第13話  曾孫騒動

 

 

門が開き和樹達は玄関に向かっ た。ここでも2人は驚きの連続である。紅尉と沙弓も始めて来たわけではないがやはり慣れないのだろう。周りを見回す。

 

「和樹さんあれには何が入ってい るんですか?」

 

夕菜が指を指したのは、大きな蔵 であった。

 

「ああ、あれには先祖の所縁のが 収められているんだよ。値段がつけられないような物も入ってるよ」

 

「それはぜひ、拝見してみたいも のだな・・・」

 

紅尉が蔵を恨めしそうに見る。

 

「ゲン爺に聞いてくださいそれ は・・・」

 

玄関に着き、源蔵の待っていると いう部屋を聞いて和樹達はその部屋に向かった。部屋に向かう途中なんだか和樹は妙な違和感を覚えた。なぜかすれ違う家のものが、『おめでとうございます』 と声をかけてくるのだ。

 

(何がそんなにおめでたいん だ?)

 

さらに千早にもみんな同じように 声をかけてくる。

 

「何かあったのかな? 千早、何 か聞いてる?」

 

「私は何も聞いてないけ ど・・・」

 

源蔵の部屋の前に着いた。

 

「和樹です。只今、帰りました」

 

襖の前で挨拶をする。源蔵は式森 家の当主である。いくら仲が良くても礼儀弁えるのが当たり前だ。

 

「入れ」

 

源蔵の返事を聞いて、襖を開け る。

 

「失礼します」

 

千早たちも和樹の後について入っ てくる。

 

次の瞬間、和樹以外の人はみんな 固まった。

 

「よくやった!! でかした ぞ!!!!!!!!! 和樹!!!!!!!!!!」

 

そう言いながらいきなり源蔵が和 樹に飛びついたのである。

 

だれも予想してなかった源蔵の行 動に、みんな唖然とした。

 

「よくやった、さすがわしの孫 じゃ、式森家の次期当主じゃ!!!!!!!!」

 

和樹の首に腕を絡めて、源蔵がな おも叫び続ける。

 

「よくやった ぞ!!!!!!!!!!!!」

 

(し、しぬ〜〜〜〜〜〜〜〜〜)

 

完璧に首がきまっている和樹は今 にも倒れそうである。だがその和樹の様子なんか露知らず。なお腕に力をこめる源蔵。

 

(か、か、わが、み、え、る 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜)

 

もはや和樹は自分が息をしている のかさえも分らなくなっていた。

 

「げ、ゲン爺!! 和樹君が死ん じゃう!!!!!!!!!!」

 

我に返った千早が源蔵の止めに入 る。

 

「すまんのー、もう嬉しくて堪ら んのじゃよ!!!」

 

喜ぶ源蔵にやっと放してもらえた 和樹は、泡を吹いていた・・・

 

「か、和樹君、生きてる??」

 

「ゆ、り、ばあちゃん、ひ、さ、 しぶりだねーー、いま、そっちに・・・・」

 

「だめぇぇーーーー! そっちに 行っちゃだめー!」

 

 

 

 

 

 

「か、かわの、むこうに、ゆり ば、あちゃん、がて、をふっていたのがみえた」

 

息も絶え絶えで答える和樹、実家 に帰っていきなり三途の川に足を突っ込んでしまっただけでなく、死んだ曾祖母にまで会ってしまった。

 

(マジで一瞬死んだ)

 

水を飲み、落ち着きを取り戻して から、和樹は源蔵に聞いた。

 

「いったい何がそんなにめでたい の、ゲン爺?」

 

自分が殺されそうになったくらい の喜びとはいったい何なのか、和樹はすごく気になった。いまだに千早以外のみんなは固まったままである。

 

だが、源蔵から出た言葉はもっと 驚く言葉だった。

 

「曾孫ができたというのに、喜ば んでいられるか!!!!」

 

「えっ!(×2)」

 

(誰の?)

 

「・・・・・・で、誰の子供なの その曾孫は?」

 

和樹と千早は、大して驚くことは なかった。

 

源蔵には和樹を含めて8人以上孫 がいるし、内5人は20を過ぎている。それに2人はとっくに結婚して子供がいたはずだ。

 

新たに曾孫ができただけでこんな に喜ぶことはないはずだ。

 

「何を言ってる、もちろんお前と 千早ちゃんの子供だ!」

 

 

 

「な、な にぃぃぃぃぃーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!(×7)」

 

 

 

「で、今何ヶ月なんじゃ? いつ 生まれるんじゃ? 今から待ち遠しいくてしょうがないんじゃ!」

 

和樹と千早は完全に固まってい る、他のみんなは自分の耳を疑った。レオンが固まっている和樹に話しかける。

 

「カズ! カズ!!」

 

反応なし! 試しに叩いてみる。

 

カン! カン! カカン!

 

「・・・・・・」

 

乾いたいい音がした。

 

「カズ!! カーーーーーーーー ズーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!」

 

レオンが大声を出して叫んだ。

 

ようやく和樹が気づく。

 

「ちょっとまってゲン爺! 誰が そんなこと言ったの!!??」

 

「何を言うんだ! お前が昨日電 話で言ってきたんじゃないか?」

 

「・・・いつ言った? そんなこ と!?」

 

「頼みたいことがあるといった じゃないか?」

 

「なんで、それが子供の話になる んだーーーーー!」

 

「惚けんでもいい。高校生なのに 子供ができてしまったから困ってわしに電話してきたんじゃろぅ? ニクイネー、この、この!!」

 

和樹の腕をつつきながら和樹をか らかう

「んなわけある かぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!」

 

式森家に和樹の声がこだました。 叫ぶ和樹を見てレオンはイザークを思い出した。

 

