第1部   〜動き出す運命〜

 

 

 

 

第32話 切り札

 

 

「くっ!」

 

「和樹!」

 

和樹が足をふらつかせ力なく地面 へと倒れ込みそうになるところをケルベロス姿のカイがうまく受け止める。

 

黒龍波を放ち、最後に風牙神を消 滅させるために黒炎を召喚したことで和樹の身体はすでにボロボロであった。

 

だがカイ自身も体中に風牙神から 受けた風の刃の傷が無数に残っている。

 

そして和麻、千早、煉、白炎を召 喚した綾乃もすでに限界を超えていた。

 

「だめだ・・・もう一歩動くどこ ろかどころか筋一本動かせねぇ・・・・」

 

和麻は地面にばたりと倒れ込み全 身で疲れを表現した。

 

「あたしも・・・・・もう限 界・・・」

 

千早も地面に座り込み雪姫に寄り かかりながら項垂れる。

 

「カ〜イ、お前は大丈夫か?」

 

和麻は自分たちの後に風牙神と 戦ったカイに声をかける。

 

「和麻がかなり力を奪って入れて いたおかげで助かった。そうじゃなかったらケルベロスの姿でもやられていたな」

 

「えっ、じゃあやっぱりあんたカ イなの!!」

 

「・・・・・今更かよ〜」

 

綾乃のボケに突っ込むがどこか力 ない。

 

「しかし、この後始末どうすん だ?」

 

「源蔵と源氏、重悟が何とかする だろう。3人が動けば他の術者たちも文句は言えないだろうからな。特に源氏には・・・・・・」

 

「・・・・・・納得」

 

源氏相手に文句を言える人間を和 麻はこの世にいるなら見てみたいと本気で思った。

 

言葉の勝負であっても力の勝負で あっても理屈を持ち出そうが源氏はそれに対する最高の答えをすぐさま返してくる。

 

自分も何度文句を言って敗北した か・・・まあ、自分が納得しての敗北だからいいが・・・・・・

 

(ああ〜思い出したくない な・・・でもまだましか)

 

昔のことを思い出しながら和麻は 源氏とは違った意味でいつもうまく交わされていた現在入院中の中年親父のことを思い出した。

 

「あの、兄様?」

 

「何だ、煉?」

 

「神凪はこれからどうなるんで しょうか?」

 

煉は神凪のことが心配であった。 風牙神の言ったように風牙衆のような者によって神凪は滅びるのかと。

 

「さ〜ね〜、俺はもう神凪の人間 じゃねぇんだからどうでもいい。自分で考えろ」

 

「えっ!! 兄様は戻ってこない んですか!?」

 

「あ゛ぁ゛・・・ごめんだね、俺 は自分のいるべき場所、ともに生きていく相手を見つけた。あの場所は・・・神凪はもう俺のいる場所じゃねぇし、戻れと言われようと目の前に山のような金詰 まれようと土下座されようと脅されようと戻る気は全くない」

 

「でも・・・」

 

「あぁ〜『でも・・・』じゃ ねぇ! お前は誰かに言われなくちゃ行動できねぇのか!? 自分で考えて自分から行動しろ! 神凪を滅ぼしたくないなら、滅ぼさないように行動しろ! ど うしたらいいか、悩んで悩んで悩みまくって方法を考えろ!! それができねぇなら神凪は滅びる! それだけだ! 」

 

「確実に言えることは今までと同 じやり方をしていたら駄目だということだな。力だけを振りかざし続けるなら確実に神凪は滅びる。そして新たな風牙衆を生み出すだろう」

 

和麻とカイの言葉は煉に重く圧し 掛かった。

 

「その前にお前はまだ力も意思も 弱い。本当の強さってもんを見つけろ。それがお前に今必要なことだ。まだ宗主がいるうちに学べることを学べ」

 

「・・・はい!」

 

そう、自分はまず強くならなけれ ばいけない。

 

力だけじゃない、意思だけでもな い、本当の強さとは何かを見つけることが、自分が今するべきことだ。

 

煉が決意を固めたとき頭の中に声 が響いてきた。

 

(・・・・煉、そろそろ私はカズ ちゃんの中に戻るわね)

 

「あっ、はい。ありがとうござい ました。和樹兄様、アオイさんを」

 

「ん? 煉、何言ってるの?」

 

綾乃はいきなり煉が返事をしたか と思うと知らない人の名前を呼んで和樹に話しかけたのでわけが分からないといった顔をした。

 

「・・・分かった」

 

和樹が返事をすると煉の背中に蒼 い翼が羽開く。さらに翼が煉の体から離れると蒼い炎は1人の女性の形を作り出した。

 

「なっなっなっなっなっ!!!」

 

「ほぉ〜、すげぇ!」

 

「って、あんた何でそんなに落ち 着いた驚き方してんのよ!!」

 

暢気に驚く和麻に綾乃が突っ込 む。どうやらまだまだ元気なようである。

 

「アオイ・・・・・ご苦労様」

 

和樹は優しい眼差しで自分の前に きた炎の女性、アオイを見た。

 

『う〜ん、私、そんなに役になっ ていないけど』

 

「そんなことないです。僕はアオ イさんに凄く助けてもらいました」

 

「そうだよ、アオイ。凄く感謝し ている」

 

『いいの、私がカズちゃんの力に なりたいん・・・・・カズちゃん!!』

 

ドゥッ!

