第4話  崩れる幸せ

 

 

放課後、和樹と千早とレオンは商 店街を買い物して寮に向かっていた。

 

腕を組みながら歩くその姿は新婚 夫婦の買い物帰りそのものである。

 

和樹が朝の出来事を話したら、

 

「レオンが正しいわね」

 

と、即答されてしまった。それを 聞いて和樹は落ち込んだ姿を見せた。和樹の寝起きの悪さを千早はよく知っている。

 

物心ついたころから一緒に遊んで きた仲だ。自分や親よりも自分のことを理解しているだろうと和樹は思う。

 

千早のことを一番理解してるのは 和樹だろうけど。

 

小さいころは二人とも結婚すると 親に言ってたほどだ。今はさすがに言わなくなったが、どちらの親も2人の関係を認めている。

 

レオンは、2人が結婚したら毎日 ご馳走が食べれると今から期待して待ってるし、祖父の式森源蔵に至っては曾孫の顔をいまや遅しと待っているのだ。

 

この前なんか電話で「どこまで進 んだ?ベビーカーはいつ買う?」などと聞いてきた。

 

さらに源蔵の父、式森家の最長老 である源氏は、玄孫の顔を見るまで死んで堪るかと健康管理に余念がない。ちなみに恩年90歳。

 

和樹は源氏爺なら日本記録、い や、世界新記録の長寿者になると確信している。

 

そうこうするうちに寮についた。

 

だが3人は今から和樹争奪戦が始 まるなんてまったく考えていなかった。

 

このときカラスが寮の近くにたく さんいることに気づくべきだったかも知れない、また黒猫が集団でたむろっていたのにも気づくべきだったかもしれないが、ラブラブモード全開の和樹と千早、 ご馳走で頭の中がいっぱいのレオンは気づくわけがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

部屋の前に来て和樹が自分の鍵を 空けようとしたときに、鍵が開いてることに気がついた。

 

「あれ? レオン、朝かぎ閉めた よね?」

 

「閉めたよ」

 

レオンもそれは確認してたので間 違いない。千早もそれを聞いて不思議に思って見ている。

 

泥棒とかかなといつでも対処でき るよう警戒して扉を開けた。扉を開けて和樹は固まった。

 

「カズ、どうしたの?」

 

中をみて、レオンも固まった。

 

中で女の子が着替えをしていたの だ、しかも今の少女の姿は下着姿。

 

肌がほとんど露出し、その手には 葵学園の女子の制服を持っていた。

 

千早は和樹の後ろに立っていたの で中の様子がよくわからなかった。

 

一瞬時が止まったが、それは無常 にも動き出してしまった。

 

 

 

「き、 きゃぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

 

 

中にいた女の子の叫び声ととも に・・・

 

「ご、ごめんなさい!!!!」

 

本日2回目のごめんなさい。

 

悲鳴を聞いて慌てて和樹は扉を閉 めた。レオンも悲鳴で硬直からとけた。

 

「・・・レオン」

 

「なに、ふぇ〜〜〜、はふ〜ひは ひひょ〜(カズ〜いたいよ〜)」

 

和樹はレオンの顔を引っ張った

 

「・・・夢じゃないみたいだな」

 

「自分の顔引っ張ってよ(涙)」

 

レオンが、目に涙を浮かべ赤く なったほおを抑えながら文句を言う。

 

「レオン、今の見間違いじゃない よな」

 

「見間違いじゃないと思うよ」

 

 

 

「ちょっと今の悲鳴何?中に誰か いたの?」

 

 

 

ビクッ!!!!!!

 

 

非常に猫なで声・・・・いや、沼 の中から聞こえてきそうな低い声・・・・

 

和樹とレオンが千早のほうを振り 向く。顔が・・・笑っていたが・・・危険な顔をしていた。

 

(ひいぃぃぃぃぃ!! こ、こわ いよ〜、こわいよ〜(涙)))

 

2人は千早の怖さをこれでもかと いうほど知っている。普段怒らない彼女だが怒ったときは手がつけられない・・・というか神でも恐れをなすだろう。

 

ひどいときは、1ヶ月以上口も利 いてくれなかったし、その1ヶ月の間は土下座をしても、プレゼントをあげて怒りを和らげようともまったく反応してくれなかった。

 

そのとき2人は心に誓った。

 

二度と千早は怒らせないと!!!

