第1部   〜動き出す運命〜

 

 

 

 

第19話 知らない真実

 

 

源氏は部屋へと入ると腰を下ろし た。

 

その後に続くようにレオンが部屋 へと入り和樹の側へ腰を下ろす。

 

「わざわざお越しいただき申し訳 ございません」

 

重悟は源氏に頭を下げる。

 

千早と綾乃の治療の間、レオンと 話をし、源氏を呼ぶことになったのである。

 

源氏を呼ぶといったのはレオンで あった。

 

もはや神凪だけでは収拾がつかな いとレオンは重悟に言い式森家が動くしかないと判断したのだ。

 

重悟もそれを了承した。そして式 森家へ行き源蔵、源氏に事の次第を報告したのである。

 

源蔵は式森家での指示を出すこと になりそして源氏が動いたのである。

 

「構わん、和樹たちも関係してい るじゃ。して、風牙衆はどうした?」

 

「すぐに拘束するように言いまし たが、すでに・・・」

 

重悟は申し訳なさそうに源氏の問 いに答えた。

 

「そうか、だがそれを悔やんでも 今は仕方が無い。わしの方にも落ち度がある、重悟お前はよく動いてくれた」

 

「はぁ・・・申し訳ありませんで した」

 

だが重悟の顔は晴れることは無 い。

 

「重悟、資料はできておるか?」

 

「はい、周防」

 

「はっ、ただいま」

 

重悟に呼ばれ、男が1人ファイル を手に入ってきた。

 

「こちらです。どうぞ」

 

重悟に1冊、源氏に1冊、和麻と 和樹たちに1冊ずつ配り重悟の後ろに座る。パラパラとページをめくり写真を見つけた。

 

「和樹、和麻、レオン、カイ、ど うだ?」

 

源氏が写真を見る4人に問う。

 

「10年前の写真しかなくすまな い。判るかどうか・・・」

 

「間違いないな」

 

「確かにこの顔が大人になった感 じだ」

 

「私も間違いないと思う」

 

「・・・同じです」

 

和樹は写真を見て何かを思い出し たような顔をしたがすぐに冷静に答えた。

 

(結果的に僕は彼を救う事はでき ず、苦しめる結果になったというわけか・・・)

 

和樹は写真に写る顔、風巻流也の 顔を見て心の中で思った。

 

「レオン、持ってきた資料を配っ てくれ」

 

「わかった」

 

源氏に言われレオンはファイルを その場にいた皆に配る。

 

「和樹、Jからわしらに送られて きた。どうやら、お前の考えは間違いないそうだ」

 

「わかった」

 

和樹は源氏の言葉に返事をする。

 

「主犯は風牙衆で間違いない」

 

「Jってやつから受けた和樹の情 報は当たってたってことか」

 

重悟の言葉を聞き和樹から事前に 話を聞いていた和麻は式森家の情報収集の凄さに感嘆する。

 

「ちょ、ちょっと待って情報って 知っていて何も言わなかったの!?」

 

和麻の言葉に綾乃が噛み付いてき た。

 

知っていながらなんで言わなかっ たのか、言っていたら防げたのではと攻め立てようとしてくる。

 

「確証が無かったから下手な行動 は取れなかった。風牙衆が妖魔たちに旨く利用されているとも考えられたし曖昧な判断は出せなかった」

 

「情報も何も、人の話を聞かない で暴走してたのはどこの誰だよ? 宗主だけが冷静に動いていたって誰かさんや今どこかに逃げている前宗主や分家の連中が好き勝手動いて、狭い視野で物事判 断して先走ってたんだ。話を聞かないで攻撃しときながら今更攻められる筋合いはねえよ。どの道教えても宗主以外はまともに考えもしないだろうし信じもしな かっただろうしな」

 

和樹を援護するように和麻は綾乃 を睨みながら言う。

 

自分の話を聞かないで一方的に攻 撃して暴走しといてよくそんなことが言えるなという顔だ。

 

「目的はおそらく風牙衆が崇めて きた神の復活、いや、完全復活といったほうが今は正しいか?」

 

「か、神ぃ〜〜〜!? なんで風 牙衆にそんなものがいるのよ!?」

 

レオンの言葉に綾乃が甲高い声を あげ再び反応した。

 

撃てば響くとはまさに綾乃のため にあるような言葉である。

 

だがこれには和麻、千早、カイ、 凛、沙弓も驚いたような顔をしている。重悟は話をしているレオンに驚いた顔をしている。

 

源氏と和樹は冷静にしているとこ ろを見るとどうやら風牙衆についても神についても知っているようである。

 

「レオン、神って一体どういうこ とだ?」

 

「私から説明する。源氏殿、レオ ン、和樹君には私の説明で抜けているところがあったら補足してほしい」

 

和麻の問いに重悟が答えた。

 

「そもそも風牙衆は神凪と祖を同 じくするものではない」

 

(だろうな)

 

和麻はその言葉に納得できた。炎 を操るものと風を操るもの。

 

力の質も違えばその強さも違い過 ぎている。同族と言うよりも神凪が風牙衆を吸収したと考えれば自然に思える。

 

「300年前のことだ。風牙衆は 強大な風を操る一族として栄えていた。いや、暗躍していたというべきかも知れんな。暗殺、誘拐、破壊工作、その他にも金さえ積めば何でも請け負い躊躇なく 実行する闇の組織だったらしい」

 

その当時は神凪だけでなく他の一 族、組織も手が出せないほど強力な力を持つ組織だった。

 

和麻のような精霊王がいたわけで はないだろう、そのような集団に精霊王が力を貸すわけがない。だがそれでも最強集団であったことは間違いない。

 

