まぶらほ  無限の魔力

 

 

 

 

出会い編

第四話  荒れ狂う少女達

 

 

「そうだよくない」

 

和樹達が見るとそこには日本刀を 持ち、巫女服のような服を着た女の子が一人立っていた。

 

(日本人形をそのまま人にしたよ うなもんかな・・・刀が余計な感じだけど)

 

意外と冷静に和樹は考えた。

 

だがその女の子は和樹におもいっ きり殺気を飛ばしていた。普通の人だったら、震え上がっていただろう。

 

しかし和樹にはまったく効果がな い・・・この程度の殺気は和樹にとっては普通に相手と対峙しているのと全く代わらない。

 

和樹が本気で殺気を放てば千早と レオン以外でここにいる三人は精神に以上をきすだろう。

 

「・・・君は確か一年の神城凛? なんでこんなところに?」

 

「私の名を気安く呼ぶな。虫唾が 走る」

 

そういうとズカズカと和樹の部屋 に入ってきた。しかも土足で・・・

 

(・・・・・・礼儀ってもんを知 らないのかこの子は・・・)

 

格好は武を重んじるような姿であ るがどうやら見せかけだったようである。

 

「それで、僕が一体君にどんな悪 いことをしたていうんだ?」

 

「黙れ、お前のせいで私の運命は 狂わされた」

 

「・・・今始めて話をした君をか い?」

 

(・・・随分と、大げさだ な・・・こっちは何も知らないのに・・・)

 

何か深い事情がありそうだが、何 のことだか和樹にはわからない。和樹の知らないところでのことで勝手に自分のせいにされても困る。

 

「お前のことは我が夫と成るゆえ に調べさせてもらった」

 

刀を鞘から抜き刃先を和樹へと向 けた。だがそれに和樹は全く動じる様子もない。

 

「それって犯罪じゃない? それ に成るゆえって認めてるの?」

 

(・・・・・・僕にプライバシー の権利ってないのかな)

 

和樹は日本の法律に疑問を持っ た。

 

(何でも賛成するから、憲法を改 正しようよ、絶対したほうがいいな・・・・・・時代にあった憲法をつくろうよ、総理)

 

なにやら政治的な面にまで文句を つけ始めたりする。

 

「調べてみて悲しくなった、運動 も苦手、趣味も取柄もない、学力は中の下、そのうえ覗きまで・・・・・・」

 

(偽装完璧だね、紅尉先生のおか げで・・・・・・って覗きって何?)

 

「朝の騒ぎは和樹君じゃなくて仲 丸君が原因で和美がそれ火を注いだみたいなもんなんだけどな・・・」

 

千早が訂正する。

 

(僕のせいになっているのか?)

 

軽く和樹は落ち込んだ。

 

ちなみに実際の和樹は既に大学に 入るだけの学力は十分に備わっている。分野によってはその道で食べていけるほどだ。運動神経は言うまでもない。百メートルを世界新で走る事だって朝飯前で ある。趣味は音楽で作曲なんかもするほどである。楽器は大体のものは使うことはできるがドラムとピアノはその中でもずば抜けている。さらに絶対音感の持ち 主であったりする。読書も好きであり実家には自分の書斎があるほどだ。他にも高校生にもかかわらずワイン集めなどもしている。

 

ぶっちゃけ、学校内で和樹ほどさ まざまな才能に恵まれそれを遺憾なく発揮している人はいないだろう。それを隠しているのはあまり目立った行動を取りたくないからである。

 

特にB組では・・・

 

「それで、僕に刃物を向ける理由 はなんなんだい?」

 

「私はお前のような男を生涯の伴 侶にしなければいけないからだ!! それが何よりも屈辱でこのままでは生きていくことができない!!」

 

「なら僕を伴侶にしなければいい ことだ。君に八つ当たりされるいわれは僕にはない」

 

かなり激しく激昂しながら凛は言 う。しかし和樹にとってはいい迷惑だ。

 

「第一、僕には全く知らされてい ない一方的な話だ。そんなもの僕は受ける気はもうとうない。僕の人生は僕が決める、君にどうこう言われて先を決める気はない。僕が一緒になる人は僕が決め るその相手は君じゃない」

 

「黙れ、この場で死ね、式森和 樹!!」

 

「・・・・・・自分の行動おかし いって思わないの?」

 

いきなり斬りかかってくるが、和 樹から見れば隙だらけである。

 

避けることなんて目を瞑っていて も容易いことだ。

 

(怒りに身を任せてただ力を振る うなんて・・・僕も人のこと言えるほどじゃないけど・・・この子は問題外だな・・・)

 

和樹は決して力を奢ったりしな い。それを自慢することもない。

 

