第6話 魔法具と昔話

 

 

「ところでみんなが、ここに来た 理由って何?」

 

大方の予想はついてるが、一応聞 いてみる。

 

「和樹くんの遺伝子が目的で しょ、きっと」

 

千早が飲み物を用意しながら、正 解であろう答えを言う。この状況の中で飲み物を用意していることはとても場違いだが今日はちょっと暑い日だった。

 

夕方と言えど、あれだけの騒ぎが あったのだ。喉がカラカラである。

 

「その通りよ。あたしの家って成 り上がりだから睨みを利かせる何かが欲しいって事になったらしくて。それであんたの遺伝子でも、ちょこっと貰おうかなって」

 

「ちょこっとて・・・御中元とか じゃないんですから挙げられませんよ、遺伝子なんて」

 

額に手を当て和樹は呆れながらも 答える。愛も無く生まれてきたら子供がかわいそうでならない。

 

「で、君のところは?」

 

今度は凛に聞いた。でも彼女は答 えようとしない。ただ折れた刀を見ている。言いたくない様にも見えるが。

 

「凛とこは旧家で伝統もあるんだ けど、ここんとこずっとヤバいのよねー。だから一族の会議で新しい血でも入れようって事になったんじゃないの」

 

変わりに玖里子が和樹の質問に答 えた。

 

「・・・確かにそう宗家から言わ れた」

 

「随分、一方的だね。こっちの意 見は完全無視」

 

(今何時代だよ、藤原道長や平清 盛でもいるのか名家には・・・)

 

名門の家とかって、どうしてそん なことをするのか。式森家も裏では有名で、先祖の血がすごいのでいろいろ注目されるがそんなことはしたことが無い。

 

「夕菜のところも最近落ち目だか ら、和樹の血をもらいに来たんでしょ!」

 

夕菜は黙ったままだが、どうやら 当たっているようである。

 

「それならそれで良いけど。君達 の家の問題にこれ以上関わるつもりは、僕は無いよ。奪い取ろうとしても簡単に渡すきはないし・・・」

 

(そっちが本気で来るなら家ごと 潰すことなんか簡単だし)

 

和樹とレオンが、合わさったら世 界を探しても勝てる人はそういないであろう。それだけの自信と強さを二人は持っている。

 

「それじゃ説明するよ、僕が腕に つけているこの腕輪は僕の魔力で作り出したもので、この腕輪自体にも魔力が具わっている。だから僕はさっき、実際には魔法は使ってなくて、この魔法具から 使ったんだよ。ちなみに僕はさっき黒い短刀にして使っていたけど他にもいろいろな物にけることができるよ。」

 

そういうと和樹は片方の腕輪をは ずして変化させた。

 

「便利ね、で、その魔法具にはど れくらいの魔力があるの? 腕に2つつけてるみたいだけど・・・」

 

「2つじゃなくて、実際には4つ ありますよ。千早がつけているヘアピンも僕の作った魔法具ですし」

 

千早がヘアピンをはずして、槍に 変化して見せた。

 

「1つに大体1億くらいの魔力が 具わってるわよ。1回の使用量が強力な魔力がね」

 

「「「1億!!!!!」」」

 

千早の言葉に3人が驚いた。自分 達の魔力もそれなりにすごいと思っていたが、それをはるかに超えていた。

 

夕菜は21万。

 

玖里子は14万5千。

 

凛は17万6千300百。

 

3人の魔力を合わせてもぜんぜん 足りない数字である。

 

「2人の魔力はどれくらい何です か」

 

夕菜が聞いてきた。なぜか千早を 鋭く睨んでいる。千早がさっきから和樹の側にずっといるからだ。

 

「私は30万よ。昔は10万だっ たけど」

 

「「「え!!!」」」

 

この言葉にも3人は目を丸くし た。30万という数字にも驚いたが、昔よりも増えているというところに驚きを隠せないでいた。

 

「ちょっと待って、魔力を増やす 方法はまだ見つかってないはずよ」

 

「確かに、今まで聞いたことは無 い」

 

「ありえません」

 

3人とも何かの間違いではと思っ た。

 

「本当だよ、千早の言ってること は!」

 

「誰?」

 

「どこにいる?」

 

「誰ですか?」

 

どこからとも無く聞こえてきた声 に3人は、辺りを見回した。でも何もいない。自分達の5人しか居ないはずである。

 

「あ、ごめん! レオン3人にお 前が見えるようにして!」

 

和樹の言葉を聞いて、レオンは魔 法をといた。

 

「なに、この生き物?」

 

「見たこと無いです」

 

「かわいいです」

 

レオンを見て3人がそんなことを 言った。

 

「僕はレオン、カズの魔力で生ま れたんだ」

 

「式神みたいなもの?」

 

「それに近いですね」

 

玖里子の問いに和樹が答えた。

 

