第1部   〜動き出す運命〜

 

 

 

 

第29話 希望への戦い

 

 

千早は和樹達の戦っている場から 1キロほど離れた場所で戦っていた。

 

(力は強くなったと言っても、そ れをいきなり使いこなすのはやっぱり無理があるわね)

 

千早は戦いの中で新たに手にした 水術師としての自身の力を測りながら戦っていた。

 

どれほどの力を使うとどれほどの 体力が削られるか、今まで使っていた技への影響力はどれほどなのか?

 

今の自分は言わば生まれ変わった と同じである。新たな力を手にした以上、その力を測りまず自分を知らなければならない。

 

闇雲に力を使えばすぐに体に負荷 が掛かり自分の本来の闘いができなくなり動けなくなる。

もし今その状態に自分が陥った ら、まず間違いなく命はない。

 

『ここが貴様の墓場だ!』

 

「!?」

 

自分の体を回転させドリルのよう な風を周りに起こしながら蠱雕が突っ込んできた。

 

(氷壁を作っても貫かれる)

 

千早は自分の前に氷の壁を作り、 何重にも重ねた。

 

だがその壁の背後には隠れずその 場からすぐに離れる。

 

それと同時に蠱雕が氷の壁を次々 と破壊し自分のいた場所を通って行った。

 

『はははっ! この状態になった 我を止めるのは不可能、止まるのは貴様を粉々にしたあとだ!』

 

千早は薙刀を地面へと刺し、氷の 柱を蠱雕の下の地面から突き刺そうとするが、風の渦に削られ蠱雕の体へと届くこと叶わない。

 

「くっ!」

 

(これじゃ、力だけ奪われる)

 

蠱雕の風のドリルを避ける。だが それだけでは時間だけが過ぎていき技を出すたびに力をすり減らすだけで蠱雕を倒すことはできない。

 

(あの風を止めないと倒すことは 無理ね)

 

「台地を覆え、氷河」

 

千早を中心に辺り一面が氷に覆わ れる。周囲の植物は凍りつき地面はスケートリンクのように氷が張られた。

 

(まず第一段階クリア)

 

『無駄だ! 今更何を使用とも、 この風の渦を止めることなど人間如きの力では不可能!!』

 

蠱雕は凍りついた木々を薙ぎ倒し 千早へと迫る。地面へ倒れ込んだ木は地面へ倒れると共に氷の破片へと変わった。

 

(まだ・・・・・・)

 

蠱雕の攻撃を不安定な氷の上をす べり千早はかわす。

 

その千早の靴からはいつの間にか スケート靴のようにブレードが付いていた。

 

氷河を出した目的は唯氷に覆われ た世界を作るための技ではない。千早は靴を改造しブレードの部分を出し入れ可能の靴を作り、氷で覆われた大地を高速で移動し、自分の動きを最大限引き出す 空間を作り出したのである。

 

これにより、花舞以上の移動術を 千早は生み出したのである。

 

『おのれ、ちょこまかと! 串刺 しにしてくれる!!』

 

「!?」

 

蠱雕は空高く飛翔すると千早に向 けて一直線に突っ込んできた。

 

(好機!)

 

「我は呼ぶ  地に満ちる凍気よ 永久にその姿をとどめ 悠久の瞑りにいざなえ」

 

詠唱と共に千早の周囲を極寒の冷 気が漂う。集まる氷の精霊たちは千早が今まで召喚した精霊の中で最大の数になるだろう。

 

凍てつく冷気は周囲の空気さえも 凍りつかせ巨大な氷の柱が聳え立つ。

 

「永久冷凍炎」

 

巨大氷柱が放たれ、周りの冷気が 爆発した。

 

『な、何!!?』

 

氷の柱は蠱雕を取り囲み、冷気が 高速で渦巻く風の勢いまでも失わせていく。

 

「氷霞」

 

さらに氷柱が蠱雕に向けて打ち出 される。風の渦は威力をさらに失われていく。

 

『おのれ!!!』

 

(まだ止まらない!!)

 

威力を殺されながらも蠱雕は自分 へと向かってくる。予想以上の蠱雕の攻撃力に千早の顔にあせりの色が浮かんだ。

 

『死ねぇっ!!』

 

「!?」

 

ガガガッッ!!

