ザフト艦から発進したジンは ヘリオポリスの自衛MAミストラルを蹴散らし、ヘリオポリスに向かっていた。

「フラガ大尉、まだか!?」

輸送船の艦長が咳き込むよう に通信機に怒鳴る。

輸送艦の格納庫には、不釣合 いなMAが3機格納されている……その内の一機…オレンジ色の特殊な機体にムウが飛び込む。

コックピットで計器類を操作 し、起動させると同時に操縦桿を握る。

「ムウ=ラ=フラガ、出 る!!」

ムウは専用のメビウス・ゼロ は宇宙空間に飛び出し、後続のメビウス2機を待たずして格納庫を飛び出した。

それと同時に港口からザフト のMSが突入した。

ZGMF−1017:ジン。 ザフト軍の誇る量産型MSで、宇宙、地上と活動の場所を選ばず優れた汎用性を持つ。圧倒的な物量を誇る地球連合軍のMAを圧倒し、戦局をザフト側の有利に 持ち込み、現在の膠着状態に持ち込ませたのもこの機動兵器の力が大きい。甲冑を着込んだ武者のようなグレイのボディを持ち、大きな鶏冠を思わせる頭部と、 背中に背負った翼のような推進装置が特徴である。

従来の兵器の動力源であった 核分裂エンジンは、ザフトが開発した『ニュートロン・ジャマー』によって無効化されてしまったためにこのMSはバッテリーを動力源としている。

核ミサイルなどの最終兵器を 封じられた以上、戦局を左右するのはこれら機動兵器である。

ジンの突入を認めたムウは、 艦長に通信を入れた。

「船を出してください! 港 を制圧されます。こちらも出る!!」

ドックから飛び出したメビウ ス・ゼロは部下のメビウスを率い、残りのMSに向かって襲い掛かった。

 

 

 

港を突破した4機のジンが 真っ直ぐにヘリオポリス内を飛び……モルゲンレーテ付近へと近づく。

《お宝を見つけたようだぜ。 セクターS、第37工場区!》

「了解。流石イザークだな、 早かったじゃないか!」

ジンの内一機を駆るミゲル= アイマンが炎上する工場区をモニター越しに確認しながら呟いた。

カメラの倍率を上げ、立ち往 生している大型トレーラーを拡大する。

あの中にGと呼ばれるMSが 格納されているはずだ……その時、周囲に展開していた護衛の戦闘車両からミサイルが放たれた。

だが、ミゲルは冷静に持って いたMMI−M8A3:78ミリ重突撃銃で狙撃する。ミサイルを撃ち落としながら、なおも火を噴き、建物の外壁が抉られる。次に照準を標的であるGを輸送 するトレーラーの周囲に移した。再度、銃口が火を噴くと、搬送作業中の人員を襲う。

 

 

Gを搭載したトレーラーとそ れらの補助パーツを載せたトラック……その周りにて作業を行っている連合軍兵士。

「ラミアス大尉、艦との通信 途絶…状況不明……」

一人の作業兵がどこか上擦っ た声でマリューにそう告げる。

その言葉にマリューだけでな く周囲も呆然となるが……それも次の瞬間、彼らの頭上を舞ったジンの起こした爆風に現実に引き戻された。

そのトレーラーの近くにいた 整備士や士官は粉塵が舞いあがる中を伏せる。

「…ザフトの!!」

マリューはいかにも悔しそう に舌打ちする。

「X105とX303を起動 させる! とにかく、工区から出すわ!!」

マリューが叫び、爆風によっ て落ちた緑色の帽子を尻目に見ながらそこを離れた。

その間にもジンの攻撃は続 き、作業用トレーラーを吹き飛ばす。

 

 

 

未だ収まらぬ震動のなか…… ゼミに集っていたキラ達は慌てて部屋を飛び出し、非常階段を目指した。こういった事態の時にエレベータを使用するのは好ましくないからだ。電圧が不安定に なり、途中でその中に閉じ込められてしまうかもしれないからだ。

足元をすくうような振動が 襲ってくる。

ちょうど駆け上がってきた職 員に向かってサイが叫ぶように尋ねる。

「どうしたんです?」

「ザフトに攻撃されてる!  コロニー内にMSが入ってきてるんだよ!!」

「ええっ!!」

その言葉に呆然となるサイ… しかし、気を取りなおして一同に脱出を促す。

しかし、その状況にもかかわ らず、その場にいる二名は意見が違ったようだ。

唐突に一人が走り出す。

「な……君っ!」

驚いて後を追おうとするキ ラ。

「キラ!」

「ごめん! すぐ追いかけ る!」

キラは後から聞こえるサイ達 の声に背を向け、後を追った。

 

 

工場区の外では、激しい戦闘 が繰り広げられていた。

地球軍は地対空ミサイルで応 戦しようとするが、ミサイルを積んだ装甲車は片っ端からジンに潰される。イザーク達、ザフトの潜入部隊はその間隙を縫って、搬出口へ接近しつつあった。

