第28話 黒龍波

 

 

ド ゴォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!

 

辺りに煙が充満して回りが見えな くなる。

 

「和樹さーーーーーーん!!!」

 

「式森!!」

 

周りも見ても声しかしない。だが 次第に煙が晴れてきて周りが見えるようになってくる。

 

「ゴホッ! ゴホッ!」

 

「和樹は!?」

 

最初にケルベロスの姿が見え始め た。ケルベロスは和樹に襲い掛かった体勢のままで止まっていた。

 

「馬鹿な・・・・・・」

 

ケルベロスが驚きの声を上げる。 レオンも千早も夕菜達もこの場にいた誰もが自分の目に飛び込んできたものに驚いた。

 

「・・・僕はここで殺られるわけ にはいかないんだよね」

 

(片手だけで今の攻撃を止めたの か・・・そんな力が人間にあるわけ・・・)

 

和樹が生きていた。それどころか 片手でケルベロスの爪を止めていた。

 

「和樹さん!!!!」

 

「式森!!!!」

 

「式森君!!!!」

 

「和樹!!!」

 

「カズ!!!」

 

「和樹君!!!!!!」

 

和樹の生きていたことに千早たち が喚起の声を上げる。千早は目から涙を流して和樹を見ている。

 

「僕は・・・こんなところで負け るわけにはいかないんだよ!!!!」

 

ゴウ!

 

和樹の腕を黒い炎が包み込む。

 

「ウアアア アァァァァァァァーーーーー!」

 

ドカァァン!!!!!

 

次の瞬間ケルベロスの体が宙に浮 いた。和樹がケルベロスを殴りつけたのだ。素手で・・・

 

「・・・なぜだ!! なぜお前は 立っていられるんだ!!! 私の体当たりを受けた体で立ち上がれるわけがない!!!! ましては私を殴り飛ばすなど人間にできるわけがない!!!!」

 

「僕だって何で立っていられるの か分からない・・・でも、何でだか立ち上がれるんだよな・・・けど、余裕がないのは事実だ・・・だから、次の攻撃に全てをかける。僕の今出せるだけの力の 全てを・・・」

 

ゴオォォォーーーーー!!!!

 

「今その力覚醒せよ、黒炎」

 

和樹の体を黒い炎が包み込む。そ の炎に共鳴するかのように空が黒い雲に覆われた。

 

「!!!」

 

(頼む黒炎・・・僕に力を貸して くれ・・・僕の生命を出し尽くしていい・・・)

 

黒い炎は和樹が魔力を使いこなせ るようになったその日に手にした最強の炎。

その炎は全てを燃やし、全ての魔 法攻撃を跳ね返す。歴史上この炎を使えた者は誰1人としていない。無限の魔力を持つ和樹が手に入れた和樹だけが使える、和樹だけにしか使えない炎。

だが、その和樹でさえ黒い炎は今 まで一度も使ったことがない。いや、使うことができなかったのだ。あまりの強さに和樹自身、制御できるまでの魔力を使いこなすのにかなりの時間がかかっ た。今の和樹でさえギリギリで使っている。ゆえに和樹が黒い炎を使えることは今まで誰も知らないことであった。和樹も誰にもそのことを話さなかった。

 

「くあっ!」

 

和樹の腕に切り傷が付きそこから 血が噴出す。体中に自分の限界を超えた力がゆきわたり傷口から血が噴出す。

 

「必ず・・・コントロールしてみ せる」

 

和樹は黒炎を1つの形に変えてい く。黒龍へと・・・・・・

 

ケルベロスは目の前の現実が信じ られなかった。

 

(何なんだ、あの人間は・・・な ぜあんな力を持っているんだ・・・)

 

和樹からほとばしる力・・・その 力は自分と同等いやそれ以上の力であった。

 

「なら、私の力の全てをお前にぶ つけてやる! そしてお前を食らってやる!!!! 完全体だ!!!!」

 

ケルベロスが叫ぶと体が変化を始 めた。体が今の倍・・・いやそれ以上に大きくなり光り輝き始める。

 

メキメキ!!!

