まぶらほ  無限の魔力

 

 

 

 

出会い編

第二話 運命の胎動

 

 

昼休みB組の教室

 

「ったく、なんで俺が校舎の修理 なんかしなくちゃいけねぇんだ!! 俺の貴重な魔法回数を!!」

 

仲丸は和樹ともに昼食を取りなが ら愚痴をこぼす。

 

二人のほかにクラスメートの浮氣 光洋と御厨真吾もいる。

 

レオンは和樹の膝の上で、気持ち よさそうな寝息を立てていた。

 

「業者が他の仕事で来れないん だってさ。まあ、自業自得としか言いようがないんだから諦めるんだね」

 

「確かにな・・・」

 

和樹と浮氣がつぶやく。

 

実際のところ、業者が来ないのは 仕事が重なったのではなく毎日のように校舎の修理に借り出されていたために担当の人間がノイローゼになったのが本当の原因であったりする。

 

「俺のせいだとでも言うのか、お 前ら!!!!」

 

『お前のせいだろ! いい加減に 自覚しろ!!』

 

「うぐっ・・・」

 

和樹と浮気に即答され、言葉に詰 まる。

 

「今思うと仲丸が潔く攻撃受けて れば被害少なくてすんだんじゃない」

 

「おお、それは一理あるな」

 

「人間潔さが大事だよね」

 

「うんうん」

 

「鬼か、お前ら!!?」

 

和樹の言葉に浮氣、御厨が同意す る。

 

「聞けっ!! 断じて今回のこと は俺に非はない。あれは松田が邪魔したからこうなったんだ。そうでなければ今頃風椿玖里子は俺のものになっていたはずだ!!」

 

力強く力説する仲丸・・・ が・・・

 

「無理だよ」

 

「無理だろ」

 

コクコク

 

和樹と浮氣は即答し、御厨が首を 縦に振った。

 

「大体、風椿なんかに手を出した らそれこそ表社会に出られなくなるような仕返しされるよ。財閥としての力が今は上り調子だから下手に手を出したら逆に噛み付かれるのが落ちだね」

 

「式森! お前は俺の偉大な目標 を馬鹿にするのか?」

 

「・・・ずいぶんと情けない目標 だね」

 

「へぇ〜〜、仲丸。あんたって覗 きごときを偉大な目標に掲げる小さい男だったんだ」

 

「ドワァ! 松田!」

 

いきなり背後に現れた和美に仲丸 は声を上げて驚いた。

 

「俺なら目標は向こうかな、一年 の神城凛。なかなかの美形だと思うけど」

 

浮氣は窓の外を見ながら言う。学 生服でなく巫女のような服を着た小柄な女の子が歩いていた。

 

「浮氣・・・お前って妹萌だった りするのか・・・」

 

「妹の携帯を持って『マ〇ー!』 とかって言ったり・・・」

 

「危ない人もいるわね」

 

和樹、仲丸、和美が引きながら浮 氣を細い目で見た。

 

「待て、お前ら! 誤解されるよ うなこというな!!」

 

大声で否定する浮氣。

 

だが・・・

 

「大声で誤魔化す辺りが怪し い・・・」

 

「『は〜い、凛で〜す。でもごめ んなさい、今電話に出ることができません』とエンドレスで・・・・・・」

 

「いいえ『お兄ちゃん♡』とかっ て甘えた声かもしれないわよ」

 

あんたら随分酷いこと言ってる な。

 

「お前らーーーーー!!」

 

さすがにからかい過ぎたかなと思 い和樹は話題を戻した。

 

「・・・どうどう」

 

「俺は馬か!?」

 

何か・・・誰かに似たことやって いるな、和樹。

 

「まあ、美形だとは思うけど銃刀 法違反じゃないのかな・・・あの刀は? なんか刀があることで刺々しを感じるんだけど」

 

「・・・細かいな、お前」

 

「まあ、うちの学校に美人が多 いって所は認めるよ・・・(中には例外もいなくもない・・・というよりこのクラスは特に例外が多過ぎるけど)」

 

余計なことは言いません。

 

「式森には関係ないけどな」

 

浮氣がさっきのお返しだとばかり に嫌味をこめてそんなことを言う。だがどこか現実逃避した目なのは気のせいか・・・

 

「まあね」

 

和樹は大して気にも留めない。

 

自分を認めてくれないものがいる だろうが、認めてくれている人もたくさんいるからである。

 

本当の式森和樹の姿を知っている のはこの学校では二桁もいない。例え知っていたとしても一部だけと言うものもいる。和美などがそのいい例である。

 

表向きは魔法が七回しか使うこと のできない、平均以下の魔術師を通している。

 

