第1部   〜動き出す運命〜

 

 

 

 

第8話 氷の女神

 

 

綾乃は炎雷覇を構えたまま、土蜘 蛛と対峙を続けていた。眼の前の敵に集中している。その集中力は凄まじいものだった。

 

だがそれが間違いだった。目の前 の敵だけに一点だけに集中しすぎている綾乃、そのためか周囲のことまで気が回っていなかった。

 

そして他の2人も・・・・・・

 

これが一対一の試合ならば問題は ない。だが今は試合ではない、命をかけた戦いである。後ろから突かれようが文句は言えない。それが戦いだ。

 

千早の気がついた妖魔。

 

その妖魔は気配を消し3人を見て いた。

 

己の持つ強大な妖気を隠す妖魔が 牙をむけ強大な力の持ち主をその腹に収めることが出来る喜びを噛み締めていることに。

 

『喰らいたい喰らいた い・・・・・・あの娘を喰らえば我は更なる力を得られる。あの黒髪の、強力な力を持つ娘を・・・』

 

妖魔にとって強い霊力を持つ人間 は厄介な相手ではあるが同時に最高級の餌でもあるのだ。

 

黒髪の娘=綾乃は炎術師の一族の 宗家の人間妖魔にとってこれほどのご馳走はめったにない。

 

(あの男と契約して正解だった わ。これほどの上玉を喰らうことで出来ようとわ)

 

今すぐにでも喰らい尽きたいとこ ろだが、厄介なものが1つだけある。

 

炎雷覇である。あれを受けてはさ すがに無事ではすまない。

 

だが綾乃自体には恐れてなどいな かった。ただ簡単に喰らいたいだけだ。

 

他の術者になど目は行ってなかっ た。単なる付け合わせとしか思っていない。

 

恐怖に駆られた顔をする娘をじわ じわと喰らう、泣き叫び絶望に駆られた身体を味わう。これほどうまいものは無い。

 

(早くその土蜘蛛を消し去り、私 の口を満足させてくれ!)

 

 

 

 

 

 

 

妖魔がいることなどまったく知ら ない綾乃は土蜘蛛に炎雷覇を向け対じを続けていた。

 

(どうしようかな・・・・・・あ まり近付きたくないし・・・・・・・)

 

召還したのは良いが炎雷覇は呪法 具である以前に剣である。やはり剣として使ったときにその威力を最も発揮する。

 

当たり前だが・・・・・・

 

つまり、土蜘蛛に近づき炎雷覇で 斬り裂き、炎を内側に流し焼き払う。もちろん、それ以外にも炎雷覇の使い方はまだ多くある。

 

だが綾乃はそのことにまだ気づい ていない。つまり炎雷覇本来の使い方を未だに会得していなかった。

 

そのため綾乃はとんでもないこと を想像していた。

 

(剣で斬ったら切り口から得体の 知れない粘液なんかがピシューって飛び出して・・・・・・爆裂させた瞬間にその破片がバラバラベチャベチャと身体に降りかかったり・・・・・ううん、もし 雌だったら、腹から何百匹の子蜘蛛がわらわらと・・・・・

う ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーー!!!)

 

どうやらとてもリアルに想像して しまったようである。

 

だがはっきり言って・・・・・・ 馬鹿としか言いようがない。

 

戦いの最中だと言うのにいったい 何考えているのか? 

 

女の子ならそう考えるのも仕方な いが、術者としては失格、三流以下と言えよう。

 

煩悶する綾乃の心を読み取ったの かは分からないが、土蜘蛛は長い足を器用に動かして反転した。

 

「逃げる気!?」

 

逃がすまいと走り出した綾乃に向 かい、土蜘蛛は尻の先から白い糸を吐き出した。綾乃は

その糸に向かい炎雷覇を振り下ろ し炎で焼き払う。

 

だが緋色の刀身からほとばしる金 色の炎は糸を焼くだけで土蜘蛛本体には届かない。

 

綾乃は足を止めると精神を集中 し、刀身へと炎を集中させる。

 

(ちまちまやっても埒があかな い、一撃で決める!)

 

上段へと振りかぶった炎雷覇を綾 乃は渾身の一撃で振り下ろした。

 

金色の炎が―――最高位の浄化の 炎が、土蜘蛛から吐き出された大量の糸をものともせず焼き払い、容赦なく土蜘蛛本体へと迫る。

 

ごぅんっ!

 

爆音が轟き、土蜘蛛が金色の炎に 包まれる。

 

「やった・・・・・・よ ね・・・・・・・・?」

 

炎が消えていく中、自信なげに呟 く。だがそんな気持ちで相手を倒せるほど世の中は甘くない。

 

綾乃の目の前に、白い繭のような ものが映った。

 

「げっ!」

 

思わず目を瞠る綾乃の前で、それ はピキピキとひび割れていく。

 

ぱりんっ!