 

風の渦が千早を包み込み大地を擦 り削る。土煙が舞い上がり砕かれた氷の破片がキラキラと舞い上がり地面へと落ちていく。

 

『ふはははっ!』

 

すり鉢上に抉られた地面から蠱雕 の高笑いが響き渡る。

 

相手を倒した優越感からか笑い声 は止むことがない。

 

この攻撃を受けて生きているわけ がないという自信の表れでもあるのだろう。それだけ蠱雕はこの攻撃への絶対的自信を持っていた。

 

今までこの攻撃を受けて生きてい たものはいなかったからだ。

 

そう今まで誰1人と・・・・・・

 

『はははっ・・・!?』

 

「・・・・・第二段階クリア」

 

『なっ!?』

 

「突き抜けろ、つらら舞」

 

ドッドッドッドッドッ!!

 

蠱雕の体を無数の氷が貫いた。予 測していなかった攻撃に蠱雕まともに攻撃を受けてしまう。

 

『がはっ・・・がぁっ・・・』

 

「・・・悪いけど、リンクの上で のあたしを捕まえられる者は誰もいない」

 

『ばっ・・・馬鹿なぁっ!!?』

 

蠱雕の視線の先には自分が今確か に倒したはずの千早が立っていた。

 

「あなたの敗因は氷の上での戦い を続けたこと・・・」

 

『がっ・・・こ、こん な・・・・・・』

 

体が徐々に凍りに覆われ蠱雕の自 由を奪う。

 

「これで終わりよ!」

 

『!?』

 

千早は空高く跳躍する。

 

そしてその上空には巨大な氷の塊 が出来上がっていた。

 

雪姫を構えた千早を氷が包み込 む、そして千早は氷の塊を砕かんばかりの勢いで踏み込んだ。

 

「氷雷霆」

 

氷の塊が砕ける。それと同時に千 早は蠱雕に向けて空から降る流星の如き猛スピードで落下した。

 

『こんな! こんなこと がぁっ!!』

 

「はぁぁぁっ!!!」

 

ゴォォッッン!!!

 

氷が蠱雕の身体を貫き、さらにそ の身体を氷付けへとする。

 

そして凍った体は2度と解凍され ることなく粉々に砕け散って消えていった。

 

後に残ったのは巨大なクレーター とそこに立つ、巨大な氷の柱だけであった。

 

「・・・はぁ・・・」

 

地面へと膝を付き、体の中の息を 吐き出した。

 

(力は強くなったけど・・・やっ ぱり相当体に負担が掛かるわ)

 

技の威力は格段に上がったが、そ れを制御するために精神力と体力は今まで以上に使うようになった。

 

今日目覚めていきなり使いこなせ たら、修行などいらない。使いこなせるようになるために修行をするのだ。

 

それを飛ばして実戦でいきなり使 用したため、特に精神面での疲労はかなりのものである。

 

だがこれで終わりではない。まだ 倒さなければならない相手がいるのだ。

 

(さっき、和樹君とは違う炎の気 配を感じたけど・・・煉君かしら・・・それとアオイちゃんね)

 

千早は立ち上がるとゆっくりと立 ち上がった。

 

「まだ、あたしは休むわけにはい かないわね」

 

そう言うと千早は和樹たちの方へ 向かい走り出した。

 

 

 

 

 

 

 

「沙弓、凛ちゃん・・・」

 

地面へ倒れる2人へと千早は駆け 寄る。傷ついた2人は気絶したのか千早の呼びかけには反応しない。

 

「綾乃ちゃん・・・」

 

闇の力に包まれる綾乃、その姿は 自分の知る綾乃の姿ではなかった。

 

「和樹君・・・」

 

「綾乃ちゃんは兵衛達、風牙の長 の霊が取り付いている」

 

「そんな!?」

 

「姉様は!?」

 

「今の綾乃ちゃんは自分で考えて 動いているんじゃない。兵衛達が中から操っている生きた操り人形と同じだ」

 

「助けることはできないんです か!?」

 

煉は和樹にしがみ付きどうにかで きないのかと懇願する。

 

「中にいる兵衛達を黄金の浄化の 炎で叙霊すれば・・・でも・・・」

 

和樹はそこで言葉を濁した。

 

「無駄だ! その女は闇の炎を召 喚する力を得た、闇に染まったそ奴を浄化することなど不可能!」

 

「そんなことない、黄金の浄化の 炎を使いこなしていれば叙霊だけをして姉様を傷つけるなく助けることができる!」

 

煉は、父である厳馬、宗主である 重悟のように対象だけを浄化することで綾乃を助けることができると主張する。

 

「駄目だ」

 

「兄様!」

 

「今の綾乃は兵衛達と意思が同調 している状態だ。あいつが自分の自我を取り戻すか、あいつらの意思が離れたりしない限り浄化しようとしたら闇の炎に包まれている綾乃の心ごと下手したら浄 化しちまう」

 

「そんな!!」

 

それじゃ綾乃を助けることはでき ないのか?