「しかしあまりにも残虐な行為が 多すぎたため、幕府から神凪に討伐命令が下ったのだ。激しい戦いの末、ついに我々の先祖は風牙の力の源を封じた。そしてその大半の力を失った風牙を下部組 織として神凪に吸収したのだ」

 

「・・・その力の源っていうのが 神って言うわけか」

 

「そういうことになる」

 

皆、重悟の言葉を聞き大まかでは あるが風牙衆の考えていることを理解できた。

 

おそらく何らかの原因、きっかけ があり神の力を風牙は手にすることができた。完全ではないのだろうがそれでも反乱を起こすだけの力を風牙は手にしたのだろう。それで無くとも風牙衆は神凪 に対する不満、怨み、憎悪はいつ爆発してもおかしくないものだったのだが・・・

 

それに自分を封印した神凪を倒す のに神が力を貸すのは考えられないことではない。

 

「それで封印を解くのに煉がいる というわけか・・でもよ・・・」

 

「俺も疑問がある。一体神凪は 300年前どうやって神を封じることができた?」

 

和麻とカイは同じ疑問を持つ。

 

人が神を封じることはできない。 どれだけ力を手にしたところで人には超えられない一線が神との間にはある。

 

ここで言う神とは、一神教におけ る造物主のことではなく、いわゆる超越存在(オーバーロード)の総称である。

 

文字通り人間を超越しているから こそ神なのであって、逆に言えば人間に封じられる存在など神ではない。

 

『人が神を封じる』という言葉 は、それ自体が定義上の矛盾であると言えた。

 

「その辺りの伝承は失われておる のではっきりとしたことは分からんが・・・・・・・・・たぶん精霊王の御力を借りたのではないかな」

 

確かに神の領域にある力を有する 炎の精霊王ならば、同等の存在である風牙の神を封じられるかもしれない。

 

「まあ仮に300年前の宗主が精 霊王と再契約したとする・・・だけどよ」

 

和麻が重悟の言葉に疑問を述べ る。

 

「精霊王が力を貸そうがそれを使 うのが人間である以上、神を越えることは不可能だぜ。精霊王の直接召喚でもやらかしたか?」

 

精霊王と誓約した和麻だからこそ 考えられる疑問である。

 

自分がどれだけ精霊王の力を使お うとしても半分もその力を使うことはできない。そこから先は人間が踏み込めない力の領域である。

 

それ以上力を使おうとすれば体が それに着いてくる事ができずどうなるか考えも着かない。

 

もし神を封じるなら精霊王自らが 神を封じたとしか考えられない。

 

「―――――そ、そんなことでき るの?」

 

今まで大人しく聞いていた綾乃が 恐る恐る聞く。

 

直接精霊王を降臨させるなんて離 れ業を超えた奇跡の領分である。

 

「さあな。やったことないし、そ んな状況になったことは今までないからな。可とも不可とも言えない。ただ言えるのはそれに耐えることのできる身体を作り上げてなければそいつはハリを刺さ れた風船のように木端微塵にはじけ飛ぶぜ。それこそ跡形もなくな」

 

「僕もそう思う。試してみようと かそんな考えですることでもないし、今までそういう状態になったことがなかったし、それだけの力を僕はまだ持っていないから」

 

「へぇ〜・・・・・・え"っ!?」

 

和麻が精霊王と契約したことは聞 いている。だが和樹の『試してみよう』ってつまりやろうとしたら試せるということでは・・・?

 

(和樹君って一体・・・)

 

綾乃が疑問を口にしようとするよ り早く源氏が話をし始める。

 

「この封印に関することは神凪家 も宗主にだけ伝えられてきた秘伝であったが・・・時代の流れと共にそれも薄れ重悟には封印のことだけしか伝わなかった」

 

重悟が宗主となるまでに頼道のよ うな者が神凪に存在したためにその言い伝えは次第に忘れ去られ、重悟はその事実を書物によってしか知ることができなかった。

 

そのため封印が破られたときの対 処法、封印に関する知識は全くない・・・・・・封印が破られた時点で神凪はそれに対処するすべは何もない。

 

神はその怒りを神凪へと向け、神 凪は確実に滅ぼされる。

 

それだけの力を神と風牙は持って いるのだから。

 

「だけど煉は封印を解くにしても 何で必要何だ。生きたまま連れていったってことは神に捧げる供物なんてわけではないだろ」

 

和麻は冷静に話をする。

 

神凪がどうなろうと自分には関係 ない。

 

「神の封印を解くには煉ではなく 煉が使う炎が重要な存在だ。封印を解くことができるのは神凪の直系が必要なのだ」

 

「それはどういうことだ?」

 

「神凪の直系でなければ封印は解 除できぬ。神を封じた封印は三昧真火のなかにあるからだ」

 

三昧真火とは、一切の不純物が無 い『火』のエレメントの結晶。地上に存在するはずの無い純粋な炎である。

 

それに触れたものはどんなもので あれ、一瞬で焼き尽くされる。跡には灰さえ残らない。

 

そんなものを掻き分けて封印にた どり着くことができるのは神凪の直系か精霊王を越える2つの炎の1つ黒炎を手にした和樹くらいだろう。

 

「だけど、それなら炎を吹き飛ば してしまえばいい話だろ。俺なら三昧真火だろうが簡単に破ることできる、もちろん和樹、レオン、カイ、そして奴らも・・・・・・・・・おい、もしかし て・・・」

 

「そう、和麻が考えた通りじゃ。 炎自体が神を封じている封印というわけじゃ」

 

和麻が気づいたことを源氏は肯定 した。

 

「そう、炎を散らせば封印ごと神 の力は消える。ゆえに炎の加護を受けたものでなければ、封印を解くことができんのだ」

 

