第27話 思い

 

 

『グゥオオオオオオオオオオオ ン!!』

 

「チッ!」

 

ドゴォン!!

 

キメラとは比べ物にならない速さ でケルベロスが和樹に襲い掛かる。他の召喚獣とも比べ物にならないパワーとスピード、そして知識を持っている。和樹が今まであった召喚獣の中でここまでの 強さを持つのは1体だけだ。

 

(くそぉー、なんてパワーとス ピードだ!)

 

さすがの和樹も避けるだけで精一 杯である、ましてや受け止めたら腕が確実に壊れる。和樹は大きく後ろに下がり瞬炎をケルベロスに放つ。だがケルベロスの頭の1つから光の弾が放たれると瞬 炎を貫き抜け和樹を襲った。

 

(ナッ!)

 

ドォン!!

 

和樹が驚く暇もなく光の弾は和樹 に命中した。辺りに煙が立ち込める。そのとき煙の中から和樹が出てきた。

 

肩のところから血を流し、擦り傷 だらけだが、ギリギリであの弾を避けていたのだ。反射的の避けたといっていい、体が自然に直撃を避けたのだ。今までの修行の賜物である。

 

「ハァ!」

 

キィィィン!!! 

 

刀とケルベロスの爪が激しくぶつ かり合い火花が散る。だが、和樹の黒龍刀をケルベロスは簡単に爪で受け止めていた。

 

ギン! ガン! ギィィン!!

 

和樹の黒龍刀がケルベロスを襲う が全て爪で弾かれてしまう。たとえ皮膚に当たってもケルベロスはまるで気にしていない。和樹の斬撃はキメラを相手にしていたときよりも数倍速い速度であ る。だがケルベロスの動きはその上をいっていた。

 

ドゴォン!! ドカァァン!!!

 

和樹が黒龍刀を振り下ろした瞬間 ケルベロスはその剣を避けるとそのまま和樹を容赦なく地面に叩きつけ続けざまに壁に叩きつけるように投げた。

 

「ガハッ!!!」

 

和樹が口から血を吐き、壁から地 面に落ちる。だが、ケルベロスは攻撃を休めることなくさきほどとは違う頭のケルベロスが口から炎の弾を放った。和樹はそれを横に転がりなんとか避けたが、 衝撃を受けて吹き飛ばされてしまった。

 

「和樹、私も戦う」

 

レオンが結界を千早に頼み出てこ ようとしていた。和樹1人では無理だと判断した。いや、無理だということは最初から分かっていたのかもしれない。

 

だが、レオンが結界から出ようと した瞬間、和樹が声を張り上げた。

 

「来るなぁ!!!」

 

立ち上がりケルベロスに向かいな がら和樹はレオンを止めた。

 

「馬鹿を言うなぁ! 今のまま じゃ負けるぞ!」

 

今の和樹では勝てない。だが自分 と和樹でなら何とかできるとレオンは考えていた。自分たち2人が全力で戦えば何とかできるかもしれないと・・・・・・

 

「それでもだめだ」

 

ケルベロスの攻撃をギリギリで避 けながら和樹はレオンを止める。確かにレオンと2人で戦えば勝てるかもしれない。だが、なぜだか今は1人で戦わなくてはいけないような・・・そんな気がし ていた。今、誰かの手を借りてはいけないと・・・・・・何かが手に届きそうな感覚と共に・・・・・・

 

「ハァッ!」

 

ガキッン!

 

ケルベロスに持てる力の限りの力 で刀を振り下ろす。だが、まだケルベロスは余力を残してその斬撃を止める。黒龍刀には炎を纏いさらに強力になっているにもかかわらず。

 

「ウアアアアア アァァァーーーーーー!!!」

 

和樹は炎を黒龍刀に力の限り纏わ せた。そして、ケルベロスに向かって自分の限界の速さで刀を振るった。

 

バキャッ! ザシュッ!

