機動戦士ガンダムSEED 

TWIN DESTINY OF  DARKNESS

PHASE-10  黒き道

 

 

捕虜となったラクス=クライ ン、メイア=ファーエデンの命を盾に戦闘は中断される。

ヴェサリウスのブリッジでア デスは展開しているMS全機に命令を送る。

「そうだ! 全軍攻撃中止!  今の放送が聞こえなかったのか!?」

怒鳴るアデス。

ジンがヴェサリウスに帰還し てくる。

 

 

「………」

レイナは未だ動かない眼前の 漆黒のシグー:ヴァルキリーを見詰めている。

戦争は殺し合いとは違う…… そこには仮にも明確な最低限のルールがある。

だが…実際に戦闘において、 そんなものを気になどしてられない……殺るか殺られるか……たとえ、卑怯者と罵られようとも……生き残った者が勝者だ……

「やっぱ、胸くそ悪い わ……」

自分自身に向かって吐き捨て る。

不本意ではあるが、これで少 しは時間が稼げる。

だが……眼前の敵機からだ未 だに敵意を感じる。

《っくっくく》

通信機から、くぐもった笑い 声が聞こえてきた。

《それで優位に立ったつも り?……笑わせてくれるわ》

全域周波数で放たれる言葉 に…アークエンジェル側だけではなく、ヴェサリウス側も動揺する。

(……この声…何処かで聞い た覚えが…?)

眼前の敵機のパイロットの声 から感じる奇妙な既視感……

《殺したいなら殺せばい い……できるのなら、ね》

絶句する面々……

《二人を殺せば…その瞬間、 貴方達は人質という盾を失い、どの道死ぬのだから……仮にも最高評議会議長の娘と特務隊のパイロット…捕虜として生き延びるよりは、名誉ある戦死を選ぶ と……》

ゆっくりとビームマシンガン を構える。

ナタルは言葉に詰まる。

《さあ…続きをやりましょ う》

レイナもやや冷や汗を流しな がら構える。

ヴァルキリーのモノアイが不 気味に光る。

(こいつ…厄介ね)

どうやら…眼の前の相手は、 自分の予想以上に冷静で…冷徹な感情の持ち主のようだ。

だが確かに…彼女の言う通 り、二人を人質に取っても、殺してしまえばこちらが終わるのだ。

こちらも下手には動けない。

ルシファーとヴァルキリーが 睨み合い…互いに動こうとした瞬間、ストライクとイージスがルシファーとヴァルキリーの傍に近づいてきた。

 

《リン! やめろ!!》

《レイナ……!》

2機が割り込んできたので、 二人の間に流れていた空気が緩和された。

 

《リン! 今の通信を聞いて なかったのか!?》

「…私はあくまで、合理的に 敵を討つまで」

冷静に呟き返すリンにアスラ ンは憤りを感じる。

《戦闘は中止だ! クルーゼ 隊長の命令だ…!!》

「……了解」

リンは渋々と頷き、ヴァルキ リーを反転させ、ヴェサリウスへと帰還していく。

それを見送ったアスランはス トライクを見やる。

 

(引いてくれた……ん? 通 信…? イージスからストライクに?)

Xナンバー同士の通信回線が ストライクとイージスの間で繋がっている。

不審に思ったレイナは、通信 に割り込みをかけ、受信する。

スピーカーから、キラと…も う一人の少年の声が聞こえてきた。

《救助した民間人を人質に取 る…そんな卑怯者と共に戦うのが、お前の正義なのか!キラ!》

通信越しに聞こえる激昂にキ ラが唇を噛む音が聞こえる。

《彼女は…ラクスは絶対に助 け出す……必ずな!!》

吐き捨てるように叫ぶと、帰 還命令に従ってイージスは離脱していく。

キラはどうしようもない怒り に震えながらその光景を見送った。

レイナは無言で通信回線を閉 じる。

(……知り合い…ね)

明らかに敵同士の会話とは思 えない感情のぶつけ方……そして、なによりも…向こうがキラをはっきりと認識しているという点が決定的だった。

「……やれやれね」

軽く溜め息をつき、レイナは アークエンジェルに帰還していった……

 

 

