カナードは機体のモニターを起動 させる。そこにはオーブのマークが表示されている。

そして・・・・・・

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「さあ、はじめるぞ、アスクレピ オス! 俺達の初陣だ!」

カナードの言葉に反応するかのよ うに、アスクレピオスのアイモニターに光が灯る。

すべてが始まる。このコロニーか ら。

世界を巻き込む巨大な戦い が・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「ん?」

コロニー内部で破壊活動を続けて いたジン。連合の残存部隊を蹂躙し続ける。だが不意に工場区で爆発が起こりその中から何かが姿を現す。

「な、何だアレは!?」

未知の恐怖だったのかもしれな い。黒煙の中で光る一対の光。さらに不気味な威圧感。黒煙の中にいるであろう何かを警戒するジン。

この場には全部で三機のジンがい た。誰もがベテランのパイロットだ。そのうちの一機がその何かに発砲した。

黒鉛に吸い込まれていく銃弾。何 か金属にぶつかる音が響く。これで終わったと、ジンのパイロットは考えた。しかしそれは間違いだった。

それは銃を放ったジンに狙いを定 めた。そして・・・・・・・・・・一気に襲い掛かった!

「う、うわぁぁぁぁぁ!!!」

紫色の見慣れない機体。ジンと同 じ二足歩行なのだが、その頭部は人型ではなく、まるでカニを髣髴とさせるつくりをしており、モノアイだった。またその両手は鋭いクローを有していた。

謎の機体は頭部のモノアイを緑色 に点灯させると、バーニアを吹かせて一気にジンに向かい襲い掛かる。

その鋭い右のクローがジンの胴体 を突き抜ける。謎の機体はそれを確認するとすぐに右手を引き抜き、後ろに下がる。数秒のち、貫かれたジンは火花を散らし爆発した。

「なにっ!?」

「な、何なんだ、アレは!?」

残ったジンのパイロット達は驚愕 した。今まで無敵を誇っていたザフトのMS。それがいきなり現れた謎の機体になすすべもなく落とされたのだ。驚くなと言うほうが無 理である。

さらに付け加えれば、彼らに奪取 の命令が下っている地球軍の新型兵器とは明らかに形状が違っていた。そのことがさらに彼らを混乱させる。

「地球軍の新型が残っていたの か! それともこれがオーブの!? こっ、のぉっ!」

残ったジンの一機のパイロット ――黄昏の魔弾と名高いミゲル・アイマンは、その謎の機体に向けてマシンガンを連射する。これをまともに受ければ、かなりの大ダメージになる。

仮に自分達のジンが直撃を食らえ ば、確実に戦闘能力の大半を奪える威力だ。

そして攻撃は確かに命中した。だ が・・・・・・・・・・

「む、無傷だと!?」

相手の機体はまったくの無傷だっ た。モニターで確認する分には、傷ついた様子も見えない。

と、もう一機残っていたジンが サーベルを構えて相手に向かい襲い掛かる。敵は自分の方に集中している。完全に回避することはできないと思われた。

事実、サーベルは敵の機体に命中 した。否、相手は避けようともしなかったのだ。

「!?」

だが彼らを驚かしたのはそんなこ とではない。サーベルが一切のダメージを与えられなかったのだ。今まで連合のMAを幾度となく切り裂いてきた武器。

そのはずなのに目の前の敵には、 そんなサーベルがまったく歯が立たない。切り裂くどころか、操行に食い込ませることさえ出来ずにいた。

「どうなっている、こいつの装甲 は!?」

吐き捨てるように叫ぶミゲル。だ がそれで事態が好転するはずもない。そんな彼の叫びの間にも、切りかかっていたジンが敵のクローに貫かれ爆散した。

 

 

 

 

「実験結果は知っていたが、まさ かここまでの防御力があるとはな」

謎の機体―――アスクレピオスに 乗るカナードはコックピットの中で、薄く笑みを浮かべながら呟く。

アスクレピオスの装甲には、オー ブ極東領土の優秀な科学者が生成した特殊合金『ガンダニュウム合金』が用いられている。

地球軍が開発した移送転移システ ム――フェイズシフトとのように実弾攻撃を完全に防げるものではないが、それでも実弾や地球軍が新たに開発したビーム兵器においても高い耐久性を有する。 ジン程度のサーベルではビクともしないのだ。