顔に関しては良くもなく悪くもな くと言った所か、運動も苦手、趣味もない、勉強もできないと学校では通している。

 

だが実際には全てが偽りである。

 

本当の自分の魔法回数は世界中を 探してもおそらく勝てるものはいないだろう。

 

自分に流れている血筋が日本や世 界の歴史に名の残る偉人達の血ばかりが集まった最高傑作であるからだ。

 

そんな自分のことを一番よく知っ ているのは間違いなく千早だろう。

 

物心が着いた頃からいつも一緒に いた。おそらく生まれてから自分が今まで一緒にいた時間が一番長いのはダントツで千早である。

 

自分を一人でも認めてくれている 人がいてくれればいいと和樹はいつもそう思っている。

 

ちなみに和樹と千早の関係を知っ ているのは同じ中学であった杜崎沙弓と和美、そして今F組で千早と仲のよい石川映子だけである・・・・・・が・・・

 

既に和樹と千早の関係は学園の多 くの人、約八割が知っていたりする。

 

なぜ仲丸達がなぜ何も言わないか というと・・・

 

簡単に言うと諦めた・・・・・・

 

一年次に幾度となく二人の仲を邪 魔したが全て玉砕、二人の赤い糸は切ることができず、現実逃避と相成ったのである。

 

そして皆、和樹に彼女がいるなど と太陽が地球を回るくらいにあり得ないことだと自分を納得させたのである。

 

恐るべし、二人の愛!

 

「浮氣、それはいくらなんでもか わいそうだ。例え魔法が後七回でも男だ。憧れくらい持たせてやれよ」

 

現実逃避しているからこそこんな ことものうのうと言えるのである。

 

「どうでもいいよ」

 

千早お手製の弁当を食べ終え鞄に 仕舞った。ちなみに皆それを空き箱だと自分に暗示を掛けて見ないでいたりする。

 

(やっぱ、お昼はこれだね)

 

和樹は腹も心もいっぱいになり満 足げである。

 

「式森君、美人がいるって言った けど例えば誰?」

 

「・・・・・・松田さん、それに 千早」

 

自分の背中を冷たい汗が流れるの をこのとき和樹は感じた。

 

「うん、よくできました! で、今度はどこの株買うといい?

 

「はい、これ」

 

和樹からメモ用紙を受け取り和美 は笑みを浮かべる。

 

「うぅ〜ん、良い子良い子」

 

ナデナデ

 

頭を撫でられる和樹・・・だが和 樹は自分の首に死神の鎌が当てられたような感覚を覚えた。もし千早の名前を先に言っていたら自分はどうなっていたか?

 

ちなみに和美は和樹から株の情報 を仕入れて大儲けしている。和樹の情報網を使えばそれくらいすぐに調べられるからである。ちなみに和樹も株をいくつか買っている。あくまで仕事上の付き合 いでだが・・・

 

「魔力診断、楽しみだな〜」

 

「自らに秘められた力を知る貴重 な機会だからな」

 

和樹が話をまったく聞いてないと 気づかず話を進めている。

 

和樹は和美から逃げるように席を 立つと紅尉のいる保健室に向かうために立ち上がった。

 

(レオン、起きろ〜)

 

「ふぁ〜、わかった」

 

あくびをしながらもみんなにばれ ないように小さな声で答える。

 

「どこ行くんだ?」

 

「野暮用」

 

「帰ったりするなよ」

 

「お前にとっては命にかかわるか らな」

 

「なんかの弾みで魔法使ってるか もしれないし。なんたってあと七回しかないんだしな」

 

「七回使ったら塵になっておしま い、その若さで死にたくないだろ」

 

言い放題だ。

 

和樹は相手にしていないが、レオ ンが面白くないような顔をしてる。

 

「わかってる」

 

「それと式森、松田が美人だとい うのは大間違いだ。魔力検査と一緒に視力検査と脳内検査も・・・(ゴキッ! バキッ!!)・・・ヒデブッ!」

 

ドゴッ!

