第1部   〜動き出す運命〜

 

 

 

 

第28話 兄弟

 

 

和樹はゆっくりと炎龍覇を正眼に 構えた。

 

「スゥゥゥゥ・・・・・・」

 

静に息を吐きながら和樹は構えた 炎龍覇に普通では考えられないほどの精霊を召喚し始める。

 

(炎龍覇・・・・・・気分は?)

 

(大丈夫です。魔法具の力が見事 に融合しています。これなら戦えます)

 

炎雷覇こと炎龍覇は和樹の力にも 十分耐えるだけの強さを持った。本来ならば力の圧縮に耐えられずに砕け散るところを魔法具の力が押さえていた。

 

「・・・来るぜ」

 

自分たちを取り巻く空気が一気に 苦しくなる。常人ならば発狂しそうなほどの威圧感を和樹たちは感じた。

 

「なんて力と重圧なんだ」

 

「これが神と呼ばれる存在の 力・・・」

 

和麻が上を向くとそれにつられる ように皆、自分たちの上空を見上げた。同時に自分たちの体を細い針が無数に通り抜けて要ったような感覚を覚えた。

 

そこにいたのは4体の妖魔、そし て流也であった人物・・・そうさっきまでは人であったがすでにその姿は人と呼べる姿ではない。

 

風牙の怨念を晴らすために妖魔に 魂を売り、さらに風牙の神に全てを捧げた人間の成れの果て・・・・・・

 

「あれが・・・人であることを止 めた姿・・・・・・」

 

「本当に・・・元人間 か・・・・・」

 

あまりに姿に千早と和麻は自分の 目を疑いたくなった。

 

形は辛うじて人の形を保っている が、筋肉がむき出し脈動し、獣のように鋭い目は本当に人であったかと疑いたくなるほどだ。

 

さらにその身体から感じる力はそ の姿を目の前にしてさらに強まった。垂れ流しにされているのか、力を抑えてなおこの力なのか・・・・・・どちらにせよ、溢れ出し続ける力は留まることを知 らない。

 

「うあっ・・・」

 

「あっ・・あっ・・・」

 

ドサッ!

 

凛と沙弓の2人がその場に倒れる ように座り込んでしまった。

 

2人は足が砂のように崩れていく のを感じた。そしてそのままその場に座り込んでしまい自分の力では立てなくなってしまった。

 

何とか立ち上がろうとしても身体 が全く言うことを利かない。

 

「怖いか?」

 

ギッ!

 

神と視線を合わせてしまった凛と 沙弓から水をかぶった後のように汗が流れ出す。

 

身体が震えだし次第に激しくな る。

 

「・・・落ち着け・・・ゆっくり 息をするんだ・・・」

 

レオンは2人を自分の腕の中に抱 くようにして神の殺気が2人に当たらないようにする。

 

2人は恐怖から解放され母親に飛 びついた子供のようにレオンへとしがみ付いた。

 

そんな2人を抱え上げると目にも 留まらぬ速さで離れた木の陰へと連れて行く。そこには綾乃と煉も木により掛けられ眠っている。

 

「神の異常すぎる力に当てられた んだ。2人は十分戦ってくれた」

 

今まで感じたことのないような力 を行き成り前にした2人は自分の意思とは無関係に身体が反応を起してしまったのだ。

 

(目が・・・目があっただけ で・・・)

 

(体が動かなかった・・・妖魔と 同じなんてそんなんじゃない・・・)

 

2人は自分たちの考えの甘さを思 い知らされた。自分たちは和樹やレオン、カイが強いと考えていた。

 

しかし、神の力はそれを超えてい た。

 

「ここにいろ」

 

(これ以上あの力を浴び続けた ら・・・2人は取り返しのつかないことに成る)

 

2人は強い。だが神の力の前には 全くの無力である。

 

さらに徐々にならともかく行き成 り巨大な力を感じてしまったのだ。あのまま力を感じ続ければ精神的に異常をきたしかねない。

 

「動けるようになったら綾乃と煉 を見ているんだ。凛、沙弓、絶対にここから出てくるな」

そう言うと返事も待たずにレオン は再び神の前へと向かって移動した。

 

「レオン、2人は?」

 

「大丈夫だ」

 

レオンは短く答えた。

 

その上空ではさらに神の力が巨大 に成っていく。

 

「我を前に逃げぬ勇気は認めよ う。だがそれが愚かだということを貴様らは身をもって知ることとなる」

 

言葉を発しながら魔の風の精霊が 流也と融合した風牙神へと召喚されていく。魔の力に飲まれていくように風の精霊が神へと取り込まれていく。

 

「教えて貰おうじゃねぇか?」

 

和麻が神の言葉に返すように風の 精霊を召喚する。

 

「神様が考えている愚かな考えっ てのがどんなもんなのかをよ!!」

 

巨大な鎌鼬を神へ向けて放つ。聖 痕を使っていないとはいえその威力は凄まじいものである。上級妖魔を一刀両断するほどの力は込められている。

 

だが・・・・・・

 

「無力な力よ」

 

神は向かってくる鎌鼬へと手を差 し出す。そしてそのまま和麻が放った鎌鼬を素手で受け止めた。

 

「なに!?」

 

和麻の放った鎌鼬は黒い風の精霊 に包み込まれ姿を消した。

 

「ちっ、さすがにここまであっさ り止められると自信無くすぜ」

 

もちろん、鎌鼬で倒そうなどとは 思っていない。だがそれでも自分の攻撃がこれほど簡単に防がれるとさすがにショックは隠しきれない。

 