「損傷率1%未満。MS同士の戦いの経験はあまりな いからな・・・・・・・・・・・せいぜい俺の練習相手にでもなってもらおうか!」

アスクレピオスは向かっていく。 最後のジンを破壊するために。

「くっ!」

ミゲルはすぐにジンを操作し敵を 迎え撃つ。だが性能が違いすぎる。ザフトの量産型兵器と試作型とは言え、幾度も改良を加えられたオーブの最新鋭機。パイロットの腕よりも機体性能に開きが ありすぎて勝負にすらならない。

「はっ!」

「くっ!」

ミゲルのジンは何とかアスクレピ オスの猛攻を受け流す。だが完全によけることなどできない。最初に左腕が、次にライフルを。時間が経つにつれ損耗は大きくなる。

(ちっ! 専用機さえあればこん なやつに!)

ミゲルは先の任務で破損した自分 の愛機を思い出す。自分用にカスタマイズされたジンがあれば、ここまで圧倒的に敗北しないであろうと考えたのだ。

「中々やるが、この俺とアスクレ ピオスの敵ではない! そろそろ消えろ!」

「くそっ!」

もはや回避もままならない。だっ たらできることをする。

「こうするしかないか!」

あえて彼はアスクレピオスに隣接 する。そしてシート横のレバーを引く。それはカウントダウンの開始であった。機密保持のため機体を自爆させるための。彼はそのままハッチを吹き飛ばし、す ぐにそのコックピットから飛び出す。

(これで仕留めきれるか!?)

どちらにしても至近距離で爆発を 受ければただではすまない。敵を巻き込めなくても、それなりのダメージを与えられると考えられた。

光を撒き散らしながら爆発するジ ン。激しい衝撃がアスクレピオスを包み込み、その巨体は黒煙の中に飲み込まれる。

「やったか!?」

距離を置いてその様子を観察する ミゲル。だが・・・・・・・・・

「そんな!?」

煙の中から出現する一つの緑色の 光。その機体は悪魔のごとくたたずむ。一切のダメージを受けていないように。

「化け物か?」

ミゲルは思わずそう呟かずにはい られなかった。

「まさか自爆するとはな。まあい い。この俺のアスクレピオスはジンの自爆程度ではびくともしない」

カナードはコックピットで先のジ ンの自爆で受けた被害を確認していた。さすがはガンダニュウム合金と言うところか、駆動系には多少のダメージがあるものの、本体にはいささかのダメージも ない。戦闘は継続できる。

「だがコロニー内の敵は一掃し た。あとは・・・・・・・・」

ピーピーピー

コックピット内に響き渡るアラー ム。カナードはその音に耳を傾ける。モニターに映る機影。数は三。

「この反応 は・・・・・・・・・」

そう呟くと同時に爆音が響く。そ れを合図にモルゲンレーテの建物が崩壊し、その爆煙の向こう側から灰色のMSが三機姿を現わした。

「地球軍の・・・・・・・・・新 型MSか」

カナードはその機体が何なのか、 即座に理解できた。ヘリオポリスで製造されていた地球軍の新型兵器である。

「地球軍が死守したのか、それと も奪取されたか・・・・・・・・・」

この状況では判断のしようがな い。だがカナードにとっては、向かってくるものはすべて敵である。敵は徹底的に倒す。それが彼の基本理念だった。

「だが・・・・・・・・・なん だ、この奇妙な感覚は?」

不思議な感覚が彼を支配する。何 かに惹かれるような奇妙な感覚。勘に近いものであったのだが、今までこのような感覚は一度もなかった。

「あの連合のMSからか・・・・・・・・ ちっ、一体なんだ! この感覚は!?」

自分でも理解することのできない 感覚に苛立ちを隠せなかった。

この時、彼はまだ知らない。目の 前に出現した地球軍のMSに乗っているパイロットが、ニセモノの失敗作である自分と相反する存在、本物の成功作で あると言うことを。

カナード・パルスとキラ・ヤマ ト。

ともに最高のコーディネイターと して、この世に宿命付けられ生み出された者達。これがその最初の出会いだった。

 

 

 

 

 