 

「・・・・・・・・・」

 

「あらぁ〜・・・何か、聞こえて きたけど空耳かしら」

 

和美は耳に手を当てながら周りの 声を拾おうとする。その足元には陥没した床に顔面を付け頭が丸々埋まっている仲丸の哀れな姿、後頭部には和美の足がさらに床へ埋め込もうとするかのように 何度も踏み付け続ける。ついでに仲丸の腕は人間では有り得ない方向へ曲がっていた。

 

「空耳だよね」

 

「ああ、空耳だ」

 

コクコク

 

和樹達は触らぬ和美に祟り無し』と仲丸を完全に無視し、そして見捨てた。

 

そして和樹はそのまま何も言わず に保健室に向かった。

 

「だ・・だれ・・・誰か・・・ (バキッ!)」

 

・・・・・・仲丸はそのまま意識 を失った。

 

仲丸よ、安らかに・・・

 

仲丸由紀彦、無限の魔力二話目に して退場・・・

 

「待てこらぁーーーーー!!」

 

 

 

 

 

 

 

同時刻

 

誰も気がつくことがないような理 科室の用具入れ教室の中で一人の美少女が、耳に手を当て誰かと話をしている。

 

だが携帯ではなく、『念話』と呼 ばれる特殊な魔法による会話方法である。

 

しかもその少女の手には日本刀が 握られている。

 

「そんな・・・」

 

『よいな。すべては神城家の為 だ。必ず使命を果たせ』

 

「しかし、なぜ、私が・・・」

 

『お前が一番近いところに居るの だ。反論は許さん。それに急がねばならんからこそ、盗聴を覚悟で『念話』で伝えておるのだ。いいな、凛』

 

その言葉を聞き、凛と呼ばれた女 性は、ぎゅっと刀を握り締める。そこで念話は一方的に終了した。

 

「・・・・・・」

 

その後、凛は刀を抜き出し自分の 目の前に構える。

 

「式森、和樹・・・・・」

 

凛は納得のいかない声で、その名 を呟くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

同じ頃、葵学園の生徒会室の中

 

「玖里子様、お電話です」

 

「電話? 珍しいわね」

 

メイドのような女性が、電話機を 持ってきていた。

 

そしてその前に立つのはこの学園 の影の支配者、風椿玖里子である。

 

このような手段を使うということ は、盗聴される可能性を警戒しているということだ。

 

つまりそれほどこの会話は重要で あるということを指している。

 

「何かあったの?」

 

興味深げに玖里子は電話の相手に 向かい話をする。

 

『はい、実 は・・・・・・・・・』

 

玖里子は電話の相手の話を真剣に 聞く。

 

「なに・・・神城が?」

 

その言葉を聞いたあと、彼女は学 校の二年生の生徒がのる名簿を見る。

 

開かれたページには一人の男子生 徒の写真とそのプロフィールが乗っていた。

 

「式森和樹、か・・・・・・」

 

彼女は興味深そうにその少年の名 を呟き、その写真をじっと見るのだった

 

 

 

 

 

 

 

「失礼しますよ、紅尉先生」

 

保健室の中に向かい軽く声をかけ ると和樹はドアを開けて中へと入った。

 

「式森君か、そろそろ来るころだ ろうと思っていたよ」

 

回転椅子を回して和樹のほうに身 体を向けたのは葵学園の教員の一人である紅尉清明である。

 

「早速ですけど魔力測定お願いし ます」

 

「ではこれをつけてくれ」

 

和樹は紅尉から渡されたケーブル つきの指輪のようなものを指へとはめた。

 

「では計ってみよう」

 

魔力計が凄まじい勢いでゼロを重 ねていくそして最後に出たのが・・・

 

 

 

 

  ∞

 

 

 

 

ただこのマークがでた。

 

「・・・どうやら変化は無いよう だ。身体にも特に問題もないだろう」

 

「そうですか、ならいつものよう に後はお願いしますね」

 

和樹はそう言うと指輪を外し紅尉 へと渡した。

 

「身体のほうはどうかな? 機械 ではわからないこともあるのでね」

 

「問題ありませんよ。五年前から 魔力も安定しましたから」

 

「そうかね。ところで話が変わる が少し不味いことになった」

 

「・・・何がですか?」

 

和樹は少し顔をこわばらせて紅尉 を見た。

 

「この学園の情報を何者かが流し たようだ。君の情報は私が大部分は書き換えているが遺伝子の潜在能力のデータ、君先祖に関しても一部は書き換えられない所もあるからねそのままの部分もあ る。おそらく問題がいくつか起こるだろう」

 

「余計なことをしたね」

 

レオンが紅尉の言葉を聞きそう呟 いた。

 

「・・・・・・いつの時代も嫌な 時代ですね。そんな物のために危険な橋を渡る。こんなのことしても何も得られるものなんてないのに・・・」

 

和樹はそう言いながら壁に寄りか かった。

 

「みんな目の前にあるものだけに 目が行きそこから先のことをまるで考えていない。その結果にどれだけ辛いことが待っているか・・・何も考えてない」

 

「しかし、それが欲望、独占など の人の心の起こすものだと言ってしまえばそれまでだ。人は皆、自分のためになら平気で心に鬼を飼うこともある。それは私も、君も絶対に例外とは言えない」

 