 

アオイは炎の翼を和樹に巻きつけ るといきなり現れた銃弾を炎で受け止めた。

 

「なっ、何!?」

 

「今のって・・・銃声!?」

 

綾乃と煉は不測の事態に慌て混乱 する。

 

「・・・気配が消えただと・・・ 一瞬だけ和樹の後ろに・・・馬鹿な、俺が気配を探れない・・・」

 

和麻は風の精霊から送られてくる 周囲の状況を分析する。だが力がそこをついている為広範囲を探ることができない上に精霊の量が十分に集まらないでいた。しかしそれでも自分の探索力には絶 対的自信がある。それでも気配を探れないことに和麻は歯痒さを覚えた。

 

「今のはっ・・・あっ・・・」

 

『カズちゃん、無理しないで!』

 

和樹は銃声のしたほうを向き、黒 刀を構えようとしたが体は全く動かなかった。まるで神経が通っていないかのように腕が下がり、膝から崩れ、手から黒刀が落ちた。

 

「つっ・・・・・・カイ、お兄 ちゃん達を! アオイちゃんは和樹君をお願い!」

 

千早は素早く2人に指示を出すと すでに限界を超えている身体を無理やり動かし周囲を探り、声を上げて叫んだ。

 

「・・・エリス、出てきなさい!  あたなの相手はあたしがして上げる!」

 

千早の声が辺りに響き渡る。

 

だが数秒後少し離れた空間にゆが みが生まれ出した。

 

「なっ、何!?」

 

綾乃が声を上げ驚く。

 

和麻も声には出さないが驚いた表 情でその空間を見つめ、煉は和麻の腕をしっかり握っていた。

 

「ふふっ、はははははははは は・・・・・・ホント、笑わせてくれるわねぇ、千早。今のあなたが私の相手になるなんて本気で思っているのぉ? あなたってホントお馬鹿さん」

 

空間のゆがみが広がりそこから1 人の女性が姿を現す。

 

腰まで届きそうな銀色の長い髪を 靡かせ、誰もがその美貌に見せられてしまいそうなまるで人形のような整った顔立ち。

 

ミッドナイトブルーの薄いジャ ケットとロングスカートの上からでも分かるバランスの取れた体。

 

その姿は男の和麻、煉だけでな く、同じ女性の綾乃でさえも見とれてしまうほどであった。

 

だがそんな女性を前に千早の顔は 酷く強張っていた。そしてカイも完全に戦闘体制に入っている。

 

和樹も手から落ちた黒刀を拾い上 げ手にしている。

 

(だ、誰なのあの人・・・・・  千早ちゃんがすごく敵対心を向けてるけど・・・・・・どこかで見たことあるような?)

 

綾乃はカイの後ろに立ちながら千 早とエリスと呼ばれた女性を見る。

 

2人とも綾乃を含めた周りの視線 に気づきながらも話を続ける。

 

「千早、随分ボロボロねぇ。妖魔 相手にそんなに苦戦したのかしらぁ?」

 

「あなたに答える気はないわ。エ リス、何しに来たの?」

 

「あらあら、せっかちね。いつも のあなたと違って何だか落ち着きがないわよぉ?」

 

「答えなさい!」

 

「ふふふ、怖いわねぇ、あまり睨 まないでよぉ。今日はあなたに用があるわけじゃないのよ。まあ、彼はようがあるようだけどねぇ・・・・・・式森和樹に・・・・・・」

 

猫撫での口調でそう言うとエリス は右手に持った札を空間に貼り付けるようにかざすと再び空間が歪み入り口らしきものが開いた。

 

ゾクッ!

 

その場にいた全ての人が凍りつく ような圧力を感じた。

 

まだその姿は現れていないが空間 の入り口から溢れ出てくる見えない圧迫感は神にも匹敵するほどであった。

 

その異様な空気を放つ者の姿が次 第に現れる。

 

姿が見えたことでさらにその圧迫 感は大きくなる。

 

「・・・・・・やあ、和樹。久し ぶりだね」

 

(えっ、何? 和樹君の知り合 い?)

 

綾乃は姿を現した人間が和樹の名 を呼んだことに反応した。

 

姿を現したのは自分や和樹、千早 と同年代の男。

 

和樹と背は同じくらいだろうか、 黒のシャツと皮ズボンを履き、その上に白のロングコー

トを羽織っている。

 

そして1番目を引くのは背中でク ロスするように掛けられている昔人気ゲームで出てきたソルジャーが持っていたような男の身長ほどはある長い刀が2本。

 

(・・・怖いの? うん、怖いん だわ、あたし・・・・・・)

 

男を見ていたが綾乃は自分の体が 勝手に震えていることに気が付いた。

 

寒いからではない、男から逃げ出 したくなるほどの恐怖を感じているわけでもない。

 

だが体は震えが止まらない。最初 は恐怖かと思ったがそうではない。

 

綾乃は何だか分からないがこの場 にいてはいけないようなそんな予感を感じずに入られなかった。

 

そしてそれは煉も一緒であった。

 

煉も綾乃同様正体の分からない今 から何かが起こりそうな予感がしてならなかった。

 

和麻は煉の肩を借りながら無理矢 理立ち上がり不測の事態に対応できるようにしている。

 

それに気が付いた煉は魔法具を鎖 に変えて和麻の側を離れないでいる。

 

だが男は和麻や綾乃、煉には目も くれず和樹だけを見ていた。

 