自分を判断するのは心の中ですれ ばいい。相手には言葉で言わなくても行動で相手が分かってくれればそれでいいと思っている。

 

和樹は振り下ろされる凛の刀を、 身体を軽く倒すだけで全て避けてみせる。

 

一見簡単に見えるが凛の動きから 動きを読み取り最低限の動きで避けているのだ。

 

和樹が凛の動きを止めようとした そのとき和樹の前に誰かが立ちふさがった。

 

(・・・余計なことを)

 

和樹は内心その人物に愚痴った。

 

「何をするんですか」

 

和樹の前に立ったのは夕菜であっ た。

 

「あなたが宮間家の者ですか、そ こを退いてください」

 

「嫌です」

 

「こんな者のために人生を棒に振 る気ですか」

 

「私の人生です。あなたに文句を 言われる筋合いはありません!!」

 

「なら私がしようとしていること にも文句を言う筋合いはありませんね。悪いですけど眠っていてください」

 

そういうと、凛の刀が光り始め た。

 

「剣鎧護法ですね。刀に取り付か せて使役するなんて」

 

「神城家八百年の歴史が生み出し た技です」

 

(・・・あれが剣鎧護法・・・何 を間違いえているんだ、あの子は・・・)

 

和樹は神城家の剣鎧護法を知って いた、もちろん和樹も使えるが、和樹にとっては初心者マークのついた技にしか見えない。

 

神城家八百年の歴史は和樹の前で はまったくの無に等しいものとなる。もちろん、レオンや千早の前でも。

 

だが和樹が驚いたのは凛の剣鎧護 法の弱さである。

 

剣鎧護法の本来の力を全く活かし ていない。あれではただ刀を強化しただけである。とても剣鎧護法と呼べるものではなかった。

 

凛に対抗して夕菜もウンディーネ を召喚し対抗する。だがこちらもまだまだ技が荒削りであった。

 

「この西洋かぶれが!!」

 

「何を時代遅れの田舎者が!!」

 

(田舎者はどこから来たの?)

 

和樹の疑問は深まった。

 

二人の技がぶつかり合った。剣鎧 護法とウンディーネ、和樹から見れば小さな力だがさすがに、この部屋の中での使用はやばい。和樹には小さな力であっても一般から見たら上位に入る力であ る。

 

そのとき、部屋に結界が張られた のを感じとった。

 

「・・・レオン、ナイスだ」

 

レオンは和樹に言われる前に、部 屋に結界を張っていた。レオン自身、自分の大事なものもある部屋を壊されたらたまらない。

 

二人はなおも激しくぶつかり合 う。ここが和樹の部屋だろうとなんだろうとお構い無しに。

 

(・・・・・・遠慮のないという か、自分勝手な人達ね。完全に初期の目的忘れているんじゃないかしら)

 

千早はレオンの結界に入り呆れた 感じで激闘を眺めていた。

 

冷静だな、おい・・・

 

しかし、次に目に入った光景を見 て表情が変わった。玖里子が和樹を押し倒そうとしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

和樹は内心イライラしていた。

 

(全く・・・ここが室内だってこ とも忘れて暴れ始めないで欲しいな)

 

さすがに止めに入ろうかと思い、 動き出そうとした和樹にいきなり横から何かがぶつかってきた。いや押し倒そうとしてきた。

 

「こうなったらこの寮もお終り ね。だからしましょう」

 

「何でそうなるんですか!?  まったく関係ないでしょう!!」

 

「こう言うのって燃えるで しょ?」

 

玖里子の言葉に和樹は玖里子の頭 を見た。

 

「・・・こぶは無いですね・・・ 頭大丈夫ですか? それとも昔どこかに頭ぶつけましたか?」

 

こんなときだというのに本当にお 前らは冷静だな、おい・・・

 

「ごちゃごちゃ言わない。据え膳 食わぬは男の恥よ」

 

「そんな恥ならいくらでもかきま すよ」

 

「先輩いい加減にしてください」

 

千早が止めに入った。その声を聞 いて、夕菜も叫び声をあげる。

 

「ああ〜〜何してるんですか!!  私の和樹さんから離れてください!」

 

ウンディーネを玖里子に向かって 放った。

 

でも私のって、いつから夕菜のも のになった?

