第9話  転校生

 

 

ジジジジジジジジジジジ!!

 

バチン!

 

ジリジリジリジリジリジリジリジ リ!!!!

 

バチン!!

 

ピピピピピピピピピピピピピピピ ピピピピピピピ!!!

 

バチン!!!

 

「・・・・・・ふぁ〜〜〜〜」

 

「・・・・・」

 

「おはよう、レオン」

 

窓の外を見ると、スズメが飛んで いる。カレンダーを見ると間違いなく日にちは進んでいた。

 

「・・・・・・夢であってほし かった」

 

昨日いきなり3人の女の子が押し かけてきて、自分を夫にすると言ってきたのだ。

 

夢であればよかったと思いながら も、昨日の日付には斜線が間違いなく引かれていた。

 

「・・・・・・・はぁ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」

 

ひどく長いため息をつきながら、 学校に行く準備をする。何とか昨日はその場を治めることができたが、すでに真夜中で千早の夕飯を食べることができなかった。

 

レオンがやけに静かだと思ってみ てみると、『ご馳走、ご馳走』と呟いていた。

 

(まだ悔やんでいるのか・・・)

 

レオンは昨日の夜からこうであ る。分らんでもないが。

 

「レオン行くよ!!」

 

「ご馳走、ご馳走」

 

「・・・・・・重症だな、これ は」

 

ご馳走と呟き続けるレオンを抱え て学校へむかった。

 

 

 

 

 

 

学校に着き、教室に入ると黒板に なにやら文字が書かれていた。

 

どうやら仲丸・和美のB組男女の 金の主が賭けを行っているようだ。

 

「さあ、ただ今の賭け率は男4: 女6だ! 他に賭けるやつはいないかーーーっ!!?」

 

「うわさだと男のほうが有力 よ!!!」

 

「その証言は真実なのか!?」

 

「証拠を見せろ! 証拠 を!!!」

 

このクラスで生きていくには、人 を信じてはいけない。

 

金のことになるとその勢いはさら に増す。悲しいクラスである・・・

 

「また、賭けか・・・」

 

和樹は朝から熱くなっているクラ スメートを目の前に呆れかえっている。

 

こんなことはB組では日常茶飯事 であるが、さすがに朝からこのテンションにはついてく気にはなれない。

 

彼らが文化祭の標語として『人の 不幸は蜜の味、人の幸福砒素の味』を掲げたのはあまりにも、いやこの学園の人なら誰もが知っている有名な話である。

 

「おはよう、式森君」

 

この光景を見て、朝から疲れた顔 をする和樹に声がかかった。

 

「ああ、おはよう杜崎さん。で、 この騒ぎの原因は何?」

 

和樹が千早の親友である杜崎沙弓 に聞く。

 

彼女はB組の中では常識人である ためB組からは和樹共々変わり者扱い。一部B組に染まっているところもあるが・・・

 

「ああ、これね! 何でもこのク ラスに転校生が来るんですって。それもわざわざこのクラスに入りたいって言ったそうよ!」

 

転校生で好んでこのクラスに入ろ うとする人はまずいない。それに教師達がB組に入れないようにと裏で手を回しているとも言われている。

 

「・・・何かいやな予感・・・」

 

和樹には大体見当がつく。てか、 間違いない!

 

「式森君知ってるの、誰が来る か?」

 

「・・・間違いであってほしいん だけどね・・・」

 

何か目が遠くを見ている和樹。現 実逃避をしたいようだ。

 

「式森、お前はどっちに賭け る?」

 

和樹に気づいた仲丸が声をかけて きた。

 

「女に1万!」

 

やけくそ気味に答える和樹。沙弓 がそれを見て自分も賭ける。

 

「和美、私も賭けるわ! 女に5 万!」

 

このあと2人に釣られて何人かが 女に賭けたらしい。

 

和樹はいつまでも遠くを見ていた そうな・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「今日は転校生を紹介する。宮 間。入ってきて」

 

「はい」

 

担任である伊庭かおりに言われて 入ってきたのは、言うまでもなく宮間夕菜であった。

 

クラスの連中は、その夕菜の可憐 な外見に見とれた。

 

あちこちから、「かわいい!」だ の「可憐だぁぁ!」とかなにやらメモを取る者までいる。さすがB組とでも言っておこうか・・・

 

そんな中、和樹は、化石化してい た。(沙弓の証言)

 

「静かにしろお前ら! じゃあ、 宮間自己紹介してくれ!!」

 

このとき和樹はひたすら何かに 祈っていたらしい。(沙弓の証言)

 