そして煉は男だけでなく和樹から も体が震える何かを感じた。

 

「・・・・・・風牙神を倒したみ たいだね。僕は信じていたよ。君なら必ず倒すとね」

 

「・・・・・・」

 

「その力を見て思ったよ! やっ ぱり君は僕と共に行動すべきだ! そして手にしようじゃないか、僕らが・・・・・・僕らのような特別な力を持った、この世界を駄目にする馬鹿な奴らを倒す 力を持った、選ばれた者が頂点に立つ世界をっ!」

 

和樹に向かって男はまくし立てる ように話すが和樹は俯いたまま無言でアオイに支えられたまま座り込んでいる。

 

「和樹、君は・・・」

 

「ふざけないで!」

 

『あんた何かの力にカズちゃんが なるわけないでしょ!』

 

男の言葉に千早とアオイが声を上 げて叫んだ。

 

「・・・・・・千早、そして君 か・・・死んだと思ったけどね。まさか殺されても亡霊の状態でまだ和樹の側から離れないで僕にまた姿を見せるとは思わなかったよ。和樹のおかげ「蒐 斗ぉぉぉっっ!!」」

 

ガギッッ!!

 

バゴゴッ!! バキッバキッバ キッ!!!!

 

男・・・蒐斗が2人を見下すよう に話していたとき和樹が黒刀を目にも留まらぬ速さで振り下ろした。

 

それに蒐斗は背中の長刀を和樹の 斬撃にも劣らぬ速さで背中の鞘から抜き放ち受け止める。

 

受け止めた衝撃で足元の地面は陥 没しアスファルトの破片が飛び散った。

 

「蒐斗、君はぁっ!!! 君だけ はぁぁぁっっ!!!」

 

和樹は今まで見せたことのない鬼 の形相で蒐斗を睨みつけている。その姿に和麻、綾乃、煉は驚愕の表情を浮かべ言葉を失っていた。

 

「何をそんなに怒っているんだ、 和樹?」

 

「っ!! ふざけるなっ!!」

 

グオオォォォッッ!!

 

黒刀が黒炎に包まれると黒龍刀に 代わり蒐斗の長刀を弾き飛ばす。すぐさま和樹は間合いを取り黒炎に包まれる黒龍刀を振り下ろした。

 

「殺せっ!! 黒龍刀!! あい つを姿もなくなるほどに斬り刻め、殺せっ、殺せっ、殺せっ!!!」

 

ギャオォォォォ!!

 

和樹と心のリンクする黒龍刀が勢 いよく伸び蒐斗へと迫る。まだに和樹の怒りを表現するようにその力は目の前のもの全てを破壊するにふさわしい力であった。

 

蒐斗はそれに対して長刀をまっす ぐ右腕を和樹に伸ばし構えを取った。

 

「いけ、白龍刀」

 

男が静かに刀に語りかけた瞬間、 長刀が白い龍の形になり白炎を纏い、黒炎を纏う黒龍刀と正面からぶつかりあった。

 

「くっ!」

 

「うわっ!」

 

「きゃあっ!」

 

凄まじい衝撃波が辺りを包み込み 周りのものを吹き飛ばす。

 

「後ろに下がれ!」

 

和麻たちはカイが衝撃波を体で受 け止めてくれたおかげで吹飛ばされずにすんだがそのカイの体さえも押されていた。

 

(っ! 一体何なんだ!)

 

煙が晴れると和樹が再び蒐斗とい う男に斬りかかっていた。黒炎を纏わせた黒龍刀を目にも留まらぬ速さで振るっているが蒐斗はその斬撃を全て受け流していた。

 

和樹と似た刀、白龍刀という刀に 白炎を纏わせて・・・・・・

 

(和樹の奴、怒りで我を忘れてや がる。今のまま戦えば・・・・・・)

 

すでに和樹は限界を超えている。 それにもかかわらず黒炎を召喚しているのは怒りに任せて命の安全弁を外してしまっているからだ。

 

もし今のまま力を使い続けたら和 樹は間違いなく命を落としてしまう。

 

「和樹! 止めろ、死んじまう ぞっ!!」

 

和麻は声を荒げて和樹を止めよう とするが和樹の耳には全く聞こえていない。

 

「和樹く・・!?」

 

ガキッ!

 

2人を止めに入ろうとした千早の 目の前にいきなり現れたナイフを雪姫の柄の部分で受け止めた。

 

「行かせないわよぉ、千早」

 

「エリス、あなた・・・」

 

「あなたの相手は私よ!」

 

エリスは両手を広げて精霊を召喚 すると千早に向けて放った。

 

「水銀の渦!」

 

「水壁!!」

 

エリスの手から銀色の水が放たれ 千早を襲う。それを千早は蒼色の水で受け流した。

 

「じゃましないでっ!」

 

「無理しない方がいいわよ。あな た、立っているのがやっとでしょ!」

 

千早とエリスは雪姫とナイフを媒 介に作り出した水銀の剣を交じわせる。 

 

『千早ちゃん、私が行くわ!』

 

「ちっ、蒐斗の邪魔をするんじゃ ないわよ!」

 

千早に向けていた水銀をアオイへ 放ったがアオイは蒼炎を放ち撃ち落した。

 

アオイはそのまま炎の翼を広げる と和樹と蒐斗へと向かおうとしたが次の瞬間2人が自分の視界から消えた。

 

「・・・・・・邪魔だよ」

 