「レオン、カイ、千早。3人は妖 魔の相手を頼む。僕と兄さんで風牙神を相手にする」

 

「わかった」

 

「任せろ」

 

「あたしたちのことは気にしない で戦って」

 

3人の返事を聞くと和樹は炎龍覇 に精霊を召喚する。その召喚速度、その量は風牙神の力に匹敵するかと思えるほど凄まじいものである。

 

「兄さん、いくよ」

 

「ああ、今度は・・・」

 

和麻へと風の精霊が召喚される。 そして和麻の背中には巨大な蒼い風の翼が生まれ和麻の瞳が蒼穹のように透き通る。

 

聖痕を発動させたのだ。

 

「俺も全力で行くぜ。鎌鼬の舞」

 

和麻から無数の鎌鼬が神へ向けて 放たれる。四方八方逃げ場など無く、全てをとめる事は不可能に近い状況である。

 

「無駄だといっているだろう が!」

 

神へ召喚されていた黒い風が四散 し和麻の鎌鼬と激しくぶつかり合う。一つ一つの力は圧縮されているために小さく見えるが上級妖魔を一撃で戦闘不能に追い込めるほどの力は軽く秘めている。

 

その力がぶつかり合い次々と激し い風の爆発が起きている。

 

だがそんな中でも神は爆風に身体 を揺らすこともなく平然としている。

 

「貴様の攻撃は我を動かすことさ えできぬ」

 

「それはどうかな!?」

 

「!!?」

 

「はぁっ!」

 

神のすぐ横には黒炎を纏う炎龍覇 を上段から今まさに下ろそうとしている和樹がいた。

 

「こしゃくな!」

 

神の爪の一つ一つが刀のように変 化すると振り下ろされる炎龍覇を受け止めた。

 

黒炎と黒い風が衝撃波を生み出し 爆発が起きたように辺りの空間を切り裂いた。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「ああぁぁぁ!!」

 

2つの力は互いに一歩も退かずに 激しいぶつかり合いが続く。その均衡を破るかのように和麻の風が神を襲った。

 

「風魂」

 

和麻の手にはボール上に圧縮され 渦を巻く風の球ができていた。和麻はその球を神に向けて直接叩き込む。

 

「ぐあっ!!」

 

「ぶっ飛びやがれ!!」

 

風魂は神の身体に見事叩き込ま れ、黒い風を浄化しながら神の身体を斬り刻んでいく。

 

「炎龍覇、力を貸してくれ! 火 災旋風刃」

 

攻撃の手を休めることはない。炎 龍覇によって生み出された炎の渦、火災旋風刃は神を貫かんとドリルのように渦を巻き迫っていく。

 

「ぐおっ!」

 

神は炎の渦に身体を焼かれそのま ま地上へと落ちていく。風魂の攻撃で受けた傷のせいなのか黒い風もどこか力が無い。

 

「喰らいやがれ!」

 

和麻は和樹を援護するように鎌鼬 の雨を神へと放ち続ける。

 

「黒き炎よ、黒き風を焼き尽く せ!! 瞬炎」

 

さらに和樹の黒炎がマシンガンの 如く放たれる。

 

神の姿はすでに爆風、爆炎に包ま れ確認することはできない。

 

「てあぁぁぁぁぁぁっ!」

 

炎龍覇を構えるとそのまま和樹は 神へと向かって凄まじい速度で突っ込んでいく。その身体は炎に包まれ全てを焼き尽くすほどの力を感じた。そのまま煙の中に消えるそれと同時に煙の内側から 凄まじい爆音と爆炎、振動が辺りを襲った。

 

(やったか!?)

 

煙で何も見えない・・・

 

和麻は風を起すと煙を掃い視界を 開かせる。

 

(無傷ではないはずだ・・・これ だけの攻撃を受けて何も無しってのは無いだろ・・・)

 

手加減などしていない。4体の妖 魔たちでもこの攻撃を受けたら消滅するほどの力を和麻と和樹は神にぶつけたのだ。

 

煙が晴れ次第に視界が晴れてい く。

 

そこに立っていたの は・・・・・・

 

「くっ!」

 

「人間如きの小さな力が我に通用 するとでも思ったか!?」

 

神は炎龍覇を高密度の黒い風で包 み込み、ギリギリで止めていた。それは自分の風をはるかに上回る力である。

 

「吹き飛ばしてくれる!!」

 

黒い風が荒れ狂いまわりの木々を 薙ぎ倒す。

 

和樹は黒炎を身体に纏わせ風に負 けないように耐え続けている。

 

だがずっとそうしているわけにも いかない。

 

「吹き飛ぶのはそっちだ!」

 

和樹は右手を銃のように構えると その先に炎の球体を作り出す。

 

(ハーディスがなくても撃つこと はできる!)

 

高速の連射はできないが指先に炎 の精霊を集めて打つ訓練はしている。

 

「炎丸!」

 

和樹から放たれた巨大な炎の球体 が神へと向かう。

 

神は避けることなく炎丸を正面か ら受けた。いや、受けたのではなかった。

 

「!?」

 

「遅い!」

 

神は炎弾を風で真っ二つにし、目 にも留まらぬ速さで和樹の前へと現れた。

 

さらに、そのまま和樹の顔を鷲掴 みすると地面へと和樹を叩きつけた。

 

「がぁっ!」

 

「人間ごときが我と戦おうなどと 思い上がるな!」

 

和樹の身体は人間離れした筋力に よって容赦なく地面へ叩きつけられ続ける。

 

「和樹を離しやがれ! 修羅旋風 脚」

 

和麻が上空から急降下し神を蹴り 飛ばす。

 

「修羅旋風拳」

 

さらに蹴り飛ばした神へ向けて追 い討ちをかけようとする。だが・・・・・・

 

「それだけの力で我を倒そうとし ているのか?」

 

「なにっ!」

 

(竜巻の上から・・・つかみや がっただと!)