 

薄いガラスが割れるような音をた てて繭が割れ、その中から傷1つない土蜘蛛が現れる。

 

おそらく土蜘蛛が己の作り出す糸 に霊気を遮断させる性質があるのだろう。それで自分の身体を覆い隠し、浄化の力の浸透を防いだのだ。

 

「・・・・・・やって、くれる じゃないの・・・・・・」

 

綾乃は抑揚な口調で言った。一 見、平静のように見えるが、よく見るとこめかみが引きつっている。

 

今の一撃は決して手加減したわけ ではない。それを完全に防がれて、綾乃のプライドは痛く傷ついていた。

 

「この虫ケラが生意気な ――――!!」

 

綾乃の怒りに応え、さらに膨大な 炎の精霊が集結する。

 

炎として具象化してはいないもの の、境内の内部は火山の火口にも匹敵するほどの精霊に埋め尽くされていた

 

「さあ・・・・・・・・・覚悟は いい?」

 

怒ってはいるものの綾乃は我を忘 れてはいない。冷静に怒りをコントロールし、己の力へと転化する。

 

強く、強く精霊に呼びかける。今 度は全方位ではない。細く絞った意志を、特定の場所の特定の精霊に向けて解き放つ。

 

綾乃は炎雷覇を身体の正面で垂直 にかざし、慎重に狙いを定める。深く息を吸い、呼吸と共に鋭い気合を放つ。

 

「はっ!!」

 

直後、土蜘蛛の体内で炎が弾け た。膨らんだ腹が裂け、小さな火柱が立つ。

 

その小さな炎を目印に、境内中の 炎の精霊が殺到する。炎は爆発的に増大し、土蜘蛛を今度こそ灰も残さず焼き尽くす。

 

後には何も残らなかった。土蜘蛛 の身体の破片はおろか、撒き散らしていた妖気も跡形もなく浄化されている。今までにここに妖魔がいたという痕跡さえ残されていなく、神社らしい清浄な <気>が境内に満ちていた。

 

だがここには姿を隠す者がまだ 残っていた。風術師や和樹たちなら気づいたであろう。分家の炎術師はともかく、綾乃のレベルなら意識を集中させて探れば見つけることも可能であった。

 

だがほとんど妖気を消し去ってい るその気配に気づくものはこの場にはいなかった。

 

(期待通りじゃ、これなら良い餌 となろう)

 

妖魔は綾乃の戦いを見て、その戦 術から綾乃の力を測っていた。

 

この世界のあらゆる現象に、精霊 は関与している。もちろん生命活動にも。

 

体内に水分を有する生物は、水の 精霊の影響を受けずにはいられないし、熱量を持つものは皆、体内に炎の精霊を有している。

 

例え妖魔でも物質化してしまえ ば、この法則からは逃れられない。

 

しかし一般的に、他者の体内に在 る精霊を制御するのは不可能であるといわれる。

 

生物の生存本能は無意識に近くな るほど強く、生命の源とも言うべきものを他者に操作させることを許さない。

 

だが、いつの世も理論限界と言う ものを鼻で笑い飛ばす人間がいるのである。

 

「ふふんっ。ざっとこんなもん よ」

 

それが綾乃である。だがこれは、 相手と自分の力量と意志の強さが勝っていなければできないことである。

 

それを分かっているのかいないの か、得意げな笑みを浮かべ、綾乃は振り返る。

 

「さすがはお嬢だな。見事だった ぞ」

 

「さすがです! 綾乃様!!」

 

2人の護衛はその強大なまでの力 をただ見て驚くしかない。自分たちでは絶対にこんなことはできない。

 

「まあね♪」

 

褒められたことが嬉しいのか、綾 乃はさらに得意げな笑みをする。

 

「さあ、帰りましょうか」

 

もはやここに用はない。任務も達 成したし、あとは帰って宗主である父に報告するだけ。

 

「ああそうだな。しかし、これで 次代の神凪も安心だな」

 

「そうです。綾乃様が宗主になれ ば、神凪はさらに発展します!! 間違いありません」

 

2人は綾乃に大きな期待をしてい た。まだ16歳でありながら、神凪では3番目の実力者。

神剣・炎雷覇を持っている。彼女 に勝てるものが世界に何人いるか?