「味方のジンが全滅!?」

アスランは周囲の様子をイージス で確認すると同時に、驚きの声を上げた。ヘリオポリスにはジンが三機も侵入していた。

それもパイロットは熟練で、その 中の一人は黄昏の魔弾と呼ばれる男なのだ。だがその全員の反応が消えている。

「何かの冗談しょ? 俺たちク ルーゼ隊がこんなコロニーで」

ラスティは軽口を叩きながらも、 この状況では同様を隠せないでいた。

「・・・・・・・・・・・キ ラ?」

そんな中でキラだけは無言だっ た。

「どうした、キラ?」

「元気ないぜ、キラ。腹でも痛い のか?」

いつもと違うキラの様子にアスラ ンもラスティも困惑している。だが彼はじっと目の前の謎の機体を眺めている。

(なんだ、この感覚。まるで何か に引き寄せられてるみたいだ)

キラも何かを感じ取っていた。そ れは彼自身が知る由もない出生から来るものだった。

(君は・・・・・・・誰?)

心の中で呟く。もちろん答えが 返ってくるはずもないのだが。

ピーピー

三機のコックピットに通信が入 る。それは先に撃墜されたミゲルからだった。

『お前らよくやった!』

「ミゲル! 無事だったの か!?」

『当たり前だろうが! 俺がこの 程度でくたばるか! だがあとの二人はやられた! 目の前のやつは化け物だ! お前らはとっとと撤退しろ!』

直接戦ったからこそ分かる敵の強 さ。それは自分達の隊長であるラウ・ル・クルーゼに匹敵するほどだ。

「・・・・・・・・了解した。ミ ゲルを回収して撤退する」

アスランもその言葉に同意する。 彼らはミゲルがいる場所へと機体を移動させようとした。しかし敵はそれを見逃すような真似はしなかった。

「逃がすと思っているのか!?  貴様らはここで消す!」

カナードはペダルを踏み抜き、 バーニアを全開にする。高速で迫ってくるアスクレピオス。その前にキラの乗ったストライクが立ちふさがる。

「このっ!」

キラはコックピットのコンソール ボタンを押した。すると今まで灰色だった機体に突然色が浮き上がる。

アスクレピオスのクローをストラ イクの白い両腕が受け止める。衝撃が双方に走り、火花が飛び散る。

「これは!? まさかフェイズシ フトか!」

フェイズシフト装甲は一定の電流 を流すと、装甲が硬質化してミサイルなどの物理的攻撃を一切無効にすると言うものだ。

つまり現在のアスクレピオスの武 器では、ストライクを初めとするXナンバーの機体には一切のダメージを与えられないと言うことだ。

「離れろ!」

ストライクは頭部に装備されたバ ルカンが火を吹く。アスクレピオスはその直撃を受けながらも、特殊合金のおかげで一切のダメージを受けない。

だがそれでもいつまでもバルカン の直撃を受けているわけにはいかない。カナードは機体を操作し後方に一時下がる。

「機体の反応が遅い! それに照 準も甘いじゃないか!」

キラは今の攻防で機体のOSが悪いことを即座に理解し た。そしてすぐに計器をチェック。キーボードを目にも留まらぬ速さで打ち、OSのセッティングを変えていく。

プログラム画面を睨みつつ、視界 の隅で敵を捕らえ、同時に到達予想時間と処理作業に要するプロセスを頭の中で計算する。

「キャリブレーション取りつつ、 ゼロ・モーメント・ポイント及びCPGを再設定」

これでもOSの修正は完了しては いない。軽く舌打ちしてさらに細かなOS部分の修正画面を呼び出す。

一般人、もしくはこれの技術者で もこれほどまでに高度なプログラミングを行うことは不可能だろう。だが彼はそれを可能にしていた。

「ちっ、擬似皮質の分子イオンに 制御モジュールを直結…ニュートラルリンゲージ・ネットワーク、再構築……メタ運動関数パラメータ更新、フィードフォワード制御再起動、伝達関数、コリオ リ偏差修正、 運動ルーチン接続…システムオンライン!ブートストラップ起動!……全システ ム起動!」

OSを書き換えられ、ストライク のカメラアイに新たに光が宿る。この間、僅か数十秒である。

「・・・・・・・面白い!」

カナードはコックピットの中で歓 喜した。目の前には今までに戦ったことのない強敵がいる。しかも連合の新型MS。自分とアスクレピオスの力を試すには絶好の相手だ。

「しかも乗っているのはザフトの コーディネイター。その中でもかなり優秀な奴だ。この俺の力を試すには、もってこいの相手か!」

カナードとキラの戦いが始まる。

 

 

 

 

 