 

神は和麻の右腕をつかみそのまま バランスを崩させる。

 

「片腹痛いわ!」

 

「ぐわぁっ!」

 

デタラメな力で和麻の身体は林の 中へと投げ飛ばされた。

 

「ぐほっ・・・」

 

和麻は身体を木へ叩きつけられ口 から血を吐き出す。

 

「まずは貴様からだ。 死・・・!?」

 

風の刃を放とうとした神の腕が肘 の部分から斬り落とされた。

 

「僕のことを忘れてないでほしい な! はぁぁぁっ!!」

 

「ぐおっ!」

 

炎龍覇から放たれた黒炎は神の身 体を炎で包み込み姿が見えなくなった。

 

「兄さん」

 

和樹は和麻のところへと高速で移 動する。

 

「兄さん、怪我は?」

 

「はっ・・・これくらいでやられ て溜まるかよ」

 

大丈夫そうに言ってはいるがかな り強く木に打ちつけられた身体はまだ痺れが取れていない。

 

和樹も地面へと叩きつけ続けられ た頭からは血が流れている。

 

「和樹、あいつにはつかまるな。 信じられないくらいの馬鹿力だぜ。もし本気で殴られでもしたら人の身体なんて軽くぶち抜かれちまう」

 

(・・・くそっ、痺れが取れな い)

 

つかまれた右腕にはくっきりと痕 が残り、痺れが切れず手を開くだけでも激痛が襲う。

 

『!?』

 

二人は同時にその場から飛び去 る。それと同時に黒い風が降り注いだ。

 

「同じ攻撃が我に通じると思う な!」

 

「ちっ! 傷も回復してやがる」

 

「流也の身体を基にして回復力を さらに増しているんだ」

 

和樹も回復魔法を使えば傷を治す ことは出来るが、それは和樹が自分の意思で傷を治すために力を使った場合。しかし神は意識しなくても勝手に身体が回復している。その速度も目を見張る速さ だ。

 

「瞬炎」

 

「鎌鼬の舞」

 

和樹、和麻から雨のように炎と風 が降り注ぐ。それを全て防ぐのは不可能である。瞬炎と鎌鼬は神の体を炎で包み斬り刻んでいく。

 

「・・・・・・言っているだろう が、同じ攻撃では私を倒すことなど不可能!」

 

炎に焼かれた身体は数秒もたたず に回復し、斬り刻まれた身体の部分は筋肉、血管が離れた部分を瞬時に繋ぎ合わせていく。

 

「くっ!」

 

身体をバラバラにしてもすぐに再 生していく。腕を吹き飛ばしてもそこから新たな腕が生み出される。攻撃が全て無駄なものにされてしまっているのだ。

 

「ならこれでどうだ!?」

 

最大速度で神に迫り和樹は炎龍覇 で上段から神の身体を一刀両断する。さらに目にも留まらぬ斬撃は止むことなく神の身体をバラバラにした。

 

「大鎌鼬!」

 

和麻も両腕を振り下ろし、今まで で最大の鎌鼬を放つ。二つの鎌鼬はクロスし神の身体をさらに斬り刻む。

 

神の身体はバラバラになり地面へ と崩れ去る。

 

だが・・・

 

「くっくっくっ・・・・・・いい 攻撃だ。人間にしてはよくやると褒めておこう」

 

地面へ転がる神の身体が斬られた 身体一つ一つが生きているかのように次々と繋がっていく。

 

「だが、そんな攻撃では我を倒す どころかダメージを与えることもできない。くっくっひっひゃっひゃっひゃっ!」

 

「ちっ! 化物め!」

 

和麻は自分たちがどんどん追い詰 められていく無力感を感じて成らなかった。

 

自分たちの方が攻めているはずな のに相手には全くその効果が見ることができない。力だけが無駄に減っていく。

 

「貴様らが無力だということを見 せてやる」

 

風牙神の手が自分に向けてではな くその後ろに向けて翳される。神の考えていることに気が付いた和麻は声を上げて叫んだ。

 

「!? やめろっ!」

 

「今更気づいてももう遅い!  はぁっ!」

 

神は腕を振るい巨大な風の刃を 放った。その風の刃に圧縮された精霊の量は異常ともいえる量である。

 

「4人がバラバラになるのを見て いるがいい」

 

和麻は全力で走り出すが間に合わ ないのは明らかである。

 

(くそっ! 間に合わない!)

 

風を放つも神の放った風を止める だけの精霊を集めるには時間が無かった。

 

もし相手が炎、水、地の力を使う なら間に合ったかもしれないが召喚速度は風同士では同等、コントラクターである和麻ならば普通の風の術者には負けないが闇の風の力であっても相手は神、召 喚速度は聖痕を発動していても同等レベルである。

 

準備をした攻撃と準備無しの攻撃 では準備した攻撃の力が上を行くのは明らかである。

 

だが次の瞬間和麻の横を何かが凄 まじいスピードで過ぎ去った。和麻の目にも捉えることのできない速さである。

 

「炎龍覇!」

 

黒い風の通り道に黒炎が燃え上 がった。

 

真正面から黒い炎と黒い風がぶつ かり合った。

 

「はあぁぁぁぁ!!」

 

バァッン!