時の宗主は、封印に何重ものセイ フティをかけたのだ。封印の存在その物を秘し、風牙衆を吸収した経緯も記録から抹消した。あたかも神凪と風牙が、その発生から一つであったかのように。

 

そして封印は決して風牙の手では 解けないようにした。そこまでしなければ、風牙衆の滅亡を望んだ幕府を納得させることはできなかったのだ。

 

「解き放たれた神が最初に目にす るのは、自分を封じた神凪一族の末裔である、煉・・・・・・」

 

「煉がどうなるかなんて言うまで もないか」

 

重悟の言葉を和麻が引き継ぐ。

 

「そして目覚めた神は破壊の限り を尽くす。その最初の犠牲者は間違いなく神凪一族全ての人間じゃろう」

 

源氏の言葉は重悟におもく圧し掛 かった。

 

「なるほど な・・・・・・・・・ったく、300年前に皆殺しにしとけば面倒なことにはならなかったのによ」

 

「確かに和麻の言う通りかもしれ ないな」

 

「風牙衆を利用してやろうとし た、神凪の傲慢さが招いた当然の結果だ」

 

和麻、レオン、カイは平然と言 う。

 

「あ、あんたら・・・人としての 情ってもんが無いの?」

 

綾乃の口調は、明らかに軽蔑を隠 そうとしていなかった。まあ、レオンとカイは人間でなく式神だが・・・それでも心は人間と変わらない。

 

「ふっ・・・ふははははははは は!」

 

レオンは綾乃の言葉が余りにも可 笑しかったのか声を上げ笑い出した。

 

綾乃はその姿を見て言葉を失って いる。

 

「だ、駄目だ俺も絶えられな い・・・くっはははははは・・・・・・まさかお前からそんな言葉が出るとは思っても見なかったぜ!」

 

和麻も笑い声を上げて腹を押さえ ている。

 

「俺も神凪の人間から人に道を説 かれるとは思わなかった」

 

3人はそれぞれ綾乃の言葉を馬鹿 にするように笑みを浮かべている。

 

自分たちを棚に上げてよく人のこ とを攻めることができるなと3人は思った。

 

源氏、和樹、千早は何も言わない がそれでも内心はどう思っているか分からない。

 

和麻は笑うのを止め綾乃に皮肉を こめて言う。

 

「情も何もお前まさか、神凪が善 意や何かで風牙を救ったとでも本気で思ってんのか!?」

 

「な、何よ。違うって言うの?  それ以外無いでしょ!?」

 

「それ以外にあるだろ。風は炎を 煽ることができる。その上術者としては自分たちよりも格下。手下・・・いや奴隷って言ったほうがいいか、利用するには最適な存在だよなあ?」

 

その言葉は明らかに重悟に向けら れていた。今更飾っても無意味だと判断したのか、重悟は率直に真実を告げる。

 

「そうだ。我々の先祖は人とし て、術者としてではなく道具として風牙を手に入れた。便利な道具としてな・・・・・・」

 

「そんな・・・・・・・・・」

 

「今回の事件は例え神が関わって いたとしても、原因を作り出したのは間違いなく神凪だ。力が自分たちより弱い、先祖がしたことを攻めつつけて風牙を見下し続けてきた」

 

いつになく感情的に和樹は重悟と 綾乃に向けて言い続ける。

 

自分も辛い経験をした、風牙の立 場がどんなに苦しいことなのかを知っている和樹だからこそ言えるのかもしれない。

 

それを知っているからなのか源 氏、和麻、レオン、千早は和樹を止めようとはしない。

 

「力が無ければ何もできないかも しれない。だけど力だけで全てが旨くいくなんて考えたら大間違いだ。情報が無ければ動けないときのほうが多い。大勢の敵を相手にするときに力だけで何とか なるわけがない。今回の事件だって情報がなかったら何も解決なんてするわけがない」

 

綾乃は和樹の言葉に何も反論する ことができない。

 

「今は情報が世界中で飛び回って いる時代なんだ。力だけに頼り続けていたら確実に神凪は滅びる。今回の事件がその結果だ」

 

「そう言うことだ。風牙は神凪に 奴隷として300年間もいいように扱われてきた。炎を使えなかったら能無し、自分たちは選ばれた者、風術は下術だとか言って馬鹿にし続けてきたんだ。気に 入らないからとか、少しでも反論したら仕打ちと言ってそいつらを痛め続けて殺したりまでしてきたんだ。流也のことだってそうだ・・・・・・・・・なぁ?  宗主」

 

流也の名前が出てきた瞬間、重悟 は表情が変わる。

 

だが重悟の変化に気づかない綾乃 は和麻に突っ掛かった。

 

「流也は病気だったから関係ない でしょ。むしろ妖魔と契約したりなんかして、神凪には・・・」

 

ごっ!

