第20話
  生きる意味、そして終結

 

 

雷道に運ばれ駿司は道場の近くの 部屋に運ばれた。

 

「佐平さん、準備してほしい物が あるんですが用意してもらえますか?」

 

「何が必要何じゃ?」

 

「紙ありますか?」

 

和樹は紙を受け取ると、それに必 要なものを書き出した。

 

「とりあえず、これだけ用意して ください。後は僕が用意してきたものがありますからそれで何とかなります」

 

「・・・し、式森君・・・」

 

「式森君、どういうことなん だ?」

 

駿司が和樹に聞こうとするのを止 め、佐平が聞いてきた。

 

「後で話します。早くそろえてく ださい」

 

「わかった。これを急いで用意し てくれ!」

 

雷道は紙を受け取り部屋から急い で出て行った。

 

「とりあえず、ヒーリングで傷だ けでも治します」

 

「・・・・・・式森君・・・いつ から気づいていたんだ?」

 

「・・・僕の部屋に来たときで す。あなたが帰るときに体が少しふらついたんでまさかと思って準備してきたんです」

 

「なぜ・・・そのときに何も言わ なかったんだい」

 

「邪魔したくなかった・・・邪魔 しちゃいけないと思った・・・それが理由です」

 

和樹がそう言うと誰も何も言わな くなった。そこに千早が入ってきた。腕の中には、元に戻ったレオンが抱かれている。

 

「千早、レオンの状態は?」

 

「大丈夫、修行の疲れも出たみた いだけど、今は眠っているだけよ。」

 

(無理させちゃったから な・・・)

 

「ありがとう。それじゃこっちを 手伝ってくれないか?」

 

「わかったわ」

 

そこに雷道が戻ってきた。雷道か ら荷物を受け取ると和樹は準備を始め、千早も手伝う。

 

まず、長い紐を星型に置き、真ん 中に駿司を寝かせる。次に半紙を人形に斬り、星の端4箇所に1枚ずつ置く。

 

まるで陰陽師の五行相剋のようで ある。

 

「みんなは少し離れてください」

 

みんな和樹の言うとおりにする。

 

和樹はそれを確認すると、駿司に 薬を飲ませる。そして右手は人差し指と中指を立て口に当てる。左手には扇子を持ち駿司に向けて仰ぎ始め、それと同時に呪文を唱え始める。

 

「オン カヤキリバウンウンバッ タ ソワカ オン カヤキリバウンウンバッタ ソワカ」

 

和樹が呪文を唱え始めると人型が 和樹の姿になり同じように呪文を唱え始める。さらに、扇子から光が出てその光が駿司を包みだし、星型からも光が上り始める。

 

「オン カヤキリバウンウンバッ タ ソワカ オン カヤキリバウンウンバッタ ソワカ オン カヤキリバウンウンバッタ ソワカ オン カヤキリバウンウンバッタ ソワ カ・・・・・・・・・・・ロウコクリャクドウ 」

 

やがて光が駿司の体にすべて入っ ていき光が収まる、すべて入ったと確認すると和樹は扇子をたたみしゃがみこむ。

 

「フウインギショ・・・神城駿 司」

 

駿司の名を呟くと右手を口からは なし『呪』の文字を書く。それと同時に駿司の体は光に包まれる、しばらくすると光は収まり和樹の姿になっていた人形がもとの紙に戻る。

 

「・・・これで駿司さんの寿命は 60年以上伸びたはずです」

 

駿司は起き上がり手を握ったり広 げたりする。

 

「・・・確かに体にあった違和感 がなくなっている・・・」

 

駿司は信じられないという感じ だ。

 

「・・・式森君、君は大丈夫なの か!?」

 

「僕は平気ですよ。かなり疲れま したけどね」

 

駿司は和樹の寿命が減ったりしな いのかと聞いたが、それも無いと和樹は答えた。

 

「佐平さん話があるんですが、少 しいいですか?」

 

「わかった」

 

和樹は佐平に声をかけ部屋を出て 行った。

 

「駿司・・・体は大丈夫なの か?」

 

「ああ、今までは体に違和感が あったが、すべて消えている。式森君には驚かされたよ」

 

千早は夕菜の肩に手をかけレオン を抱えて部屋を出る。

 

「2人だけで話しをさせて上げま しょう。私たちがいては話難いだろうし・・・」

 

「そうですね」

 

千早と夕菜は部屋の中にいる2人 の間に壁がなくなってよかったと心から思った。

 

 

 

 

 

 

そのころ和樹と佐平は別の部屋に 居た。

 

「式森君、君はいったい・・・」

 

「僕は式森和樹です。ただ体に強 力な魔力を秘めている。ただそれだけです。さっきも魔力を自分の体に慣れさせる過程で覚えた技のひとつです」

 

「式森君、まさか君は・・・源蔵 殿の孫なのか?」

 