 

「綾乃ちゃんが自分で闇から抜け 出すようにするしかない」

 

『無駄なこと我ら長達の意思を跳 ね返す事などできるとでも思ってか?』

 

兵衛達は手に入れた肉体を逃すつ もりなどまるでない。

 

だが和樹は何か自信があるのかそ の顔に諦めの色は映っていない。

 

「できるって言ったらどうす る?」

 

「ふっ、戯言を」

 

『この娘がそんなことできると貴 様は本気で思っているのか?』

 

和樹の言葉を神と兵衛は笑い捨て た。

 

「悪いけど奇跡っていうのは起き るのを待つものじゃなくて、起こすものなんだよ」

 

和樹は炎龍覇を構えると黒炎を召 喚する。

 

「兄さん、凛ちゃんと杜崎さんを 運んで戻ってくるのにどれくらい掛かる?」

 

「・・・往復で約5分、それだけ あれば何とかなる」

 

和麻は2人を見て答えた。

 

「千早、煉君、3人で5分間、何 がなんでももたせるよ」

 

「わかったわ」

 

「はい」

 

(アオイ、いいね)

 

(任せて!)

 

(炎龍覇)

 

(わかりました)

 

千早は雪姫を構え水の精霊を召喚 する。

 

煉とアオイも黄金と蒼色の炎を召 喚する。

 

炎龍覇も和樹と意思を通じ合わせ さらに力を増す。

 

和麻は2人を抱えると空へと飛翔 した。

 

神は和麻に向け黒い風を放つがそ れを黒炎が相殺した。

 

「追わせはしない。兄さんが戻っ てくるまでの5分、魂だけになっても止めてみせる」

 

「面白い、なら貴様らを殺してや つを殺す。行け、綾乃」

 

「はい」

 

綾乃は和樹へと向けて走り出す。 だがその前に千早が立ちはだかった。

 

「邪魔するな」

 

「目を覚ましなさい、綾乃ちゃ ん!」

 

黒い炎と蒼い水がぶつかり合う。

 

『小ざかしい!』

 

兵衛は黒い風を召喚し千早を襲 う。綾乃を操りながらでも風を召喚し相手を攻撃することができるのだ。先程和麻を攻撃したときのように・・・

 

背後から千早を黒い風が襲うがそ の前に氷の壁が出現し風は消滅した。

 

『何!』

 

「悪いけど死角からの攻撃には慣 れてるのよ!」

 

「きゃっ!」

 

黒い炎が弾き飛ばされ綾乃を水が 襲った。

 

「このっ、よくもっ!」

 

「自分が今何をしているのか分っ ているの!?」

 

「うるさい!」

 

綾乃は千早の言葉を振り払うよう に黒い炎を放つ。千早は素早い動きで避けるがそこに神が放った風が降り注ぐ。

 

だが和樹が黒炎を放ち、風を打ち 消した。

 

「ええぃっ!」

 

「!?」

 

次の瞬間、神の腕に鎖が巻き付 く。鎖を伝わり黄金と蒼い炎が神の身体を包み込んだ。

 

「黒炎斬」

 

炎龍覇を神に向かい和樹が振り下 ろし炎の刃が神を斬り裂いた。

 

「はぁっ!」

 

千早の鋭い蹴りが綾乃を襲う。腕 でガードしたが勢いを殺しきれず綾乃を吹き飛ばした。

 

「このっ!」

 

綾乃はバランスを崩されながらも すぐさま体勢を立て直し千早へと襲い掛かった。

 

黒い炎が手に集まりそれは綾乃の 体を包み込む。

 

「はぁっ!」

 

千早との距離を詰めていた綾乃の 身体を、地面を突き破って流れ出した水が空へと投げ出した。

 

「!?」

 

「やっ!」

 

空中へ投げ出された綾乃に千早の 掌底が綾乃の鳩尾へと叩き込まれる。

 

綾乃はそのまま地面へと叩きつけ られるが痛みを感じていないのか、すぐに起き上がる。

 