『えっ!!?』

 

「アオイ!!」

 

和樹を止めようと2人のところへ 向かおうとしたアオイの背後から声がかかる。そこにはいつの間に移動したのか和樹と戦っていたはずの蒐斗が立ち白炎を召喚していた。

 

「和樹を惑わすのは止めにして欲 しいな。でも、今度こそ、さようならだ」

 

『あっ!』

 

「やめ ろぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!」

 

白炎を放った蒐斗に対し和樹は叫 びながら黒炎を放ち、白炎を迎え撃つ。

 

だが力の差を埋めることができず 黒炎は白炎に飲み込まれる。そして黒炎を放った和樹とアオイを軽々と吹き飛ばしその身体を地面へと叩きつけた。

 

「・・・・・ぐっ・・・ がぁっ!」

 

黒龍刀は黒い短刀へと戻り、和樹 を包み込んでいた黒炎は風が吹けば消えてしまいそうなほど弱々しくなっていた。

 

「貴様っ!!」

 

ドゴッ!

 

和樹の下に向かおうとする蒐斗へ カイが振り上げた鋭い爪を振り下ろす。

 

だがその爪を蒐斗は白龍刀で軽々 と受け止め平然とその場に立っていた。

 

「残念だけど今の君じゃ僕の敵で はないんだよ、カイ」

 

「そういうことは俺を倒してから 言え!!」

 

至近距離から地獄の炎、獄炎を3 つの頭から蒐斗に向けて放つ、カイ。紅黒の炎に包まれるがその炎は白炎に一瞬にして吹飛ばされる。

 

「なっ!!?」

 

「・・・・・・白炎、白刃の桜舞 (おうぶ)」

 

「!?」

 

ゴウッ!

 

・・・・・・・・・自分の目を 疑った。

 

和麻、綾乃、煉、千早、アオイは そう後に言った。

 

ズドッン!!

 

カイの身体が一瞬にして数え切れ ないまるで壁のような白炎の刃の中に飲み込まれほんの数秒すると体中を焦がし、血を流したカイが力なく地面へと倒れ付した。

 

「カイ!」

 

和麻たちは地面へと倒れたカイの 下へと駆け寄る。

 

(こんなに力の差があるなん て・・・・馬鹿な! ケルベロスだぞ、相手は・・・・・・)

 

カイは辛うじて息をしていたが虫 の息に近い状態であった。

 

「ケルベロス・・・・・・カイ、 確かに脅威ではあるが神と戦い力の大半を失った君の力と僕の力では相手にはならないよ」

 

「てめっ! ふざけんじゃっねぇ ぞ! 螺旋風刃・・・」

 

和麻が渦を巻く風の刃を放とうと した瞬間風が綺麗に斬り裂かれる。そして目の前を何かが通り過ぎていくのが見えた。

 

ドバッ!

 

「がはっ! ・・・・ばっ・・・ う・・・そだ・・・・・ろ・・・」

 

和麻は自分の右肩から左脇腹にか けて斬られたことに血が飛び出すまで全く気がつかなかった。風を召喚していなかったら一刀両断されていたかもしれない。

 

「和麻!!」

 

「兄様っ!!」

 

地面へと前のめりに倒れて動かな い和麻の姿に綾乃と煉の悲鳴に近い声が響き渡る。

 

「ふはははははははは はっ・・・・・・邪魔なゴミは片付いたね。これで君とゆっくり話せるよ、和樹」

 

「蒐斗っ!!」

 

『カズちゃん、駄目っ! 本当に 死んじゃう!!』

 

和樹はアオイに羽交い絞めにされ ながら蒐斗の名前を怒りに満ちた声で叫び続ける。

 

体中から血を流し、口から血を吐 き出しながらも和樹は蒐斗に斬りかかろうとすることを止めない。

 

完全に感情をコントロールできず 怒りだけが今の和樹を突き動かしていた。

 

「君はぁっ・・・君はそうやっ てっ!!」

 

「邪魔なんだよ、和樹。君には全 て必要ない物なんだよ」

 

「君だけはっ・・・君だけは絶対 に許さないっ!!」

 

『きゃっ!』

 

「うああああああ あぁぁぁぁぁっっっっ!!」

 

和樹はアオイのことを振り払い蒐 斗へと斬りかかる。

 

ガキッ!

 

「君が、アオイを!」

 

ガッ!

 

「アオイを殺したっ!!!」

 

和樹の振り下ろした拳が蒐斗の顔 面を捉え殴り飛ばすが本来の和樹の拳の影はどこにもない一撃であった。それでも当たったのは和樹の気持ちの強さなのだろう。

 

「・・・軽いよ。あの日の君の力 には程遠い」

 

「黙れっ!! 黙れっ!! 黙 れっ!!」

 

和樹は黒刀を空に向かって振り上 げる。

 

だがその黒刀にすでに黒炎の精霊 は召喚されていなかった。

 

それにもかかわらず和樹は獣のよ うな声を上げながら短刀を両手で持ち体ごと突っ込むような形で蒐斗へとぶつかって行く。

 

ガキッッ!