「いたたた・・・・・・・」

その頃、工場区の崩壊により地下 に落下したカガリは、最下層のブロックにいた。そこは奇しくもカナードが自爆命令を出した秘密工場である。

彼女は自分の身体を調べる。あれ ほど高いところから落ちてきたと言うのに、まったく怪我がない。それもそのはず、ハロが頭からパラシュートを開いて彼女達を無事に着地させたのだ。(もう 何でもありのハロである。そのうちミサイルでも打ち出しそうだ)

「ここは一体・・・・・・・それ にあいつらは」

カガリは上で起こったことを思い 返す。いきなりのザフトの侵攻。地球軍のMSの発見。さらに銃撃戦の真っ只中へ。

そして、再会。

「キラとアスラ ン・・・・・・・・・いや、そんなはずは。あの二人がこんなことをするなんて」

だがいくら考えても答えなど出る はずもない。

『カガリ! 危険!』

思考の渦に捕らわれかけていたカ ガリに、突如として声がかけられる。それはハロだった。ハロの隣にはカガリと一緒に落ちてきた女性が横たわっている。

彼女もカガリと同様、パラシュー トの効果で無事に着地したはずだ。しかしまだ傷の手当てが済んでいない。一応、応急手当で出血は止めたが、まだ完全ではない。

それにあくまで応急手当だ。カガ リは医者ではないため詳しいことはわからない。早く医者に見せないと危険かもしれない。

「ともかくここから出ない と・・・・・・・」

カガリはそう呟きながら、女性に 近づく。その時、パッとこの場の照明が点灯した。対人センサーが生きていたのだろう。

「これは・・・・・・・」

カガリは見た。白を基調として色 づけされた巨人を。それはジェミナス02.オーブ極東領土が開発した最新鋭MSの試作機の片割れだった。

「連合のMS? まだあったのか」

ふと彼女が機体を見上げると、そ のコックピットは開かれていた。まるで主を待つかのように。そして彼女は知らない。いや、カナードもここに勤めていた技術者達も。

この機体の主はここにはもう来な いことを。なぜなら、この機体のテストパイロットだった人間は、先の攻撃によるモルゲンレーテの崩壊に巻き込まれこの世を去ったのだから。

「それよりも早く出口を探さない と!」

こんなことをしている場合ではな いと思い、彼女は工場の出口を探す。だがすべての扉には厳重にロックがかけられ、開けることはできなかった。

「くそっ! ハロに頼むしかない か!」

先ほどモルゲンレーテの工場の扉 を開けたハロならば、このロックも解除できると思った。彼女はハロを連れてもう一度チャレンジしようとした。

だが・・・・・・・・

『警告します。自爆まで残り三 分。所員は速やかに退避してください』

無機質な機械の声が響く。そのア ナウンスにカガリは青ざめる。

「自爆!? ちょっと待て! ま だ残ってるぞ!」

『なお、機密保持のためすべての 扉は完全に閉鎖されました』

「って、待て! 退避してくださ いっていっときながら、なんだその閉鎖って! おかしいだろ!」

『おかしくないです。正常です』

「誰だ! ここの責任者は! し かもこのアナウンスはなんだ!? 責任者でてこーい! このバカぁっ!」

叫ぶが状況は変わらない。ぶっ ちゃけ逃げられないと言うことだ。思わずひざを落としてしまうカガリ。

「そんな・・・・・・・・こんな ところで、死ぬのか?」

死への恐怖がカガリを襲う。

『カガリ! あれのコックピット へ!』

「えっ?」

ハロの言葉に反応し、彼女は自分 のすぐ近くにある機体を見上げる。確かにこれの中ならば、この施設が自爆しても助かるかもしれない。

まあ死ぬ可能性がまったくないわ けではないだろうが、それでもここにいるよりも生き残れる可能性は高い。

「分かった! いくぞ、ハロ!」

『ガッテン、承知のすけ!』

どこかの時代劇みたいな台詞を言 いつつも、ハロはカガリに続く。もちろんカガリはこの場に一緒に落ちてきたマリューを見捨てない。彼女を背負ってコックピットに向かう。

シートの後ろに彼女を移動させる と、カガリはシステムを立ち上げる。一応、機械工学を専攻している彼女であるため、この機体のことも少しは分かるのだろう。

『システム接続!』

「・・・・・・・・またか。一体 ハロはどうなったんだ?」

カガリは一人頭を悩ませる。自分 の知るハロはこんな高性能ではない。一体何がどうなって、こんなことになってしまったのだろう。

『起動!』

システムが立ち上がっていく。そ れと同時に表示される文字とマーク。それはオーブのマークである。

「やっぱり・・・・・・・・お父 様、もしくはお兄様が・・・・・・・・」

カガリは自分の考えに確信を深め る。裏切り者と心の中で呟く。悔しさのあまり顔を俯かせてしまう。その間にもモニター上ではシステムが立ち上がっていく。またハロが機体のOSを最適化していく。