 

「身体を焼かれて、虐待されて殺 されかけてたんだぞ!!」

 

和樹は拳で畳を殴り綾乃に向かっ て殺気を押さえることなく怒鳴りつけた。

 

「兄さんと同じように分家の人間 から炎で身体を燃やされ、暴行されて意識がなくなっても虐待されていたんだ。笑った顔で生きる価値もないゴミだなんて言って炎を放っていたんだ!」

 

『なっ!?』

 

和樹の言葉に綾乃だけでなく凛、 沙弓も驚愕の表情を浮かべた。

 

「そして重悟おじさんが不在だっ たことを良いことに事件を隠蔽しようとまでしたんだ」

 

「そ、そんな・・・」

 

「綾乃黙れ、すべて和樹君の言っ ていることは事実だ」

 

『そんなことがある訳ない』と言 おうとした綾乃に重悟が和樹の言葉を認めた。

 

「流也が虐待を受けたときに偶然 にもそのとき和樹君が止めに入って一命は取り留めた。だが2度と立ち上がることもしゃべることのできない身体になってしまった。兵衛がそれを周りから私に 言うのを知らせないように脅されたことも事実だ。私はそれを和樹君から聞かされ始めて兵衛の下に行ったが流也には会わせてもらえず、何もしてやることがで きなかった。虐待に関わったものは罰を与えたがそれも周りの者が勝手に許してしまい私は罰という罰を与えることもできないまま・・・何もできなかった」

 

「う、うそ・・・」

 

「全て事実だ」

 

重悟は隠すことなく話した。

 

「分かっただろ、神凪はそれだけ のことを風牙衆にしてきたんだ。反乱されたって何の文句も言えないことをな。因果応報、自業自得、身から出た錆ってところだな」

 

和樹も和麻も風牙を援護するわけ ではない。あくまで外からの目で言っているだけでありどちらにもついているわけではない。

 

「な、何他人事みたいに言ってる のよ! だからって煉が殺されてもいいの!? 弟でしょ!!?」

 

2人が言っていることは間違って いない。だがだからといって煉が死んでも良いわけではない。

 

「それに煉だって神凪の術者だ わ。脅されたってあんな奴に従ったりはしないわよ!」

 

「無理だな」

 

「無理だね」

 

「無理だ」

 

「無理だ」

 

「無理ね」

 

「無理ですね」

 

「無理よ」

 

「何でよ!!?」

 

7人の回答に綾乃は喧嘩腰に叫ん だ。だがそんな綾乃を相手にする者などこの場にはいない。

 

「はぁ〜〜、やかましい奴だな。 千早の爪のアカでも煎じて飲んでみるか。千早の何百分の・・・いや何千分の1ぐらいはおしとやかになるかもしれないぞ」

 

いた。思いっきりからかっていま す。

 

「大きなお世話よ!!!」

 

「大口開けて叫ぶとその年で顔に しわができるぞ」

 

「キシャアアアアアアアア ア!!!」

 

本日3回目の『キシャー!』でご ざいます。

 

「和麻、話をそらすな」

 

「す、すみません」

 

源氏の睨みと一言で和麻は頭を下 げて詫びる。

 

「つまりだ。煉は才能とかはとも かく、今の段階では12歳の修行中のただのガキに過ぎない。操るのなんて訳ない。1日あれば親だろうが何だろうが殺すように差し向けられる・・・だろ」

 

和麻は和樹に同意を求めた。

 

「兄さんの言う通りだよ。陰陽術 の中に相手を操るものがある、それを使えば今目の前で綾乃ちゃんに重悟おじさんを殺すように差し向けることもできる」

 

和麻と和樹の冷静な指摘と術の存 在を示され、神凪父娘は言葉をなくし沈黙する。

 

和樹の言った方法の他にも手段は いくらでも出てくる。神凪の強大な力は血脈に宿るものである。肉体さえ本物ならば、自我が消失していようと、妖魔が憑依していようと、精霊は煉の身体を護 るだろう。

 

「・・・・・・・・・急がねば な。封印が解かれたら、もうどうにもならん。その前に煉を救い出すのだ」

 

「ファイトー。まあ、せいぜいが んばってくれ」

 

和麻は他人事のようにいう。

 

『そっちはそっちでやってく れ!』という感じだ。俺は和樹側に付くといっているようにも見える。

 

「和樹、お前はどう動くつもり だ。お前の考えを聞きたい。孫でなく1人の術者として、式森家、評議会のメンバーの1人としてのお前の意見を述べてみろ」

 

源氏が和樹の考えを聞く。和樹も 式森家の中では一人前の術者であり、実力も経験もある。

 

重悟も和樹の答えが気になるのか 耳を傾ける。

 

「なら話させていただきます。私 の考えは今回は式森家の人間だけで動くべきだと考えています。和麻兄さんが入ってくれるなら、僕、そして兄さん、レオン、カイ、千早、このメンバーで今回 は動き、もしものときを考えその後ろにJたちを入れたメンバーをつけるべきだと思います。そしてもし動けるならば貞伸おじさんたちをメンバーに入れられれ ばなんとかなるかと」

 

「うむ、わしも和樹の考えには異 論はない。今回はお前らだけで動くのが最善じゃろう。じゃが貞伸たちには別の方で動いてもらっておるから後衛に入れるのはJたちしか無理じゃ」

 

「ならそのメンバーでどうかお願 いします」

 

2人の言葉に重悟は肩を落とす。

 

神凪とは完全に離れたところで話 をしている。今回の件は神凪内での事件が大きくなったものそれを神凪の人間無しで解決したとなったら神凪家は本当に終わりである。地位も名誉も何もかも失 う。

 

だが和樹や源氏が神凪の人間を入 れない理由も分っていた。

 

しかし何とか話をしようと源氏と 交渉しようとする。

 

だがそんな重悟の心中を全く考え ない人物がここにはいた。

 

「さっきから聞いていればなんな のよ、あんたたちは!! 偉そうにしちゃって!!! 何様のつもり!!?」

 

綾乃は和樹と源氏を指差し、罵声 を浴びせた。

 

綾乃のとんでもない行動に重悟は 人生で一番のがけっぷちに追いやられた。衝撃のあまり体が固まってしまっている。

 

そんなこと露知らず、綾乃の罵声 は続く。

 

「確かに間違って和麻を犯人扱い したり、攻撃したりしたけどこんな非常時のときまでそれを恨んで手を貸さないなんて!!! 今だけでも水に流してくれたって・・・」

 