 

メギ!!!

 

ガガガ!!!

 

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!!!

 

ケルベロスの体が全て光に包ま れ、凄まじい威圧感が和樹を襲う。

 

「全員体育館から外に出ろ! レ オンと千早、いや、全員が全力で結界を張るんだ。急げ!!!」

 

和樹に言われ全員が外に飛び出 す。そして結界を張るために力を出す。

 

そんな中、和樹は完全体へとなったケルベロスを見る。

 

(あれが、ケルベロスの完全 体・・・だが負けるわけにはいかない・・・絶対に!!!)

 

和樹は黒龍波を放つために構えを とる、だが体がふらついてバランスが取れない。

 

(くそ・・・これじゃ負け る・・・!?)

 

和樹が何かに支えられるような感 覚を覚える。横を見るとそこには光に包まれた自分の一番大事な人がいた。

 

(千早・・・)

 

和樹を見て千早がうなずく。神が 見せた幻想かもしれないが、2人の間に言葉はいらなかった。

 

(・・・ありがとう・・・)

 

「「いくぞ!!!!!」」

 

「グォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーー!!!!!!」

 

「黒龍 波ぁぁぁっっっっっーーー!!!!!」

 

和樹から放たれた巨大な黒炎の龍 と光り輝くケルベロスが激しくぶつかり合う。

 

ガガガガガガガガガガガガガガ ガ!!!!!!!!

 

(負けられない・・・)

 

「負けるわけには・・・いかない んだぁぁぁぁーーーーーーーーー!!!!!!」

 

黒龍が光に包まれたケルベロスを 押し返えした。

 

「ナッ!  何ィィィーーーーーー!!!!????」

 

ド ゴォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーーーーーーーン!!!!!

 

2人が光に包まれた瞬間、大きな 爆発が起きた。

 

 

 

 

 

 

「クッ!!!」

 

ガレキの中から誰かが出てきた。 すでに体育館の面影などどこにもない。

 

「ハァァァッ!!!」

 

ドゴン!!

 

ガレキが吹き飛ぶとその下にはレ オン、千早、夕菜、凛、玖里子、沙弓、紅尉を始めに学校の生徒が出てきた。

 

どうやら、レオンを回復させ、レ オンを中心に結界を張っていたようである。

 

「和樹は!!??」

 

「式森!!!」

 

「急いで彼を探すんだ!!!」

 

紅尉が全員に声をかけ和樹を探す ように言う。学校の生徒、職員全員が和樹を探し始めた。

 

「紅尉先生!!!」

 

紅尉が呼ばれてその場に行くとそ こには猫のような姿をした生物が弱々しい息で倒れていた。

 

「これはケルベロスだな・・・ど うやら式森君との戦いで力を使い果たしてしまったのだろう」

 

「今のうちに殺すんだ!!」

 

「暴れだす前に殺せ!!!」

 

回りから殺せと声が沸く。

 

すでにケルベロスには戦う気力が 残ってないらしく。その場を動こうともしない。

 

・・・・・・ガラッ!!

 

「和樹さん!!!」

 

「式森!!!」

 

「和樹!!!」

 

「式森君!!!」

 

「和樹!!!!」

 

「式森君!!!」

 

ガレキの中から出てきた和樹を見 て夕菜、凛、玖里子、沙弓、レオン、紅尉が声を上げる。

 

「和樹君!!!!」

 

千早が和樹に真っ先に駆け寄り和 樹に抱きついた。

 

「千早・・・」

 

抱きついた千早に和樹は何か耳打 ちをした。

 

「・・・わかった」

 

千早が右手をかざすと魔法を発動 した。

 

「えっ!」

 

「ここは!?」

 

「学校の近くの河原・・・」

 

夕菜、凛、玖里子、沙弓、レオ ン、紅尉が周りを見て自分たちがテレポートしたことに気づく。

 