 

「くっ!」

 

ぶつかり合った炎と風が爆発し た。

 

爆発の衝撃が和麻の身体を吹き飛 ばそうとするが何とか踏み止まる。

 

「和樹!」

 

黒い風を止めたのは和樹であっ た。

 

どうやったかは、和麻は分らな かったが瞬時に黒い風の前に移動し黒炎で風を止めたのだ。

 

和麻は急いで和樹の下へと駆け寄 る。和樹は息が荒く膝をついていた。

 

「大丈夫か?」

 

「何とか・・・」

 

和樹は荒い呼吸をしながらも何と か答える。

 

(まさか・・・)

 

和麻は込みの立っている方に身体 を向ける。

 

「次で仕留めてやろう」

 

「てめぇ・・・」

 

和麻の蒼く鋭い眼光が風牙神へと 向く。

 

「・・・ぶっ殺す」

 

和麻は神に向けて一直線に走り出 した。両腕には修羅旋風拳がすでに作られている。

 

「よくも嵌めやがったな」

 

神の目的は木の影にいる4人では ない。本当の目的は和樹であったのだ。

 

4人を助けるために和樹に無理を させて力を奪う。和麻よりも黒炎を使う和樹が厄介だと考えた神は和樹の力を奪うためにわざと4人へ向けて風を放った。

 

例え罠だと分ったとしてもそう動 くしかないような状況を作り出し・・・・・・

 

「愚かな奴よ。見捨てればよいも のを態々助けるとは・・・」

 

「うらぁっ!」

 

和麻の拳は空を斬るが、そこから 和麻の足が鞭のように神へと襲い掛かる。

 

「修羅旋風脚」

 

足に作られた風の渦が神の頭へと 叩き込まれる。

 

だが・・・・・・

 

「なっ!」

 

「人間ごときが神と戦おうとする ことが愚かなことだとまだ気が付かないのか?」

 

和麻の蹴りは神によって止められ た。神の腕に出来ているのは和麻が使う技の一つ・・・

 

「修羅旋風拳だと・・・」

 

(俺の技を・・・・・・見てすぐ に使いやがっただと・・・・)

 

神は和麻の技を和麻の技で受け止 めたのだ。

 

自分の技で攻撃と止められるとい う屈辱的事実が和麻に突きつけられる。

 

「人間の貴様が出来て我にできぬ とでも思っていたか!?」

 

「!?」

 

「身の程を知れ!!」

 

「ぐあっ!」

 

神の拳が和麻の腹へと突き刺さり 軽々とその身体を吹っ飛ばした。

 

風で防御壁を作り出したが和麻の 身体は吹き飛ばされ地面と何度も転がり土手へとぶつかり止まる。

 

「そこで見ているがいい。5人が 死んでいく姿を・・・」

 

「くっ!」

 

(た、立てねぇ・・・・・・動き やがれ、俺の身体!!)

 

和麻は地面に打ち付けられた自分 の身体を無理矢理にも起そうとするが、全身を鋭い痛みが襲いまともに立つだけでも困難である。

 

「我に逆らうとどうなるかその目 で説くと見るがいい!!」

 

「テメェーーー!!」

 

和麻は風の刃を放つが力を溜め込 めない風など神の前では微風程度にしかならない。

 

神は和麻の風を軽く掃い、黒い風 が放たれようとしたその瞬間・・・・・・

 

「剣鎧護法・伸」

 

「龍撃拳」

 

神の身体へ光り輝く剣先と気弾が 襲い掛かった。

 

「凛ちゃん・・・杜崎さん」

 

和樹の両隣には刀を構えた凛と拳 を振り抜いた状態で止まっている沙弓がいた。

 

「自分の命くらい自分で護る!」

 

「足手纏いになるために私たちは 来たんじゃないのよ!」

 

強い口調で2人は言う。

 

だが2人の顔からは滝のように汗 が流れ、体は振るえ今にも倒れそうなくらいに消耗しているのが見ただけでもわかった。

 

神の圧倒的力に慣れてきたとは言 え最初にまともに受けてしまった殺気の影響は拭いきれていない。

 

和樹は炎龍覇を再び正眼へと構え る。だがすぐに体のバランスを崩し膝をついてしまった。

 

「っつ!! 2人共ここから早く 下がって!!」

 

「無駄だ!」

 

神の周囲を取り巻くように無数の 球体が出現する。

 

いつの球体の大きさはテニスボー ル程度、その球体は中で激しい風の流れが起きているのが見えた。

 

「我の前からは誰も生きて返さ ん!」

 

爆発したように球体が辺りへと飛 び散った。

 

和樹と和麻はその球体を炎と風で 叩き落す。

 

(お、重い・・・)

 

(1つ1つの力が風魂と同じか少 し弱い程度だと・・・)

 

止めることはできるがそれでも威 力は決して弱くはない。

 

「あっ!」

 

「くっ!」

 

凛と沙弓も何とか耐えていたが凛 は手から刀が弾かれ、沙弓のプロテクターにもヒビが入った。

 

「凛ちゃん、杜崎さん!」

 

和樹が気づいて2人を助けに向か う。遠くで戦っていたレオンやカイもこちらの異変に気づいたがこちらに来ることはできない。気付いてもすでに後の祭りである。

 

「散れ、愚かな人間よ」

 

凛は刀を取りに走るが手にしたと きにはすでに遅い。沙弓も風の球体を受け止めたがプロテクターがついに破壊された。

 

