第30話  お弁当(中編の上)

 

 

気絶してしまった和樹達を何とか 起こして凛は説明を始めた。

 

その説明によると、凛は弁当を 作っていたらしい。

 

しかも、自分にではなく誰かにあ げるための弁当らしく、そのために2・3日前から弁当作りの練習(?)をしていたとのことだ。

 

「はぁ〜、なるほどね」

 

みんなでなるほどと頷いた。

 

「でも、この2、3日練習し続け ているのに、なかなかうまく作ることができないんだ。失敗ばかりして・・・」

 

(失敗・・・そういうレベル か・・・)

 

和樹はもう一度回りを見回してみ る。だがどう見ても殺人現場か世界大戦のあととしか見ることができない。さっきの光景を見ていなければ料理をしていたとは誰も思わないだろう。下手したら 見ていた人でも料理をしていたことを疑いかねない。まず食べ物と呼べるものが出来ていないのだから・・・

 

「本当は自分の力だけで作るもの なんだが、私だけでは無理だ。だから助けてもらおうかと・・・・・・」

 

「なるほどね」

 

納得する6人。確かに助けてもら わなければ料理と呼べるものが出来るまで何年・・・いや何十年かかるか分からない光景が再び目に入る。

 

はっきり言って和樹は目が痛く なってきた・・・

 

「それは構いませんけど・・・」

 

夕菜が呟いた。

 

「誰にあげるんですか?」

 

「えっ・・・何でそのようなこと を?」

 

夕菜の質問に凛は慌てたように答 えた。

 

「人によって好みがありますか ら、好き嫌いとかもありますし・・・」

 

凛は少し困ったような顔をした が、ややあって小さな声で言った。

 

「・・・・・・先輩です」

 

「部活の先輩?」

 

千早が聞く。先輩というからには 部活だろうと思った。凛は確か生物部に所属していたのを聞いたことがある。

 

「女性の方ですか?」

 

凛は下を向いて答えようとしな い。玖里子が何か思い出したのか手をポンッと叩いた。

 

「生物部の難波光明じゃないかし ら?」

 

「えっ! 男(男性)(男の 人)!!!!(×5)」

 

意外な事実に驚く5人。凛は顔を 赤く染めている。

 

「先輩が今度転校することになっ たんだ。御両親はいないらしいが、親戚に呼ばれたらしい。だから何かプレゼントをと思って、どうせなら何か作って上げたほうが良いと思って弁当を作ろう と・・・・・・」

 

恥ずかしさのあまり顔を赤く染め ながら説明する凛。

 

和樹とレオンとカイはまだ驚いた ままぽかんとしていた。男を寄せ付けず、鍛錬のみにしか興味がない凛が、男に弁当を作るとは・・・・・・

 

(春だね〜(×3))

 

『大人の階段上る〜♪ 君はまだ シンデレラさぁ〜♪』

 

3人は凛を見ながらそう思った。 さらにどこからかH2Oの曲まで流れてきたりする。なつかしい曲である。

 

「いい考えかもね、ただプレゼン トをあげるよりも好印象を与えることできると思うし。でも、難波君って物静かで誰にでもやさしく接することのできるタイプだから凛みたいな子は苦手なん じゃないの・・・・・・」

 

グサッ! グサグサグサグ サ!!!

 

凛の背中に何かが刺さったように 見えた。

 

「・・・・・・確かに先輩とはあ まり話をしたことがないんです。先輩は女の子らしい女の子が好みらしくて・・・私はそういうことを意識したことが今までなかったので、どうしたら良いのか 分からなくて・・・お願いします、私を女にしてください」

 

最後だけ聞いたら危ないような気 がする。

 

「・・・・・・そう言われても、 この有様じゃ弁当だけで女らしさを見せるのには限界があるわね。千早、夕菜ちゃん、料理を教えるのにどれくらい掛かりそう?」

 

「・・・それなりに時間はいるわ ね」

 

まずこの殺人現場の後片付けをし ないと始まらないだろうと千早は周りを見て思った。

 

「そうですね。凛さん、難波さん はいつ引っ越すんですか?」

 

「・・・明後日」

 

千早は少し考える。

 

「ギリギリってところね。風椿先 輩どうします?」

 

「正直、弁当だけでは無理がある わね。明日の放課後からで、弁当のほうは何とかできるかしら?」

 

「できなくはないですけ ど・・・・・・」

 

「今日はどうするんですか?」

 

夕菜が玖里子に聞く。

 

「私に考えがあるのよ。料理だけ でなく、雰囲気でも相手を虜にするのよ」

 

「でも、どうやって?」

 

和樹が聞くと玖里子はにやりと 笑った。何か考えている目だ。

 

「私に任せなさい」

 

このとき和樹たちは玖里子の背後 に悪魔のようなものが見えた。

 

 

 

 

 

 

5分後、全員が和樹の部屋に集 まった。夜中なので、音が外へ漏れないようにレオンが結界を張った。

 

玖里子を中心として、車座になっ て座る。年上である玖里子が自然と中心になっていた。

 

「まず、服装ね。凛って、いつも 巫女のような服装でしょう」

 

グサグサグサグサッ!!!