「馬鹿者がぁあああああああああ!!!!」

 

「ひゃっ!」

 

罵声を続ける綾乃に噛み付かんば かりに重悟が口を開け怒鳴りつけた。その声の大きさは雷が目の前に落ちたと錯覚しかねないほど凄まじいものだった。

 

声の衝撃波がおき綾乃の身体を軽 々と吹き飛ばす。

 

起き上がった綾乃は鼓膜が麻痺し 脳が揺さぶられている。だがそれも一瞬にしてさめた、フラフラする中顔を上げた綾乃は怒りのあまりに顔を赤黒く染め射殺さんばかりに自分を睨みつけている 重悟の姿だった。その姿は父親の姿ではない、綾乃は自分の目の前に鬼が現れた、父の皮を被った鬼が現れたと思った。

 

「お、お父様ぁ・・・」

 

何故かはわからない、だが自分が 父の機嫌を父の理性を修復不可能なまでに破壊しつくしたことだけは嫌なほど理解したのだろう。

 

逃げ出す機会を伺うように腰が引 けている。

 

だがそんな機会が訪れるわけがな い。

 

「こ・・・の・・・大馬鹿娘がぁああああああああああ!!!」

 

「ひっ・・・」

 

いつもは優しい、というか甘い父 に容赦の無い叱責を受け綾乃は腰が抜けたのか畳に尻餅をついて呆然としていた。

 

今にも泣き出さんばかりに目を潤 ませ綾乃は完全に腰が抜けている。

 

重悟は源氏に向かい畳を突き破ら んばかりに額を擦り付け・・・いや叩きつけたといったほうがいいだろう、自分の娘の不始末を心の底から詫びた。

 

「誠に! 誠に、申し訳なく、本 当に非常に申し訳なく、神凪の不始末をはじめ、今の娘の源氏殿への数え切れないの無礼の数々、一体何とお詫びしてよいのやら、本当に申し訳なく心の底から 思っている次第であります!!!」

 

重悟は顔をドラえもんよりも青く し源氏へ頭を下げる。

 

「重悟、頭を上げよ。今はそんな ことをしているときではないのだぞ」

 

「は、はい!」

 

この場から逃げ出したいのは綾乃 ではなく重悟のほうであった。

 

自分が尊敬して止まない源氏、名 のある術者の中で知らない者はいないと言われるほどの実力、支持力、人脈、知恵、洞察力、功績、その他全てを兼ね備えている源氏。

 

自分が生涯の師と決めた源氏を前 に空前絶後の大失態を演じたのである。穴があったら蓋をして一生出たくないほどである。

 

「あーーーーやーーーーのーーーーー」

 

「も、申し訳ありません!!」

 

『はぁ〜〜・・・』

 

神凪親子を見て一同は深い溜め息 をついた。その溜め息は酷く疲れた溜め息である。

 

いっそ、この場を発ち自分たちだ けで話し合いをした方がいいと本気で思った。

 

「どうやら綾乃は勘違いしておる ようじゃな」

 

源氏は神凪親子に向かい語り始め る。さすがは長い間生きてきた術者、心の構えは簡単には崩れない。

 

「わしも和樹も神凪に力を貸さな いといっているのではない」

 

「・・・じゃ・・・なん で・・・?」

 

綾乃は重悟、源氏の表情を見なが ら質問した。

 

「・・・なら綾乃、お前に聞こ う。神凪に妖魔、風牙衆と戦えることができる人間は何人おる?」

 

「えっ?」

 

源氏の言葉の意味が綾乃は分から ない。

 

「はぁ〜、源氏爺。説明した方が 早いんじゃないか?」

 

『ぽかぁ〜ん』とする綾乃を見て 和麻が源氏に言う。

 

「うむ、和麻」

 

『説明してやれ』というふうに源 氏は和麻を見た。

 

「言いか良く聞け。はっきり言っ て、今神凪にはあの妖魔とまともに戦える人間なんていない。分家の人間は誰も黄金の炎を使えない、さっきの戦いで妖魔の風の刃、1つでさえまともに止める ことができない上に、戦う前から逃げ出している時点で戦力外どころか術者として数えてない」

 

「厳馬は入院中、重悟はとても戦 える身体じゃない。力もこの4年の間に落ちている。さっきの戦いでそれが十分過ぎるほど明らかだ。動くことはできない」

 

レオンが重悟を見ながら言う。

 

「煉は攫われの身。宗家の人間の ほとんどが前の馬鹿宗主のせいで使えない連中ばかりだ。で、今現在、神凪で戦える人間、動ける人間は・・・誰だ?」

 

「・・・・・・・・・あ、あたし だけ・・・」

 

周りの人間が自分を見ていること に気づき自分を指差しながら綾乃が呟いた。

 

「まあ、そう言うことだ。だが炎 雷覇を持っているそのお前でさえ妖魔相手には全くの無力、妖魔を相手には戦力にならない。力を貸す貸さないの問題以前の問題だ。本当に戦うのは俺、和樹、 レオン、カイ、千早、俺ら5人が主力戦力だ」

 

和麻はこんなことも気づかないの かという腹立たしさを押さえながら綾乃に言う。

 

仮に綾乃を連れて行ったとしても 足手まといになりかねないし、相手は確実にそこを攻めてくる。自分たちはそれを助けている余裕があるとはいえない。

 

「妖魔の数や風牙衆を相手にする 異常、5人ではきついがそれでも1人1人の力は妖魔と同等かそれ以上、経験も十分だ、足を引っ張り合う心配はしなくていい。だがお前が着いてきたらメン バーの中では最弱だ。猫の手も借りたい状況だが、足手まといはいらん。相手はそこを弱点とばかりに間違いなく攻めてくる、悪いがそれを助けてる余裕はな い。だが気にするなって言うのも無理だ。お前を気にすることで俺たちが戦いに集中できないなんて事はごめんだ」

