第8話  そして今

 

 

「これが僕の秘密だよ」

 

一通り話を終えて和樹が言った。

 

「で、今はこうやって高校生活を 送っているってわけ。ちなみに千早の魔力が上がったのは僕の魔法具をつけているからみたいだけど、原因はよくわかっていないんだ」

 

3人とも話を聞いて驚いていた。

 

無限の魔力、そして今までの和樹 の辛い人生。

 

まさかここまで辛い人生を歩んで いたとは思わなかった。

 

「すごいとしか言えないわね」

 

「まさかそこまでとは」

 

凛だって剣の修行で辛いことが あったが和樹とは比べ物にならない。

 

「そんなにすごいことじゃない よ」

 

「山瀬先輩も稽古とかをしたので すか?」

 

凛が千早に聞いた。

 

「う〜ん、私もゲン爺に稽古つけ てもらったりすることあったけど、和樹くんのサポート中心でやっていたし、いつの間にか強くなっていたって言うのが正直なところかなぁ」

 

「・・・・・・」

 

凛は言葉が出なかった。確かに和 樹のサポートしながらの稽古でも強くはなるだろうが、才能がなければ強くはならなかっただろう。

 

「・・・でぇ〜、何で宮間さんは 泣いてるわけ?」

 

話の途中から夕菜は泣いていた、 なぜ泣いてるか分らないが話の後半ごろは、滝のように涙を流して泣いていた。

 

ティッシュ箱は空になりゴミ箱は 丸まったティッシュで山ができていた。

 

「だって、私のせいで和樹さんが そんな辛い目にあっていたなんて・・・」

 

「私のせい?」

 

夕菜がなにを言っているのか全く 理解できなかった。私のせいとはどういうことなのか?

 

「カズ、この子のこと知ってる の?」

 

レオンが千早に抱えられながらそ んなことを聞いてきた。

 

「いや、ちょっと待って」

 

和樹は何とか思い出そうと考え始 めた。

 

「あのときに私がわがまま言わな ければこんなことにはならなかったのに・・・・」

 

(あのとき・・・・・・)

 

和樹の心の中では記憶の掃除が行 われていた。くもの巣を掃いながら記憶をたどる。

(掃除しろよ・・・)

 

(いつだ? この子とは始めて 会ったはずなんだけど・・・)

 

そしてようやく思い出した。時計 を見たら5分も考えていた。

 

いつの間にか、千早が飲み物のお 代わりを運んできていた。

 

気の利く性格である。

 

「あっ!! あの時雪を見せてあ げた女の子か!!」

 

遅すぎる。5人とも待ちくたびれ ていた。

 

「はい、そうです」

 

彼女が泣く理由もそれなら分る。 自分のお願いで辛い思いをした人が目の前にいるんだから。

 

「あのときの雪ってこの子に見せ たんだ」

 

千早が和樹に飲み物を渡しながら 言う。

 

「そうみたいだね」

 

「じゃあ、夕菜ちゃんが原因だっ たってこと」

 

「みたいですね」

 

玖里子と凛は驚いたようだ。

 

「宮間さんあんまり気にしなくて いいよ。どうせいつかは越えなくちゃいけないことだったんだし後悔なんて僕はしてないから、それに、レオンも生まれてきてなかったんだし」

 

レオン見ながら和樹はそう言っ た。

 

「でも・・・」

 

「それ以上何も言わない。僕が気 にしてないんだからそれでいいじゃん」

 

和樹はこの話はもう終わりだと手 を振った。

 

「ところでレオンの魔力ってどの くらいなの?」

 

玖里子がふと聞いてきた。凛も気 になる様子である。

 

「僕の魔力は50億だよ! もち ろん、1回分の威力もすごいよ!!」

 

「「5、50 億!!!!!!!!」」

 

2人は耳を疑った。

 

和樹や千早の周りをふわふわ浮い ているこのボールみたいなレオンにそこまでの魔力は無いと思っていたからだ。

 

人は見かけによらない。(いや、 式神か)

 

「和樹さん!」

 

「なに?」

 

「和樹さん約束覚えてますか?」

 

「約束?」

 

夕菜がいきなり和樹に聞いた。和 樹にはまったく覚えが無いようだ。

 

「和樹君なんか約束したの?」

 

「いや、記憶に無いんだけ ど・・・」

 

千早が確認を取ってきた。何かい やな予感がする。窓を見ると寮からネズミ達が逃げていくのが見えた。

 

不気味だ・・・不吉だ・・・

 

(・・・・・・・)

 

「忘れたんですか? お嫁さんに してくれるって言ってくれまし た!!!!!」

 

「言ってない、言ってない、言っ てないぃぃぃぃぃぃ!!!!!!!!!!!」

 

大声で否定する。まったく覚えが 無い!

 

「いや、思い出した。確かあの時 僕は『お礼なんていらないよ』って言ったはずだ!!!!!」

 

「そんな悪いですよー」

 

「悪くなぁぁぁぁ い!!!!!!」

 

和樹は、今日は厄日だと思った。 そうじゃなかったら、神様のいたずらだ。

 

「あたしも、興味が湧いちゃった わ」

 

「え!」

 

「私も・・・お前に少しだけ興味 がわいた」

 

「え!!」

 

「強いし、遺伝子はすごいしね」

 

「遺伝子はともかく、強さには興 味を持つ」

 

夕菜だけでなく、玖里子と凛まで とんでもないことを言い始めた。

 

「和樹さんは渡しません!」

 

「独り占めは卑怯よ!」

 

「誰のものでもありません!!」

 

「・・・勘弁してくれ」

 

和樹はもうどうにでもなれといっ た感じだ。

 

千早はどうしたらいいのか分らな いようである。

 

だが次の一言で争いはとまった、 いや酷くなったのかもしれない。

 

「だめだよ、カズは千早と結婚す るんだから!!!」

 

「「「「「え!!!!!!!!!!」」」」」

 

レオンがいきなり爆弾発言をし た。

 

「中学のころからカズと千早は付 き合ってるんだよ、どっちの親も交際をちゃんと認めている仲なんだから2人の邪魔をしないで!!」

 

レオンは必死だ。理由・・・千早 の手料理が食べられなくなったらいやだからだ。

(そっちの心配かよ)

 

レオンのこの言葉に和樹と千早は 真っ赤になっていた。3人でいるときは、笑っていただろうがここにはもう3人、それも今日あったばかりに人たちがいるからだ。

 

レオンは言うことはすべていった という感じで、満足そうにしている。

 

だがこの3人は手強かった。

 

「親が何ですか!! そんなの関 係ありません!!!」

 

「私にも奪う権利はあるはず よ!!!」

 

「誰のものでもありませ ん!!!」

 

「だめぇぇぇー!!!!」

 

レオンまで参加しての壮絶なバト ルがスタートした。

 

その日、結局和樹は夕飯を食べる ことができなかった。

 

 

 

あとがき

は、腹減った・・・・・・

どうも、空腹で死にそうなレオン です。

作者の陰謀だ、僕に対する仕返し だ。

(前回のあとがきの恨みだ!)

最悪だ、悪魔だ、死神だ!

神よーーーー!

僕に食べ物 をーーーーーーーーーーーー!!!

 

 



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