 

「ぐっ!」

 

「・・・・・・無駄だよ、和樹」

 

「ふざけるなっ!!」

 

蒐斗は白龍刀を振るい和樹の黒刀 を弾き飛ばす。

 

「がぁぁぁっっ!!」

 

「和樹君、もう止めてぇっ!!」

 

『カズちゃん逃げて!!』

 

千早はこれ以上苦しみながらも戦 おうとする和樹を見たくないと涙を流しアオイも悲鳴のような声を出しながら和樹にもう止めるように叫ぶ。だが和樹はそれでも拳を握り締め突進を止めること をしない。

 

「はぁ〜、仕方がないな」

 

突っ込んでくる和樹に向かって蒐 斗は白龍刀を振りかざす。

 

「殺しはしないから安心しなよ」

 

白龍刀は和樹に向けて振り下ろさ れる。

 

「ぐっ・・・和樹!」

 

「和樹君!」

 

『カズちゃん!』

 

「和樹!」

 

「和樹兄様!」

 

「和樹君!」

 

和麻、千早、アオイ、カイ、煉、 綾乃の顔は絶望に染まり最悪の事態が頭を過ぎった。

 

白龍刀が和樹の身体へと迫るのが スロウ再生をしているように見えた。

 

和樹の身体に白龍刀が触れるまさ にそのとき奇跡が起きた・・・・・

 

そう思うしか6人にはできなかっ た。

 

ガキッ!

 

「!!?」

 

白龍刀が三叉の薙刀か、槍か、そ れとも矛か・・・・人の体よりも幅の広い刃が受け止めた。

 

「・・・・・・無理のし過ぎや、 和樹ハン」

 

「ぐっ・・・ジェ・・・ イ・・・」

 

和樹の身体は目の前に現れた男の 腕へと倒れ込み、それと同時に意識も失った。

 

「どりゃっ!」

 

男は三叉の武器を力任せに振り回 し蒐斗の身体を吹き飛ばした。

 

「邪魔を・・・!?」

 

男に斬りかかろうとした蒐斗へと 新たな影が飛びかかろうとし蒐斗は後ろへと飛びその攻撃をさけた。

 

蒐斗のいた地面が迫っていた影の 拳が突き刺さり、人がすっぽり入ってしまいそうなクレーターができる。

 

ジャラッ!

 

「動くな」

 

「少しでも動けばその首に爪が突 き刺さるぜ」

 

鈴の音が聞こえた瞬間、蒐斗の首 筋に五指から伸びる鋭い爪が当てられ、背中には刀が心臓を突き刺さんとばかりに当てられていた。

 

「蒐斗!」

 

「あなたも動かないでね」

 

「!?」

 

「動いたときはあたし、あなたを 殺すわ」

 

エリスの背後にもいつの間にか 30センチもありそうな短針をエリスの心臓に向けている女性が立っている。

 

「・・・・・・まさかこんなに早 く君たちが出てくるとはね」

 

動きを封じられているのにもかか わらず、蒐斗は落ち着いた様子で目の前にいる和樹を支えている男に話しかけた。

 

「蘭、どうや、そっちは!?」

 

その男は綾乃たちのほうを振り向 き大声で叫んだ。

 

和樹を支える男は金色の長いスト レートの髪を腰近くまで伸ばし目を隠すようにニット帽をかぶり、黒のタンクトップの上に身体に合わない白のパーカーを羽織って、首、手首の周りには髑髏の アクセサリーが掛けられている。ブラックのカーゴズボンを履き、靴は重そうな黒のコンバットブーツを履いていた。

 

「・・・・・・大丈夫、治癒の縄 を結んだから2人とももう心配ないわ」

 

綾乃と煉は自分達の後ろから聞こ えた女の人の声に驚いて振り向くとそこには長い髪をポニーテイルのように緑色のリボンで纏めている蘭と呼ばれた女の人が立っていた。

 

「・・・なら、和樹ハンのことも 頼むわ。重傷や急いでな・・・」

 

「当たり前よ」

 

(はっ、速い!! いつの間 に!!)

 

(全然気が付かなかった!!)

 

女の人の方を振り向いた本の一瞬 の内に和樹を支えていた男は自分達の横に立っていた。

 

綾乃は驚きのあまりに声もでず、 煉もただ驚いた表情で周りを見ていた。

 

そんな2人に気が付いたのか男の 方が笑いながら話しかけてきた。

 

「安心し、ワイらは和樹ハンに 従っている式森家の人間や」

 

「あっ、あの・・・・・」

 

「あっ、名前言うてなかったな、 悪かったな。ワイの名前は潤、冬間潤や。またの名を式森和樹のジョーカー(切り札)」

 

「ジュン・・・ジョーカー?」

 

「まあ呼ぶときはJ(ジェイ)っ て呼んでもええからな」

 

男、Jは軽い口調で綾乃と煉に自 己紹介を済ませた。

 

「そしてこいつは雪野花蘭」

 

Jは気を失っている和樹を地面に 寝せ応急処置を始めている蘭を見ながら2人に紹介した。

 

「あっちが鬼一法眼、そん隣が神 威銀、あっちがマオ。全員、和樹ハンに忠誠を誓うことを約束した者の集まり《無限八剱士》のメンバーや」

 

「む、無限八剱士・・・」

 

「・・・一体・・・い つ・・・・・・作ったんだよ」

 

和麻は4年のでかさを再び感じて いた。綾乃と煉はいきなり現れた5人を見てただ驚くばかりである。

 

「まあ、積もる話は後にして周り の連中の片付け再開といきましょか!」

 

その言葉を待っていたかのように 黒の服に身を包み布で顔を隠した人達が、数十人が9人を囲むように姿を現した。

 