「レオンについても説明しなく ちゃね」

 

そういって、説明の続きを言い始 めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

和樹は約束の場所に急いでいた。 途中女の子願い事をかなえてあげてたらだいぶ遅れてしまった。

 

和樹が約束の場所に着くと、女の 子が座っていた。

 

「ご、ごめん千早ちゃん、遅れ て」

 

和樹は女の子、千早に謝った。遊 びに行く約束をしていたが大分遅れてしまった。

 

だが千早は別のことを怒ってい た。

 

「さっきの雪、和樹くんが降らせ たの?」

 

和樹は困った。魔法回数が8回し かないからと、千早や家族のみんなからに魔法は使ってはいけないと約束をさせられていたからだ。

 

「・・・ごめん」

 

「約束したのに」

 

「ごめん」

 

和樹は謝ることしかできなかっ た。約束を破ったのは自分だ。何も言うことができなかった。返答に困っていると急に体に異変がおきた。

 

「うっ!」

 

「えっ、和樹くんどうしたの?」

 

「あっ、あ、つ、い・・・」

 

なんと言っていいのか分らない。 体中の血液がマグマのように熱くなり、すごく苦しい。

 

「どうしたの? ねぇー」

 

和樹はその場に倒れこんだ。千早 を安心させたいが、体がまったく言うことを聞いてくれない。

 

「どうしよう・・・」

 

千早は困ってしまった。いきなり 和樹が倒れてしまった。まだ小さい千早にはどうすればいいのか分らない。

 

「和樹くん大丈夫!!  ねぇー!!!」

 

どうしたらいいのか分らず、千早 は泣き出してしまった。

 

「ねぇー、和樹くん、ねぇー!」

 

声をかけても和樹は苦しんだまま である。

 

「だれか、和樹くんを助けてー」

 

ともかく叫んだ、泣き叫んだ。和 樹がこのままじゃ死んでしまうんではと不安で、何もできない自分が悔しくて。

 

「だれか来てー、助けてー」

 

そのとき遠くから走ってくる人影 が見えた。その人影はものすごい速さで走ってきた。

 

「ゲン爺!」

 

千早が呼んだ人物、それは和樹の 祖父である、式森源蔵だった。

 

ゲン爺は、千早の声に気づいて急 いでこっちに走ってきた。

 

「和樹はどうした?」

 

優しい声で千早に話しかけたが焦 りは隠せないようである。

 

「わかんない、行き成り苦しそう になって熱いて言って倒れちゃってうずくまっちゃって・・・」

 

小さいながらも和樹を助けたい一 心で必死に説明する。

 

源蔵はそれを聞いて何か考え込む ような顔をしたが、今は和樹を助けることが先だ。

 

真夏に雪が降り出してきたので、 もしやと思って和樹のあとを追って来た。自分達の血筋のことで言い伝えがあったからだ。

 

あってほしくは無いと思っていい たが、悪い予感は当たってしまった。

 

「わかった、もう大丈夫だから、 涙を拭きな、千早ちゃん」

 

「うん」

 

優しい源蔵の言葉を聞いた千早は 涙を拭いた。

 

千早は源蔵のすごさを知ってい る。

 

和樹が源蔵との訓練を見たことが あるし2人にはいつも優しくしてくれた。

 

だから、源蔵の凄さは小さな千早 にも分った。

 

源蔵なら何とかしてくれる。源蔵 に不可能は無いと思っていた。

 

だが源蔵は焦っていた。千早が気 づかないようにしているが、かなり和樹の状態は危ない。

 

(まさか、本当に和樹にこの力が 宿るとは・・・)

 

源蔵は式森家で言われている言い 伝えを考えていた。

 

「とりあえず家まで運ぶまでの応 急措置だ」

 

そういうと、源蔵は霊符を取り出 し和樹に貼り付けて唱えた。

 

「封絶」

 

すると和樹はさっきよりも、苦し みが和らいだのか源蔵がいることに気がついた。

 

「・・・ゲン、爺・・・」

 

「しゃべるな、家に帰るぞ」

 

源蔵の言葉を聞くと和樹は落ち着 いたように目を閉じた。

 

「千早ちゃん、わしの背中に乗る んじゃ」

 

和樹を抱え、千早を背中に背負う と、源蔵は家まで走り出した。

 

2人の重さが増えたにもかかわら ず源蔵はまったく気にせずに家までの道を急いだ。

 

50を超えた人とは思え無い。源 蔵は走りながら、今後のことを考えていた。

 

(和樹には、つらい未来だな)

 

源蔵は自分の腕の中にいる孫を見 ると、不憫でならなかった。

 

 

 

 

あとがき

グ〜グ〜・・・

腹減った・・・・レオンです。早 く夕飯食べたいです・・・・

和樹の昔話が始まりました。

作者がどこまでうまく書けるの か・・・・

次も読んでね!!!

 



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