 

和麻の言葉に綾乃は立ち上がって 反論した。

 

「じょ、冗談じゃないわよ! 私 はそんなに弱くないわよ。足手まといになんてなるもんですか!!」

 

今まで修行はしてきた。修羅場も 潜り抜けてきている。戦えるだけの力は自分にもあると綾乃は豪語する。

 

「そうか・・・でも俺の見る限り お前はそこの2人より弱い。さっきの戦いを見ていて確信したぜ。お前の戦い方には斑がある上に攻撃があまりにも単調だ。何かが秀でているわけでもない。炎 も和樹から見れば蝋燭の炎のようなもんだ、はっきり言って雑魚以外にはまるで意味がない。連れて行くなら2人を連れて行ったほうが戦力になるぜ」

 

凛と沙弓を指差しながら和麻は綾 乃に言った。

 

「ば、馬鹿にしないでよね! 炎 雷覇を持つ炎術師のあたしに勝てる人がそう簡単にいるわけないでしょ!!」

 

「・・・でたぁ〜・・・神凪名 物、炎術師最強主義」

 

和麻はまだそんなこと考えている のかと呆れながらそう呟いた。これだけ自分の力のなさをこれだけ味わっておきながら未だに分かっていないのかと。

 

「和樹、お前はどう思う」

 

和樹へと質問する。

 

「えっ、え〜と・・・綾乃ちゃん の本当に戦っているところを僕は見てないからはっきりとは言えないけど、総合的には2人のほうが上だと思うね」

 

「なっ!?」

 

和樹の言葉に綾乃はカチーンとき た。なら自分が上ということを証明してやろうと2人を睨みつけて叫ぶ。

 

「ならどっちが上かはっきりしよ うじゃないの。私と2人が勝負して・・・」

 

「馬鹿者が!!」

 

「アヒャン!」

 

再び重悟が綾乃を怒鳴りつけた。

 

「今はそんなことしているときで はないだろうが! お前はそんなこともわからんのか!?」

 

重悟に怒鳴られては、綾乃は引き 下がるしかない。納得のいかない顔ではあるがしぶしぶ腰を下ろした。

 

「源氏爺どう思う?」

 

和樹は源氏の目を見ながら再び意 見を聞く。

 

「わしは2人の実力を全く知ら ん。和樹、今回はお前が決めるがいい。お前の決定がわしの決定じゃ。責任はわしが持とう」

 

「・・・・・・」

 

和樹は深々と頭を下げた。しばし 考えるような顔をすると凛と沙弓の方へ顔を向けた。

 

「はっきり言わせてもらう。凛 ちゃんと杜崎さんはこれ以上関わらないほうがいい。次は確実に命がけの戦いになる、さっきは成り行き上手を貸してもらったけど、これ以上は強要しない。今 回はいつもの妖魔退治とは全く違う。2人にもしものことがあったら僕は責任を取ることができないし、神城家や杜崎家には今回のことは関係がないことだ」

 

「・・・私も同じだ」

 

レオンが2人へ語りだす。2人は レオンを見ながら話を聞く。

 

「2人の実力はサーポートについ ている私がおそらく1番知っているだろう。今の段階でなら全力の状態の2人の力が合わされば千早レベルくらいの相手ならいい戦いをすることができるだろ う。和麻の言う通り間違いなく戦力になるが妖魔を相手には戦えたとしても勝つことは到底できない。それは自分たちが1番分かっていることだ」

 

2人はレオンから目を離さない。

 

「悪いことは言わない。今回は 「嫌()()」・・・」

 

レオンの言葉を打ち消すように2 人は拒否した。

 

「悪いけど私は着いて行くわ」

 

「私も着いて行きます」

 

「・・・本気か」

 

レオンは2人と視線を合わせなが ら聞き返した。

 

「家の事なら気にしないでいい わ。私個人の考えで着いて行くって決めた、だから何が遭っても家には文句は絶対に言わせない」

 

「もともと家の事は相手にしてい ない。向こうだって私にわがままなことを言ってきているんだ。なら私のわがままを向こうも認めざるおえないはずだ。私は1人の退魔術師としてこの件に手を 貸す。もちろん何があろうと覚悟の上だ。自分の言ったことは自分で責任を取る」

 

「死ぬかもしれないんだぞ。それ だけの覚悟はあるのか?」

 

レオンは殺気混じえて2人に言 う。できれば2人を連れて行きたくないのだ。

 

2人はその殺気に耐えながら迷い なく答えた。

 

「覚悟している」

 

「私も覚悟の上で言っている」

 

2人はレオンに何度も助けられて きた。それは1度や2度ではない、仕事のときもレオンが後ろで自分たちを見ていてくれたから自分たちは全力で戦えたのだ。

 

だからこそ今度は自分たちが力に なりたいと強い意志を持ってレオンの殺気に耐えながら自分の考えを貫いている。

 

以前の自分なら耐えられなかった だろうがこうして耐えているのも全ては自分を支えてくれていた和樹たち、何よりレオンのお陰なのだ。

 

2人の押しの強さにレオンは、説 得は無理だと確信した。

 

「わかった。なら私は止めはしな い。だが命を棄てることは絶対に許さない。それだけは覚えておけ」

 

「分っている」

 

「覚えておくわ」

 

レオンは和樹、和麻、源氏を見て 責任を持った声で言った。

 