 

 

 

 

 

「と、言うわけだから修行を見て ほしいってわけ! わかった?」

 

ゲン爺にいきさつを説明し、なん とか誤解を解いた。この説明に、1時間以上も費やしてしまった。

 

「和樹君・・・・・ゲン爺聞いて ないわよ」

 

「えっ!」

 

ゲン爺を見るとブツブツと何かを 呟いていた。

 

「・・・曾孫が見れると思ったの に、楽しみにしていたのに、喜んでたのに・・・・・・・・」

 

「・・・・・・・・・・・・ゲン 爺!ゲン爺!!」

 

「・・・何じゃ馬鹿孫!」

 

「・・・曾孫の話は置いといて、 修行は見てくれるの?」

 

「何の話じゃ?」

 

「・・・・・・・・・・聞いてな かったわけだね・・・」

 

「曾孫・・・コウノト リ・・・・・・安産の神様・・」

 

「はぁ・・・重症だな、これ は・・・・・・」

 

(頼むから呆けないでね・・・)

 

先行きがすごく不安である。

 

 

 

 

 

 

夕食のころになりようやくショッ クから立ち直ってきた源蔵にもう一度修行の話をした。

 

「なるほど、それで帰って来たと いう訳か」

 

「そういういこと、決して子供が できたわけじゃない!」

 

「本当にできとらんのか?」

 

「できてない!」

 

「じゃ、作れ! 今すぐ作れ!」

 

「何でそうなる!」

 

和樹と千早の顔は真っ赤である。

 

「早くわしに曾孫を抱かせてくれ ぬか? わしの目が黒いうちに・・・」

 

「・・・ゲン爺は100までは絶 対に死なないと僕は思う・・・」

 

「千早ちゃんも早くわしの孫にな りたいだろに・・・」

 

「・・・今までも十分孫扱いして いると思うけど・・・」

 

「そうかの?」

 

「孫じゃない子に、孫よりお年玉 多く上げたり欲しい物買って上げたりしといて何を言うか!!!」

 

「普通じゃないか?」

 

「普通であってたまるか!! そ れも僕らが中学のころから曾孫の名前考えてる人がどこにいる!! 学校でうわさになりかけて大変だったんだからね!!!」

 

「で、どれがいいかきまった か!? 男の子なら『和矢(かずや)』『和源(かずよし)』『樹(たつき)』、女の子なら『和葉(かずは)』『紀早(きさき)』『千夏(ちな つ)』・・・・・」

 

「人の話しを聞 けーーーーーーー!!!!!!!」

 

イザーク並みに叫ぶ和樹。ストラ イクと言いながら飛び掛りそうである・・・

 

「和樹君! 落ち着いて!!」

 

千早が和樹を必死で止める。帰っ てきてから和樹は血圧上がりっぱなしである。(血管切れそう・・・)

 

そのころ、レオンと紅尉は料理に 夢中で全く騒ぎを聞いていなかった。2人の近くには皿の山ができていたりする。

 

夕菜と凛はただ一歩引いて見てい ることしかできなかった。

 

どうにも近寄りがたい雰囲気であ る。いや、めちゃくちゃ近寄りがた過ぎる。ましてや声などとてもじゃないが掛けられない。

 

そんな中、沙弓は1人「孫ラブ全 開ね・・・」と呟いて1人冷静でいた。

 

「修行は見てやるが修行をする必 要があるのか? 相手は誰じゃ?」

 

「神城家の人狼」

 

「・・・なるほどなぁ、確かに相 手が人狼じゃ今のお前では危ないの」

 

「やっぱり・・・」

 

自分でも分っていたことだが、源 蔵の言葉はショックであった。

 

「いつじゃ勝負は?」

 

「2、3週間後ということになっ てる」

 

「それじゃギリギリまで修行をし ていけ、それで何とかするしかあるまい」

 

「分ったお願いします」

 

「私のほうもお願いします」

 

「千早ちゃんもかい?」

 

「はい、でも私は門下生を相手に 考えています」

 

「なら任せなさい、神城家の剣な ら良く知っておるのでな」

 

どうやら修行は見てくれるらし い。和樹は安堵した。

 

「和樹ところであちらの2人は誰 じゃ?」

 

「ああ、宮間夕菜さんと神城凛 ちゃん。宮間さんは僕と同じクラスの生徒で、凛ちゃんは神城家の人だけど無理やり次期宗家にされるのが嫌なんだって」

 

「神城家の子かい、ということは 佐平の孫かな?」

 

「お爺様を知っているんです か?」

 

凛が驚いた様子で聞いてきた。

 

「佐平とは昔剣道の試合で試合し たことがあるんじゃよ。まあ、それくらいの関係だ」

 

「はぁ・・・」

 

「まあ君もここで修行するとい い、環境は整ってるからの」

 

「ありがとうございます」

 

源蔵に頭を下げた。

 

 

 

 

 

 

その日の夜

 

ガチャガチャ・・・

 

ある部屋で物音がしてた。そこの 部屋には影が1つ存在した。その影はいくつかの箱の中を覗いて、何かを探しているようであった。

 

ガチャガチャガチャ・・・

 

「・・・これだ・・・」

 

巻物らしきものを手に取り影はそ の部屋を静かに出て行った。

 

 

 

あとがき

レオンです・・・

ええ〜、ゲン爺・・・壊れていま す。他になんといっていいのか?

いつもは、しっかりした人なんだ けど・・・2人のこととなると人格変わっちゃうんだよね・・・ゲン爺は・・・

はたして影の正体とは・・・

次は神城家に行きます。はたして どうなることやら?

作者だけが知る・・・・・・

 

 



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