まぶらほ  無限の魔力

 

 

 

 

出会い編

第五話 偽りの姿、真の姿

 

 

「質問に答える前に、まず君達の 聞きたいことがある」

 

「な、何よ」

 

「君たち三人が僕の遺伝子の事を 知って僕のところに来たのはわかった。それ以外に君達が知った僕のことについて聞きたい。僕の情報はどこまで流れたのか?」

 

和樹は自分の情報がどこまで漏れ たかを確認しておくべきと考え三人から話を聞くことにした。

 

「私が知ったのは遺伝子のことが ほとんどよ。あんたの祖先に賀茂保憲や安部康親とかの子孫が混じっていることや海外でも高祖母にポーランド人がいること。そしてあんたの子供が生まれたら 大魔術師になる可能性が高いって言うことくらいよ」

 

「風椿先輩、一つ聞いていいです か?」

 

「な、何よ?」

 

「あなたに僕の所へ行くように 言ったのって誰ですか?」

 

「だ、誰って、あたしの一番上の 姉よ」

 

「・・・ということは葉流華さん ではないんですね。わかりました」

 

「ちょ、ちょっと待って!」

 

玖里子は慌てたような、驚いたよ うな声を上げた。

 

「何であんたが葉流華姉さんのこ と知ってるのよ!?」

 

なぜ初めて会った和樹が自分の姉 のことをしているのか玖理子は驚いたようである。

 

「僕の従姉妹、正確には再従姉が 葉流華さんと同級生なんですよ。風椿の人だっていうのは会ったときに聞きましたし、今でも付き合いがあるんで僕も葉流華さんの事は知っているんです」

 

玖里子は他にも何か聞きたそうな 顔をしているが、和樹が凛へと先に質問してしまったので口をつぐんだ。

 

「神城さん、君のところは?」

 

凛は折られた自分の刀・・・柄の 部分だけになってしまったがそれを強く握り締めて和樹を見返した。

 

「さっき言った通りだ。それくら いしか私は知らない」

 

あまり和樹と話を交わしたくない のか凛はそれ以上何も言わなかった。

 

「それで、宮間さんは?」

 

「『夕菜』って呼んでくださ い!」

 

「悪いけど初対面の人を呼び捨て にする気はないよ。どうやらみんな知っていることは同じようだね」

 

和樹は三人から聞いたことを頭で 纏めようとする。

 

(風椿はやっぱり葉流華さんは無 関係か。もし知っていたらそんなことするわけないもんな。神城は今の当主は確か神城佐平って言う人のはず・・・・・・僕が式森源氏、式森源蔵の孫だってこ とに気づいていないのか? 宮間は何を考えているのかわからないけど・・・)

 

二つの家は和樹、式森家ともつな がりがないとは言い切れない。だが宮間は和樹にとっても式森家にも全く関係するところがない。

 

(とりあえず話ながら誘導尋問み たいで嫌だけどそうやって聞くこうとするしかないか・・・)

 

あまりそういうことはしたくない がそうでなければ自分に火の粉が降りかかる。それは全て振り払わなければならない。

 

「つまり、大したことも知らない で僕の所に来たというわけですか? ただ僕の遺伝子が家系に入れば家が大きくなるからという家からの命令だけで・・・」

 

和樹は内心怒鳴りたいのを押さえ つけながら静かに言った。

 

「大したことって・・・あんた何 様! まあ、遺伝子が目的なのは確かよ。あたしの家って成り上がりだから睨みを利かせる何かが欲しいってことになったらしくて、それであんたの遺伝子を ちょこっと貰おうかなって・・・」

 

玖里子は軽い口調で淡々と和樹に 言った。そして他の二人のことも話し出した。

 

「凛も、神城家って旧家で伝統も あるけど、ここのところ低迷続いていてやばいのよね。他の退魔関係の家も同じようなもんだけどライバル視している杜崎が最近調子上げているからね。だから 強い血を入れて盛り返そうとでも思ったんじゃないの?」

 

「確かに・・・家から私の婿とし て連れて来いと命令された」

 

玖里子の言葉を否定せず凛はただ 肯定した。

 

「夕菜のとこも最近落ち目で何と かその流れを止めたいんじゃないの。もう一度上に上がるために遺伝子が必要になったってところね」

 

夕菜は黙ったままだが、どうやら 玖里子の言ったことは当たっているようである。

 

「大体話はわかったよ。でも、君 達に関わることはもう二度とないと考えてもらっていい。僕は君達の家のご都合に合わせて動くつもりなんてない。そっちが力尽くできても僕は屈することなん てないし、屈せさせることなんてできないだろうからね」