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 「ガン…ダム?」

カガリはOSの赤く輝く頭文字を 読み上げた。ガンダム。それがこの機体の名称。それは最強の機体の名でもある。

ジェミナスの瞳に灯が灯る。ゆっ くりと起き上がるジェミナス。同時に爆発が工場内部を飲み込んだ。

 

 

 

その頃…爆発したシャフト内を漂 う残骸と死体……

連合軍の兵士や仕官、技術者達。 またはこのコロニーで働く職員達のものである。

その内の一つがぶつかり、ナタル =バジルールは意識を取り戻した。

彼女は司令ブースを飛び出した直 後、爆発に巻き込まれ衝撃に襲われ意識を失った。

状況確認のために辺りを見渡す が、広がるは施設の破片と血まみれの死体のみ……

「誰か、誰かいないか!?」

声をかけるが返事はない。生きて いるものは見る限りでは確認できない。

「艦は…アークエンジェル は……!」

呆然となっていたが、すぐに壁を 蹴り、無重力の中を司令ブースへと向かって飛んだ。それが唯一、状況を確認できる場所だと思い・・・・・・・

 

 

 

 

内部と同じくヘリオポリス外部で も、未だに戦闘が続いていた。

出撃したメビウスは全て落とさ た。もともと戦力にも差がありすぎたのだ。唯一ムウの駆るゼロが奮戦しているのが現状だ。

そんな中、ジンの一機が輸送船の エンジン部分を破壊する。

「操舵不能!!」

オペレーターの悲痛な声。艦はコ ントロールを失い、爆発によって生じた慣性に従ってコロニー外壁へと衝突コースを取った。

迫り来るコロニーの壁が艦長達の 最後の光景となった。外壁にぶつかり、爆発する輸送船。

それを見詰めるジンに向かってゼ ロが迫る。

「ちぃ、この戦力差ではどうにも ならんか!」

舌打ちをしながらガンバレルを展 開し、ビームの攻撃をジンに浴びせる。

それによってジンの右腕が砕け、 ジンは離脱する。

 

 

 

 

 

ヘリオポリスでの戦闘状況はもち ろんヴェサリウスにも伝えられている。

「オロール機被弾…緊急帰投!消 火班Bデッキへ」

オペレーターの報告にクルーゼは 眉をやや上げる。

「オロールが被弾だと…こんな戦 闘で」

アデスは意外そうに呟く。

「どうやら…いささか煩いハエが いるようだな」

それに答えるように軽く笑みを浮 かべたクルーゼが呟く。

その言葉の意味が理解できずにア デスは頭は捻るが、更に別の報告が飛び込んでくる。

「ミゲル=アイマンからのレー ザービーコンを確認…エマージェンシーです。それにコロニー内に突入したジン全てのシグナルロスト!!」

その報告には流石もクルーゼも表 情を変える。

「さらにアスラン・ザラからの報 告! 新型機三機の奪取は成功。しかし謎の新型機と交戦中とのことです! またその機体に足止めされ、キラ・ヤマト、ラスティ・マッケンジーとも離脱困難 とのことです!」

「バカな! あの三人が足止めを 食っているだと!?」

アデスは信じられないと言う声を 上げる。また椅子から身を乗り出し、オペレーターにもう一度聞きなおす。

「ミゲルが機体を失い、ジンが全 て撃破されたところまで事態が動いてるとなると……」

クルーゼは若干苦々しそうな顔を する。まさか自分の部隊がここまで苦戦する事態が訪れようとは想像していなかったのだろう。

「隊長、これ は・・・・・・・・」

「おそらくオーブ極東領土の新型 だろう。だがまさかミゲルを含めジン三機を潰し、なおかつあの三人を足止めするとは・・・・・・・・・」

クルーゼはそのまま椅子から立ち 上がると、そのままブリッジの出口に向かう。

「私も出よう。あの三人を離脱さ せねばならんしな。それに・・・・・・・・オーブ極東領土の機体…そのままにはしておけん」

そう呟くと…格納庫へと向かうの であった。

 