そして一瞬の出来事だった。

 

風の球体は凛と沙弓へと襲い掛か り、2人を一瞬のうちに戦闘不能へと追いやった。

 

2人は地面へと倒れこみそのまま 全く動かなくなる。出血こそしていないが風の球体によって受けた傷は内側に大きな傷を残したはずである。

 

体中の骨へ皹が入っているかもし れない。下手したら折れている箇所も・・・・いや、バラバラにされていてもおかしくない。それほどの威力を持った攻撃である。

 

「・・・・・・・・・」

 

和樹は無言で倒れこんでいる2人 を見ている。

 

和麻たちも無言で2人を見てい た。

 

だが、その沈黙を破るものがい た。

 

「まだ息があるとは人間にしては 強い生命力だな」

 

2人の身体がまだ上下しているの を見た神が笑いながら呟く。

 

「ふふっ、今楽にしてやろう」

 

神は留めの一撃を2人に放とうと する。

 

だが不意に神の動きが止まった。 背中から胸を刀が突き抜けたような痛みが体を走る。

 

「・・・・・・・・・」

 

無言で神が振り返るそこには和樹 が視点の定まらないような目で何かを呟いている。

 

「・・・何で・・・また・・・ま た・・・もう繰り返さないって・・・絶対に・・・誓ったのに・・・二度と・・・」

 

和樹の身体が黒炎に包まれる。

 

今までの黒炎とは違う、どこか自 分を責めているような、怒りを自分へぶつけているような・・・

 

今までとは違う力を和樹から感じ た。

 

「また・・・・・・僕は・・・護 れないのか・・・力を持っているのに・・・・・・」

 

和樹を包み込む黒炎は力をさらに 増していく。

 

『君は何も護れない』

 

「違う」

 

『君も僕と同じだ』

 

「違う!」

 

『みんな僕らを異端者としてみて いるんだ』

 

「違う!!」

 

『所詮僕らの気持ちなんて誰も理 解していないんだ』

 

「違う!!!」

 

『本当の心を押し殺しているん だ』

 

「違う!!!」

 

自分の頭の中であいつの言葉が繰 り返される。

 

『恨んでなんていないよ』

 

彼女の言葉が頭を過ぎる。

 

『最後に会えて凄くうれしかった よ』

 

また彼女みたいに大切な人を失う のか?

 

『もっと一緒にいたかっ た・・・』

 

瞳から涙を流し自分の腕の中で息 を引き取った彼女・・・・・・

 

血に染まった自分の 手・・・・・・

 

もう彼女みたいに護れない人を出 さないと誓ったのに・・・・・・

 

もう誰も、自分の前では誰も死な せないと誓ったのに・・・・・・

 

(何で・・・・・何でこんなこと に・・・・・・なぜ2人は傷ついているの・・・・・・)

 

今自分の前には、自分の秘密を 知ってからも側にいてくれた人が倒れている。

 

(僕が弱いから・・・力が無いか ら・・・護りたいと思う気持ちが弱いから・・・・・・)

 

また大事な人を失うなん て・・・・・・

 

また誰かが涙を流すなん て・・・・・・

 

傷ついていくものを護るために手 に入れた力を・・・・・・力を持っているのに、それが出来るのに・・・・・・

 

『私はずっと護るよ・・・・・・ 私の思いが・・・カズちゃんを護るから・・・・・・』

 

自分を護ってくれる人を護れない のか・・・・・・自分を支えてくれる人を・・・・・・もう誰かを失うなんて・・・・・・・・・

 

「・・・たまるか・・・」

 

和樹はゆっくりと立ち上がる。

 

炎龍覇を正眼に構える。

 

「もう誰かを失うなんて・・・誰 かを死なせるなんて・・・・・・」

 

「!?」

 

「させて溜まるかぁぁっ!!!」

 

黒炎を纏った炎龍覇が激しく燃え 上がった。

 

まるで火山が噴火するかのごとく 黒炎の火柱が上がる。

 

「なっ!?」

 

神は和樹の炎を前に始めて危機感 を覚えた。

 

先ほどまでの和樹とはまったくの 別人、明らかに自分の力を脅かしかねない存在へと変わった。

 

(・・・・・・炎龍覇)

 

(・・・なんでしょう? 和樹)

 

(僕に君の持っている力の全てを 貸して欲しい。護るために・・・大切なものを、失いたくないものを護るために・・・)

 

(わかりました)

 

炎龍覇は主、和樹の頼みに答え る。

 

(私の持てる力の全てを出し共に 戦いましょう。我が主、式森和樹)

 

(・・・ありがとう)

 

和樹は炎龍覇を八相に構えて神と 対峙する。

 

そして次の瞬間一気に間合いをつ めた。

 

「!?」

 

「はぁっ!」

 

下段から神の身体を炎龍覇が襲い 掛かる。

 

神はその斬撃をギリギリで交わす が炎が自分の身体を焦がすのがわかった。

 

(速い・・・そして、炎の強さも 格が違う!)