アークエンジェルのブリッジ にはギスギスした雰囲気が漂っていた。

マリューはナタルから眼を背 け、帰還していくMSとヴェサリウスを見やる。

ナタルの判断が、この状況で はベストであると、頭では理解していても、感情が納得しない……

「……取り敢えずの危機は回 避したものの、状況には何の変わりもないわ」

刺々しい口調で呟きながらマ リューは離れていくヴェサリウスを見やる。

頼みの綱の先遣隊は全滅…敵 も、人質ごとこちらを沈めかねない者もいるため、状況はどちらにしろ、最悪だ。

「この間に状況を立て直すこ とはできます、現時点ではそれが最も重要かと」

あくまで合理的に冷静に判断 を促すナタルにマリューはやや睨みつけた。

「ええ…解かっているわ」

 

 

帰還する各機。

ストライクとルシファーがメ ンテナンスベットに収まり、母艦を失ったインフィニートも修理を行っているゼロの横に着艦する。

格納庫内は、ストライク、ル シファーの整備と被弾したゼロとインフィニートの修理が急ピッチで進められているため、酷く慌しい。

そんな中、ストライクのコッ クピットから飛び出したキラはムウに詰め寄った。

「どういうことですか!?」

「……どうもこうもねえよ。 聞いたろ? そういうことだ」

あくまでむっつりした表情で 答えながらムウは背中を向ける。

だが、キラは追い縋ってムウ の肩を掴む。

「あんな女の子や捕虜を人質 に取って脅して…そうやって逃げるのが地球軍って軍隊なんですか!?」

罵るようなキラの口調にムウ はキッとした視線を浮かべて振り返る。

キラは思わず怯む。

「…やめなさい、キラ」

そんなキラの肩をレイナが掴 み、キラが振り返る。

「レイナ…でも!」

「あの状況ではベストの判断 よ…言ったでしょ、奇麗事だけじゃ戦争なんてできないのよ」

正論を言われ、キラは押し黙 る。

「それにな…そういう情けね えことしかできねえのは、俺達が弱いからだ」

ムウに畳み掛けられ、更に言 葉に詰まる。

確かに…あの状況では、他に 方法が無かったかもしれない……

何も言い返せず…キラは唇を 噛む。

「俺やお前に…艦長達を非難 する権利はねえよ」

どこか悔しそうに呟くと、キ ラは逃げ出すようにその場を後にする。

「嬢ちゃん…どうする、これ から?」

「……取り敢えず、時間は稼 げました。この隙に、策を練りましょう…双方にとって、都合がいい……ね」

レイナは意味深に呟くと、軽 く蹴って、その場から離れていく。

「やれやれ…相変わらず、油 断のできねえ嬢ちゃんだ」

その後姿を見送ると、ムウは 後ろから声を掛けられた。

「大尉」

「ん…お、アルフ」

振り返ると、そこにはイン フィニートから降りたアルフがいた。

「今のが…Gのパイロットで すか?」

キラとレイナが去っていった 方向を見詰めながら、尋ねる。

「ああ、いろいろあってな」

言葉を濁すムウにアルフは苦 笑を浮かべる。

長い付き合いだけに、それだ けで解かるのだ。

「正直…俺もあんま、いい気 分じゃないんすけどね。結局、俺は役に立たなかった」

先の戦闘でジンを1機堕とし たと同時に、あのナタルの通信だ。

なによりも腹立たしいのは… 共に来た艦隊を護り切れなかったという己自身への不甲斐なさだ。

「いや…お前はよくやってく れたさ。取り敢えず、今は…この状況を何とかする方が先だ」

「了解」

ムウとアルフは連れ立って、 ブリッジへと向かった。

 

 