 

「・・・巫女じゃないのに・・・ 巫女じゃないのに・・・巫女じゃないのに・・・」

 

凛がその言葉を聴いて、畳の上に 『の』の字を書く。どうやら気にしていたらしい。

 

玖里子はそれにも構わず話を続け る。

 

「そういう服をして、刀片手に歩 いたりするから、男が引くのよ。化粧もしてないでしょう」

 

「・・・・・・はい」

 

「せっかくいい素材をしているん だから磨き上げるのよ。ダイヤも形を整えてこそあの値段になるのよ!!!」

 

玖里子の後ろで炎が燃え上がる。 何だか凛よりも必死です。

 

「つまり化粧をしろということで すか?」

 

「化粧だけじゃないわ。服装に会 話全てに気を使うのよ。難波君だけでなく見た人誰もが見とれるくらいにね!!!」

 

そういうと、玖里子は少し待って てと言って部屋を出て行った。なぜかレオンが一緒に連れていかれた。

 

「イタイイタイ!!!」

 

思いっきり頭を鷲掴みにされ て・・・(気の毒に・・・・・・)

 

しばらくして戻ってくると、人間 体になったレオンが両手に持てるだけの服を抱えて、さらに大きなカバンを4つ背負って帰ってきた。ちなみに玖里子は手ぶらである。

 

「・・・・・・こ、このために私 を連れて行ったのか?」

 

肩で息をしながらレオンが玖里子 に聞く。微妙に声に苛立ちが混じっているのは気のせいではない。

 

「そっ、この中で一番体が大きい しね」

 

哀れなレオンである。元の姿に戻 ると部屋の角のほうに行っていじけてしまった。『の』の字を書いてるのがよくわかる。

 

「・・・・・・で、何なんですそ れ?」

 

「凛を変身させるための衣装よ。 和洋中、その他にも全てそろってるわよ!」

 

玖里子が胸を張りながら自慢をす る。

 

「・・・・・・なんでそんなにあ るんですか?」

 

「男を篭絡するためと、あたしの 美貌のためよ!!!!!」

 

どこかにこんなキャラがいたよう な気がする。玖里子は持てきた服を部屋に広げるとその中から一着の服を取り上げる。

 

「では景気づけに・・・レディー ス・アーンド・ジェントルマーン! では、着替えタイーム!」

 

いつの間にか玖里子はバニーガー ルのカッコになっていた。

 

どこから持ってきたのか、カーテ ンがひかれる。

 

カーテンの向こう側でなにやらも める声がする。

 

「お待たせどうぞーーー!」

 

「うわ・・・」

 

「おお・・・」

 

「・・・・・」

 

和樹とカイは思わず声を上げた。 レオンはいまだに部屋の角にいて『の』の字を書いている。

 

凛は刺繍の入った赤いチャイナド レスを着ていた。

 

体に張りついて、ラインが浮き出 ている。

 

「和樹君どう?」

 

「ゲームの格闘少女みたいで良い ね」

 

「拳法の構えなんか取ったりした らマニアが泣いて喜びそうだね」

 

和樹とカイは確かに似合っている と思った。後で決めるのにとデジカメで写真を撮る。

 

「良いわね、これでいきましょ う」

 

「はあ・・・しかし足が動かしに くいんですが・・・」

 

「じゃあ、切る。ここらへんま で」

 

ハサミ片手に玖里子が凛の足をな ぞりながら腰の辺りまで手を進めた。

 

「そんなに切ったらめくれてしま います」

 

「そうね。丸見え」

 

「嫌です!」

 

「いいじゃない。難波君は釘付け になって、無防備だから気絶させて、押し倒しちゃったら」

 

「そんなことしません。これは脱 ぎます」

 

「いいのに・・・」

 

文句を言いながら次の服を凛に渡 す。

 

「何ですかこれは!!!」

 

「軍服だけど」

 

「脱ぎます」

 

「何でよ。こういうの男は萌える わよ。ブーツ履いていたら、踏みつけてほしいって集まってくるわ」

 