お互いに言っていることは正し い。本当に正しいのはどちらかといわれたらこの問題には答えはないのかもしれない。

 

「ゲン爺には連絡は?」

 

「既に連絡はした。すぐに犯人を 捕まえその情報も消去した。今のところ問題は起きていないが、どこまで情報が広まったか分からない・・・まだどうなるかははっきりとは私からは言えない」

 

「分かりました」

 

「源蔵がJ(ジェイ)達を護衛・排除に回すかと言っ てきているがどうする」

 

「必要なときは僕のほうから連絡 します。僕とレオンと千早で今は対処しますからご心配なく」

 

和樹はそう答えると出口の方へと 歩みを進める。

 

「式森君、源蔵、源氏からの伝言 だ。『心の構えだけは崩すな』だそうだ」

 

「確かに伝言受け取りました。失 礼します」

 

「またね〜」

 

紅尉は和樹たちが出て行くと椅子 に腰掛けなおした。

 

(彼の診断をしてから随分になる が・・・彼は成長したな)

 

和樹の昔を思い出しながら紅尉は 本当の和樹の診断書を書き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ〜・・・ああ〜〜〜面倒な ことにならなければいいな」

 

「運が悪いね。まあ、悪いことの 後には良いことがあるって言うし」

 

和樹は額に手を当て疲れたように 呟いた。レオンがそれを励ますように言う。

 

「和樹君、レオン」

 

そんな和樹に声を掛ける少女がい た。

 

「ほら良いことがあった」

 

僕は正しいとばかりに胸を張るレ オン。二人が振り向くと優しい笑顔で和樹の下へきたのは山瀬千早だった。

 

「千早」

 

「やっほ〜〜」

 

「どうしたの疲れたような顔し て?」

 

レオンを抱きながら千早は首を傾 げて和樹へ聞いた。

 

しかし、和樹が何を考えているか 千早は大体わかっていた。兄弟のように育ち、双子以上にお互いを知っている和樹と千早はお互いが何を考えているか聞かなくても大体のことは顔を見るだけで 知ることができる。

 

「いや、学園の魔法の情報が流れ たらしくてね。すぐに手は打ってくれたらしいけどもしかしたら問題が起きるかもしれない」

 

和樹がそう言うと千早はため息を つきながら言った。

 

「全く、何でこんなことに力を使 うのかな? 魔力だけが全てじゃないのに」

 

葵学園の情報はとても高い。多く の優秀な魔術師の卵が葵学園に入学するためにその情報は高く売り買いされているのだ。

 

「まあ、今更悩んでも仕方ない。 ゲン爺達が動いてくれたみたいだから情報は最小限に食い止められたようだから後は僕らで何とかしよう。紅尉先生から『心の構えだけは崩すな』って言うゲン 爺達の伝言受け取ったしね」

 

そう言うと和樹は軽く笑った。

 

「魔力の方はどうだったの?」

 

「変化なし、特に問題もないから 大丈夫だよ」

 

安心して大丈夫だよというように 和樹は千早に言った。

 

それを聞いて千早も安心したよう である。

 

「ねぇ、今日の夕飯は何が良 い?」

 

「ハンバーグ!」

 

まさに打てば響く。レオンが即答 した。

 

千早の手料理は二人の大好物であ る。和樹も時折腕を振るうときがあるが千早には遠く及ばない。

 

「僕もハンバーグでいいよ。最近 食べてなかったしね」

 

O.K.! それじゃ帰りに材料 買って帰らないとね」

 

「授業終わったら校門の所で待ち 合わせね」

 

「それじゃ、あたしは教室戻る ね」

 

そう言うと千早は教室へと戻って いった。

 

「やった〜、久しぶりのハンバー グ!」

 

レオンはハンバーグが食べられる と既にハイテンションである。

 

「僕らも教室戻るか、悪いことの 後にはいいことがあるってね」

 

「そうそう!」

 

そう言うと和樹とレオンも教室へ と戻って言った。

 

だが既に和樹の人生が大きくゆれ ることになる事件は既に始まっていた。

 

 

 

 

『レオンのインフィニティールー ム!』

は〜い、レオンです。何やらカズ がどこかの主人公のようなキャラになっていますが気にしないで行きましょう!

そしてついに『無限の魔力のヒロ イン』山瀬千早登場!!!

ノッテルカァァ!! 

というわけで誰がなんと言おうと 千早がヒロインだ、フォ〜〜ゥ!!

修正版で千早の良さをもっと出し ていくようですので楽しみに!

『無限の魔力』マスコット、そし てあとがきのスペシャリスト、そしてナンバーワンキャラレオンがお送りしました!!

(誰がナンバーワンに決めたんだ よ?)

 

 


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