「はい・・・・・・・・初めまし て、宮間・・・・・・じゃなくて、式森夕菜。和樹さんの妻です。和樹さん共々、よろしくお願いします」

 

一瞬時が止まった。クラス全員が 凍りついた。まるで氷河期である。

 

だがそれが一気にとけ、亜熱帯地 方の温度になったかと思うといっきに火山まで噴火した。

 

 

 

 

「し〜、き〜、も〜、り 〜!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(クラス中)」

 

 

 

 

とてつもなくダークなオーラと共 に、一斉に怒りと嫉妬と憎悪の視線が、和樹に向けられてくる。

 

 

 

 

「あ、あははは、ははははははは あはははっはははあはっははは・・・・・・・」

 

 

 

 

壊れた・・・・・・

 

 

 

 

「式森! これはどういうこと だ!! 白状しろーーーーーーー!!!!!!!

 

「待ってくれ!!! みんな、僕 はまだ18になってない!!! よって、僕に妻がいることはありえない!!! よって彼女の言っていることは事実無根だ!!!!!!!!!」

 

沙弓がボソッと「千早がいるし ね」とか言ったが、今のB組には和樹の言葉も沙弓の言葉もまったく聞こえていなかった。

 

 

 

「問、答、無、用!!!!!!  死んで詫びろーーーーーーーーーーーーー!!!!(クラス中)」

 

 

 

「ま、待ってみんな!!!! レ オン、結界を・・・・・」

 

「ご馳走、ご馳走」

 

まだ立ち直っていなかった。そこ までショックなのか・・・

 

クラスのほとんどが、参加しての バトルロワイヤルが始まった。

 

どごぉぉぉぉぉん!!!!!

 

 

 

 

 

 

「・・・生きてて良かっ た・・・」

 

和樹は隙をついて教室から抜け出 し、屋上に避難していた。ちゃっかり賭けた金を手に持っていたが・・・(マジかよ!)

 

「ご馳走・・・」

 

「・・・レオン、いい加減に立ち 直ったら」

 

「あうぅぅ〜〜〜〜!!(涙)」

 

「また、作ってもらえるからきっ と!!」

 

「今日作ってあげてもいいけ ど!」

 

「「えっ!」」

 

気づくと千早が隣に立っていた。

 

「何でここにいる、ふぎゃ!」

 

「本当に作ってくれる!!!」

 

レオンは和樹を吹っ飛ばして千早 に聞いた。この小さい体のどこにそんな力があるのか不思議だ。

 

「いいわよ、何でも作ってあげ る!!」

 

「やったーーーー!」

 

レオン復活!!!! ゲンキンな やつである。

 

「いててて・・・・・・千早、今 授業中じゃ?」

 

今はちょうど1時間目の最中のは ずだ。B組 以外はだけど・・・

 

「B組の人たちが、『式森はどこ だーーー』って他のクラスの授業邪魔しながら探してるからどのクラスも今は授業中断してるわよ!」

 

「・・・・・・・・・マジで?」

 

「マジで!!」

 

昨日に続いて今日も厄日らしい。

 

「で、なにがあったの? 沙弓も 見つからないから状況分らないんだけど?」

 

「夕菜があろうことにみんなの前 で爆弾発言を言っちゃたんだ・・・」

 

「・・・はぁ〜・・・で、どうす るの? みんなを止める方法ある?」

 

「ない」

 

はっきりいってそんな方法はな い。

 

福沢諭吉が空から大量に降ってき たら話は別だが、空は諭吉どころか夏目さんも雨も降らなそうな晴天だ。

 

「はぁ 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

 

今日何度目か分らないため息を吐 いた。本気を出せば止められるがさすがにそれはまずい。

 

「まぁ、何とかなるよ」

 

もうどうにでもなれといった感じ で和樹は呟いた。開き直るのが一番である。

 

「あ、沙弓?」

 

千早がいきなり声を上げた。沙弓 からの念話のようだ。

 

「うん、いるけど、うん、え、わ かった、ありがとね!」

 

「何だって、杜崎さん?」

 

「とりあえず、B組はおさまっ たって、でも・・・」

 

「B組は?」

 

何か嫌な予感。

 

「風椿先輩や神城さん達のファン クラブの人が今度は暴れだしたって・・・・」

 

「・・・何であの2人まで!」

 

「夕菜さんが2人の前でまた爆弾 発言したみたい・・・・・」

 

「・・・・・・・」

 

泣きたくなってくる。言葉をなく して固まる和樹を千早が慰めようとするといきなり人影が現れて和樹に抱きついた。

 

「かーずーき! 探したわ よ!!!」

 

「玖里子さん!!」

 

「風椿先輩!!」

 

風椿玖里子であった。

 

「もっと分りやすいところにいな さいよ!!」

 

「そんなところにいたら、僕死ん でます!!!」

 

「和樹さん見つけましたよ、て、 何してるんですか!!!!!」

 

夕菜まで現れた。

 

「いいでしょ別に、奥さんなんだ から」

 

「和樹さんの妻は私です!! こ れは変えられない運命です!!!!!」

 

 

 

((いつ決めたの、その運 命!))