「マオと蘭は和樹ハンたちを護っ といてな」

 

「こいつらは俺らで片付けとく」

 

「頼んだぞ」

 

「あたしも戦いたいのにぃ 〜〜〜、女はお留守番って言うつもり。和樹ちゃんの傷の恨み晴らさせろ!!!」

 

「猫は黙っとき」

 

「差別だ! 差別、差別!!」

 

「何かの耳に念仏よ、マオ」

 

5人は和樹、和麻達を護るように 前に立つ。その光景は目の前に巨大な壁ができたのではと思わせるほど大きな力を感じた。

 

「いくで!」

 

『おうっ!』

 

Jの言葉と同時にマオと蘭を残し て3人の姿が消えると同時に黒の服を着て周りを取り囲んでいた人達の体が宙に舞う。

 

その光景を見て綾乃と煉は一体何 が起きているのか全く理解することができないでいた。自分達の目に映るのは黒尽くめの人達が次々と宙を舞い地面へと落ちそのまま動かなくなる姿だけで3人 の姿は全く目に映ることがない。最初自分達が囲まれてしまっていることに絶望感を持ったが今はそのことなど綺麗に消えていた。

 

「一体何が起きてるの!?」

 

「3人はどうしたんですか!?」

 

「・・・・・・瞬歩」

 

「えっ!?」

 

「瞬歩・・・」

 

2人に答えたのは人が1人入れる ほどの大きさの縄の中に座っている和麻だった。同じようにカイも縄の中に入っている。2人の身体の傷が光り輝き徐々に回復していっているのが見ただけでも 分った。

 

「瞬歩は高速の移動術の一つだ。 俺も式森家で術を修行していたときにものにしたけど、この域まで達するだけでも4年は掛かったぜ」

 

「あたしが綾乃ちゃん達が襲われ ているときに見せた『花舞』も移動術の一つ。あれは残像を残しながら動く無音の移動術よ」

 

「そ、そんな・・・こ、こんなに すごい動き・・・・」

 

「す、すごい・・・」

 

和麻と千早の言葉を聞いている間 に3人は黒尽くめの姿をした人を全て倒し終え蒐斗とエリスだけが立っているだけであった。

 

「さぁ、どないする?」

 

「やるなら、相手になってやる ぜ」

 

「手加減はしないがな」

 

「・・・・・・調子に乗りすぎ じゃないかな。僕と対等なのは和樹だけだ、君たちなんかが僕を相手にできると思っているのか?」

 

「どっちが調子に乗ってるん や・・・そのまま言い返したるそっちこそあまり調子に乗んなやっ!!!」

 

Jは蒐斗に向けて武器をかざす。 それと同時に蒐斗は白炎で体を覆いかくす。

 

「惜しいかな・・・」

 

「ちっ、舐めんな!」

 

Jの言葉と同時に白炎に包まれて いる蒐斗の周りの地面が大きく陥没した。その陥没は止まることなく続くが白炎に包まれる蒐斗は全く効いた様子を見せない。

 

「無駄なことはよしたほう が・・・・」

 

「狼爪」

 

三日月形の三つの銀色の光が蒐斗 へと降りかかるがその光は白炎へと飲み込まれる。

 

「疾地無影刀」

 

「白炎斬」

 

鬼一法眼の目に見えない速さで繰 り出される抜刀により放たれる巨大な刃の影が蒐斗へと向かうが白炎の刃がぶつかり合いお互いに消滅した。

 

「これが僕と君たちの差だよ。決 して埋めることなどできない選ばれた者とそうでない者の差。僕と和樹だけがその場に立つことのできる神さえも超える力だ!! 踊れっ、瞬炎!!」

 

「!? マオ!」

 

「最初からそうすればいいの よ!!」

 

マオの手から短針が目にも留まら ぬ速さで放たれる。さらにJ、銀、法眼も降りかかる白炎の球体を次々と消滅させていった。

 

「和樹ちゃんの技を勝手に使う な!」

 

「何を言っているんだ。僕だから 許されるんだよ!!」

 

「ふざけんな!!」

 

マオから短針が放たれそれを白龍 刀で叩き落としたところにJが刃を振り下ろすがそれも白龍刀に受け止められる。

 

「和樹ハンは違うんや! あんた なんかとな!!」

 

「分らないかな、君みたいなのが 和樹を駄目にするんだよ。和樹は僕とともに世界の頂点に立つ、世界を支配する男だ!!」

 

Jは衝撃を殺すために後ろへと飛 んだ。

 

「和樹、和樹はそんなことする奴 じゃない!」

 

銀が蒐斗へと鋭い爪を振り下ろし 法眼がそれに合わせて刀を蒐斗へと振るう。

 

「和樹はそんなことを望まない。 和樹は自分の守りたいもの、大切な人たちが守りたいものを守る為にその力を使う。自分の欲望なんかのために力を使ったりなんかしない!」

 

「そうさせているんだろ。和樹を 護るとか言いながらそうやって和樹に呪縛を掛けているんだよ、君たちは!」

 

白炎を爆発させ銀と法眼を蒐斗は 吹き飛ばした。

 

「ならその呪縛を僕が取り払う。 和樹のためにね! !?」

 

空から降ってきた銃弾を蒐斗は刀 を振るい叩き落した。

 

「・・・それが和樹のためになる だと・・・冗談もいい加減にするんだな」

 

「!?」

 

突然辺りに蝙蝠の群れが現れると 和樹たちや和麻たちを取り囲むように飛び回る。まるで壁になり護るように・・・・・・

 

「なっ、何、この蝙蝠!?」

 

綾乃は声を上げて騒ぎ煉はその数 に圧倒されて言葉を失っている。

 

「な・・・何だ、この馬鹿デカイ 力は・・・」

 

和麻は何かを感じ取ったのか額に 汗を浮べながら空を見上げた。

 

「・・・・・・来たか」

 

「お前は変わったな、蒐斗。あの 頃、和樹とお前が戦うことになるなんて考えもしなかった」

 

キッーキッー・・・・・・

 

バサッバサッ!!