 

それを玖里子は胸ポケットから紙 片を数枚取り出し防いだ。

 

「霊符!?」

 

「剪紙成兵!」

 

玖里子はさらに紙片を取り出し、 紙人形を作り出した。

 

夕菜はウンディーネで紙人形を倒 す。

 

「和樹さんに手を出さないでくだ さい!」

 

「男の独り占めはよくないわよ」

 

「その男を斬る!」

 

三人は周りのことなどお構いなし に再び暴れ始めた。

 

「・・・双槍(ソウショウ)

 

千早もさすがに黙っていられなく なったか、ゆっくりと魔法具であるヘアピンを槍に変化させて三人を止めようとした。

 

凛が見ていたらその時点で戦いを 止めただろうが今はまったく気づいていなかった。

 

三人の中に飛び込もうとしたら、 肩をつかまれて和樹に止められた。

 

「千早、ここは僕が止めるからい いよ」

 

和樹は千早の力は良く知ってい る。本気を出さなくても・・・いや本気を出したらあの三人は一瞬にして命を奪うほどの力を持っている。技一つですぐ止められるだろう。

 

だがあえてここは自分で和樹は止 めたかった。

 

千早は和樹を見て身震いがし、言 われた通り槍をヘアピンに戻した。

 

このヘアピンは和樹が魔法で作っ た魔法具で持ち主の思った通りの物に変化する千早の武器であり大切な宝物だ。

 

和樹も自分の魔法具を腕輪として 両手首にはめている。和樹の尋常でない魔力によって作り出されたもので魔法具自体にも魔力が具わっている。

 

おそらく世界でもここまでよくで きた魔法具はない、それくらい最強の武器と言えるだろう。

 

「和樹君、あたしでも止めること できるよ」

 

「それはわかってるよ。でも、こ れは僕が原因だし・・・・・・・・・ここまで好き勝手されて黙っているなんてできないんだよね」

 

「・・・和樹君、ほどほどに ね・・・・」

 

「・・・・・・・・わかった」

 

そういうと両腕のうち右側の腕輪 が、短刀に変わる。右手に握られる刀は漆黒、本当に黒一色の刀である。

 

千早は止めることができなかっ た。それくらい今の和樹は怒っていた。

 

似た者同士というか、千早も和樹 も普段めったなことで怒らないが怒ったときはとてつもなく怖い。

 

(相当怒ってたんだ・・・まあ、 当たり前よね。ここまで自分勝手に振舞われれば)

 

千早には和樹の怒りが目に見え た。

 

確かに、いきなり部屋に押しかけ られて、妻だと名乗られ仕舞には自分の部屋で暴れられたら誰でも怒るに決まっている。

 

(手加減はするけど・・・少し反 省してもらわないとね)

 

和樹はゆっくりと黒刀を握りなお す。

 

(魔法も精霊も使う必要ない な・・・)

 

次の瞬間、和樹が動いた。いや消 えた。

 

千早の目にはまだ和樹の動きは見 えたが、他の三人には何がなんだか分らなかった。

 

気づいたら、夕菜はウンディーネ が水になって消えていて、凛は刀が刃の真ん中あたりで折られていて、ジェンジェンビンは黒い灰になっていた。

 

和樹が取った行動は実に早い動き であった。目にも止まらない速さとはまさにこのようなことを言うのだろう。

 

まずウンディーネを一太刀で斬り 捨てるとジェンジェンビンを黒刀で粉々に斬り裂き、その熱で灰になっていた。さらに剣鎧護法を簡単に破り凛の刀を簡単に折ってしまった。

 

「えっ?」

 

「刀が?」

 

「うそ?」

 

三人は何がなんだか分らない。

 

「いい加減にして欲しいな。これ 以上この部屋の中で騒ぐって言うんだったら、僕もこれ以上手加減しないよ」

 

「な、軟弱者がなにを・・・」

 

凛は残った部分に剣鎧護法を宿し て斬りかかろうとしたが、それ以上言葉を言えなかった。

 

和樹の身体がぶれたと思った瞬 間、目の前に和樹の姿を現れた。

 

「これ以上は手加減しないといっ たはずだ」

 

和樹は素手で凛の刀をつかんでい る。

 

「は、放せ!」

 

凛は渾身の力で和樹から刀を自由 にさせようとするが全く動かすことができない。

 

「破」

 

パキッ!

 

凛の刀が唾の部分から完全に折れ た。そして次の瞬間和樹が黒刀を喉元に突きつけていた。

 

「狭い部屋の中でそんなふうに刀 は使うものじゃない・・・」

 

和樹と凛の目が合った。

 

(ひっ!!!)