「先輩はそんな方ではありませ ん」

 

「男はみんな狼よ。ガオオ オォォォッッーーー!!!」

 

「『ガオオオォォッッーー!』 じゃありません」

 

本気で怒り出す凛。

 

「わかったわよ。じゃこれ!」

 

「何ですかこの服 は!!!!!!!」

 

「ムチを片手に迫ってみましょ う!!!『女王様とお呼びっ!!!』」

 

「呼べるかーーー!!!」

 

「これでどうだーー! ナース 服! あなたの心に注射をさします!」

 

「させるかぁーーーーー!!」

 

「ご主人様、私はあなたのもので す! めちゃくちゃにしてください!! メイドでどうだ!!」

 

「やめてーーーーー!!!」

 

「『逮捕しちゃうぞ!』 夏実と 美幸も驚く警察官!!!」

 

「い やぁぁぁぁーーーーーー!!!」

 

「な・ん・ば! な・ん・ば!  L・O・V・E な・ん・ば! LOVELY LOVELY な・ん・ば! みんなで応援チアガール!!!!」(流川応援団ふうに)

 

「ころせーーーーー!!!」

 

「耳がGOOD! あたしとおそ ろい、バニーガール!!!!!」

 

「あーーー!!!!!!」

 

「静かに優しく!!! 喪服でア タックだ!!!!」

 

「神様助け てぇーーーーーーー!!!!!」

 

「凛は一生あなたを愛し続けま す! そのまま式場に直行だ!!! ウエディングドレス!!!」

 

「キャァァーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 

「ハニーフラッシュ!!! 難波 の心にハッピーぶち込め!!!!!」

 

「死なせ てーーーーーーーー!!!!!」

 

微妙に路線がずれてきているのは 気のせいか・・・・・・

 

『月に変わってぇ〜〜お仕置き よっ!!! 美少女戦士セーラームーン!!!』

 

「イ ヤァァァァーーーーーーー!!!」

 

4人(玖里子、千早、夕菜の3人 はノリノリ)で何やってるんですか!? って、和樹何涙流して千早を見てるんだ。カイ、4人の横に並ぶなぁ! アルテミスのつもりかぁ!?

 

(セーラームーン、万 歳ーーーーー!!!)

 

千早の写真を撮るなぁ、和樹!!

 

「ダーリン好きだっちゃっ!!!  ウチがあなたの凛だちゃっ!! ラムちゃんならぬ、リンちゃん!!!」

 

「リンちゃーーーん!」

 

レオン! 何、テンちゃんやって るんだ。てか似合い過ぎ!

 

「ははっはっはあああああははは はっはっはっはああっはあああ・・・・」

 

ついに壊れた凛。

 

この後もしばし続く・・・・

 

 

 

ちなみに他に何があったかという と・・・・・・

 

「何ですかこれはっっ!!!」

 

凛は大声で叫び声をあげた。見て すぐに分かるその服装、レオタード姿はあの有名な泥棒の格好だった。

 

「『見つめるキャッツアイ magic play is dancing♪ 緑色に光るぅ 〜 
 妖しくキャッツアイ magic play is dancing♪
 月明かりあびて we get you〜〜〜

 

凛以外の3人はノリノリで歌っています。

 

もはや、仮想大会です。

 

 

 

 

 

 

「結局、制服になったわね!」

 

残念そうに言う、玖里子。

 

「うっうっ・・・いいですこれ で・・・」

 

リカちゃん人形ならぬ、凛ちゃん 人形にされた凛はあまりの悲しさに涙していた。

 

「ム、ムゴイ・・・」

 

「確かに・・・」

 

「厄日だね・・・」

 

凛を哀れむ3人。だが何気に3人 もノリノリだったりする。はっきり言って凛以外はこのショーを十分に楽しんだ。デジカメには凛のコスプレ写真が何十枚と記録されていたりする。

 

外を見ると朝日が昇っていた。

 

結局、夜明けまで玖里子による着 せ替えショーは続いたのであった。

 

 

 

 

あとがき

「レオンです」「カイです」

「いや、着せ替え(コスプレ)は 凄かったですね」

「ほとんど暴走だね。玖里子よく あそこまで衣装持っていたね」

「何に使うつもりで集めたんだ ろ?」

「・・・考えたくない」

「というより思いつかない」

「実はこの話でメガネまで持って いくつもりだったんだよね」

「作者、着せ替えネタ出しすぎて 2つに別けることにしたんだよね」

「計画性がないね」

「次回はメガネをつけます」

「そして台詞練習」

「お楽しみに!」

『レオンとカイがお送りしまし た』



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