「何で、何でよ! 何であたしの 攻撃は当たらないのよ!!」

 

「ね、姉様、意識があるんです か!?」

 

綾乃の言葉を聞いた煉が驚きの声 を上げる。綾乃は完全に操られて自我がないと思っていたからだ。

 

だがその反応が煉に隙を作ってし まう。

 

「もらった!」

 

「!?」

 

「煉!」

 

隙をつき神が煉に襲い掛かるが和 樹は煉を神の風が降り注ぐ場から弾き飛ばした。

 

「くっ!」

 

和樹は自分に当たりそうな風を弾 き、さらにかわしながら神との距離を一気に詰めて襲い掛かった。

 

「テアアアアア アァァァァッッ!!!」

 

黒い風が身体をかすっていくがそ のまま炎龍覇を神の胸から腹にかけて突き刺す。さらに黒炎が神の身体を包み込み燃え上がった。

 

だが・・・

 

「・・・・・・効かぬわ!」

 

「!? あっ・・・がぁっ!」

 

「このまま絞め殺されるか、それ とも足掻けなくなったところをバラバラに切り刻んでくれようか?」

 

離れようとした和樹を炎の中から 現れた神の手が捕らえると和樹の首を締め上げた。和樹は逃れようとするが自分の・・・人間の腕力で逃れることができるほど神の力は弱くない。

 

和麻が捕まったときにそれは痛い ほど分かっていた。

 

「和樹君!」

「行かせない!」

 

千早が気づき和樹を助けようとす るが綾乃と兵衛の放った黒い炎と風が千早へと襲い掛かる。

 

「ああっ!」

 

空中へと飛び出した瞬間を背後か ら狙われる。

 

和樹のことに気を取られ過ぎてい たために雪姫で攻撃を防いだが、完全に防ぎ切ることができずバランスを崩しそのまま吹き飛ばされてしまう。

 

「あっ・・・かっ・・・」

 

力が入らなくなった和樹の手から 炎龍覇が手放され地面へと落ちていった。頭に血が流れず、体の力が次第に抜け始め意識も朦朧としていく。

 

(い・・・しき・・・ が・・・・)

 

「さらばだ、黒炎の契約者よ、死 ね!」

 

神の右手の爪が伸び剣のように銀 色に光輝く。

 

「終わり「兄 様ぁぁっ!!」・・・何!?」

 

和樹を突き刺そうとした右腕に鎖 が絡みつき黄金と蒼色の炎が燃え上がった。

 

「兄様を放せっ!!!」

 

(振り下ろすのよ!!)

 

蒼色の炎を纏った炎龍覇を煉は力 の限り、和樹の首を絞める左腕に向かって振り下ろしその腕を斬り落とした。

 

(翅炎!)

 

煉の背中から蒼色の炎の翼が出現 する。広げられた翼から無数の羽が放たれ神の体を炎に包んだ。

 

「兄様!!」

 

和樹は意識が朦朧としているの か、それとも意識を失っているのか、力なく地面へと落ちていく。

 

(間に合えっ!)

 

煉は翼を羽ばたかせ和樹を助けよ うと地面へと急降下する。だが、手を伸ばしても間に合わない。

 

「和樹君!!」

 

次の瞬間、地面を氷が覆った。そ して地面へ叩きつけられるかと思った和樹をギリギリで千早が受け止めた。

 

「姉様! 兄様!」

 

「和樹君! 和樹君!」

 

「・・・・・・がぁっ・・・ はぁ・・はぁ・・・」

 

和樹は荒い息をしながら肺へ酸素 を送り込む。首には締め付けられ爪の刺さった痕がくっきりと残っていた。

 

「くっ!」

 

立ち上がろうとするがバランスを 取ることができずすぐに膝を突いてしまい、目もぼやけて視線が定まらない。

 

「和樹君!」

 

「兄様!」

 

「に、逃げるんだ・・・」

 

「逃がしはしない!! これで貴 様らは死ぬんだ!!」

 

神は黒い風を一点に集結させる。 巨大な風の球が神の上空で渦を巻き圧倒的な力を見せ付ける。

 

解き放たれたら最後、受けきるこ とができなければ和樹たちの身体を消滅させ何もかも残さない。残るのは巨大なクレーターだけ・・・

 

「八神和麻・・・奴の風など遊 び、神の風を受けて死ぬがいい!! 己の弱さを呪ながら!!」

 

「させるかぁっ!!」

 

神が風を放つと同時に和樹も神の 声を頼りに方向を定めて黒蛇を放つ。

 

2人の間で2つの強力な力がぶつ かり合った。だが、力を練りきれていない和樹は黒い風に押される。

 

「くっ!」

 

「無駄だ、人間が神に力を受け止 めることなど!!」

 

「押し返される!」

 

「兄様!」

 

煉は黄金の炎を召喚し風へ向かっ て放った。

 

(私も!)