 

氷のように冷たく殺気のこもった 目。凛は自分がとんでもない者の前にいることを知った。蛇に睨まれた蛙。まさにそんな状態である。

 

(レオン、結界といていいよ。あ と、部屋乾かして・・・)

 

和樹がゆっくりと凛の喉下から刀 を放し納める。緊張の糸が解けたのか、凛はその場に力なく完全に腰が抜けた状態で座り込んでしまった。

 

夕菜と玖里子も同様に自分の見た ものが信じられない様子である。

 

何事もなかったかのように和樹は 折った刀の刃を凛の前に置き、自分の刀も元の腕輪に戻し椅子に座った。

 

「始めに聞いておきます。君達三 人が僕のところに来た理由は僕の遺伝子が目当てで間違いないですか?」

 

三人とも我を忘れたような顔をし ていたが和樹の言葉に慌てて頷いた。

 

「なるほどね。それでただ家から 言われる儘に僕のところに来たというわけですか・・・こんな何の意味もないことをするために」

 

和樹は三人へと視線を合わせた。

 

「帰ってください。僕から君達に 話すことは何もない」

 

和樹は感情も込めずにただそう 言った。

 

だが千早とレオンには和樹の心の うちがわかったのか、何も言わずにただ黙って和樹を見ていた。

 

しかし、三人に和樹の心のうちな どわかるわけもない。思考が元に戻ったのか再び和樹に突っかかってきた。

 

「ちょっと待ちなさいよ。一体ど ういうこと? あんた魔法七回しか使えないはずじゃなかったの?」

 

「・・・帰ってくださいと僕は 言ったんですよ」

 

「ふざけるな! これが黙って帰 れるか! 貴様は何者だ!?」

 

和樹の返答に凛が声を上げて睨み 付けた。

 

「『帰って』って、和樹君は言っ てるのよ」

 

凛に答えたのは千早だった。

 

「あなた、自分が何をしたかわ かってるの? いきなり和樹君に斬りかかって殺そうとしたのよ。そんな人を相手に話すことなんて何もないわ」

 

そう言うと千早は玖里子と夕菜に も言った。

 

「風椿先輩とあなたもすぐに出て 行ってください。あなた達に離すことなんてあたし達は何もありません」

 

千早は強く意思のこもった声で三 人に言った。

 

「ちょっとあなたは何なの? 私 は和樹に用があるのよ」

 

「部外者は黙っていてください」

 

「和樹さんの妻は私です。私は出 て行きません!」

 

だが三人とも千早の気持ちなど全 く伝わっていないようである。再び自分勝手に和樹へと迫った。

 

「質問に答えろ、式森和樹!」

 

凛は和樹に向かって声を上げる。

 

溜まらず千早が動こうとしたが和 樹がそれを止めた。

 

二人は視線を合わす。千早は和樹 に何かを訴えかけるような目をしていたが数秒後、顔を下げて和樹の後ろへと回った。

 

和樹は無言で椅子に座り凛を見返 した。

 

「・・・・・・わかった。質問に 答えよう。だけど、僕の答えられる範囲でだ。それにこの事を他の誰かに言ったときは・・・・・・」

 

和樹の目が殺気をおび、三人を射 殺すように見た。

 

「君達だけでなく、君達の関係者 もそれなりの報いを負ってもらう」

 

「和樹君」

 

「大丈夫だよ、千早」

 

和樹は千早の肩に優しく手を置き 千早以外には見せない笑顔で千早を安心させた。

 

心配する千早を制して和樹は視線 を三人へ戻した。

 

「言っておきます。決してこれは 脅しじゃありません。僕の言葉を疑い信じないのならそれでもいいです、本当だと思い帰るならそれでもいいです。どちらか決めるのはあなた達ですから」

 

和樹は言いながらも三人が帰るわ けはないと思っていた。

 

ではなぜ和樹はわざわざ無駄なこ とを言ったのか?

 

自分に対しての決意を固めるため である。

 

「帰るわけないでしょ! 話は聞 かせてもらうわよ」

 

腰に手を当て玖里子が言う。ここ まできて話を聞かないで帰ることなんてできない。

 

「私もだ。脅しになど私は乗らな い」

 

どうやら凛は和樹の言葉を脅しだ と思ったようである。和樹の殺気は凄いことは認めているがまだどこかで自分が有利な所にいると思っているのだろう。

 

「私は和樹さんの妻です。絶対に 帰りません!」

 

夕菜は和樹の話など全く聞いてい ないようである。

 

「三人とも帰らないんだね。なら 話してあげるよ。僕のことについて」

 

そう言って和樹は話出した。

 

自分の過去を・・・

 

自分の意思を・・・

 

自分の運命を・・・

 

 

 

 

『レオンのインフィニティールー ム!』

小説なのにこんばんは、レオンで す!

三人は派手に暴れましたね。もし 千早が止めに入っていたら三人とも気絶させられていたけどそっちの方がよかったんじゃないかな。そしてそのまま警察に突き出して・・・

まあ、それじゃ話がなかなか進ま ないので却下になりました。

でも今回僕の台詞がなかったよう な・・・

台詞がほしい、レオンがお送りし ました!!

 


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