 

周りを飛び回る蝙蝠たちが鳴き声 を上げながら人型を作り出すとその中から赤黒いマントを着た男が姿を現した。

 

「・・・・・・私が着たからには 絶対にお前たち2人を・・・・・・いや誰とも戦わせない。刀を収めろ、蒐斗」

 

「・・・・・・ヴィンセント、君 まで僕の邪魔をするのか?」

 

血走った目で蒐斗は赤黒いマント の男、ヴィンセントを睨みつける。

 

「私はお前らを戦わせたくない、 戦っている所なんて見たくない。ただそれだけだ。昔の・・・・・・あの頃のお前たちのように戻ればそれでいい」

 

「はは、何を言っているんだ。僕 らは昔のままさ、そして2人で世界の大掃除をするのさ、無能な人間が世界を治めるなんて間違っている。そうさ、僕と和樹がそんな世界を正すんだよ。僕らに はそれだけの力がある。分るだろ?」

 

「分りかねるな。今のお前は間 違っている」

 

「間違っているのは君たちだよ。 こんな世界で生きているなんて耐えられない。僕らのような選ばれた者たちを閉じ込めてしまうような世界なんて壊して新しい世界を作らなければいけないんだ よ」

 

「蒐斗、お前・・・・・・」

 

「それを邪魔すると言うなら、 ヴィンセント。君だって容赦はしないよ!」

 

「それがお前の答えか? お前も 選ばれし者の1人だろ、なぜお前がそんなことをする!」

 

「何を言っているん だ・・・・・・選ばれた者だからだそうするんだよ。世界を変えるんだ、僕と和樹の手でこの腐りきった世界を!!」

 

「違う! お前の力は・・・お前 達二人の力はそんなことのために使うためにあるんじゃない!」

 

「・・・・・何が分る、君に僕の 何が分るっていうんだっ!!」

 

「蒐斗!」

 

白龍刀をヴィンセントに向けて蒐 斗は躊躇いなく振り下ろす。それをヴィンセントは目にも留まらぬ動きで回避した。

 

「蒐斗、やめろ!」

 

「邪魔をするなら斬る!」

 

「ちっ! J、和樹達 を・・!?」

 

ヴィンセントは空から何かが落ち てくる気配を感じ蒐斗と離れ後ろに飛び距離をとった。

 

そしてすぐ自分と蒐斗のいた場に 巨大な妖魔が落ちてきた。

 

「・・・饕餮」

 

蒐斗が落ちてきた妖魔を見て驚い たように言葉を発した。

 

「ぐっ・・・」

 

「饕餮が・・・一体誰が!?」

 

エリスが信じられないような様子 で傷つき倒れこむ饕餮を見ている。

 

ヴィンセントが空を見た。

 

そして和麻も空を見上げる。それ に続いて千早、カイ、綾乃、煉、J、銀、法眼、マオ、アオイが空を見上げ、蒐斗とエリスも空を見た。

 

雲の上から聞こえてくるいくつも の獣の唸り声、そして空の間から浮かぶ巨大な影。

 

そして神かと思ったその力の大き さ・・・・・・

 

その影が消えると人影が雲の中か ら地に向かって1人降りてきた。

 

その場にいた全員が息を呑む。

 

「・・・・レオン」

 

誰が言ったのか・・・・その人影 の名前を呟いた。

 

空から降りてきたレオンは地に足 を着けると蒐斗の方へと顔を向けた。

 

「・・・退け、蒐斗・・・今すぐ に」

 

「・・・レオン」

 

低い声で搾り出すように蒐斗はレ オンの名を呟いた。

 

歯を強く噛み締めて今すぐにも飛 び掛りそうな獣の目でレオンを睨みつけている。

 

「今の私にはもう戦う力はほとん ど残っていない。だがここにはヴィンセントもいる。お前1人で戦い切れない事は分っているはずだ・・・・・・・・・もう一度だけ言う、今すぐこの場から退 け」

 

「・・・・・・ちっ・・・レオ ン」

 

「・・・・・・・・・・蒐斗」

 

「蒐斗、冷静になって考えろ」

 

蒐斗はレオンとヴィンセントと視 線を合わせる。3人とも視線をそらさずにずっと睨みあう。そんな蒐斗にエリスが背中から声をかけた。

 

「・・・・・・エリス、ゲートを 開いてくれ」

 

「蒐斗・・・」

 

「レオン、ヴィンセント、僕は今 回だけは引いて上げるよ。でも僕は諦めたわけではないからね」

 

蒐斗はそう言うと饕餮に手を当て る。すると饕餮の身体の傷は光に包まれ傷がふさがり始めた。

 

「行くよ、エリス、饕餮。レオ ン、最後に互いに完全な状態ではなかったけど饕餮を倒したことは賞賛しておくよ」

 

そう言うと蒐斗はエリスの作り出 した空間の歪みの中に姿を消した。

 

「レオン、我を殺さなかったこと いずれ後悔することになるぞ。覚えておくんだな」

 

「・・・・・・」

 

レオンは饕餮の言葉に何も答えず にただ目を合わせるだけで答えた。

 

「じゃあねぇ、千早。次に会った ときは決着を付けてあげるわぁ、私の勝ちでね」

 

「・・・エリス」

 

「力を上げておくことねぇ。水術 師としての力覚使いこなしておかないと私が楽しめないからがんばってぇ。弱いあなたを倒しても面白くないから」

 

そう言うとゲートの中に入り入り 口も消え去った。

 

・・・・・・ドサッ!