「・・・はい、そうです・・・あ なたのことは実家に帰ったときに聞きました。源氏爺とゲン爺に」

 

「・・・無礼なことをした な・・・すまなかった。わしは源氏殿と源蔵殿には昔世話になってなぁ、今もそうだが昔もよく助けられた」

 

「ゲン爺たちもそんなこと言って いましたよ。ただ・・・僕を神城家に入れようとしていることを話したら自分たちも行くって刀片手に言っていましたよ・・・」

 

「・・・・・・し、式森君。あと で君に2人に持って行ってほしいものがあるんだが頼めるかな・・・いやぜひ持っていってください」

 

佐平は体中から汗を流し、顔を青 くし、今にも倒れるんではといった感じで和樹に頼み込む。

 

「えぇ、いいですよ。2人は僕が 説得しときますんで安心してください」

 

「駿司のことといい、式森君、本 当にありがとう」

 

佐平は和樹に深々と頭を下げた。

 

「頭を上げてください。僕は自分 にできること自分のやるべきことをしただけです。あのまま駿司さんと凛ちゃんをしとくことができなかった。2人が昔は仲が良かったことは始めて会ったとき でもわかりましたよ。でもお互いに素直になれなくている。だから僕は2人にこのままでいてほしくなかった。だから僕は自分にできることで2人を仲直りさせ たかったんです」

 

和樹が実家に帰った真の理由、そ れは駿司の寿命を延ばすための術を確認するためである。

 

源蔵は和樹の力は駿司と同等と いったが、それは間違いであった。和樹は源蔵の想像を超えた力を手にしていた。それはレオンも同じである。

 

駿司と同等と言っていたのはレオ ンと千早以外に悟られないようにするためだ。

 

すべては駿司と凛のためにうった 大芝居であったのである。

 

「本当にありがとう。至らないと ころがあると思うがゆっくりしていってほしい」

 

「ありがとうございます(・・・ でも気は休まらないだろうな・・・)」

 

 

 

 

 

 

その夜は、佐平のはからいによっ て宴会が行われた。駿司は凛と話ができたのか仲のよい兄弟のように見えた。

 

ちなみに和樹は佐平の近くに座 り、また千早が和樹の隣に座っていたために夕菜が暴走しそうになったのは言うまでもない。

 

次の日和樹たちは九州の名所をい くつか回って観光を楽しんだ。帰りの電車の中では夕菜対策の睡眠薬入りジュースを飲まし暴走を防ぎ、和樹は駿司だけでなく、乗客の命も救うことになった。

 

 

 

おまけ

 

神城家を出ようとしたとき和樹は 駿司と雷道に声をかけた。2人を連れて千早たちから離れたところで2人と顔を合わせた。少なくとも和樹は友好的な顔はしていなかった。

 

「駿司さ〜ん、僕に始めて会った ときに千早を投げ飛ばしていましたよね」

 

話をし始めたころから・・・い や、ここに来る途中からすでに、和樹の右手には炎が燃え上がっていた。

 

「雷道さ〜ん、千早に怪我をさし ただけじゃなく、ごみのように扱っていましたよねぇ〜〜〜」

 

地の底から聞こえてくるような 声・・・それをさらに不気味にしたような声で和樹は2人に淡々としゃべる。

 

2人は和樹に呼び止められた理由 が分かった。だが、分かったときにはもう遅かった。目の前の和樹は炎をまとい鬼のような形相で立っている。逃げたくても足が竦んでしまい一歩も動くことが できない。

 

駿司は思った。

 

あのまま、死んでいたほうがよ かったのではと・・・・・・下手したら今ここで自分は死ぬのではと・・・・・・もしかしたら、このために自分は寿命を延ばされたのではないかと・・・

 

雷道は思った。

 

自分はとんでもない人を怒らせて しまったと・・・・・・調子に乗ってとんでもない事をしたと・・・あのときに戻って自分で自分を止められたらと・・・・・・できるなら、今ここで自分で自 害したほうが楽なのではと・・・

 

「覚悟はいいですか?」

 

首を激しく横に振る。だが、運命 は決まっていたのであろう。和樹は両手を天にかざした。その姿は大魔神に見えたと、虫の息で生き残った2人は語った。

 

「天誅!」

 

神城家の近くで核爆発並みの火柱 が立ち上がり、巨大なきのこ雲が九州地方全てで見ることができたらしい。

 

 

 

 

 

あとがき

レオンです!

ついに神城家編完結しました。駿 司はカズのおかげで寿命が延びいき続けることになりました。

(一応2人共死んでないと思いま す・・・多分・・・ギリギリで・・・望み薄いけど・・・・)

とりあえず、死なないでよかった です。作者が駿司には本家のまぶらほと違って生き続けてほしいという考えがあったのでこうなりました。この後の話で駿司が出てくるときがあるかはわかりま せん。

次はベヒーモス編になります。次 も読んでね!

 



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