アークエンジェルよりやや離 れた位置を追尾するヴェサリウス。

ブリッジで、作戦モニターを 前にクルーゼ、アデス、そしてパイロットスーツのままのアスラン、リンがいた。

アスランはリンをやや睨むよ うな視線を向けているが、リンはさして気にせず、問い掛ける。

「それで……どうするつもり ですか?」

彼女の言葉には、二通りの意 味が含まれている。

このまま、ラクスやメイアご とアークエンジェルを見逃すのか…それとも、二人と共に沈めるのか……

「このままついて行ったと て、ラクス様達が向こうに居られてはどうにもなりますまい」

「連中も月艦隊との合流を目 指すだろうしな……」

このままでは、アークエン ジェルは友軍と合流する。

そうなれば…手出しは完全に できなくなる。

「やはり…こちらの勢力圏内 にいる内に、沈めますか?」

「それだけは絶対にダメ だ!」

リンの言葉を遮るようにアス ランが叫ぶ。

「向こうにはラクス達がいる んだ…! 見捨てるなんてできるか!」

「では…他に方法があるので すか? 二人を助ける方法が……」

二人が捕虜となれば、ザフト にとって士気に大きく影響してしまうだろう。

「クルーゼ隊長…本国に、足 付きを沈めてよいか、許可を求めてもらえるでしょうか?…最高評議会の決定なら、我らには従う義務があります」

ここで押し問答をしていても 何の進展も無い。

だからこその判断だ。

「…解かった、問い合わせて みよう。アスランもそれならよいな?」

リンの意図を理解したクルー ゼは了承し、アスランに尋ね返す。

「……解かり、ました」

未だ、納得はしないものの、 頷く。

シーゲルなら、ラクスを見捨 てるという判断を絶対にしないと信じているからだ。

 

 

 

私服に着替えたレイナは居住 区へと向かっていた。

その時、一室から、少女の金切り声が聞こえてきた……

内容は……レイナは表情を歪 ませる。

ドリンクの容器が転がり、自 動ドアが際限なく開閉を繰り返している。

その中へ入ると…フレイがキ ラにギラギラとした憎悪の瞳を向けていた。

「嘘吐き!」

その視線の凄さにキラが思わ ず立ち竦んだ。

「大丈夫って言ったじゃな い! 僕達も行くから大丈夫って……何でパパの艦を守ってくれなかったの!? 何であいつらをやっつけてくれなかったのよおぉ!!」

(醜い子……)

 

罵倒を繰り返すフレイの姿を 見て、レイナは改めて思う。

それと同時に…レイナの中で フレイに対する憎悪が沸き上がる。

「フレイ、キラだって必死 に……」

金切り声を上げて罵るフレイ をサイが宥めようとするが、フレイは聞く様子もない。

「あんた、自分もコーディネ イターだからって本気で戦ってないんでしょう!」
その言葉はキラの胸に突き刺さり…キラは逃げるようにその場を離れた。

ミリアリアが叫ぶが、キラは 止まろうともしない。

そんなキラを見送り…レイナ は我慢ができなくなり、前に出る。

フレイの前に立ち、右手を振 り上げる。

 

パチンッ!!