 

「レオン!」

 

「レオン!」

 

「レオン!」

 

「レオン!」

 

「レオン!」

 

「レオン!」

 

蒐斗たちの気配が完全に消えると レオンは緊張の糸が切れたように力なくその場へと倒れこんだ。

 

「!? 3人はその縄の中から出 ないで!」

 

レオンへと駆け寄ろうとする和 麻、カイ、千早を蘭は止めて、治癒を行っていた和樹を縄の中に寝かせるとレオンへと駆け寄った。

 

「・・・・・・相当無理をしたみ たいね」

 

「もう・・・駄目・・・」

 

倒れてすぐレオンの体は光に包ま れ動物体へとなっている。

 

「全力で戦ったのか?」

 

「・・・いや・・・今の状態じゃ 出せても5割〜7割・・・・饕餮が完全状態だったら負けてたと思う」

 

「あれで5割〜7割か?」

 

ヴィンセントはレオンの言葉に一 瞬驚いたがすぐに落ち着きを取り戻す。

 

「J・・・とりあえず、家に報告 をお願い・・・・・今後のこともあるから」

 

「任しとき!」

 

「蘭は晴明に連絡をお願 い・・・・・・病院の手配とかもね。後・・・応援が来るまでみんなの救護を」

 

「分ったわ」

 

「銀、法眼は・・・・・・周囲に 残っているかもしれない妖魔退治を・・・応援が来るまでお願い、マオはここに留まって・・・・・・みんなの警護を」

 

「了解!」

 

「分った」

 

「任せといて!」

 

5人はレオンからの指示を受けす ぐに行動を起した。

 

「ヴィンセント・・・・・・悪い けど僕を・・・・・・和麻のところに運んでくれる」

 

「ああ」

 

レオンを抱えるとヴィンセントは 和麻の前にレオンを運んだ。

 

「ヴィンセントに会うの、和麻は 初めてだったかな」

 

「ああ、他の連中には会ったこと はあるけど・・・・・・まあ、もう1人会っていないいるって話は聞いていたがな」

 

「色々話「ちょっと待て」・・・ ん?」

 

レオンが話をしようとすると和麻 はそれを止めた。

 

「悪いけど疲れているから今話し 聞いても頭に入らねぇ。それにお前も限界だろ、レオン。俺達は生き残ったんだ、話は後でいくらでもできるんだ。後にしようぜ」

 

「確かにレオン、お前は休んだほ うがいい・・・・・・あの姿になったんだからな」

 

「・・・・・・じゃあ悪いけどそ うさせてもらう・・・・・・ヴィンセント・・・あとのことは任せたから・・・・・・」

 

そう言うとレオンは押し寄せてく る睡魔に身を任せた。

 

「俺も・・・・・・」

 

和麻もそのまま眠りに着いた。

 

「あ、あの・・・・」

 

「何だ?」

 

レオンを蘭の治癒の縄の中に寝か せるとヴィンセントに話しかける人がいた。

 

「兄様たちは大丈夫なんでしょう か?」

 

和麻や和樹、レオン、カイ、千早 を心配した煉であった。

 

「安心しろ、蘭の治癒能力は和樹 以上だ・・・・・・煉と言ったな」

 

「は、はい」

 

「お前も休め。私たち八剱士のこ とを信用できないとは思うが今は信用してくれとしか言えない」

 

「い、いえ、信用してないわけ じゃ」

 

「ただこれだけは言える。私もあ いつらも和樹がいるから・・・・・・和樹のために何かしたい、力になりたいから今ここに集まっている。お前が和樹を信じているのと同じようにな」

 

ヴィンセントの言葉を聞き煉は不 安が消えたような気がした。

 

この人は信用できると確信はない が思うことができた。

 

「あなたもこの縄の中に入って休 みなさい」

 

蘭に言われ縄の中に入ると煉は強 い睡魔に襲われ、そのまま眠りに着いた。

 

次に煉が目覚めたのは病院のベッ トの上だった。

 

 

 

 

あとがき

ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃ ちゃんちゃちゃんちゃん♪

ちゃんちゃかちゃんちゃんちゃ ちゃんちゃちゃんちゃん♪

やっと話に出てきたのにすぐに気 を失いました〜♪

チクショーーーーー!!!

どうもレオンで〜す。

いや〜いろんな方々が出てきまし たね。カズの何なのか、蒐斗という人物は。千早と何かあるのか、エリスという女性。さらに無限八剱士まで出てきてこれからどうなるのか気になる所でありま す。でもなんで最後の方僕の出番が減ってきたのか?

次回は第一部最後です。そしてつ いに皆さんお待ちかねのあの人が登場!

乞うご期待!!!

 

 


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