 

 

 

 

「はあぁっ!」

「くそっ!」

カナードのアスクレピオスと、キ ラのストライクは激しい攻防を続けていた。だがノーマル装備のストライクではアスクレピオスに歯が立たないでいた。

「キラ!」

「援護するしかないっしょ! こ の場合!」

アスランもラスティも機体のフェ イズシフトを展開すると、すぐにキラの援護に回る。ラスティのストライクルージュもキラのストライクと同じ装備しかないが、それでもけん制くらいはでき る。

三機同時に放たれるバルカン。ア スクレピオスはそれをスラスターを使い、できる限り当たらないように回避していく。

「早い!」

「本当にナチュラルなのか よ!?」

その動きのよさに思わず相手のパ イロットの能力を疑う。

「だが、これならどうだ!」

アスランはイージスに装備されて いるビームライフルを構え、その引き金を引く。

「ビーム兵器!?」

とっさに反応したが、回避は間に 合わない。カニのような頭部に直撃を受けそのまま倒れこむ。

「倒した?」

「まだだ!」

安堵するキラだったが、それをア スランがたしなめる。敵はまだ、完全に沈黙していない。

「くくく、まさかこの俺に当てる とはな。だがその強さ・・・・・・生かしておくわけにはいかんな!」

カナードはあるシステムのボタン を押す。するとアスクレピオスが変化していく。先ほどのカニのような頭部ではなく、キラやアスランの乗るストライクやイージスと同じような姿に。

「アスクレピオス、MS形態」

今までのは接近戦重視の完全近接 用形態である。今度は武装は少ないものの、ビームサーベルとバルカンが使用できる。アスクレピオスはビームサーベルを右手に持ち構える。

「変形した!? あれも地球軍 の!?」

「それにほとんどダメージを受け てないじゃん! なんてもん作るんだよ、地球軍は!」

「文句を言っている暇はない。三 人で何とか仕留める。ここで仕留めないと、あとあと面倒なことになるぞ!」

三機は体勢を立て直し変形したア スクレピオスに対し、散開して対応することにした。

「フォーメーションを取る。俺が やつをひきつける。その間にキラとラスティは頭部、もしくはコックピットに攻撃を!」

「わかったよ、アスラン!」

「了解! でも俺らの機体って、 武器がバルカンとアーマーシュナイダーしかないぜ!」

「状況が厳しいのはわかってる さ! それでも何とかしてくれ!」

「ったく、人使いが荒いってアス ランは・・・・・・まあこの場合、仕方ないってか?」

目の前にいる敵は強力だ。この新 型の性能を持ってしても、簡単には倒せない。ましてまともな武装をしているのがイージスだけなのだ。

三機ともに完全に武装していれ ば、状況もまた変わったかもしれないが。

「ラスティ、行くよ!」

「ういっす! んじゃまあ、行く としましょうか!」

「うおぉぉぉっっ!!」

三機がいっせいにアスクレピオス に襲い掛かる。カナードもそれにあわせ、バーニアを全開にする。

それぞれの機体が接触しようとし た時・・・・・・・・・・・

ゴォォォォォォォォッッッッッッッッッッ、

ドーーーーーーーン!!

衝撃と爆発がコロニー内部を襲 う。それはコロニー内部の秘密工場の自爆だった。

(自爆した か・・・・・・・・・・これで証拠はなくなる。あとはこの機体だけだが・・・・・・・・)

自分が先ほどまでいた工場の爆発 を確認したカナード。残るはこの機体のみである。だが自分の愛機をこのまま破壊するのは忍びない。いくら機密保持のためとは言えども。

「まああとで考えるか。この機体 を見たものを、まずは消さなければな」

彼の獲物はまだ目の前にいる。今 の爆発で両者とも動きが止まったが、それでも戦いが終わったわけではない。

「消えろ!」

アスクレピオスのビームサーベル が振り上げられる。

「!?」

その時だった。機体のセンサーに 機影が映し出される。その反応はカナードがよく知っているものだった。

「この反応は・・・・・・・・二 号機!?」

センサーに映るそれは自分の機体 とは兄弟機であるジェミナス02であった。

 


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