 

次の瞬間、ケルベロスの爪を砕 き、さらに、胴体に和樹は黒龍刀を振り下ろした。

 

「ギャアアア アァァァァァ!!!」

 

ケルベロスの体から血が噴出し、 爪を折られたケルベロスが唸り声を上げた。

 

「そう簡単にやられて溜まるか よ」

 

和樹はケルベロスに向かい再び構 えをとる。

 

だが和樹の目には再び信じられな い光景が映し出された。和樹の攻撃を受けたところが光りだすとそのまま再生したのである。

 

「再生能力・・・・・・」

 

キメラのときも再生能力があった のを考えると、それは当たり前のことだった。だが、あの攻撃でやっと傷を負わすことができたのにその傷が再生されてしまったショックは大きかった。和樹も 最初は傷を回復させていたが今は戦いの方に力を全て回しているので体中傷だらけである。

 

「くそっ! 行け黒龍刀!!!」

 

ものすごいスピードで黒龍刀がケ ルベロスに襲い掛かるが、ケルベロスは黒龍刀を前脚で弾くとそのまま地面に押さえつけてしまった。

 

「馬鹿なぁっ!」

 

片方ならともかくまさか2本同時 に止められるとは和樹は思っても見なかった。黒龍刀が逃れようと暴れる。

 

「ウアアアアアアア アァァァァァァーーーーーーーーー!!!」

 

さらに和樹は炎を纏わせてケルベ ロスから逃れさせようとするが、そのまま黒龍刀は和樹の手を離れていつもの黒い短刀に戻ってしまい、短刀はケルベロスに蹴られて和樹から遠く離れたところ に転がった。

 

(しまった!)

 

和樹は急いで黒刀を取りに走っ た。和樹の技は魔法具を使ったものが半分近く占めている。魔法具なしの技ももちろん学んでいるが、ケルベロス相手に全力で戦えなくなってしまったのであ る。魔法具を手放すということは和樹にとって、とてつもない失態だった。

 

「グアアアアアァァーー!!」

 

その和樹に容赦なくケルベロスは 鋭い爪を振り下ろした。和樹の体から血が噴出す。さらに力任せに和樹を地面に叩きつけた。

 

「ガアッ!」

 

苦痛に顔をゆがめる和樹。だが、 すぐにケルベロスから離れて間合いを取る。体中が悲鳴を上げているが、そんなことを言っていたら確実にケルベロスの攻撃を受けてしまう。悔しいことだがケ ルベロスの攻撃1つでも受けたら致命傷になりかねない大きなダメージを負ってしまうのだ。

 

(参ったなぁ・・・・・・)

 

魔法具はケルベロスの後ろ、さら に自分の体はボロボロで治癒魔法をかけたくてもそんな暇をケルベロス相手に得る時間はない。

 

(肉弾戦でどうにかできる相手 じゃない・・・かといってあの技を使いこなせるかもわからない、下手したら魔力が暴走する・・・・・・)

 

魔力の暴走・・・・・・それだけ は避けなければならない。暴走したらとんでもないことになる。最悪の場合ここにいる人全員が死ぬ・・・それは絶対にあってはならない。何とか対策を考え る、和樹。だがケルベロスはそんなのお構い無しとばかりに和樹に近づいてくる。

 

メキ! ミシ! メキョッ!

 

「!!?」

 

ケルベロスの右前足が大きくな り、鋭かった爪がさらに大きくなる。

 

「グアアアア アァァァァーーーーー!!」

 

ドゴァ!!

 

巨大な爪が和樹に向かって振り下 ろされる。今までの数倍、それ以上のスピードとパワーが地面に巨大なクレーターを作り上げた。

 

和樹だけでなくそれを見た誰もが 恐怖を感じた。あれをくらったりでもしたら跡形も残らないだろう。

 

(くそっ! 悩んでいてもどうし ようもない)

 

「瞬炎!」

 

和樹が瞬炎を放つが巨大な爪に簡 単にかき消されてしまう。さらにケルベロスは巨大な炎の弾と光の弾を和樹の瞬炎の倍の数も出現させた。

 

「く そぉぉぉぉぉぉぉぉーーーーーーーーー!!」

 

和樹も再び瞬炎の弾を出現させ る。もてる限りの力を出しケルベロスに対抗するつもりである。あれだけの数を避けきるのはまず不可能、それなら迎え撃つしかない。

 

お互いが同時に技を放った。衝撃 波と弾と弾とがぶつかり合い光り輝く。だが、それが和樹の判断を一瞬遅らせた。

 

ケルベロスは技を放つ同時に全力 で和樹に向かって突っ込んできていたのだ。

 

光の中を進むケルベロスを和樹は 気づいていなかった。いや、あの中を通ってくるとは考えもしなかったのだ。それをケルベロスができたのは、鉄よりも硬い鎧である皮膚をケルベロスが纏って いたからだ。普通の生き物だったら一瞬にして蒸発してしまうような熱の中をケルベロスは和樹に向かって、一直線に突き進んだ。

 

和樹がケルベロスの存在に気づい たのはケルベロスが和樹の目の前に来たときだった。

 

「しまった!!」

 

ドゴッ!!