 

一振りで神は和樹の力量を判断し た。

 

先ほどまでと同じに考えて戦った ら、例え超回復能力を持つ自分でも危険だと・・・

 

「僕はもう誰も・・・誰も死なせ ない! 誰も・・・悲しませたりなんてしない!」

 

「それが無駄だというのだ!」

 

神は黒い風を放ち和樹と間合いを 取ろうとする。

 

「貴様ごときの力で人を護ること など!!」

 

「できないと思って、何もしない で何が変わる!」

 

和樹は炎龍覇を振るい、風を相殺 する。

 

「何もしなければ、何も護ること ができない!!」

 

和樹はまるで風に乗るかのように 飛翔し、神目掛けて上空から急降下する。

 

「だから僕は諦めない。手にした 力を、剣を・・・この身が滅ぶまで!!」

 

「ならその身を滅ぼすまで!!」

 

黒炎と黒い風が激しくぶつかり合 う。

 

和樹と神、互いの力が相手の力を 破壊するためにしのぎを削る。

 

次の瞬間、2人の間で爆発した。

 

「和樹!」

 

和麻が煙に包まれた和樹の名を叫 んだ。だが次の瞬間、和樹が煙の中から飛び出してきたのを見て安堵する。

 

だが煙の中から神も姿を現す。和 樹も神も今の攻撃でのダメージはほとんどない。あれだけ凄まじい力のぶつかり合いにもかかわらず。

 

「兄さん、僕が戦っている間に2 人をお願い。必ず・・・食い止めてみせる!」

 

「・・・・・・わかった」

 

和樹の言葉に和麻は迷ったが今は 2人を死なせるわけにはいかない。

 

手持ちのエリクサーを使い切って しまった今、神との戦いに集中しならければならない和樹に治癒魔法を使わせることはできない。神と戦うために和樹の力を奪うようなことは今はできない。

 

つまり、2人を救うには急いで病 院へ運ばなければ成らないのだ。

 

そして今それが出来るのは自分だ けである。自分が神と戦えればいいが、和樹のほうが力は確実に上、自分より神を確実に相手にできるのは和樹だ。そして一番移動速度が速いのも自分である。

 

(俺が今やるべきことは和樹が護 ろうとしているこの2人の命を助けることだ)

 

和麻は2人を運ぼうとする が・・・・・・

 

「そう簡単にいかせると思ってい るのか?」

 

「何?」

 

「言ったはずだ、貴様らの力では 誰も救うことはできぬとな!」

 

神は高らかと宣言する。まるで何 かを待っていたかのように・・・・・・

 

「さあ、行け。新たな我がしもべ よ」

 

神の声に答えるように現れてきた のは和樹も和麻もよく知る人物であった。兵衛との戦いで傷つき倒れた少女。

 

だが違う、2人の知っている少女 ではない。そこから感じる力は闇の力。

 

魔を滅する炎の力は感じることが できず、風牙神の使う闇の風と似た黒く染まった闇の炎・・・・・・

 

和樹の黒炎とは違う。

 

恨み、悲しみ、痛み、苦しみ、嫉 み、欲望、怯え、恐れ、寂しさ・・・・・・

 

闇を呼ぶものに飲み込まれ、黒い 闇の炎に染まった少女の姿。

 

そしてそこからは妖気も感じるこ とができた・・・・・・

 

さらに別の気配も・・・・・・

 

「綾乃・・・」

 

「綾乃ちゃん・・・」

 

2人は感じた自分達の目の前にい るのは神凪綾乃であって神凪綾乃でない。

 

「ハハハハハッ! これが我の新 しきしもべ、神凪綾乃だ」

 

神は新しいおもちゃを手にした子 供のように笑い声を上げた。

 

「さあ行くがいい綾乃、闇の力を そ奴らに見せてやるがいい!」

 

「・・・はい、マスター」

 

綾乃は手を翳し、炎を和麻に向け て放った。

 

和麻は風を纏い倒れている2人を 炎から護る。

 

「くそっ! 何してやがんだ、綾 乃!」

 

「・・・・・・・・・」

 

和麻の声が聞こえていないのか綾 乃は躊躇うことなく炎を放つ。妖気の混じる黒く染まった闇の炎を・・・相手を殺すつもりで・・・

 

「この馬鹿野郎が!!」

 

和麻は鎌鼬を放つ。

 

だが・・・

 

「!?」

 

和麻は反射的に風の壁を作り出 し、炎を塞いだ。

 

(くっ!)

 

本当なら炎を避けて風を放つとこ ろだが自分が避けたら後ろに寝ている2人がやられる。

 

神によって闇に取り込まれた綾乃 は、本来の綾乃では出せないような力を手にしている。

 

(血筋がいい分、こういうときは 厄介だ!)

 

綾乃は決して弱くはない。重悟の 血を引いているだけあってか、磨けば光る原石を持っているのだ。

 

もし、綾乃が自分の力を高めるた めに修行し力を使いこなせるようになったときは現役時代の重悟を超える力を使えるほどになる可能性を秘めているほどであるのだ。

 

そのせいなのか、自分の意思で動 いていない今の綾乃は従来以上の力を出している。さらにそこへ妖気がプラスされているために力は倍増していた。

 

「ちっ!」

 

和麻は風を自分と綾乃の間で渦を 巻かせ力を空へと逃がした。

 

「殺す」

 

だが綾乃は攻撃を止めることなく 和麻へと一瞬のうちに迫った。

 

(速い!)

 

「死ね」

 

「誰が死ぬか!」

 

自分へ向かってきた炎を纏った拳 を、風を纏わせた拳で弾き返す。和麻は手を弾いた勢いをそのままに裏拳を綾乃へと叩き込もうとした。

 

だが綾乃の動きは和麻の予想を超 えていた。

 

「何っ!」

 

綾乃は後ろへ倒れこむように和麻 の拳を避けると和麻の腕を足で挟み込み骨を折ろうとしてきた。

 

和麻は腕に風の竜巻を起こし、腕 を引き抜こうとする。だが腕を挟んでいる足の力は人間の力とは思えないほどに強くかなりの精霊を集めて腕を抜くことができた。

 

(でたらめな動きしやがっ て・・・)

 

「お前本当に操られてやがるんだ な」

 

和麻の声に綾乃は全く反応しな い。

 

(加護を失ったからといってこん なに簡単に心を奪われるもんなのか?)