 

2人の知る限りでは重悟か厳馬ぐ らいしかいなかった。

 

だがその考えは大きく間違えてい た。彼らは神凪と言う狭い世界しか見ていなかった。

 

綾乃などをはるかに上回る力を持 つものたちが世界には数え切れないほどいるということを・・・

 

彼らが綾乃より強いと信じてやま ない重悟、厳馬でさえ相手にならないような者が世の中にいるということを・・・

 

その存在が身近にいるということ を彼らは近いうちに知ることとなった。

 

世界と言うものがどれだけ広いか と・・・

 

それは綾乃も同じことである。彼 女は近いうちに知ることとなる。

 

神剣・炎雷覇。その力を己がまだ 全く知らなかったと言うことを・・・

 

その真実を受け止められるかは本 人である綾乃でさえもまったく闇の中である。

 

「うん。まあ、あたしもがんばる わ。とりあえず帰りましょう。お父様に報告しないといけな・・・・・・」

 

だが綾乃の台詞は途中で途切れ た。

 

ここにきてようやく綾乃は気づい た。

 

体が震え上がる。

 

自分たちの周りに今まで感じたこ との無いような巨大な妖気が取り巻いていることに、そしてそれは自分たちを消して逃がさないように

 

周囲を結界で封鎖していることに も。

 

それは黒い風だった。妖気を風の 中に含ませそれに触れるものを凍らせ、切り刻む魔性の風。

 

「な、なに!?」

 

綾乃もいきなりのことで気が動転 する。

 

彼女がいくら強くても、経験不足 であることは隠しようの無い事実、唯のイレギュラーな状況に対処できないのに、いきなりの強力な妖気にどう対処していいのか分かるわけがない。

 

これは経験が無くては対応できな いことであるが、それに対処できるように心がけていなかった綾乃は術者としては甘いとしか言いようがない。

 

「叔父上。これは一体!?」

 

さらに武志も一体何が起こってい るのかを正確に判断できない。

 

この場で唯一落ち着いて状況を判 断しようとしているのは雅人ぐらいだ。

 

分家では最強、さらに海外へと修 行に行きこういったいきなり起きたイレギュラーな状況でもすぐに冷静になり判断下すことのできる精神力を持っている。

 

だからこそ重悟も綾乃に雅人を護 衛としてつけているのだ。

 

「2人とも落ち着け! どうやら 風の結界に閉じ込められたようだ」

 

その言葉に綾乃はハッとなる。風 の結界。

 

これは昨日、神凪家の中で起こっ た事件と同じであった。神凪の術者が惨殺された事件・・・・・・その犯人が今、自分達を襲っているのだ。

 

「じゃあ、これって和麻さんが やってるの!?」

 

綾乃は父から聞かされた容疑者の 名前を出す。だがそれは間違っていた。

 

周りから黒い風に乗った妖魔の不 気味な声が聞こえてきた。

 

『わが結界へようこそ。わが血と なり、力となる者たちよ』

 

「な、なんですって!?」

 

綾乃は驚愕の声を上げる。相手の 姿も見ることはできないが、間違いなく相手は妖魔、それも自分が今まで出会った中で1番強い。

 

この妖魔に比べたらさっき土蜘蛛 が小物に感じてならなかった。

 

上級妖魔といっても差し支えな い。歴史上に出てくる名のある妖魔と比べても引けは取らないだろう。

 

その妖魔が今時分たちの目の前に いるのだ。それも自分の血となり力となるという。

 

『恨むならあの者を恨め、われと 契約し貴様らを売ったあの者、あの男をな。ひやははははははははっっっっっっーーーーー!!!』

 

「あの男だと! 貴様、誰とその ような契約をした!!」

 

雅人は姿の見えない相手 に・・・・・・風が渦巻く上空に向かい叫ぶ。彼らはこの事件の首謀者を知り、そしてその者を討たなければならない。

 

『聞きたいか、知りたいか? な ら冥土の土産として聞かせてやろう。われと契約した男、その名は八神和麻。そなたらを売った男の名は八神和麻だ。あははははははははっっっ!!!』

 

その名を聞いたとき、全員が何の 疑いもなくやはりと思った。タイミング的にもおかしかったし、たった4年で強力な風の力を身につけてきた。

 

八神和麻の使う風の力は精霊魔術 ではなく、この妖魔に借りたものなのだと、誰もが思った。綾乃はやっとこの事件の首謀者が誰であるか知った。

 

やはり父の言う通り、あの男、和 麻が今回の事件を起こした。神凪に復讐するために、自分たちを皆殺しにするために。

 

だが首謀者を知ったからにはここ から逃げ出し、そのことをなんとしても報告しなければならない。

 

しかし、すでに3人は決定的ミス を犯していた。

 

まずこの場に契約したと言う和麻 がいないことに。そしてその和麻は厳馬が送った神凪の刺客と会っていることに。

 

そして何より自分が神凪を追い出 される最大の原因となった継承の儀のときに和麻を倒した綾乃の前にいないこと、もし和麻が犯人なら妖魔に喰わせる前に綾乃に何らかの復讐をするはずであ る。

 

冷静な状況であれば気づくことで あるが、和麻が犯人と言うレッテルを貼られてしまった3人にはまったく気づく余地はなかった。

 

(人間とは面白い・・・・・・こ こまで簡単に話を真に受けるとは、低脳なものよ。頼まれたから言ってやったがこれはこれで見ものじゃ・・・)

 