 

「誰かいたの? か〜ず〜き〜く ん(ニコ)」

 

満面の笑みを浮かべて聞いてく る・・・・でも、とてつもなく危険な笑顔だった。子供が見たら泣きそうである。

 

「・・・・・・と、取り敢えず中 をもう一度見てみようよ、見間違えってこともあるかもしれないしね!!」

 

「・・・・・・そ、そうだね!」

 

レオンはそう言ったが、だが2人 ともわかっている。見間違いではなかったことを。

 

千早の刺すような視線を感じつつ 和樹はドアに手をかけた。

 

「開けるよ」

 

「うん」

 

「開けていい」

 

「うん」

 

「本当に?」

 

「うん」

 

「・・・ファイナルアンサー?」

 

「ファイナルアンサー!」

 

馬鹿なことを言いつつドアを開け た。

 

やはり女の子はいた、正座をして 三つ指を床につけ深々と頭を下げていた。

 

「お帰りなさい、和樹さん」

 

「・・・・君は誰?何で僕の部屋 に?」

 

「私、宮間夕菜と申します。葵学 園に転校してきました。今日から和樹さんの妻として、寝食を共にさせてもらいます!」

 

宮間夕菜は少し恥ずかしそうに顔 を赤らめながら言う。

 

「ちょっと待って、妻っていった い何、てっかまだ僕16だし」

 

「愛は、法律をこえます。それに これは運命です!!!」

 

「・・・・・・・だめだろ、普通 に。それに人の運命勝手に決めないでよ」

 

「ちょっと、待ちなさいよ」

 

今まで黙っていた千早が割って 入ってきた。和樹とレオンは震えていた。

 

「あなた誰ですか?」

 

「あなたこそ誰よ、勝手に和樹君 の部屋に入りこんで、妻ってなんなのよ」

 

「勝手じゃありません、私は和樹 さんの妻なんですから、あなたこそなんなんですか」

 

「私は和樹くんの・・・・・・婚 約者よ!!!」

 

「「おぉー!」」(パチパチパ チ)

 

千早は顔を赤くしていった。和樹 とレオンは素直に歓声を上げた。

 

「妻は私です!!!」

 

宮間夕菜と名のった女の子と千早 のいい合いが始まった。

 

和樹とレオンは千早の怒りが別の 方向に向いてくれたことに安堵感を覚えていた。

 

「和樹くんも何か言って よ!!!」

 

「ほえ!」

 

いきなり話を振られて和樹は戸 惑った。返答に困っているといきなり後ろから誰かに抱きつかれた。

 

「うわ!! いったい、なんな の?」

 

レオンは巻き込まれるのを避けて 天井あたりを飛んでいる。

 

和樹が抱きついてる人を確かめ た。

 

「か、風椿先輩?」

 

「私のこと知ってるのね、じゃ あ、さっそく、しましょう〜」

 

いきなり和樹は押し倒された。逃 げる間もなかった。この状況に和樹の判断力が鈍っていたせいもあるかもしれないが。

 

「いきなり何するんですか!!」

 

「すぐ済むから大人しくしてて ね」

 

玖里子は和樹の服を脱がそうとし てくる

 

「やめてください! 人を呼びま すよ!!」

 

「それは女の子の台詞よ」

 

「男でも叫びます!」

 

和樹はふと違和感を感じた、見る と夕菜が水の精霊であるウンディーネを召喚していた。

 

「和樹さんの妻は私です!!」

 

そう言って夕菜はウンディーネを 解き放った。

 

(・・・僕も一緒に攻撃する の?)

 

玖里子は懐から1枚の霊符を取り 出してそれウンディーネに向かって投げ、防いだ。

 

(この2人結構強な・・・)

 

和樹は2人の力を瞬時に判断し た。自分やレオン、千早ほどではないが強いほうに部類されるだろう。

 

玖里子の手が緩んだ隙に和樹は彼 女を引き剥がした。

 

「きゃっ!」

 

玖里子は和樹に少しだけ突き飛ば された。

 

「あっ、その、ご、ごめんなさ い!!」

 

一応、謝ってはおく。

 

「やったわね!こうなれば力ずく で!」

 

(・・・謝るんじゃなかった)

 

本気でそう思った。

 

再び和樹に襲い掛かろうとする玖 里子。まず過ぎる!!

 

そのとき千早は和樹の前に立っ た。

 

「何するんですか? 勝手に上が りこんで!」

 

「別にいいじゃない。1回くら い」

 

「そっちのことじゃありません、 いきなり来て何するんですかって聞いてるんです」

 

「そんなこといいじゃない、後 で」

 

「よくありません」

 

「そうだよくない」

 

声のしたほうを、和樹達が見ると そこには日本刀を持ち、巫女服のような服を着た1人の女の子が立っていた。

 

 

 

 

 

あとがき

ストーカーは止めましょう

どうも、レオンです!

ついに夕菜も登場して、3人がそ ろいました!僕としては邪魔に感じてます。

なんと言っても今回の見所 (MVP)は千早の

「私は和樹くんの・・・・・・婚 約者よ!!!」

この場面しかないでしょう。千 早、よく言った〜!

 



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