「2人は連れて行く。もしものと きは私が責任を持って2人を護る。源氏、和樹の責任ではなく私の責任として覚えておいてほしい」

 

「・・・分かった」

 

「俺もお前が言うなら止めない ぜ。戦力は多いほうがいいしな」

 

「よかろう。レオン、お前の言葉 確かに受け取った」

 

和樹と和麻はレオンの言葉に聞き 反論しない。源氏もレオンに答え、視線を合わし頷いた。お前を信じているというそんな視線を感じた。

 

「で、綾乃お前は命を掛けるだけ の決意があるか?」

 

和麻は綾乃を鋭い眼光で睨みつけ ながらその意志の強さを計った。

 

「行くに決まってるでしょ!  護ってもらうほど私は弱くないわよ!! 神だろうが何だろうが引いてたまるもんですか!!!」

 

炎雷覇を掲げ綾乃は高々と宣言し た。

 

(まあ、殺気に耐えられるなら一 先ず大丈夫だろう・・・だがな・・・)

 

和麻が気にしていたのは綾乃の心 だ。

 

妖魔を相手に負け続けたことで恐 怖心があるのではと考えていたが見た感じではその心配は無いようである。

 

和麻は横の和樹を見る。

 

(今の所心配はない。けどこれか らどうなるかは分からない・・・)

 

念話で和麻に答える。どうやら和 樹は和麻が考えていたことに気づいていたようである。

 

今まで負けたことのない綾乃に とって強い相手に負けてその心を砕かれかねない。今は何ともなくてもこれから先どうなるかは2人にも分からない。

 

だがそれを乗り越えなくては、綾 乃は成長しない。

 

(連れて行こう。僕が責任を持 つ)

 

和麻はただ頷いた。

 

「わかった。3人もメンバーに入 れて動く。源氏爺」

 

「後の事はわしと源蔵に任せてお け、お前は風牙の神と妖魔のことだけに集中するがいい。今回の影響を受け動き出した妖魔たちはわしらが何とかする」

 

「はい。責任を持ち、任務を果た すことを約束いたします」

 

和樹は源氏に頭を下げ今回の仕事 を一任された。

 

千早、レオン、カイも源氏へと頭 を下げ今回の自分たちに課せられた責任の重さを改めて戒める。

 

凛と沙弓も源氏に頭を下げた。

 

「源氏爺・・・いや、師匠」

 

昔、修行のときに呼んでいたよう に師匠と呼び、源氏に体を向け視線を合わせる。

 

「4年前何も言わずに勝手にいな くなったことをお詫びします。そしてその事を心から反省し、責任を持って今回の自分に課せられた使命果たします」

 

和麻は源氏に深々と頭を下げた。

 

(あ、あの和麻が頭を下げて る・・・明日は雪よ、いいえ地球の破滅よ・・・)

 

その姿を見て綾乃が言葉を失って いる。だが重悟は和麻が源氏に対して和麻がここまでの態度をとるか少なからず理解できた。

 

「・・・和麻」

 

「はい」

 

和麻はゆっくりと源氏の顔を見 た。

 

源氏は和麻と視線を合わし曇り無 き眼で成長した和麻を見て言った。

 

「再びお前に会えて嬉しく思う ぞ」

 

「・・・はい」

 

「お前にしかできないやり方で和 樹たちを支えてやってくれ」

 

「はい」

 

和麻は再び頭を下げた。もし源氏 と2人であったら確実に泣いていただろうと思った。

 

「重悟、場所はわしが知っておる 場で間違いはないか」

 

「はい」

 

決戦の地。

 

今回の決着をつけるべき戦いの 場。

 

「風牙の神が眠る場所は京都で す」

 

京の北西、炎神・火之迦具土を祀 る山。そこが神凪の聖地。地上にありて、天界の炎の燃える契約の地。

 

 

 

300年の因縁を巡り、2つの血 族の存亡を賭ける―――決戦の地。

 

 

 

―――風牙の野望―――

 

 

 

―――神凪の存亡―――

 

 

 

―――それぞれの決意―――

 

 

 

本当の戦いの火蓋は今切って落と される。

 

 

 

 

 

 

 

『・・・神凪が動き出した』

 

風牙の神は炎の中から己の前に集 まっている風牙衆たちへ呟いた。

 

『我を前にして逃げずに向かって くるとは命知らずな者どもよ』

 

「仰せの通りであります、風牙神 様」

 

風牙衆の長、風巻兵衛は神へ向 かって深々と頭を下げた。

 

『だがこれで神凪も終わりよ、皆 の者』

 

『おおおおおおっ!!!』

 

風牙衆は声を上げ神に賛同する。

 

神という絶対的存在が風牙衆の団 結力を上げ、神凪に対する今までの怒り、恨みが解き放たれ今こそ報復せんといきり立っていた。

 

『よいか! 神凪は300年前我 ら風牙衆の力を恐れ、神である我を封印しそなた等の祖先を自分たちの配下へと入れ支配するという行為を行った。だがそれはそのとき我が力と風牙の力が神凪 に負けたからだ。これは紛れもない事実である。しかし今の神凪の術者共の姿を見るがいい。己の力を過信し、力を失い始めた。もはや炎術師としての力など奴 らにはない』

 

その通りだと皆声を上げ神の言葉 に賛同した。

 

『だが、それでも奴らは自分たち は選ばれし術者といい、『神凪でない術者は、術者ではない』などと術者として許せぬ言動。さらに今風牙を奴隷として扱う神凪を許しておくことはできぬ』

 

『うおおお おぉぉぉぉぉっ!!!』

 

風牙衆は神の言葉に天まで届かん ばかりの歓声で答える。

 