ようやくあの女を喰えると妖魔は 舌なめずりをする。他の2人はお前みたいなものであった。妖魔にとってメインディッシュは綾乃であり、2人はつけあわせみたいなものである

 

『さあ、その身を我に差し出 せ!!』

 

「だれが、あんたなんかに喰われ るものですか!!」

 

「お嬢、武志! 炎を放つぞ、3 人でタイミングを合わせるんだ!!」

 

「わ、分かりました」

 

3人はタイミングを合わせ、炎を 放とうとする。綾乃は真ん中に立ち炎雷覇を構え、雅人と武志は持てる力の全てを綾乃の炎雷覇へと集中させる。

 

この3人がかりの攻撃なら、いか に強大な妖魔でもダメージを耐えられるだろう。

 

無論これで倒せるとは誰も思って いない。今はここから逃げ切ること、そしてこのことを本家に報告することが最大優先。

 

そのためには今持つ力を出しき る。

 

自分たちだけでは倒せない。それ なら一度引き体勢を立て直し犯人である和麻を討つ。そして妖魔を倒せばいい。

 

「いっくわよ!! いっけ えぇぇぇぇ!!!」

 

綾乃は炎雷覇を大きく振りかぶ る。そこから今まで以上の強大な炎が放たれる。

 

「うおぉぉぉぉぉ!!!」

 

「はあぁぁぁぁぁ!!!」

 

雅人も武志も持てる力のすべてを 使い炎雷覇に力を集中させる。3人の炎が1つの炎となり妖魔へと向かう。

 

たとえ妖魔に当たらなくとも結界 を破ることはできるはずだと誰もが思った。

 

だが炎が壁に当たった瞬間、炎は 吹き荒れる強力な黒い風になすすべなく切り刻まれ跡形もなく消え去った。

 

『これが神凪の炎か・・・思った よりもあっけない。これが炎の精霊王から借りた力とはな笑えるわ』

 

「う、うそでしょ・・・・・・」

 

「ま、まさか・・・・・・」

 

「こんなことって・・・・・・」

 

3人は唖然と呟いた。3人とも全 力で放った炎をいとも簡単に消されたのだ。さらに結界にもまったく変化はなかった。

 

自分たちのことを最強と考えてい た3人の力で妖魔に傷をおわすどころか結界さえも何の変わりもなかった。

 

3人への精神的ショックは大き かった。

 

『わかったか。力の差を、お前ら では我に傷をおわすどころか結界1つ破ることなどできぬという事をな』

 

妖魔の声は何も変わっていなかっ た。蚊に刺された痛みさえも妖魔にはなかったのである。

妖魔にとって今の攻撃を防ぐこと は近くに在る物を取る程度のことであった。

 

「ふざけるのもいい加減にしなさ い。炎雷覇を突き立てればあんたなんかすぐに・・・・・・・・・」

 

炎が聞かなくてもまだ炎雷覇があ る。その強さが綾乃に力を与えていた。炎雷覇を受けて無事ですむ者はいないと。

 

『はははははっ、姿の見えない相 手にどうやって剣を使う!?』

 

「くっ!」

 

事実であった。自分はまだ妖魔の 居場所を全くつかみ取れていなかった。闇雲に振り回しても意味がない。

 

『よかろう。最後の切り札、試さ せてやろう』

 

その言葉と同時に一点に黒い風が 集まり始めた。今まで感じたことのない妖気が目の前に集まり始めていた。

 

「な、なに!?」

 

「な、なんて妖気だ!」

 

今まで感じたことのない妖気に当 てられたのか流石の雅人も体の震えが止まらないでいた。

 

「う、うわあぁ・・・・・・」

 

武志も、今まで感じたこともない 強大な妖気に恐怖し、足元が震えている。軽く肩を押したら倒れてしまいそうであった。

 

綾乃は収束する妖気の方向を睨 む。そこには黒い風が集まっていく。

 

そして姿を隠していた風がはれ、 妖魔の姿が現れた。

 

「な、なによ、あれ!!?」

 

そのかたちは牛のようで4本角を 持ち、人の目、豚の耳、その声は鳴く鴈のようであった。

 

『さあ、姿を見せたぞ。その刀で われを切り裂いてみよ!』

 

完全なる挑発、姿を見せなくても 3人を殺すことはできた。今妖魔がしていることは単なる気まぐれであった。

 

もはや綾乃を喰らうことに失敗す ることはありえない。

 

ならばその前に簡単な運動と言う わけである。

 

「人を馬鹿にするのもいい加減に しなさい。この豚やろうが今すぐ灰にしてあげるわ!!!」

 

綾乃は炎を炎雷覇に集中させると 目の前の妖魔へと斬りかかった。

 

「い、いかん! お嬢、やめろ、 下がるんだ!!」

 

圧倒的な力の差を感じた雅人には わかっていた。綾乃ではまったく相手にならないと・・・

 

そんな雅人注意も聞かず綾乃は妖 魔に炎雷覇を振り下ろした。

 

「はあぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

これが妖魔の身体に触れれば勝て ると疑いもしなかった綾乃は全力で炎雷覇を振り下ろす。

 

だがその攻撃は妖魔に当たっ た・・・それだけだった。

 

「そ、そんな・・・」

 

炎雷覇は妖魔の角に当たるとそれ 以上動くことはなかった。

 

『これだけか? 角に傷1つ付け ることができんとはな、口ほどにもない・・・力の差を思い知れ!!!』

 

「!? きゃ あぁぁぁぁ!!!!」

 

次の瞬間圧縮された風が妖魔から 綾乃に向かい放たれる。綾乃はなすすべなく吹き飛ばされた。

 

「お嬢!!」

 

雅人は震える体を無理やり動かし 綾乃を身体で受け止めた。

 

「無事か!?」

 

「・・・は、はい・・・・・・で も・・・」

 

綾乃の目には恐怖しか映っていな かった。自分の全力をいとも簡単に受け止められてしまったのだ。

 

自分より強い相手と戦ったことの ない綾乃は始めて味わう恐怖に震えた。

 

そんな彼女にこの状況を打破する 考えを出すことは不可能だった。

 

雅人は呆然としている綾乃と恐怖 に立ち竦んでいる武志を見る。

 

(命を捨て、特攻するしかない。 結界さえ破ることができれば2人を逃がすことはできる)

 

自分がとる行動は1つだけであ る。雅人はゆっくりと立ち上がる。

 

「お、叔父様?」

 

綾乃は雅人の顔を見て気づいてし まった。命をかける顔だと、自分の命をかけて何かをする顔だと。今まで一緒にいた自分でなくてもわかっただろう。

 

「お嬢、武志。俺がこの結界を何 とかする。その間にお前たちは何としてでも逃げろ」

 

「そ、そんな叔父様!!」

 

「だめです、そんなこと! 僕も お供します!! 綾乃様を護衛するために自分は着いて来たのです。綾乃様を守るためならこの命惜しくはありません」

 

「だめだ!!」

 

2人に向かい、雅人はきっぱりと 言い放つ。

 

「若いお前達が死んでどうする?  ここは俺に任せろ。逃げる時間くらいなら何としてでも作り出す。だから・・・」

 

「叔父様! だめです!! 私 だってまだ戦えます!!」

 

「だめだ。お前らもわかっている だろ。あの妖魔には勝てん。神凪の力全てをぶつけねばあ奴は倒せん」

 

それは2人ともわかっている。だ がそのために雅人を犠牲にすることなど2人にはできなかった。

 

「あたしは次期宗主です! こん なとことで逃げるわけにはいきません」

 

妖魔に対する恐怖がないというな ら嘘である。だがその瞳はまだ死んではいなかった。

 

炎雷覇を握り決意を新たに妖魔へ と構えをとった。神凪に生まれたものとしての決意の炎がそこにはあった。

 

「叔父上、僕も逃げることなんて できません。ここで逃げては僕はそこで立ち止まってしまいます」

 

妖魔に恐れながらも逃げることは しない。2人は妖魔に向かい立ち向かう決心が固まった。

 

(成長したな2人とも・・・)

 

2人の成長を雅人は心から喜ん だ。そしてさらにここで2人を死なせるわけにはいかないと覚悟を決めた。

 

『人間はどこまでもおろかな生き 物よ。その選択が間違いだと分かっていても残るとは・・・・・・まあ、どちらにせよお前らはここで死ぬ!!!』

 

妖魔の周りの風がさらに強くな る。その風に圧倒されながらも綾乃は引かなかった。

 

「それでも私はあきらめない。こ こであんたを倒して、和麻も討つ。それで終わりよ」

 

綾乃は炎雷覇へと炎を集中させ る。今までで1番強い炎が炎雷覇へと集まり始めた。

 

(ほう・・・この期に及んでまだ 強くなるとは・・・・・・だがそれがまた喰ろうときの楽しみとなる、ひはははは・・・)

 

いくら強くなっても、妖魔には遠 く及ばなかった。今の綾乃には成長できても限界があった。

 

『これで喰ろうてやる!』

 

「来なさい!」

 

綾乃がそう言ったと同時に妖魔が 動いた。炎雷覇が再び妖魔の角へと振り下ろされる。

だが結果は変わらなかった。

 

「きゃぁぁぁぁぁーーー!!」

 

綾乃は炎雷覇ごと弾き飛ばされ宙 へと投げ出される。その綾乃に妖魔の影が映った。

 

(は、速い!!)

 

綾乃は宙に投げ出されていて何も できない。その綾乃に妖魔の鋭く伸びた爪が光り輝いた。

 

「お嬢!!」

 

「綾乃様!!」

 

他の2人も気づいたときには妖魔 が綾乃に飛び掛るときだった。妖魔の動きがあまりにも速すぎた。

 

(に、逃げられない!!!)