 

和樹は一番ミスをしてはいけない ときに最大のミスをしてしまった。避けることが出来ず和樹はケルベロスの体当たりをもろに体に受けそのまま壁に凄まじい勢いで突っ込んだ。ケルベロスと壁 に挟まれる。ケルベロスが和樹から離れると同時におびただしい血が和樹から流れ出し、血の池ができる。

 

和樹はそのまま意識を失っ た・・・・・・

 

 

 

 

 

 

「和樹さん!!」

 

「和樹!!」

 

「式森!!」

 

「式森君!!」

 

「和樹!!」

 

夕菜、玖里子、凛、沙弓、レオン がケルベロスに体当たりをされて動かなくなった和樹に声を上げる。

 

だが和樹はピクリとも動かない。 だが容赦なくケルベロスは和樹に止めを刺そうとしているのか再び前脚が光り輝きだす。

 

「貴様ぁーーーー!!!!!!」

 

我慢の限界を超えたレオンが結界 をといてケルベロスに斬りかかった。青龍刀とケルベロスの爪がぶつかり合い火花が散る。レオンは瞬時にケルベロスから離れ間合いを取る。

 

「切ないな・・・お前では私の相 手になどならないとわかっているはずなのに私に向かってくるなんて・・・」

 

「・・・・・・やはり、お前も しゃべれるのか」

 

ケルベロスがレオンに向かって言 葉を発した。レオンはそれに驚いた様子もなく言葉を返す。千早たちはそれを驚愕の表情で見ている。

 

「ケルベロスをキメラやベヒーモ スと一緒に見ないでほしいな。ケルベロスは人間並みのIQを・・・いや人間以上のIQを持っているんだからな。お前もそうだろ・・・・・・」

 

「・・・・・・」

 

ケルベロスの言葉にレオンは言葉 を濁す。

 

「その人間の姿・・・・・・仮の 姿だな。俺には見えるぞ、お前の本当の姿が・・・・・・」

 

「黙れ・・・」

 

レオンの周りに青い炎が渦巻き始 める。その炎は次第に龍の形へと姿を形成し始める。駿司を倒した、青龍の姿へと・・・・・・

 

だがケルベロスは気にした様子も なく言葉を続ける。

 

「そう、お前の本当の姿それ は・・・」

 

「黙れと言っているん だぁーーーーーーーー!!!」

 

青龍がケルベロスへと襲い掛かり ケルベロスを飲み込んだ。青い炎にケルベロスが包まれる。

 

「私は、式森和樹の式神のレオン だ」

 

迷いなどレオンにはない。あの 日、和樹の式神となることを自分は決心した。あのころの和樹はまだ弱かった。はっきり言って、倒そうと思ったら一撃で倒せた。だが自分に臆せずに向かって きた。その和樹に自分は1つの光を見たのだ。そして和樹は自分を式神とする条件をクリアーした。そして自分は和樹の式神となり和樹を支えることを心に誓っ た。そして今もその判断は間違っていないと自信を持っている。

 

「あまい」

 

ゴウ!

 

青龍が消えケルベロスが姿を現 す。

 

「なぜ、あの人間に付く。本気を 出せばお前はあの人間に勝てるだろ」

 

「私は和樹を支えたいだけだ。初 めて和樹に会ったとき、そう感じた。うまく言えないが・・・・・・」

 

「落ちたものだな、最強と言われ たお前も」

 

不敵な笑みを浮かべるケルベロ ス。

 

「それでも・・・」

 

再びレオンはケルベロスに斬りか かる。

 

「私は和樹を支え続ける」

 

「ならお前の決意を見せてみろ」

 

光り輝く爪がレオンに下ろされ る。さらに追い討ちをかけるように炎の弾が放たれる。

 

レオンはケルベロスの爪を逃れ、 炎の弾に青い炎の弾をぶつけた。

 

「朱雀」

 

レオンを包むように巨大な火の鳥 が現れる。フェニックス、不死鳥とも言われる炎の鳥。青龍同様、四神の1つである。レオンはこの四神を操ることができるのだ。

 

「燃え尽きろ」

 

ケルベロスに向けレオンは朱雀を 放った。

 

朱雀はそのままケルベロスを飲み 込んだ。

 

 

 

 

 

 

レオンも戦いを見ていた千早たち は朱雀の姿に目を奪われていた。

 

「す、すごい」

 

「綺麗・・・・・・」

 