小さな…何かを叩く音が部屋 に響き渡った。

その場にいた者達は、一瞬何 が起こったのか解からないように呆然となり、フレイは叩かれた頬を押さえて眼前の叩いた少女を見やる。

「な、なにするのよ……!」

レイナの姿を認識した瞬間、 フレイはレイナに怒りを向ける。

「可哀想ね……貴方って」

だが、レイナの口から出たの は憐れむような言葉……

「ずっと護られた世界の中で 生きてきて…誰も、貴方を叱る人間がいなかったのね」

レイナはその瞳をフレイに向 ける。

その眼光の鋭さに、フレイは 僅かに怯む。

「キラが戦ってるのは何のた め? 貴方達を護るためでしょ……そのために、危険な戦場に身を置いているのに、貴方にも…誰にも、キラを責める権利なんかないわ」

「でも……大丈夫だって言っ たのよ!?」

「他の言葉なら納得できた の?」

冷たく否定する。

「あの状況で…それ以外の言 葉を言ってもらったら、貴方は納得した?」

フレイは悔しさに唇を噛む。

「な、何よ! 結局あんた だって同じじゃない! 役にも立たなかったくせに!!」

「……勘違いしてない。私 は、キラとは違う…私が戦うのは、あくまで自分を護るため。この艦を護るのはついでよ…他がどうなろうと、私の知ったことじゃないわ」

その言葉に……全員が唖然と なる。

「何よ…何よ何よ! あんた は何も喪ってないから…そんな事が言えるのよ!!」

レイナは僅かに表情を顰め る。

今のフレイの言葉だけは否定 しようがなかった……自分には…最初から喪うものなど…何も無かったのだから……

喪うとしたら……自分自身の 命のみ………

「……そうね、私には貴方の 気持ちなんて解からないわ。でもね…本当に護りたいものがあるなら、どうして自分で護ろうとしないの?」

顰めていた表情を消し、再度 フレイを見やる。

「そんなにパパが大切なら… 自分の手で護ればいいでしょ。キラや私の代わりにMSに乗ってもよかったのよ?」

「出来るわけないじゃな いっ!」
レイナは軽く溜め息をついた。

「フレイ=アルスター」

低く彼女の名を呼び……

次の瞬間には、フレイの胸元 を掴み上げていた。

フレイは低い悲鳴を漏らす。

「自分に出来ないことを他人 にやらせておいて…護れなかったという理由だけで傷付ける……私はね、貴方みたいな人が一番嫌いなの。もし、貴方がこれ以上、同じことを繰り返すような ら……」

 

「……殺すわ」

 

一呼吸置かれた後に呟かれ た、感情の篭っていないゾッとするような冷たい声……

フレイも…サイも……ミリア リアも………部屋に居た人間全てが…息を呑んだ。

レイナは手を離すと、フレイ は腰が砕けたようにその場に座り込んだ。

「……それだけ、忘れないで ね」

念を押すように呟くと、未だ 呆然としているフレイ達を横に、レイナは部屋から出て行った………

 

「なんなのよっ…あの 子……!」

吐き捨てるように呟く

赦せなかった……自分を叩い た少女が…自分の傷を抉る少女が……

「あの子……赦さないっ!」

憎悪を込めた瞳で…フレイは 呟いた。


 

居住区を移動していたレイナ は見知った姿に気付く。

「…ラクス」

「あら…レイナ様?」

変わらずの穏やかな表情でこ ちらを振り向く。

「先程、キラ様が……」

ラクスが視線を向ける先は… 展望デッキ。

「…行ってあげて」

レイナがラクスの肩を押す。

「私じゃ…多分、優しい言葉 なんて、かけてあげられないから」

レイナの言葉に、ラクスはニ コリと笑みを浮かべて頷き、キラの後を追った。

その後姿を見送ると、レイナ は踵を返し、ブリッジへと向かう。

キラのことは彼女に任せてお けばいい…自分は自分のすべき事をするだけだ。

 

 

通路を顔を俯かせたまま移動 するキラの脳裏には、先程のフレイの言葉が渦巻いていた。

………コーディネイターだか ら。

コーディネイターだから戦っ ているのに、今度はコーディネイターであることがいけないのか?

そんな苦悩を抱えたままで あったため、すれ違ったカズィの存在に気付かなかった。

ここには誰もいない…キラの 思いを本当に理解してくれる人は……

皆を守るために…皆のために アスランを敵に回してでも必死でやってきたのに……自分は安全な場所にいて、キラにもっと戦えというのか? 

そう思うとやりきれない気持 ちで一杯になる…だが、同時に心の隅で囁くのだ。

……フレイの言った通りなん じゃないか、と?

本当に、必死で戦っているの だろうか?

心の何処かで逃げているので はないだろうか?

アスランと戦いたくないか ら…同胞の血で手を汚したくないから……心の底から真剣に戦っていないのではないのだろうか?