 

綾乃には妖魔の攻撃を止めるすべ はなかった。

 

2人にも妖魔の爪が綾乃に振り下 ろされるのをただ見ていることしかできなかった。

 

(い、いや!!)

 

綾乃は叫びたいが声がでない。

 

だが、妖魔の爪が綾乃に突き刺さ るという瞬間・・・・・・

 

バリッン!!!

 

何かが割れる音とともに妖魔へと 何かが迫った。

 

ヒュッン!!

 

風を斬り裂きながらそれは綾乃に 振り下ろされる妖魔の前足に突き刺さると、前足を氷付けにした。

 

『ぐああああああっ!!!』

 

妖魔が氷付けになった前足を庇う ように地面へと落ちる。

 

「お嬢!」

 

綾乃は地面に落ちるところを寸前 で雅人に抱きかかえられた。

 

「な、なに!?」

 

「誰が!?」

 

3人は妖魔を見る。すると妖魔の 前足には鋭く先の尖った氷の矢が突き刺さっていた。

 

バリッン、ピシッ、ピシッ・・・ ガシャッン!!!

 

さらに数本の矢が飛んでくると結 界に皹をいれ風の結界を破壊した。

 

3人は矢の飛んできたほうを見 る。そこには妖気などは感じられなかった。

 

全てを浄化してしまうほど澄んだ 空気がそこにはあった。

 

そこに立っていたのは綾乃と年の 変わらないくらいの弓を構える1人の少女佇んでいた。

 

「誰だ、貴様っ!!」

 

妖魔がいきなり現れた少女へと咆 哮する。

 

その殺気は綾乃たちに向けられて いたものとは比べ物にならなかった。

 

だがそんな中、少女は臆した様子 もなく妖魔と向かい合っている。

 

身体を包むように飛び交う水と氷 の精霊たち。

 

その少女は、世界最強の魔術師の パートナー、水と氷の使い手・・・・・・

 

その少女の名は、山瀬千早。

 

 

 

 

 

 

 

(危なかったわね・・・)

 

千早は妖魔の気配が強くなったの を感じると急いでここに走ってきたのだ。着いたとき角界が張られていることに気づいた千早は魔弓・凍矢で結界を破ったのだ。

 

「・・・・・・・・・」

 

千早は何も言わずに妖魔のほうへ と足を進める。

 

和樹の魔法具、そして自分のイ メージによって形付けられた魔弓・凍矢、それでも結界を破るのに2回放った。さらにその凍矢を受けても妖魔はまだ存在している。

 

相手が油断していたから当たった が、下手したら矢を避けられていた。気を抜いたらこっちがやられる。

 

『き、貴様・・・いったい何者 だ。わしの食事の邪魔をしよって!!!』

 

耳をふさぎたくなる様な咆哮。綾 乃たちに向けられていた妖気よりも強さがさらに増していた。

 

だが、千早はそんなので引き下が ることなどない。和樹とともにいくつもの死線を潜り抜けてきているのだ。本当に死に掛けたことだって何度もある。

 

目の前の妖魔と同じくらいの相手 をしたことだってある。

 

「人を喰らう妖魔になんて教える 気はないわ」

 

そう言うと弓を槍へと変化させて 頭上で回転させると妖魔にむけて構える。それと同時に水と氷の精霊たちが千早の周りに集まり始める。まるで精霊たちが自ら千早に力を貸すように莫大な量の 精霊が自然に集まった。

 

「あなたはこの場で倒す」

 

『人間が調子に乗るな!』

 

妖魔の足を凍らせていた氷が砕け 散る。さらに周りからいくつもの黒い風の刃が千早へと降り注いだ。

 

「氷壁」

 

黒い風の前に巨大な氷の壁が立ち 塞がり風を防ぎきった。

 

『風だけと思うな!』

 

妖魔の姿がぶれたかと思うと千早 の背後へと現れて角を突きつける。千早の身体が妖魔の角に貫かれるのを妖魔も3人も目撃した。

 

・・・したはずだった。

 

「・・・遅い」

 

千早は妖魔から少しはなれたとこ ろで槍を構えていた。

 

「氷霞」

 

次の瞬間、氷柱が高速で放たれ た。槍を突くごとに氷円錐が妖魔に迫る。

 

その氷を妖魔は今まで以上に圧縮 した風で叩き落した。

 

(速い・・・そして力も強い)

 

妖魔は千早の動きと放たれた氷の 持つ力に驚愕する。

 

(一体何者だ!)

 

驚愕の表情で千早を見る妖魔。そ の妖魔に千早は休まずに槍を放った。

 

妖魔の顔を突いた千早の槍は空を 切る。だが空圧だけで妖魔の皮膚は斬り裂かれ血が滲んだ。

 

突きのラッシュは止むことなく次 々に繰り出される。それを避ける妖魔の速度も凄まじい速さだった。

 

妖魔は大きく後ろに飛び千早との 間に間を作ると風を放った。その風を千早は槍を回転させ防ぐ。

 

そしてお互いに動きを止め相手を 見た。

 

ここまでの間、妖魔が千早に風を 放ってから10秒経ったか経たないくらいだった。

 

(何なのよ! あの速さ! 一体 何があったのよ!)