そしてその場には千早に支えられ ながら立っている和樹と猫のような姿をした生物ケルベロスもいた。

 

「千早、何でこんなところにてレ ポートしたの?」

 

「あの場所じゃ落ち着いて話がで きないからって和樹君が・・・」

 

「僕が・・・説明するよ。紅尉先 生、ケルベロスをこっちに運んできてくれますか?」

 

「わかった」

 

紅尉が和樹の前にケルベロスを寝 せる。

 

「だが、何をする気だ・・・まさ か、ケルベロスを助けるとでも言うつもりかい?」

 

「その通りですよ」

 

「和樹さん! 何言っているんで すか!?」

 

「どうして助けるの!?」

 

和樹は周りの声を気にせずケルベ ロスの前に座って、残っている力でケルベロスをしゃべれる程度まで回復させた。

 

「・・・どうして殺さなかった の? 殺そうと思ったら殺せたのに・・・」

 

ケルベロスが和樹に聞いてくる。

 

「確かに僕は殺そうと思えたら君 を殺すことができた。でも、殺すことだけが全てじゃないだろ・・・」

 

「でも、僕はたくさんの人を傷つ け君の知り合いも傷つけた・・・殺すには十分すぎる理由だ・・・」

 

「そこまで分かっているならなお さら君のことを殺せない・・・君は自分がしたことが罪になることだと認識している。なら今からでもやり直すことはできる・・・・・・・どうだい、僕の式神 にならないか?」

 

驚いた様子で和樹を見るケルベロ ス。

 

「・・・自分を殺そうとした相手 だよ?」

 

「関係ない」

 

「・・・・・・・」

 

「式森君、本気で言っているのか ね?」

 

「そのつもりですけど・・・何 か?」

 

「・・・・・・・」

 

ケルベロスと紅尉は言葉をなくし た。ケルベロスを自分の式神にするなんて聞いたことがない。

 

いや、まず召喚獣を式神にするな んて聞いたことがない。

 

「・・・わかった。式神にでも何 にでもなるよ。獣は負けた相手には逆らわないからね」

 

もうどうにでもしてくれといった 感じのケルベロス。

 

「それじゃ、ここにいる人以外の 記憶は消すね。みんなは今日のことは誰にも言わないでね」

 

そういうと和樹は右手を空に向 かってかざそうとする。

 

(腕に力が・・・)

 

和樹の腕が上がらないのを見て千 早が手を添えて空に向かってかざした。

 

「ありがとう」

 

和樹の手から光が放たれた。

 

「これで・・・ここにいる人以外 の記憶は消えた・・・・」

 

「ち、ちょっと和樹君!」

 

「和樹さん!!」

 

「和樹!!」

 

「式森!!」

 

「式森君!!」

 

「カズ!!」

 

「式森君!!」

 

支えられていた和樹が力なく千早 に倒れ掛かった。

 

「和樹・・・しぃ〜〜〜〜」

 

千早が口に手を当ててみんなに静 かにするように言った。

 

「疲れて寝ちゃったみたい」

 

千早の腕の中で眠る和樹はとても 幸せそうな顔をしていた。

 

(・・・ご苦労様、和樹 君・・・)

 

ケルベロスの暴走は1人の死者も なく解決することができた。

 

世界一の魔術師の力によっ て・・・

 

 

 

 

 

 

おまけ

 

「か〜ず〜き〜さ〜ん」

 

夕菜は千早に抱かれて眠る和樹を 般若の(いやそれ以上に怖い)形相でその光景を見ていた。その顔だけでケルベロスを倒せそうな感じだ。

 

それを見た、レオン、沙弓、凛、 玖里子、紅尉、ケルベロスは一生の中で一番怖いものを見たとあとで語った。

 

 

 

 

あとがき

レオンです。

カズ、勝ちました。まあ、勝たな きゃ話がつながらないですが・・・

でも式神になるって・・・僕のポ ジションがやばくなるような(汗)

次回は凛がついに包丁を握りま す。

 



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