 

(そっちが本気で来るなら家ごと 潰すことなんかわけないことだし)

 

例え和樹が動かなくても式森家の ほうがそれらの行為を逃すことはない。本気で式森家が動けば針を刺された風船の如くすぐに家は崩れ去るだろう。

 

例え武力で向かってきてもそれは 同じことだ。

 

式森家には他の家には対抗できな いほどの戦力がある。だがその力を使うべき方向をきちんと弁えている。

 

実際、和樹は式森家の中でも五指 にはいるほどの強さを持っている。だがそれを自慢することも、その力に奢ることも無い。

 

何のために自分がその力を使うべ きなのか少なからず心に秘めた思いがあるからだ。

 

「それじゃあ、約束どおり僕のこ とについて話して上げるよ。言っておく今からでも帰ったほうがいい。聞こうか悩んでいるならなおさら帰ったほうがいい」

 

最後の忠告だとばかりに和樹は三 人に言った。

 

だが三人は帰る様子など全く見せ なかった。

 

「じゃあ話して上げるよ。でも答 えられる範囲でね。まず何から聞きたい?」

 

「私からいいかしら」

 

まず玖里子が和樹に質問した。

 

「あんたがつけている。その腕 輪って何、さっきは刀になっていたはずでしょ? あんた魔法は七回しか使えないのに、それにあの動きは何なの?」

 

玖里子は疑問に思っていることを 次々と聞こうとした。

 

「これはただの腕輪じゃないんで す。僕の魔力を込めて僕が作り上げた魔法具なんです。この魔法具にはそれ自身にも魔力を具わっているんで持ち主は魔法具に備わった魔力を使うことができま す。それと僕はさっき魔法は使っていません。魔法具を刀に変化させた者を振るっただけで魔法は一切使っていないんですよ」

 

「貴様っ、嘘をつくな!!」

 

和樹の返答に凛が声を上げて反論 した。

 

「魔法を使わないで剣鎧護法を破 ることなんてできるわけがない。一体どんな魔法を使ったんだ!!?」

 

どうやら凛は自分の剣鎧護法が破 られたことを相当気にしているようである。さらに自分の目で追うことの出来なかった和樹の動きも魔法でのことだと思いたいのだろう。

 

「僕は、嘘は言っていないよ。た だ君の剣鎧護法が僕の黒刀の斬撃に耐えられるほど強くなかったって言うことだ」

 

「そんなデタラメ・・・」

 

「一億・・・」

 

凛の言葉をさえぎり千早が言っ た。

 

「和樹君の魔法具には一つに一億 回分の魔法回数が具わっているのよ。一回一回が強力な力を持つ魔力がね。その力が、和樹君が魔法具で形作った黒刀を自然に強化しているの。つまり、あなた の剣鎧護法よりも自然に黒刀を包み込んでいた和樹君の魔力のほうが強かったってだけのことよ」

 

「い、一億!!」

 

「そんな回数・・・でたらめ だ!!」

 

「信じられません!!」

 

千早の言葉に三人は声を上げて驚 いた。自分達の魔力もそれなりにすごいと思っていた。だがそんな数が全く比較にならないような数字が出てきたこと、完全に三人の想像の範囲を超えていた。

 

夕菜は二十一万。

 

玖里子は十四万五千。

 

凛は十七万六千三百百。

 

ともに魔法界ではトップクラスの 魔法回数である。だがその三人が合わさってもはるかかなたの数である。

 

「信じられない気持ちも分かるけ ど、事実だよ。紅尉先生に頼んで魔法具の回数を特別な機械で測定してもらったから間違いない」

 

「でも、そんな魔力どこか ら・・・あんたが魔力を込めたって言ったけど、魔法回数七回しかないでしょ!?」

 

玖里子が和樹に疑問をぶつけた。

 

自分達の知る限り和樹の魔力は七 回である。一億という魔法回数が一体どこから来たのか、全く想像がつかない。

 

「確かに表向きはそうしています よ。だがあなた達の知っている情報は僕と式森家の人達の作り上げた虚像、偽りの式森和樹にしか過ぎません。本当の僕を・・・真の式森和樹の全てをを知って いる人は式森家の関係者でも数少ないですから」

 

「きょ、虚像・・・・・・真のっ て・・・」

 

玖里子は和樹の言葉に唖然として 呟いた。夕菜と凛もどう答えていいのか分からないようである。

 