 

千早と妖魔の戦いを見ていた綾乃 は心の中で叫び声をあげる。

 

(あれって・・・千早ちゃ ん・・・よね。でもあの強さは何なの・・・妖魔と対等に戦っているって何一体!?)

 

頭がフリーズしかけている。

 

千早がいきなり現れて妖魔と戦い だして、そして目に見えないほどの速さで戦っている。

 

(一体なんなのよーーーー!)

 

頭の中がパニックになる綾乃。そ んな綾乃を全く気にせず千早と妖魔の戦いは続いていた。

 

千早はゆっくりと動き出すとその 姿が一瞬にして消えた。

 

ドガン!

 

紙一重といってよかった。

 

妖魔はギリギリでその攻撃を伏せ いだ。妖魔のいたところには2mを超える巨大な氷柱が深々と突き刺さっていた。地面に刺さった瞬間に破片となった氷の欠片が周りへと飛び散る。

 

もし避けていなかったら、妖魔は この場から姿を消し去られていただろう。砕かれた地面がそれを物語っていた。

 

頭上に何かを感じて避けたがその 気配がなかったら間違いなく倒されていた。

 

(人間が!)

 

妖魔は千早に鋭い爪で襲い掛か る。千早はその攻撃を余裕を持って交わす。

 

(殺気を感じ取られてしまっては 動きの速い妖魔にこの攻撃は当たらない。相手の動きを封じて一気に倒す)

 

千早はゆっくりとした動きで相手 に近づいていく。だがその姿を見た妖魔と綾乃たちは目を見開いた。

 

(ち、千早ちゃんが何人にも見え る・・・)

 

綾乃は自分の目に映るものが信じ られないように見ていた。

 

妖魔もその動きに翻弄されて目が 一点に定まらない。

 

自分の横に来た千早に向けて爪を 振り下ろす。だがその爪はきれいに交わされ振り下ろした腕を槍で斬り裂かれた。

 

『ぐああああぁぁーーー!』

 

爪の先から肩の所まできれいに斬 られ妖魔は声を上げる。

 

さらにその部分は凍りつき感覚が 鈍くなった。

 

そんな妖魔の周りを緩急の着いた 動きで千早は花びらが舞うように動き続ける。

 

戦いの中だというのにその動きに 美しさを感じずに入られなかった。

 

『この子娘があああぁぁぁ!!』

 

怒り狂った妖魔は凄まじい速さで 千早に迫り先ほどの何倍の速さと力で千早の体を一突きした。

 

だが妖魔の角に刺さった千早の姿 が消えたと思うと妖魔の横に千早が立っていた。

 

「突蜂」

 

目にも止まらぬ速さで千早の槍が 妖魔の身体に突き刺さる。

 

『ぐあああああああ あぁぁぁぁぁーーーーー!!!』

 

妖魔の身体から血が噴出す。だが 槍を刺した千早の姿はそこにはなかった。

 

「次で・・・決める」

 

4、5mほど離れたところで千早 が構えていた。

 

千早からは妖魔に匹敵するほどの 強い殺気が放たれていた。それと同様に莫大な氷の精霊が千早に集まる。

 

(よ、予想外だ、あれほどの人間 がいるなんて・・・)

 

妖魔には信じられなかった。自分 と同等に渡り合う人間がいることにも驚きなのに、油断したとはいえ負傷するなど考えもしなかった。

 

さらに今、千早から自分に放たれ る殺気、集まる精霊の量は脅威だった。

 

あの殺気から放たれる技を受けて 無事ですむとは到底思えなかった。

 

(このままではあの女を喰らうこ ともできない。被害を受けるだけだ。ここは・・・・・・)

 

妖魔は黒い風を千早に向けて放 つ。今まで1番強い風の刃を四方八方から放ち続けた。

 

「くっ、氷壁」

 

千早も流石にこの風には焦る。分 厚い氷の風を自分の周りに作り出し風を受け止める。

 

(逃がすわけにはいかない!!)