レオンを包む炎の鳥、青龍よりも 力強い赤く輝く炎の鳥が自分たちの目の前にいる。

 

そしてレオンの放った朱雀はケル ベロスを炎に包んだ。

 

「や、やった」

 

「レオンが勝った」

 

レオンがケルベロスを倒したこと に喜ぶ夕菜たち、他の生徒も喜びの声を上げていた。

 

だが千早と千早の側にいた沙弓、 紅尉だけは喜びに浸っていなかった。

 

「千早」

 

「山瀬君」

 

沙弓と紅尉は千早を見て不安が確 信へと変わった。千早は震えていた。両肩を抱えて膝を突き何かに怯えるように和樹の名前をつぶやいていた。

 

「だめ、勝てない・・・・・・和 樹君、レオンを助けて・・・」

 

青龍と朱雀を使い、膝を突いてい るレオンを千早は見る。レオンの表情も険しい目をしていた。

 

ゴゥ!!!

 

次の瞬間、朱雀が掻き消されその 中からケルベロスが現れた。

 

 

 

 

 

 

朱雀を放ちレオンはその場に膝を 突く。

 

(くそ、2つ連続で出すのは体に 堪える・・・・・・)

 

青龍と朱雀は四神の中でも攻撃力 がかなり強い。特に朱雀の力は四神の中でもトップだ。その2つを連続で使ったのだ。体に負担がかからないほうがおかしい。

 

レオンの頭の中ではケルベロスの 言葉が流れていた。

 

『お前の本当の姿それは・・・』 『落ちたものだな、最強と言われたお前も』

 

確かに今の姿、それは本当の真の 自分ではない。真の自分の姿であったら青龍と朱雀を使ってもここまで体が疲労することはない。今の姿では全力で戦うことができない。それを知っているのは 和樹と千早と源蔵と源氏だけである。

 

(最強か・・・・・・)

 

最強、確かに最強だったと思う。 目覚めたときもそう思った。だが和樹のうちに秘めた強さを自分は感じた。自分を超える力を持った和樹に自分は付いていこうと考えたのだ。

 

(私は間違っていない)

 

レオンは再び青龍刀を構える。そ の瞬間朱雀が掻き消されケルベロスが現れた。

 

「さすがと言っておこうか」

 

無傷で現れたケルベロスはレオン に話しかけた。

 

「その姿では攻撃力も落ちるよ う・・・」

 

「朱雀」

 

再びレオンは朱雀をケルベロスに 放った。

 

「一回でだめなら何度でも喰らわ してやる」

 

「青龍、朱雀」

 

ドゴン!

 

青龍と朱雀がケルベロスに直撃す る。ケルベロスは避けるそぶりも見せなかった。

 

(真正面から避けるそぶりも見せ なかった)

 

今の攻撃なら無事ではすまないは ずである。朱雀、青龍、朱雀の3連続である。和樹でも今の攻撃を受けたらただではすまない。

 

ガラ、バキ!

 

「何度攻撃しても無駄だ。今の攻 撃力では致命傷にはならない」

 

さすがに体に傷が付いたようだが それも瞬く間に回復していく。

 

「そのままでいいのか? お前の 本当の姿、本当の力を見せろ」

 

「・・・・・・」

 

「もう一度聞く、そのままでいい のか?」

 

レオンはケルベロスの問いに無言 で答える。

 

「なら、もう消えろ」

 

朱雀と青龍を連続で使ったことで 体にかなりその付けがきているレオンにケルベロスが襲い掛かる。

 

額に汗を浮かべながらレオンはケ ルベロスの攻撃を避ける。だが体が思うように動かない。ケルベロスと戦う前にもキメラベヒーモスと戦い。精神的、体力的にも疲れる煉破反衝壁を使っていた のだ。人間なら普通の生活など到底できない状態になっているほどである。

 

そんなレオンにケルベロスは容赦 なく炎の弾を放つ。レオンはそれを避けてケルベロスから離れようとするがすばやい動きでケルベロスがレオンの前に現れる。

 

げん・・・

 

四神の中で一番防御力のある玄武 を出そうとしたがそれだけの力は既にレオンにはなかった。

 

振り下ろされた爪をレオンは避け ることができず攻撃をもろに受けてしまった。

 

「グァァーーー!!!」

 

ドゴォーーーーン!!!!