そのせいで……フレイの父親 を死なせてしまったのではないのか………

キラは展望デッキに飛び込 み、ガラスの前で滅茶苦茶に喚いた。

そうしないと自分が壊れてし まうそうだったから……ガラスに頭を打ち付け、涙が舞う。

「……どうなさいました の?」

不意打ちを突かれたようにキ ラが顔を上げると…そこには無邪気なラクスの笑顔があった。

その眼がふと瞬き、白い指が キラの顔に触れようとした。

キラは泣いていたことを思い 出し、赤くなって涙を拭いながら、慌てて顔を逸らす。

そして……気付いた。

「……って、何やってるんで すか…こんな所で?」

「お散歩をしてましたの…そ したら、こちらから大きなお声が聞こえましたので」

キラは赤くなった顔を振り、 言う。

「ダメですよ…勝手に出歩い ちゃ…スパイだと思われたら……」

「あら…でもこのピンクちゃ んはお散歩が好きで……」

そこまで言うと…何かを考え 込むようにハロを見やる。

「というか、鍵がかかってい ると必ず開けてしまいますの」

その答えにキラは思わず頭を 抑えそうになった…これで、かけてもすぐ出てくる謎が解けた。

「とにかく、部屋に戻りま しょう。さあ……」

気を取り直して手を出すと、 ラクスはキョトンとした表情を浮かべるが、軽く床を蹴って無重力に舞う。

「……戦いは終わりましたの ね?」

「ええ、まあ……貴方のおか げで」

僅かに俯き、キラも無重力を 漂いながら宇宙を見詰める。

「なのに…悲しそうなお顔を してらっしゃるわ」

キラは振り向いた。

ラクスは無邪気な笑みを浮か べたままだ。

それに枷が外れたのか…キラ は口を開いた。

「僕は……本当は戦いたくな いんです………」

ポツリポツリ語り出すキラに ラクスは黙って聞き入る。

「僕だって、コーディネイ ターだし……アスランは…とても仲のよかった友達だったんだ……」

「アスラン……?」

首を傾げるラクスにキラは頷 き返す。

「アスラン=ザラ……彼が、 あのMS…イージスのパイロットだなんて……」

 

「……!」

ラクス以外にキラの話を聞き 入っていた者がいた。

驚いた表情を浮かべると、慌 ててその場を後にした。

 

 

「そうでしたの」

ラクスはキラに寄り添うよう に近づく。

その優しげな表情と声にキラ は心が軽くなるのを感じた。

誰かに打ち明けたかったのか もしれない……自分の抱える苦悩を……

「アスランも貴方も優しい人 ですもの…それはとても悲しいことですね」

その言葉にキラは虚をつかれ て、眼を見開く。

「アスランを…知っているん ですか?」

思わず身を乗り出して尋ねる キラに、ラクスは頷き返す。

「はい…アスラン=ザラは、 私がいずれ結婚する方ですわ」

当然のことのように語り、ラ クスはニコッと微笑んだ。

「優しいのですけど、無口な 人で……ですが、このハロをくださいましたの」

ピンクの球体のロボットを嬉 しそうに抱き抱えるラクス。

「私がとても気に入りました と申し上げたら…次もまたハロを……」

ふふっと笑顔を浮かべるラク スにキラもやや肩の力が抜けたように苦笑を浮かべる。

キラの脳裏には部屋でハロを 製作するアスランとそれを手渡されて喜ぶラクスの姿が浮かぶ。

「そうか…相変わらずなんだ な……アスラン…僕のトリィも、アスランが作ってくれたんです」

「まあ、そうですの?」

ラクスが表情を輝かせる。

「でも……」

明るくなりかけた雰囲気がま た暗くなる。

そう…今は、敵同士なのだ。

「お二人が戦わないですむよ うになれば…いいですわね」

そんなキラの想いを代弁する かのようにラクスが呟いた。

 

 

展望室を後にしたカズィは食 堂に入る。

そこにはトール、ミリアリ ア、サイの3人が沈痛な面持ちで話していた。

「そりゃ、フレイの気持ちも 解かるわよ…でも、あれはちょっと酷すぎるわ」

ミリアリアは眼を伏せて呟 く。

「自分もコーディネイターだ から本気で戦ってない、か……」

先程のフレイの言葉を反芻す るサイ。

「そんなことねえよ! 何時 だってキラは必死に頑張ってんじゃねえかよ!!」

それを否定するように叫ぶ トールにミリアリアも頷き返す。

「でも、後のレイナの言葉に も少し、責任感じちゃうわ」

キラが戦うのは、自分達を護 るため…改めて、その事実を突きつけられ、やや項垂れる。

「いや、俺だって疑ってるわ けじゃないさ。ブリッジにいればMSでの戦闘がどれだけ大変なものかって嫌でも解かるし……」

「でも、ホントそうか な……?」

遮るように呟かれた言葉に3 人はその声の方向を振り向く。

背を向けながら給水機から水 を取り出すカズィに視線が集中する。

「なんだよ、カズィ?」

「獲られちゃったあの MS……『イージス』ってのに乗ってんの、キラの昔の友達らしいよ」

「「「!!?」」」

その言葉に全員が驚愕する。

「さっき、あのコーディネイ ターの女の子と話てんの聞いたんだ……仲のよかった奴だって……」

3人は押し黙るしかなかっ た……

 

 


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