第31話  お弁当(中編の下)

 

 

昼休み屋上

 

昼食をとりながら昼休みも凛の変 身は続いていた。

 

「凛、あなたそういえばメガネ持 てたわよね」

 

「はい、持ってますが」

 

遠視のため凛は授業のときだけメ ガネをかけるようにしていた。

 

「メガネを活かさない手はないわ ね、何でかけないのよ」

 

「授業中以外はあまり必要ないの で・・・・・・」

 

「あまっーーーい!!!」

 

声を上げて玖里子は凛を指差し た。

 

「ああいうタイプはメガネに弱い のよ。めがねをかけておとなしい女の子のふりをして見なさい、男なら誰でもノックアウトよ。K1選手のパンチも目じゃないわ。一撃必殺、ジェ〇ム・レ・バンナも真っ青よ! 自室だろうがホテルだろうが屋上だろうがどんなところでも連れ込み放 題間違い無しよ」

 

「私はそういうことをやりたいわ けじゃ・・・」

 

玖里子の勢いに押されて強く出れ ない、凛。

 

「何言ってるの!!? メガネを すぐにかけなさい。今すぐに!!!」

 

勢いに押され凛は渋々ながらメガ ネを取り出しそれをかけた。

 

玖里子は凛をジッと観察するが何 か納得が行かないような顔をしている。和樹たちも覗き込む。

 

「悪くはないけど・・・いまいち インパクトにかけるわね。何か腰の入っていないパンチというかなんというか?」

 

「そうでしょうか?」

 

「ちょっと見せて」

 

玖里子は凛からメガネを受け取 る。全体は銀色で統一されタマゴのようなレンズになっている。いわゆる一般的なボストン型と言われる形である。

 

「これじゃあ難波君好みにするに は無理ね。ただの視力の悪い子になっちゃうわ」

 

「普通に悪いんですけど・・・」

 

「だめよ! メガネをかけた子と メガネっ子には深くて大きな溝が存在するのよ。形と色どこかひとつ間違えただけで惑星べジータと地球の距離くらい違うわ。ここを成功するだけで2割バッ ターが5割になるわよ。最多安打も目じゃないわ」

 

アニメと現実がごちゃ混ぜです。

 

「ドド〇アさん見てくださいきれ いな花火ですよ!」

 

「馬鹿かお前は・・・」

 

レオンがリアクションつきでフ リー〇のまねをしていた。カイはそんな相棒をあきれた目で見ていた。

 

凛は玖里子に迫られいいていた。

 

「そんな大げさな」

 

「ちょっと待ってなさい」

 

凛の言葉を無視して玖里子はレオ ンのところに行くと嫌がるレオンを脅し無理やりテレポートをさせた。戻ってきたときにはレオンは両手にジュラルミンのケースを抱えていた。

 

ジュラルミンのケースに潰され疲 れきったレオンを無視して玖里子はケースを開け中身を見る。和樹たちが中を見ると多種多様のメガネが入っていた。形が同じでも色違いでそろっている。

 

玖里子はその中から1つ取り出す と凛に渡した。

 

「まずこれね」

 

オーバル型といわれる楕円系型の メガネだった。ふち無しでレンズに直接穴を開けてフレームが着いているものであった。

 

「これをかけるんですか?」

 

「度は入ってないから大丈夫よ」

 

そういわれ凛はメガネをかけた。 玖里子はメガネをかけた凛をジッと観察する。和樹たちもジッと観察した。

 

「何か凛ちゃんぽくないと思うん だけど」

 

千早が凛を見てそう言った。

 

「何か意地悪そうに見えますね」

 

「目つきが鋭いっていうか」

 

「睨まれたらひくね、少し」

 

夕菜、和樹、カイも言う。剣を構 えたときに見る凛の鋭い目がメガネによって更に強調される感じになっていた。普通にしているはずなのになんか怖い。

 

「これはちょっと失敗ね」

 

凛が少し膨れた。

 

「失敗ってなんですか」

 

「似合う似合わないってあるで しょ。やっぱりこれはいじわるOLか女教師用ね」

 

変な所で玖里子は1人納得してい た。

 

「年上好みならしっくりくるんだ けど、麻衣香姉さんはぴったりなのよね。こんな感じの・・・」

 

本人が聞いたらどんなことになる やら・・・

 

玖里子は再び凛にメガネを渡す。

 

「次はこれね」

 

真円のメガネが凛に渡される。伊 達だろうが分厚いレンズがはまっていた。

 

「うっ・・・これは」

 

玖里子は凛を見て思わず腰を引い た。和樹も驚き、千早と夕菜は口に手を当てる。カイと疲れが取れたレオンはあんぐりと口を開けていた。

 

「なんと言っていいのか」

 

「玖里子さん違うのを・・・」

 

「絶えられない」

 

口々に好き勝手なことを言った。 凛がかけているのはビン底のようなメガネでファッション性も何もないものである。分厚いレンズのせいで瞳が奇妙な形となり似合わないことこの上ない。虫メ ガネをかけているみたいであった。

 

「でも笑いを取るならこれでもい けるわね」

 

ふと思い立ったことを玖里子が口 にする。

 

「まあ、確かに」

 

「宴会とかにならいいかもね」

 

「これに鼻をつけて鬘をかぶって 人差し指と中指をそろえて鼻の下に持っていけば」

 

加〇ちゃんですか!