 

目の前の綾乃は唯和麻を睨みつけ 意思の宿っていない目で立っていた。

 

「綾乃・・・・・・お前、無様だ ぜ。昔の俺以上になっ!」

 

綾乃は話を聞いているのかいない のか分からない。ただ機械のように次の攻撃をしてくる。

 

黒い炎が地面を走り、和麻を取り 囲んだ。

 

「殺す、和麻を殺す」

 

和麻に向かって雨のように炎が降 り注ぎだした。

 

「人をなめるのもいい加減にし ろ!」

 

和麻が両手を広げると強い風が起 こり炎をすべて吹き消した。

 

「その眠ってる頭覚ましてやる ぜ!!」

 

和麻は綾乃の中にいる妖気の元を 綾乃から消し去るために浄化の風を放つ。だがそう簡単には綾乃に取り付いている相手を消し去ることはできそうにない。

 

「無駄だ、その小娘は完全に闇へ と落ちた。もはや救うすべなどない!!」

 

神は勝ち誇ったように浄化の風を 放ち続ける和麻へと言う。

 

(一体・・・何が綾乃ちゃんに取 り付いているんだ?)

 

和樹は神と戦いながら綾乃の様子 を見る。

 

綾乃は何度も和麻の浄化の風を受 けている。普通の妖魔なら綾乃の体から逃げ出すか、浄化されてしまうのが当たり前なほどに・・・・・・

 

和樹の瞳の色が紅く変化する。

 

心眼で綾乃の心を読むためだ。綾 乃を支配する者の心を・・・

 

「くそっ! 何でこれだけの風を 受けて・・・」

 

「兄さん、風は綾乃ちゃんには効 かない!!」

 

和樹は黄金の炎を炎龍覇へと召喚 し綾乃へと向けて放った。

 

すると和麻の浄化の風は避ける素 振りも見せなかった綾乃が黄金の炎を前には慌てて身をかわした。

 

(炎を・・・避けた?)

 

和麻は綾乃の行動に驚く。風を恐 れない綾乃がなぜ自分の得意な部門である炎を避けるのか?

 

「和樹どういうことだ?」

 

「綾乃ちゃんに取り付いているの は妖魔なんかじゃない。兵衛と兵衛に取り付いていた風牙の長達の霊なんだ!」

 

「!?」

 

「綾乃ちゃんが兄さんの風を避け なかったのは綾乃ちゃんの考えじゃない! 自分達には風がほとんど効かない、綾乃ちゃんの体に負担がかかるだけだから避けなかったんだ。僕の炎を避けたの は綾乃ちゃんには効果が弱くても内側の自分達には効果がある。加護がなくなっても操られている今の綾乃ちゃんは炎を使えるからの体を通り抜けて自分達に直 接影響する」

 

『そういうことじゃ・・・』

 

綾乃の体から黒い影が現れ出す。 そしてその姿は次第に一つの形を成して兵衛の姿へとなった。

 

『カカカカカカッ!』

 

兵衛の乾いた笑い声が和麻の耳を 突く。

 

『和麻、貴様の風はこ奴の体に痛 手を与えるだけでわしらには通じぬ。炎の加護が完全に消えていないこやつの体はまだ炎を通しわしらに届くが時期にわしらが全て乗っ取ってくれるわ』

 

「このクソ爺が!」

 

『ハハハハッ!! こやつの体は すでにわしの物、妖魔と一体となり、長達の力を得たわしを取り込んだこやつの体、壊れようがどうなろうがわしらに痛みはない。こやつの体が破壊しつくされ るまで利用するまで』

 

「だからあの時綾乃を殺さないで いたのか、綾乃を利用するために」

 

和麻と千早が綾乃の助けに入るま での時間、その時間の間に兵衛は綾乃を殺そうと思えば殺すことも難なくできた。

 

それをしなかった理由が今和麻は わかった。

 

「さあどうする、その女ごと兵衛 を倒すか、それをと自分達が死ぬか?」

 

(ちっ、早くしないとあの2人も 危ない!)

 

凛と沙弓はこれ以上この場には置 いておけない。

 

だが今二人をこの場から連れて行 く手段が和麻には思いつかない。

 

(兄さんに神の相手は無 理・・・・・・兵衛を何とかしようにもすぐに倒すことができる強さじゃない)

 

和樹も神の相手でも限界だ。和麻 が2人を連れて行く時間の間1人で持ちこたえるのは不可能に近い。

 

レオン達は助けに入ることはでき ない。

 

「はぁっ!」

 

和樹は炎を放ちながら神との距離 を取る。

 

(和樹、無理をし過ぎです。今の ままの攻撃を続けてはあなたの体が持ちません)

 

(・・・分かってる。でも、今僕 にしかできないんだ。風牙神を相手にすることは・・・・・・)

 

和樹自身神を相手の戦いはかなり の体力、精神力を必要とし、さらに黒炎をこれだけ長い時間使うことも今までなかった和樹の疲れは相当なものである。

 

和麻も動けない2人を庇いながら の戦いに本来の動きができないでいる。

 

『和麻、どうした動きが取れま い!』

 

綾乃を操る兵衛は黒い炎と黒い風 を和麻へと放つ。

 

「力は弱くても数だけは多い ぜ!」

 

和麻は避けられるものは体を動か し回避し、避けられないものだけを相殺していく。さらに2人へと向かう炎と風も相殺していった。

 

「!?」

 

「死ね、八神和麻!」

 

さらに和樹と戦いながらも神は和 麻へ黒い風を放つ。

 

和麻は精霊を圧縮して黒い風を弾 き飛ばした。だが兵衛の放つ風と力は比べ物にならない、弾き返すも和麻の体は大きくバランスを崩される。

 

「しまった!!」

 

『死ね!』

 

「殺す!」

 

黒い風と炎が和麻へと襲い掛か る。

 

(避けきれない!)