 

千早は砕かれた氷を妖魔に向けて 放った。

 

「流星氷弾」

 

妖魔に向かってとがった氷の破片 が凄まじいスピードで襲い掛かった。

 

だがその攻撃はすぐにやんだ。

 

「・・・・・・逃げられ た・・・」

 

千早は妖魔のいた場所をみる。そ こには妖魔の姿はすでになかった。

 

妖魔の逃げた方向を探ろうとした が気配を消しているのか、妖魔の気配を追うことはできなかった。

 

(和樹君たちがいたら・・・)

 

和樹たちなら妖魔の気配を探るこ とができただろう。それ以前に妖魔を逃がすことなんてしなかっただろうが・・・

 

(駄目駄目、和樹君ばっかに頼っ ちゃっ)

 

自分の弱いところを反省する。和 樹に頼ろうとせずに自分のできることを精一杯する。

 

『今できるだけの力で精一杯のこ とをすればそれでいい。千早ちゃんは十分強い』

 

源蔵や源氏にもそう言われた。

 

(でも、あの妖魔はこのまま野放 しにはできない・・・必ず倒さなくちゃいけない)

 

自分1人では無理でも、和樹、レ オン、カイが力を合わせれば倒せないものなどいない。

 

そして和麻。レオンが見つけたと 連絡してきた。和麻も入れば何も怖くなんてない。

 

千早はそう考えている。

 

(ともかく、和樹君に連絡しない といけないな。お兄ちゃんのこともさっきの妖魔の事も)

 

千早はレオンと合流しようとその 場を去ろうとした。

 

「ちょっと待って!!!」

 

千早は綾乃の声に呼び止められ た。

 

「千早ちゃん・・・千早ちゃんだ よね。私のこと覚えてる?」

 

「覚えているよ。綾乃ちゃん」

 

千早は綾乃に答えた。4年前に和 麻がいなくなってからはまったく会っていなかった。その前もそんなに多くはあってはいなかったのだが、小学校低学年のときくらいまで重悟が源氏たち会いに くるときに一緒に連れられて来ていて、遊んだことが何度かあった。

 

「あ、あの・・・ありがとう、助 けてくれて」

 

「いいわよ、別に。でももう少し で倒せたんだけど戦い方間違えたな・・・」

 

千早はさっきの自分の戦いを思い 出した。あのときにああすれば良かったかと考えて反省し次の時には同じ失敗を犯さないようにする。

 

それが大事なのだ。それは勝った ときでも同じである。逆に勝ったときこそ負けたときよりも反省しなくてはならないと考える時もある。

 

『勝ちに不思議の勝ちあり、負け に不思議の負け無し』である。

 

「それじゃあ、私行くところある から、またね」

 

そう言うと千早はその場を後にし た。

 

まずは和樹に連絡である。

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢、さっきの女の子は?」

 

雅人は千早にあったことが一度も ないため綾乃に聞く。

 

「お父様が剣術を習った式森源 氏っていう人がいるんだけど、小さいころ一緒に行ったときに何度かあったことがあるのよ」

 

「しかしあの強さは?」

 

雅人は千早の強さにただ驚いてい た。自分たちの破ることのできなかった結界を破り、さらに妖魔相手に互角の戦いを演じた。

 

一見普通の少女に見えるがその強 さは自分の肌で感じた。

 

「それは私にもなんとも・・・」

 

綾乃もただ千早の強さには驚くこ としかできなかった。自分が覚えている千早は優しく、面倒見のいいお姉さんというイメージの千早しか知らない。

 

重悟に千早が修行をしていること は聞いたことがあったがその内容もどれくらい強いかもまったく聞いていなかった。

 

(何なのよ、あの強さ・・・)

 

神剣である炎雷覇でも傷1つつけ られなかった妖魔の体に千早は槍を突き刺し、結界も破った。

 

そのとき綾乃の頭を重悟の言葉が 過ぎった。

 

『源氏殿と源蔵殿には炎雷覇を 使っても勝てないだろうな・・・』

 

綾乃は重悟のその言葉をまともに 受け止めてはいなかった。だが今になってその言葉の意味が少し分かったような気がした。

 

「とりあえず3人とも助かったん だから良かったじゃないですか? ともかく私はこのまま和麻を打ちに向かいます。叔父様たちはお父様に報告してください」

 

「お嬢1人では行かせられん。俺 も一緒に行く。武志はこのことを本家に伝え応援を出すように報告するのだ。急げよ!」

 

「は、はい、分かりました」

 

武志は急いで本家に報告するため にその場を走り去った。綾乃と雅人も和麻を探すためにその場を去る。

 

だがこのとき誰3人は気づいてい なかった。

 

自分たちが踊らされていること に・・・・・・

 

和麻を倒すために神凪が動く。そ れは未だに現れていないこの戦いの真の首謀者の考えたレールの上をそのまま動いて入ることということをまだ誰1人として知らない。

 

首謀者にとって神凪は将棋やチェ スの駒でしかなかった。

 

そして神凪は下手したら和麻だけ でなく、和樹たちをも敵に回しかねないという事もまだ

気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

あとがき

バッピ〜、レオンで〜す。

今回の主役は千早で決まりだ!

ヒロインの座も不動のものです!

妖魔相手に全く引けをとりませ ん。神凪とは違うんです!

次回ついに和麻と僕が接触しま す。4年 ぶりの再会です!



BACK  TOP  NEXT



inserted by FC2 system