 

「レオンそれは言い過ぎよ。せめ てかくし芸大会に」

 

千早、それもどうかと思うぞ。

 

「山瀬さんせめて誕生パーティー くらいに」

 

「遊ばないでください!!!」

 

さすがに凛が怒り出した。そりゃ 怒らないほうがおかしい。メガネを外して立ち上がる。

 

「私はあなたたちの着せ替え人形 ではありません!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

でもあんた・・・既に着せ替え人形になってますからっ! 

 

残念!!!

 

凛ちゃん人形斬り!!!

 

まぶらほの人気キャラクターV2 達成者神城凛ここに斬られる。

 

 

 

 

 

 

「ごめんごめん、次はこれよ」

 

玖里子は手を合わせて謝りながら 別のメガネを凛に渡した。

 

今度のは薄いブルー形の色の半分 だけの細いフレームに四角のレンズの女性が気に入るような形のいいメガネだった。

 

凛は不機嫌なままだがメガネをか ける。メガネをかけた凛を見て玖里子は納得したような顔をした。

 

「うんうん、これでいいかもね」

 

背が小さく小顔の凛にぴったりの 大きさで形も意外とマッチしていた。

 

「いいね」

 

「これで決まりね」

 

「本を持たせたら完璧じゃない」

 

「レオンそれナイスだね」

 

「千早、夕菜ちゃん、凛の髪を三 つ編にして」

 

千早と夕菜が凛の後ろに回り髪を 三つ編にする。背中の中心で垂れるように丁寧に編んでいく。編み終わるとリボンで止めた。

 

玖里子はおさげ髪になった凛を ジッと観察する

 

「凛、顔を下げて・・・もう少し 上げて、目は軽く上を向くような感じで・・・そうそう、そして首を少しかかげて、手は本を持って前で交差するように・・・いいえ、この本持って!」

 

本を渡され凛が玖里子の言ったと おりにポーズをとる。

 

でも玖里子が渡した本のタイトル 『ボケとツッコミ』っていったい・・・

 

格好をとった凛を見て玖里子は満 足そうに手を叩く。

 

「いいわ! これよ、これ! 文 学少女のできあがりよ。メガネにおさげ、制服なんて通り魔にバズーカ渡すようなものよ。通行人は皆殺し、道は一つ消し飛ぶわよ!!!!」

 

「・・・・・・どういう譬え だ・・・」

 

「陰陽師に霊符ってほうが分かり やすいと思うけど・・・」

 

「・・・それもなんか違うと思う けど・・・」

 

それはさておき、確かに今の凛に はかわいらしさがあった。いつものような刺々しさがなく、おっとりした感じが出ている。まさにやまとなでしこといっていいだろう。

 

本人は分かってないのか、目をし ばたたかせて首を傾げていたが、またそのしぐさがぴったりだった。

 

「ついでに背中に羽付けようかし ら!!!」

 

「い やぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

そんなこといいながら玖里子はど こから持ってきたのか凛の背中に羽をつけようとしたが凛が逃げ出し捕まっても激しく抵抗したため却下となった。最後まで『もたいないなぁ』と玖里子は言っ ていた。羽をしまうと気分を入れ替えて玖里子が叫んだ。

 

「それじゃ最終段階。会話の練習 よ! レオン、凛の前に立って」

 

「・・・何で僕が・・・・?」

 

「イケメンの前で練習したほう が、いいでしょ!」

 

「僕は・・・・僕は・・・」

 

「和樹君・・・元気出し て・・・」

 

「和樹、そのうち良いことある さ」

 

「いいんだ、いいんだ、どうせ僕 は自分の相棒よりかっこ悪いんだ・・・・・・」

 

いじける和樹・・・・・・そして 慰める千早とカイ。

 

「でも僕と先輩とじゃ大きな違い がない?」

 

「違いすぎます」

 

レオンの問いに凛が答えた。

 

「文句を言わない! 剣の道も相 手と戦ってこそ見えてくるものがあるでしょ! 相手が誰であろうと関係ないわ。山は大きければ大きいほどいいのよ。風林火山万歳!!!」

 

あんたたったついさっきイケメン と練習したほうがいいといわなかったか? てか最後のは何の意味が?

