発と共に壁は破壊され る。

「何!?」

その爆発に驚き、動きを止めるシ グー。

「なんだ、今のは!?」

カナードも同じように爆発のした 場所に視線を移す。

崩れ落ちた岩盤と立ち込める爆煙 の中から戦場に姿を現わす白い巨体……

カガリも爆煙の中から現れる謎の 物体に眼を向ける。

それは白き戦艦。

今まで見たことのない力強い存 在。

「うっ・・・・・・・あれは」

「!? 気が付いたのか!」

ジェミナスのコックピットの中 で、小さくうめき声をあげながら意識を取り戻す女性。

「・・・・・・・・・あれは、 アークエンジェル」

「アークエンジェル?」

女性の呟きを反復するかのように 呟くカガリ。

これが彼女達の運命を変えるもの だと、まだこの時、誰も知る由がなかった。

 


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