 

和麻はバランスを崩しながらも回 避しようとするが間に合わない。和樹は神に行く手を阻まれ和麻のところへはいけない。

 

炎と風が和麻の体を襲った。

 

だが・・・・・・

 

「!?」

 

『!?』

 

「・・・・・・な、何だ・・・」

 

一瞬にして和麻へと向かっていた 炎と風は相殺された。

 

無数の炎の羽が和麻を護るように 黒い炎と風を吹き飛ばしながら。

 

そして次の瞬間その場にもう一つ の力が現れた。その力は今までその場には存在していなかった新しい力。

 

「!? ぬおおおおお おっっっ!!」

 

神が剥き出しとなった崖へと叩き つけられる。予期せぬ襲撃に神の反応は遅れ無防備のまま叩きつけられた。

 

そして叩きつけられるときの神の 体は黄金と蒼の色の炎に包まれ、鎖が巻かれていた。

 

『な、何者だ!?』

 

兵衛が声を荒げて叫ぶ。

 

そしてその目に映ったのは1人の 少年だった。

 

「兄様、大丈夫ですか?」

 

いつの間にそこへ移動したのか?

 

バランスを崩し地面へ落ちかけて いた和麻の腕をその少年はつかんで落下を止めていた。

 

「・・・・・・煉」

 

「煉君・・・・・・」

 

その少年の名前は煉、だがその姿 はまるで別人。

 

煉から感じる力は以前の力とは比 べ物にならないほど強力な力、どこか頼りなかった少年の雰囲気はなくなり決意に満ちたその姿には何かを感じずにはいられない。

 

力だけならば千早と比べても決し て引けを取らないであろう。自分のやるべきことを見つけた決意が今の煉には感じた。

 

そして煉の背中には蒼い炎の翼が 羽ばたいていた。まるで聖痕を発動した和麻の風の翼のように・・・・・

 

そして、煉の右手には和樹からも らった魔法具がつけられていた。そしてそこからは小さな鎖が伸びている。

 

「兄様、和樹兄様。僕はもう大丈 夫です。僕も一緒に戦います」

 

和麻は風を使い自分で宙へと浮 く。

 

「煉、お前その炎は?」

 

煉の翼を見て和麻は疑問を浮かべ る。だがそれに煉はすぐに答えた。

 

「これは父様の蒼炎、神炎とは違 います。僕に力を貸してもらっているんです」

 

煉は和樹を見た。

 

「・・・今は2人で戦ってもらっ た方がいい。僕のところに戻っても黒炎と一緒には戦うことができないからね」

 

「分かりました」

 

「・・・和樹、とりあえず後でど ういうことか説明してくれ。今は・・・」

 

「貴様らぁぁぁっっっ!!!」

 

煉によって崖に叩き付けれて岩に 埋まっていた風牙神が岩を風で斬り裂いて飛び出してきた。

 

「・・・あいつを倒すことが先 だ」

 

「行くよ、煉君」

 

「はい!」

 

「俺らの力見せてやろうぜ!」

 

新たな力を手にして眠りから覚め た煉。

 

血は繋がっていなくとも、それよ り強い絆で結ばれた兄弟が今ここにそろった。

 

そしてもう1人・・・・・・

 

ドゴッッン!!

 

大地を揺らす凄まじい振動と破壊 音が辺りを襲った。

 

「!?」

 

「あれは!?」

 

「・・・・・・」

 

3人が爆発音のしたほうを向くと そこには巨大な氷が突き刺さり半径100メートルは氷山に覆われていた。

 

「馬鹿な・・・蠱雕の気配が消え ただと」

 

神は氷山に覆われた大地を見て呟 く。

 

そして力は落ちながらも未だに強 力な水と氷の精霊の気配がこちらへと近づいてきていた。

 

「・・・・・・・・・」

 

1人の少女が3人から少し離れた ところへと着地した。

 

「千早」

 

「向こうは終わったわ」

 

「女! 蠱雕はどうした!?」

 

声を上げる、それに共鳴するよう に黒い風が神の周りを流れていた。

 

「倒したわよ、あたしが」

 

千早は笑いながら手にしている雪 姫を風牙神へと向ける。

 

「次はあなたの番よ」

 

水と氷の精霊を纏う少女、山瀬千 早も強敵を倒し神へと戦いを挑む。

 

 

 

 

あとがき

ネタ切れふぉ〜〜〜!!

どうもレオンで〜す。

綾乃は風牙神に操られてしまいま した。さぁてこのまま落ちていくのか、それともヒロインの意地を見せるのか、注目してくださいね。そして煉がついに復活!! 綾乃以上に美味しい所持って きそうですよ。千早も合流してこれからどうなるのか。

・・・・・・で僕とカイは一体ど うなっているのか?忘れないでくださいね。

それではまたお会いしましょう。 レオンでした!!

 

 


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