和樹は横目で千早のほうを向い た。千早は和樹が言いたいことがわかったのか自分から話を始めた。

 

「でも、虚像って言ったら言い過 ぎだけどあたしも魔法回数はごまかしてるからね」

 

三人は話し出した千早のほうへと 視線を向ける。

 

「千早、何も千早まで秘密を話さ なくても・・・」

 

「いいのよ。ちなみにあたしの表 向きの魔法回数は十万にしているけど、今の魔法回数は三十万超えてるから」

 

「えっ!」

 

「さ、三十万!!」

 

「そんなに!!」

 

三人は千早の言葉に驚き声を上げ た。だが驚くのはここからであった。

 

「でも十万回って数も決して嘘で はないですよ。実際昔は十万回だったんですから」

 

『えっ!!!』

 

信じられない言葉に三人は唖然と した。

 

「ちょっ、ちょっと待って、魔法 回数を増やす方法はまだ見つかってないはずよ」

 

「そうです。そんな魔法回数が増 えるなんて!!」

 

「ありえません!!」

 

三人ともあり得ないとばかりに声 を上げた。実際、未だに魔法回数を増幅させる方法は発見されていないのだ。信じろといわれて信じられるほうがおかしい。

 

「でも、事実なんだから仕方ない じゃん」

 

「えっ!」

 

「だ、誰が?」

 

「声が・・・」

 

どこからとも無く聞こえてきた声 に三人は、辺りを見回し声の主を探した。でもどこにもその声の主は見つけることができない。それにここには自分達の五人しか居ないはずである。

 

「あ、ごめん。レオン、三人に姿 を見せてもいいよ」

 

「このまま忘れられるのかと思っ たよ」

 

和樹の上空に光が起きるとそこに 姿を隠していたレオンの姿が現れた。

 

「どうも!」

 

レオンは三人に軽く手を上げると 千早の腕の中へと下りた。

 

「な、何なのあんた!」

 

「見たことがないです、こんな生 物!」

 

「きゃあっ、可愛いです!」

 

レオンの姿を見てそれぞれ驚きの 声を上げた。

 

「紹介します。僕の式神のレオン です」

 

和樹は三人にレオンを紹介する。

 

「レオンは僕や千早が四歳の頃に 式神になってからずっと僕らと一緒にいて僕らのことを支えてくれた大事な存在です」

 

そう、レオンは和樹や千早にとっ てとても大事な存在である。和樹にしてみれば千早同様、レオンがいなければ自分はここまで来られなかったと言い切れるくらいに大きな存在である。

 

「僕が力に目覚めたのはレオンに 会う少し前でした。そのときの僕の魔法回数は八回、そう後の一回を使ったとき僕の力は目覚めてしまったんです」

 

和樹はあの日のことを思い出しな がら話し始めた。

 

自分の運命を・・・・・・

 

本当の自分の力を知ったあの日 を・・・・・・

 

望んだ力ではなかっ た・・・・・・

 

なぜ自分に力が宿ったの か・・・・・・

 

あのときに自分はまだそれを受け 入れることができなかった・・・・・・

 

一体、何のための力なの か・・・・・・

 

幼い自分には何も分からなかっ た・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあね、世界一の魔法使いさ ん。約束だよ!」

 

そう言うと女の子は帰っていっ た。

 

「ふぅ・・・疲れた・・・」

 

自分が生まれて初めて使った魔 法、和樹はそれにかなりの力を使ったことに幼いながらも疲れを覚えた。だがここまで疲れるとは考えてもいなかったのだ。

 

「あっ! いけない」

 

千早と遊びに行く約束をしていた のだが、待ち合わせの時間をかなり過ぎていた。和樹は疲れも忘れ急いで走り始めた。

 

和樹が約束の場所に着くと女の子 が空から振る雪を見ていた。

 

「千早ちゃーん!」

 

和樹が約束の場所に着くと、女の 子が座っていた。

 

「ご、ごめん千早ちゃん、遅れ て」

 

約束の時間などとっくに過ぎてし まっている。

 

だが千早は別のことを怒ってい た。

 

「さっきの雪、和樹くんが降らせ たの?」

 

和樹は困った。魔法回数が八回し かないからと、千早や家族のみんなからに魔法は使ってはいけないと約束をさせられていたからだ。

 

特に千早には絶対に使わないでと 言われていたのだ。

 

「・・・ごめん」

 

「約束したのに」

 

「ごめん」

 

和樹は謝ることしかできなかっ た。約束を破ったのは自分だ。

 