 

蒼い炎の翼が羽ばたくと煉の腕を 伝って黄金の炎と一体となり黒い風へと向かった。

 

「流星水弾」

 

水の飛礫が黒い風を避けて神へと 襲い掛かろうとするが寸前のところで黒い風が相殺する。

 

「うっ!」

 

(お、重い・・・)

 

和樹の横で煉が膝をついた。

 

だがそれでも炎を放つことは止め ない。だが今まで使ったことの無い大きな力を使った反動と神の力の前に煉の体力は限界に近かった。

 

「煉君!」

 

千早は巨大な氷の円錐を神へと向 かって放ち続ける。神に届かないまでも自分の攻撃に意識を向けさせることで和樹の負担を減らそうとしているのだ。

 

だが、それは神にとっては大した 問題ではなかった。

 

(これ以上は!)

 

次の瞬間、黒蛇が風に飲み込まれ た。

 

「うあっ!」

 

衝撃が和樹を襲い、体を弾き飛ば す。

 

「これで終わりだ!!」

 

神が巨大な風の球を再び作り出 す。次こそ完全に和樹の息の根を止めるつもりでいるのだろう。

 

煉は圧倒的な神の力の前に自分の 死を感じた。

 

「ヤメロォォォッッ!!」

 

「なにっ!?」

 

1メートルは有に超える蒼い風の 刃が神の両腕を斬り落とした。攻撃に気を取られていた神は上空から放たれた風に気がつかなかった。

 

「喰らぇっ! 風魂!!」

 

上空から飛来した影は神の体へと 両手に作り上げていた風の球体を叩き込んだ。

 

「ぐあっ!」

 

「うらあぁぁっっっ!!」

 

神の体が回転しながら大きく吹き 飛ばされる。螺旋状に渦巻く風が神の体をむき出しの岩肌へと叩き込んだ。

 

「はぁぁぁっ!!!」

 

さらに雨のように蒼い風の刃が辺 りを覆い神へと降り注いだ。崩れる岩が神を飲み込みそのまま姿は見えなくなった。

 

「はっ!」

 

「きゃあっ!」

 

さらに炎を放とうとしていた綾乃 に向かっても容赦なく風を放ち吹き飛ばした。

 

「和樹、煉、千早!」

 

3人の前に下りてきたのは傷つい た凛と沙弓を連れて行っていた和麻だった。聖痕を発動させいるためその瞳は蒼く染まり、蒼い風の翼が背中から生えていた。

 

「悪い、待たせちまって!」

 

「2人は?」

 

「霧香に頼んで即行病院に送っ た。『蘭が来ているから大丈夫だ』ってお前に伝えろって言われたぞ」

 

「・・・・蘭が来ている・・・な ら大丈夫だ」

 

「蘭ちゃんは式森家の中で医療関 係では右に出るものはいないわ。あたしの治癒魔法なんて比べ物にならないもの」

 

「・・・・・4年間の間に和樹専 門の人材が増えてやがる・・・」

 

和麻は自分が日本を飛び出してい る間の変化を感じた。自分がいたときにも和樹に個人的に付いていた者が和麻の知っているだけで5人いた。

 

レオン、天狗の鬼一法眼、猫又の マオ、人狼の銀、そして会ったことはないがもう1人いると聞いたのを覚えている。だが今和樹にはその5人の他にJと呼ばれている情報屋、そして、霧香から 聞いた蘭という人物。

 

そしてカイもその1人である。

 

(和樹の周りには自然と人が集ま る・・・これも人柄なのかな)

 

自分もそうなんだろうと思いなが ら和麻は思った。和樹には人を引きつける何かがある。人を癒す何かがある。そして誰かのために一生懸命になれる。

 

そんな和樹だから自分は和樹を弟 のように思えるのだ。だがら和樹と共に今いるのだろう。

 

「それでこれからどうする?」

 

今のままでは神を倒すのに綾乃の 存在が邪魔になる。

 

煉を綾乃の相手に回したい所だが 綾乃を相手にするのは酷だろう。煉には身近な人を相手に手を抜かずに戦うだけの精神力はない。

 

だが千早を綾乃の相手にするのは かなり戦力的に痛い。

 

「3人とも数分間だけ僕に時間を くれる?」

 

「数分?」

 

(炎龍覇、さっき君と会った場所 に綾乃ちゃんを連れて行くことは可能?)