 

そのままレオンは壁に叩きつけら れ煙に包まれる。

 

「・・・和樹・・・」

 

煙が晴れてレオンが現れる。だが 体中から血を流し折れた左腕は力なく垂れている。それでもまだ戦うつもりでいたが体はピクリとも動かなかった。動かせなかった。

 

ケルベロスがレオンに向かって声 をかけた。

 

「お前の決意もここまでだ。主人 の最後でも見てるんだな」

 

「や・・めろ・・・和樹を・・・ 殺さ・・・せない」

 

「止めてみろよ!」

 

ケルベロスはレオンの言葉など聞 かなかったかのように血に染まり和樹を見る。

 

「人間にしては、お前はよくやっ たよ」

 

次の瞬間ケルベロスは凄まじい勢 いで和樹に飛び掛った。

 

「だが、死 ねぇぇぇーーーーー!!!」

 

誰もが和樹が爪で粉々にされると 思った。もう誰もケルベロスをとめることができないと・・・

 

「和樹君、い やぁぁぁぁーーーーーー!!!」

 

千早の叫び声も空しく和樹に今ま で出一番強いケルベロスの光り輝く爪が襲い掛かり和樹の体を貫いた。

 

ド ゴォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!

 

そのまま当たりは煙に包まれ何も 見えなくなった。

 

 

 

 

「・・・・ここは・・・」

 

和樹は自分がどこにいるのか分か らなかった。今まだケルベロスと戦っていいたはずなのに・・・・・・和樹に分かるのはここがどこかの原っぱだということだ。

 

「夢・・・」

 

辺りを見回してみても何もない。 一面が草に覆われていた。

 

和樹が歩き出そうとするといきな り空間がゆがんだ。

 

「な、なんだ!?」

 

ゆがみが収まると和樹は見慣れた ところにいた。

 

「ここは、公園・・・」

 

和樹がいたのは子供のころ遊んだ 公園だった。千早と2人で数え切れないほど遊んだ。

 

『ご、ごめん千早ちゃん、遅れ て』

 

『遅いよーー! 約束したのに』

 

和樹が声のするほうを見るとそこ には子供のころの自分と千早がいた。

 

「何だ、これは・・・」

 

『和樹君がんばって!』

 

『カズ!』

 

後ろを振り返ると無限の魔力に目 覚めて間もないころの自分が修行している風景がうつっていた。

 

『沙弓! 彼が式森和樹君だよ』

 

『杜崎沙弓よ。よろしくね! 式 森君』

 

「・・・杜崎さん・・・・・・」

 

『紅尉晴明だ。よろしく、式森 君』

 

「・・・・・・走馬灯ってやつ か?」

 

『僕は神城駿司・・・凛の まぁ・・・保護者みたいな物かな』

 

『わしのことを知っておるの か?』

 

『駿司のことといい、式森君本当 にありがとう』

 

「僕はこのまま死ぬのか な・・・?」

 

(前にも見たことがあったか な・・・)

 

『和樹!!! しましょ う!!!!』

 

『この場で死ね、式森和樹!!』

 

『私、宮間夕菜と申します。葵学 園に転校してきました』

 

「僕は・・・」

 

『和樹や辛くてもがんばるん じゃ!』

 

『お前はまだまだ強くなる』

 

「ゲン爺・・・源氏爺・・・」

 

『和樹君!』

 

和樹が前を見るとそこには千早が 立っていた。

 

「千早・・・」

 

『大丈夫だよ! 和樹君なら何 だってできる。最初はできなくても私ができるようになるまで一緒にいてあげる!! だから諦めないで!!!』

 

「僕なら・・・できる・・・」

 

修行中挫けそうになったとき何度 も千早にそう言われた。そして本当に千早は一緒にいてくれた。それは今でも一緒である。

 

『強い心は、どんな強い力にも負 けない。ケルベロスを止められるのは和樹君しかいない』

 

「千早・・・」

 

『和樹君は負けない!!! 私は 信じてるから――――』

 

「僕は・・・・・・あきらめな い」

 

和樹から迷いが消え、内に秘めら れていた力が解放される。

 

和樹の中で新たな力・・・世界に 1人しか持つ者のいない力が覚醒した。

 

 

 

 

あとがき

いろんな意味で参ります。

1、2、3、チャ ラァァーーーーーーン! レオンで〜す!

こん平さん早く復帰しないかなぁ 〜〜〜

雑談はこの辺にしときます。ケル ベロス圧倒的強さです。カズピンチ!

僕もボロボロです。はたしてどう なるのか?

カズは新たな力に目覚めるの か!?

次回ついに決着、決意の炎・・・ 放て、和樹!

 



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