「何で使ちゃったの!? あと七 回しかないんだよ、七回使うと塵になって消えちゃうんだよ! 死んじゃうんだよ! 約束したのにっ! 指切りしたのに! 何で使ちゃったの」

 

「・・・・・・」

 

「嫌だからね。和樹君が死んじゃ うの、私は絶対嫌だからね!」

 

「・・・・・・」

 

何も言うことができなかった。返 答に困っていると急に体に異変がおきた。

 

「うっ!」

 

「えっ、和樹くんどうしたの?」

 

「あっ、あ、つ、い・・・」

 

なんと言っていいのか分らない。 体中の血液がマグマのように熱くなり、すごく苦しい。

 

「どうしたの? ねぇー」

 

和樹はその場に倒れこんだ。千早 を安心させたいが、体がまったく言うことを聞いてくれない。

 

「ど、どうしよう・・・」

 

千早は困ってしまった。いきなり 和樹が倒れてしまった。まだ小さい千早にはどうすればいいのか分らない。

 

「和樹くん大丈夫!!  ねぇー!!!」

 

どうしたらいいのか分らず、千早 は泣き出してしまった。

 

「ねぇー、和樹くん、ねぇー!」

 

何度声をかけても和樹は苦しんだ ままである。額には大粒の汗が流れ服も汗で水に浸かったかのように濡れている。

 

「だれか、和樹くんを助けてー」

 

ともかく叫んだ、泣き叫んだ。和 樹がこのままじゃ死んでしまうんではと不安で、何もできない自分が悔しくて。

 

「だれか来てー、助けてー」

 

そのとき遠くから走ってくる人影 が見えた。その人影はものすごい速さで走ってきた。

 

「ゲン爺!」

 

千早が呼んだ人物、それは和樹の 祖父である、式森源蔵だった。

 

ゲン爺は、千早の声に気づいて急 いでこっちに走ってきた。

 

「和樹はどうした?」

 

優しい声で千早に話しかけたが焦 りは隠せないようである。

 

「わ、わかんない。いきなり苦し そうになって熱いて言って倒れちゃってうずくまっちゃって・・・」

 

小さいながらも和樹を助けたい一 心で必死に説明する。

 

源蔵はそれを聞いて何か考え込む ような顔をしたが、今は和樹を助けることが先だ。

 

真夏に雪が降り出してきたので、 もしやと思って和樹のあとを追って来た。自分達の血筋のことで言い伝えがあったからだ。

 

あってほしくは無いと思っていい たが、悪い予感は当たってしまった。

 

「わかった、もう大丈夫だから、 涙を拭きな、千早ちゃん」

 

「うん」

 

優しい源蔵の言葉を聞いた千早は 涙を拭いた。

 

千早は源蔵のすごさを知ってい る。

 

源蔵は生まれたときから自分たち のことを見てきてくれた、二人にはいつも優しくしてくれた。

 

だから、源蔵の凄さは小さな千早 にも分った。

 

源蔵なら何とかしてくれる。源蔵 に不可能は無いと思っていた。

 

だが源蔵は焦っていた。千早が気 づかないようにしているが、かなり和樹の状態は危ない。

 

(まさか、本当に和樹にこの力が 宿るとは・・・)

 

源蔵は式森家で言われている言い 伝えを考えていた。

 

「とりあえず家まで運ぶまでの応 急措置だ」

 

そういうと、源蔵は霊符を取り出 し和樹に貼り付けて唱えた。

 

「封絶」

 

すると和樹はさっきよりも、苦し みが和らいだのか源蔵がいることに気がついた。

 

「・・・ゲン、爺・・・」

 

「しゃべるな、家に帰るぞ」

 

源蔵の言葉を聞くと和樹は落ち着 いたように目を閉じた。

 

「千早ちゃん、わしの背中に乗る んじゃ」

 

和樹を抱え、千早を背中に背負う と、源蔵は家まで走り出した。

 

二人の重さが増えたにもかかわら ず源蔵はまったく気にせずに家までの道を急いだ。

 

五十を超えた人とは思え無い。源 蔵は走りながら、今後のことを考えていた。

 

(和樹には、つらい定めになって しまった・・・・・・)

 

源蔵は自分の腕の中にいる孫を見 ると、不憫でならなかった。

 

 

 

 

『レオンのインフィニティールー ム!』

どうも、レオンです!

最初のときと設定がいじられてる な。葉流華とカズが知り合いだったり、これからどうこの設定が影響してくるのか。

次は和樹の過去が少しですが明ら かに・・・

修正前の話には出てこなかった キャラが登場します。

お楽しみに!

 


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