 

(ええ、しかし、あなたとは違い 今のまま行けば闇と同化している綾乃の心は向こうの時間でなら10分程度で消されてしまいますよ。体、本体があの場所に行くわけではないのですから)

 

(その時間で何とかしてみせる。 僕と綾乃ちゃんを今すぐその場所に、もしかしたら・・・・・すぐに綾乃ちゃんを助けることができるかもしれない)

 

(分かりました)

 

炎龍覇は和樹の考えていることが 分かった。

 

「僕が炎龍覇とあった空間に行け ばこっちではたった数分の時間でも、向こうではそれ以上の時間を得ることができる。綾乃ちゃんに憑依している兵衛たち風牙の長たちを倒して綾乃ちゃんを元 に戻す」

 

「この場で和樹君や和麻お兄ちゃ んが綾乃ちゃんを浄化するより安全だし確実にできるならそっちのほうがいいわね」

 

「数分だけなら聖痕を発動させれ ば神相手にも十分持たせることができる。3人でなら数分持たせることくらい十分可能だ」

 

「僕もがんばります」

 

「なら頼むよ」

 

和樹の言葉と同時にむき出しに なっていた岩肌が爆発した。

 

「貴様ら・・・ただでは殺さん ぞ」

 

立ち込める煙の中、風牙神が姿を 現す。和麻から受けた攻撃はやはり全く効いていない。風魂の直撃を受けたにもかかわらず体には傷一つ無い。

 

「煉、千早、何としても数分間時 間を作るぞ」

 

「はい」

 

「もちろん」

 

「行くぞ!」

 

和麻は聖痕を発動させると背中か ら風の翼を羽ばたかせ飛翔した。

 

(急がないと)

 

和麻が飛び立つのを見た和樹は兵 衛に憑依され闇に飲み込まれた綾乃と対峙した。

 

『今更何をしようとこやつはわし らの言いなりよ』

 

「それはどうかな」

 

和樹の周りにはいつの間にか黒炎 の球体がいくつも浮かんでいる。

 

「例えどんなことでも不可能なん てことは無い。一番大事なことはくじけない、諦めないと思う強い心なんだよ!」

 

黒炎の球体は綾乃を取り囲むよう に首位へと散りばめられると一つ一つの球体を繋ぎとして結界が張られた。

 

「な、なに!? !?」

 

「ごめんね」

 

綾乃は和樹の謝る言葉を聞くと腹 部に強い痛みを感じそのまま意識を失った。

 

気絶した綾乃を腕に抱えると和樹 は炎龍覇を地面へと突き刺しその名を呼ぶ。

 

「炎龍覇」

 

(ではあなたの意識とともに綾乃 を向こうの世界に連れて行きます)

 

和樹は綾乃を腕に抱えたまま意識 を手放した。

 

 

 

 

あとがき

ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃ ちゃんちゃちゃんちゃん♪

ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃ ちゃんちゃちゃんちゃん♪

僕も必死に戦っているのに名前し か出てきませんでした〜♪

チクショーーーーー!!!

「どうもレオンです。

このところあとがきだけしか台詞 のもらえない僕、本編でなかなかで番がもらえません。えっ、それならカイのほうがかわいそうだって? あっ、そう言えば・・・・・・まあカイだからいい か!?」

ダダダダダダダダダダダダ ダダダダダダダダダダダダダ!!!!(マシンガンの 音)

「ざま見ろ! ああ〜〜、すっき りした。カイです、僕は僕で必死に戦っていますので忘れないください。それでは失礼します」

ゲシッ!!

「・・・・・・いててて、ひどい なぁ〜もう・・・・それじゃ次で台詞がもらえますように祈りながら・・・・」

ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃ ちゃんちゃちゃんちゃん♪

ちゃんちゃかちゃん ちゃ・・・・・・

「お前って奴は!!!」

ズドッッン!!!

レオンはお星様になりましたと さ・・・

「それじゃ、次回もよろしくお願 いします。カイでした」

 

 

 


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