神凪の配下へとされ300年、そ の間に何人の術者が神凪の術者によって殺されてきたか。

 

神凪のために力を尽くそうが全て は神凪の手柄と風牙を役に立たぬ弱族扱いをし続けてきた。

 

これが許されてよいか。

 

自分たちは戦力さえ神凪には劣る がそれ以外では神凪と同等それ以上の力を持つ存在である。

 

風牙は術者、風を使う風術師の間 では上位の力を持つ存在と自負している。回りもそう見ており、それだけのプライドを持っている。

 

だが神凪はそんな自分たち、さら には術者を術者ではないと言い捨てた。

 

もはや許せることではない。

 

『今こそ神凪に見せつけるのだそ なたら風牙衆の力を、思い上がった神凪を叩き潰し真の風牙衆の力、風牙の神の力を知らしめるのだ!!』

 

神の言葉にさらに結束力は固ま る。

 

『傲慢な神凪の暴挙を我らは許さ ず、今ここに誓いを立てる。今日という日を境に我らは神凪を滅ぼし、風牙の未来のためにその力を遺憾なく発揮する事を!!』

 

『うおおおおおおお おぉぉぉぉぉぉぉっ!!!』

 

皆、手を挙げ、声を張り上げ戦い に向けて誓う。

 

風牙と神凪、どちらかが残り、ど ちらかが滅ぶ。この戦いが終わるにはどちらかが滅びるしかない、それまで戦い続ける。

 

 

 

神凪は己が作り出した風牙という 闇に喰われ滅びるか・・・

 

 

 

風牙は闇を砕かれ徹底的に滅ぼさ れるか・・・

 

 

 

それが運命なのか・・・

 

 

 

300年前と同じように血で血を 洗い憎しみの心を生み出すしかない戦いが今始まる・・・

 

 

 

 

 

 

 

「風牙神様、1つ疑念が・・・」

 

『申してみよ、兵衛』

 

術者たちが下がり兵衛、流也、妖 魔たちだけになり兵衛は神に聞く。

 

「何上、奴らが来るところを攻撃 しないのでしょうか? 乗り物ごと始末してしまえばよいのではと・・・」

 

例えそれで倒せなくてもこちらが 圧倒的有利に戦う事ができ被害は格段に少なくなるだろう。

 

だが神をその考えに首を振る。

 

『無駄な事、奴らはそのような事 では倒せぬ。それで倒せるようならば当に行動しておる』

 

神は和樹の存在を恐れていた。完 全な状態でなければ倒す事のできない相手、黒炎の炎を使う和樹を・・・

 

『神よ、黒炎だけではない。奴ら もいる』

 

饕餮が2人の話へ入ってきた。

 

『幻の召喚獣と言われた地獄の番 犬ケルベロスのカイ、そして我を倒したあの歴史上最強の存在、レオンと今は名乗っているがあいつがいる。『双式の神獣 RCX』奴らを相手に小細工など通 用しない』

 

饕餮はどこか楽しそうに言った。

 

『あいつを倒すのは我だ。それが 叶うなら何でも協力しよう』

 

『好きにするがいい。そして八神 和麻。奴も過小評価できぬ』

 

神は和麻こそ厄介な相手だと考え ている。褐狙を相手に圧倒的な強さを見せたこの男の真の力、その力がどれだけか気になる存在であった。

 

『だが我が完全に復活すれば勝て ぬものなどこの世に存在せぬ。警戒も怠るな、兵衛。そして急ぎ我を復活させよ。奴らの復活も忘れぬな。その身に力を宿し300年の風牙の怨念奴らに見せて やるがいい』

 

「はっ、全ては風牙と風牙神様の ために!」

 

深々と頭を下げると兵衛は消え た。

 

(レオン、再び戦う事ができると は運命とは本当に面白いものよ)

 

目の前に迫るレオンとの戦いに饕 餮は嬉しさを押さえられないでいた。

 

(今こそ我の力、復活するときな り)

 

神も同様に封印が解けるのを今や 遅しと体が疼いていた。

 

 

 

 

あとがき

「レオンです。今回来てくれたの はこの人です」

「『レイガ〜ン!』和麻だ、久し ぶりだな」

「はぁ・・・よかった和麻で」

「綾乃のあとがき出現率が異様な ほど高かったらしいな。何回出てんだ、あいつ?」

「14、15、17、18って出 たから4回出てるよ」

「・・・・・・活躍できてないか らな、あいつ。まあ、ほっといて精霊ニュース行くぜ。この事件を起したのが風牙衆だと分かり式森家から和樹を中心としたメンバーで風牙衆の反乱を抑えるた めに動き出したのである・・・短 いな

「重悟叫びまくってたね。胃に穴 開かないかな?」

「・・・事件が収まったときは胃 薬プレゼントしてやるか? しかし綾乃は暴走することしかできないのか、あの2人はずいぶんと落ち着いてたな」

「そりゃ僕の監督がいいから」

「自画自賛するな」

「和麻は源氏との師弟関係は健在 だったね。どうだった久しぶりに見た、源氏は?」

「どれだけ俺が強くなろうと師匠 には変わりない」【キッパリ】

「・・・空前絶後の言葉だね」

「・・・・・・・・・殴るぞとい うより殴らせろ」

「ヤダ〜よ! ベェ〜〜〜」

「てめぇ〜、殺す!!」

ただ今喧嘩中しばしお待ち を・・・・・・

「・・・というわけで次回も読ん でください」

「ついに俺たちは京都へ、どんな 戦いが待っているか楽しみにしていてくれ」

「「それでは待ったね」」

喧嘩再開!

バキボカガタバキバキダムバ ム・・・・・・(いつまで続くのだろうか・・・・)

 


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