 

 

 

和樹と千早は呆れた! 自分本位 過ぎる!!

 

「式森・・・・・・・貴様。朝か ら破廉恥なことを」

 

怒りのオーラを隠そうともしない 女性。神城凛が現れた。

 

タイミングが悪すぎる。別の意味 で良すぎるが。

 

「やあ、凛ちゃん。今日も元気だ ね! 空もきれいだし。」

 

「おはよう神城さん」

 

和樹は誤魔化そうと千早は礼儀と して挨拶をする。

 

「おはようございます、山瀬先 輩」

 

凛は千早にだけ挨拶を返した。千 早の強さを知ってからか、凛は千早のことを尊敬するようになったのだ。

 

「誤魔化そうとするな、式森。昨 日は少し見直したが、やはりどうしようもない男だお前は!!」

 

そういって、刀の構えをとり斬り かかろうとする

 

「凛やめたほうがいいわよ、せっ かく刀治してもらったのにまた折られたくないでしょ!」

 

凛の刀を昨日和樹は折ってしまっ た。

 

刀が折れたのがショックだったの か凛が落ち込んでるのをみて、和樹は凛の刀を治してあげたのだ。

 

そのときにお詫びとして刀の斬れ 味をあげたりしてあげた。

 

「先輩そろそろ和樹くんから離れ てくれます」

 

「いつまで乗っかってるです か?」

 

「和樹さんから離れてくださ い!」

 

3人とも言葉に殺気がこもってい る。さすがにそろそろ我慢の限界である。

 

「減るもんじゃないしいいで しょ!」

 

「「「だめです!!!」」」

 

「やはり斬る」

 

「何で僕なの!!」

 

もう分けわかんなくなってきた。

 

「え、沙弓・・・何?」

 

沙弓からの連絡だ。

 

「えっ! うそっ!」

 

「千早どうした」

 

様子から、焦ってる様子である。

 

 

 

 

 

どがぁぁぁん!!!!!!

 

 

 

 

 

そのとき屋上の扉が派手に破壊さ れた。

 

 

「し、き、も、 り!!!!!!!!!!!!(B組と風椿、神城のファンクラブの人たち)」

 

 

B組と風椿、神城のファンクラブの人が目の色を変えてそこには立っていた。

 

「・・・え〜と・・・B組が復活 してみんなで屋上に向かってるって言ってきたんだけど・・・」

 

「・・・・・・杜崎さんもっと早 く言って・・・」

 

みんな敵意むき出して和樹を睨 む。

 

「貴様! 夕菜さんに何をした!  それと風椿玖里子さんと神城凛ちゃんだと!!! 学園中の美少女お前はのっとる気か!!!!!!!!!!」

 

仲丸がみんなを代表してそんなこ とを叫んだ。

 

「・・・私はみんなの目に映って ないの?」

 

千早がみんなに無視されたことに ショックを受ける。

 

「のっとる気もないし、3人に手 を出すつもりは盲等ないけど・・・」

 

「だまれ!!!」

 

「人でなし!!!」

 

「悪魔!!!」

 

「女の敵!!!」

 

「魔力7回!!!」

 

「童貞!!!」

 

「学園の敵!!!」

 

「能無し!!!」

 

あっちこっちから勝手なことを 言ってくる。まったく和樹の話しを聞いていない。

 

(レオン、千早、ここから逃げる よ)

 

念話で2人に呼びかける。

 

(わかった)

 

(・・・わかった・・・グス)

 

次の瞬間2人は屋上から消えた。 和樹も自分の身代わりを魔法で作ってこの場を離れる。

 

この日、授業はすべて休校になっ たらしい。

 

ちなみに屋上から逃げた和樹と千 早は1日デートをして、レオンのリクエストである昨日食べそこなった千早の料理を堪能した。

 

 

沙弓は和美からきっちりと掛け金 を貰いうれしそうな顔をしていたとか・・・

 

 

 

 

 

あとがき

満腹、満腹!!

どうもレオンです!

B組、暴れすぎです! でも、B 組らしいです!

 

 



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