 

「凛、あなたはエースを狙うの よ!!! お蝶婦人を倒すのよ!!!」

 

玖里子そのネタ古いよ。

 

「エースって・・・なんのです か?」

 

「細かいことは気にしな い!!!」

 

玖里子の後ろでは炎が燃え上がっ ていた。

 

「レオン、早く凛の前に立っ て!!! 」

 

「はぁ〜・・・わかったよ」

 

レオンは渋々頷くと人間体になり 凛の前に立つ。40センチ近く差があるので凛はレオンを見上げるような形になった。

 

「それじゃ、凛、私の言ったとと おりにレオンに向かって言ってね」

 

「はい」

 

凛は納得したのかしてないのかわ からない簿妙な顔をしていたが返事をした。

 

「じゃあいくわよ。『お兄ちゃ ん!』」

 

 

ズドッズンズンガラガッシャン!!!!!

 

 

玖里子以外の5人はこれでもかと いうくらい派手に転倒した。

 

「ん、何こけてんの?」

 

顔を真っ赤にした凛が喚いた。

 

「何でお兄ちゃんなんですか!?  先輩は私の兄ではありません」

 

(まあ、血は繋がっていないけど駿司さんいるしね)

 

和樹は九州にいる駿司を思い出し た。

 

「あら、この手の攻撃はかなり効 くわよ。特に兄弟がいない難波君みたいなタイプには効果は倍増するわ!」

 

(聞いたことないぞ、そんな の・・・)

 

(捲き込まれるレオンもかわいそ うだね・・・)

 

(あとで、なんか買って慰めてあ げたほうが良いな)

 

(だね)

 

和樹とカイが念話で呆れ半分で会 話する。だが容赦なく玖里子の特訓は続く。

 

「でもいくらなんでもお兄ちゃん は変です!」

 

「いいえ、かわいらしい妹に食い つく男は多いわよ。今やっているアニメを見なさい、妹の携帯放さない主人公がいるでしょう。笑いながら『こっちだよ、お兄ちゃーん!』っていって走り出し たら『待てよ、凛!』って追いかけてくるわよ! シスコン万歳!」

 

玖里子さん見てますね、 DESTINY。

 

「ほら、レオンの顔をちゃんと見 て!」

 

凛は不満を残した顔でレオンの顔 を見る。レオンも凛の顔をじっと見つめる。

 

凛の顔が一気に赤くなる。

 

それはそうだ。レオンがその気に なれば声をかけた女性全てが振り向くであろう。

 

それほど人間体のレオンはイケメ ンなのである。そんな人が目の前にいたらさすがの凛でなくても顔を赤くするだろう。

 

「はい、スタート!『お兄ちゃ ん』」

 

(ようしゃないな・・・)

 

スパルタ教師も真っ青である。

 

「お、お・・にい・・ちゃん」

 

ガチガチの口調で同じ台詞を繰り 返す。凛の顔は血のように真っ赤である。

 

「『凛はずっとず〜〜〜〜〜〜っ と前から』」(可愛いこぶりながら!)

 

「凛・・・は・・ずっと・・・ ずっと・・前・・・・から」

 

「『お兄ちゃんのことが大〜〜〜 好きでした』」(〇リン星の住人みたく)

 

「お、お・・・にい・・ちゃ、 ちゃん・・の・・こと・・が、だ、だ、大・・・す、好き・・・・」

 

「『お兄ちゃんも凛のことが好き だよね、ねっ!!!』」

 

首をかしげて目をウルウルさせな がら(ぶりっ子キャラっぽく)

 

「お、お・・にい・・・ちゃ ん・・・も・・・凛のこと・・・・す、す・・・・・・

できるかーーーーー!!!」

 

「うお!」

 

ついに理性の吹き飛んだ凛が刀を 振り回し始めた。レオンは危うく頭から真っ二つにされそうになった。

 

「凛、落ち着け!!!」

 

「クワーーーー、ク ワーーーーー」

 

なりふり構わず刀を振り回す凛。 危ないことこの上ない。レオンは必死に逃げ回っている。

 

「わぁーー、『聖麻衣子』みたい なこと言ってる・・・ズズズ」

 

タブロイドですか?

 

「レオンがマジで焦ってる ね・・・ズズズ」

 

「なに、冷静に見物してるんです か!!!」

 

「止めようとしなさい!!!」

 

パシン!

 

和樹とカイが落ち着いてお茶を飲 んでると夕菜と千早の説教をくらった。和樹にいたっては千早にハリセンで叩かれた。

 

昼休みの特訓はこうして終わっ た。

 

 

 

 

あとがき

「レオンです」「カイです」

「凛ちゃん暴走してますね」

「他人事見たく言わないでよ。本 気で死ぬかと思ったんだから!!!」(必死です)

「だって他人事だし・・・」

「鬼だ・・・」

「さて次回はようやく料理を作り ます」

「千早の腕の見せ所です」

『レオンとカイがお送りしまし た。まったねぇーー!』



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