工場を出た所では、三台の大 型トレーラーが立ち往生している。その荷台にはそれぞれ一体づつ、明らかに金属の輝きを放つMSと思われる機体が積み込まれている。

トレーラーに取り付こうと降 下しながら、イザークが指示を飛ばす。

「運べない部品と工場施設は 全て破壊しろ」

降下してくる潜入部隊に気づ いた連合兵士が応戦しようとするが、白兵戦での戦いは明らかに不利であり、一瞬にして撃ち殺される。

殺したイザークは微かに感じ た吐き気を抑え込み……異変に気づいた、

「3機? 報告では5機と聞 いていたが…後の2機はまだ中か?」

トレーラーには3機のGしか 収納されていなかった。

その声に反応するようにして 後にいたアスランが言う。

「俺とラスティの班で行く… イザーク達はそっちの3機を」

その言葉を聞き、イザークは 口を開く。

「OK、任せよう」

その言葉が合図になったかの ように降下していくザフト兵は散開し、散らばりながらコロニーに降り立った。

「各自、機体搭乗後、自爆装 置のロックを解除しろ!」

そう指示を出すと、銃戦の中 へと降り立ち、トレーラー内に逃げ込んだ兵士に向かって手榴弾を投げつけるのだった。

そして、イザーク、ディアッ カ、ニコルの3人はそれぞれGへと乗り込んでいく。

それを見届けると、アスラン はラスティに合図し、残りのメンバーと共に搬出口へと向かう。

 

 

車両の陰に隠れて銃撃戦を展 開するマリューはGに乗り込むザフト兵を見詰めながら歯軋りする。

(ザフトの潜入部隊…MSは 陽動か……完全に戦力が分断されてしまったわね)

思考に耽る間もなく、大きな 爆発が起こり、車両が吹き飛ばされる。

爆風を振り払い、マリューは 指示する。

「ハマナ曹長! 残存部隊を 集結させて! モルゲンレーテの工場ブロックまで後退する!!」

その指示にハマナは驚く。

「しかし、Gが……!」

「このままでは全滅するわ!  後退してX105とX303の2機だけでも死守するのよ!!」

既に運び出された3機は諦 め、マリューは工場区へと後退していく。

 

 

(さっきから続くこの震動… どう考えても戦闘ね)

モルゲンレーテ内の一画でレ イナは舌打ちした。

先程から伝わってくる震動は 明らかに外壁からの衝撃ではない。

「まったく…ルキーニの 奴………」

データ改竄のために訪れてす ぐこの襲撃……恐らくザフトの部隊だろうが……ルキーニの情報は確かに正しかったが……遅すぎだ。

まさか情報を受け取ってすぐ に襲撃が起こるとは流石に予想外だった。

いや……この状況を愉しむた めに敢えてこんな土壇場までレイナに伝えなかったのであろう……十中八九そうだ。

いや……もしかしたら、ザフ トに情報を流したのもルキーニの可能性が出てきた。

あの男はそうやって混乱する 様を見て愉しむような奴だ……そのうえで自分に知らせたということは、なにか予想外の起こることを待っているのだろう。

「相変わらず……嫌な 奴……っ」

思い通りに動くというのは癪 だが、現実そうしなければならないのも事実……内心に毒づき、取り敢えず脱出を試みる……だが、出口へと続く区画の通路が崩れ、道が塞がれて出るに出れな い状況であった。

「仕方ない……」

レイナは通気口のダクトを蹴 り開け、その薄暗いダクト内を進んでいった。

 

 

突如走り出した少女を助けた キラは二人で工場区へとひたすらに通路を走っていた。

そして、長い廊下を走り抜 け、出口が見え始める。

暗さに慣れた眼が明るさに反 応し、目眩を起こしかけた場所で、二人は見てしまった。

金属独特の冷たい輝きを放 つ…地球軍の新型MS:Gを………

「こ、これは…!」

キラもそれには驚愕する。

階下では銃撃戦や爆発が飛び 交っているが、それも眼に入らない……ただ、トレーラーに固定された2機のGの姿に言葉をなくす。

だが少女はキラの手から離 れ、よろよろと手すりに寄った。

「やっぱりだ…地球軍の…新 型機動兵器……ぅぅ…」

手すりにつかまったままヘ タっと膝をついてしまった少女をなんとか逃げさせようとしたとき……

「お父様の裏切り者ぉぉぉぉぉ!!!」

予期せぬ絶叫にしたのフロア で銃撃戦を行っているマリューは、その銃身を少女に向けた。

「! 冗談じゃない!!」

キラは急ぎ少女を引っ張り、 その場から駆け出す。数発の弾丸が二人を掠める。

「子供!?…どうしてこんな 所に…」

その時、二人を撃ったマ リューは心の中で懺悔をしていた。

 

 

 

トレーラー周辺にいた連合兵 をほぼ一掃したイザーク達はそれぞれ各々が目ぼしい機体に乗り込んでいた。イザークは手近にあった一機のコックピットに搭乗し、OSを起動させる。ナチュ ラルが手間取る作業を彼は僅か数分で終わらせた。

イザークの乗ったシンプルな Gがビームライフルとシールドを掴み、ゆっくりとその灰色の金属質なボディを起こす。

「ほぉ…地球軍にしては中々 のものじゃないか…どうだ? ディアッカ」

イザークがもう一つのGに 乗っているディアッカに声を掛ける。

「OK、アップロード完了、 リンク最高潮…ナーブリング再構築………動け!」

続けて立ち上がる二門の砲門 を背負った明らかに重武装のG……

「ニコル?」

「待ってください、後もう少 しで…」

イザークに急かされ、ニコル はプログラム起動の為にキーボードを素早く打ち込む。

トレーラーに固定された3機 のGが静かに立ちあがる……

まったく違った形状を誇る3 機のG……

「アスランとラスティは…… 遅いな」

「ふん、奴らなら大丈夫だ ろ。とにかくこの3機、先に持ちかえる、クルーゼ隊長にお渡しするまで、壊すなよ」

イザークが念を押すように二 人に言う。

刹那Gのブースターが青い炎 をはき、宇宙高く舞い上がる。

 

―――GAT−X102  デュエルガンダム

―――GAT−X103 バ スターガンダム

―――GAT−X207 ブ リッツガンダム

 

『決闘』、『砲撃』、『電 撃』の名を冠するその灰色を基調としたカラーの巨体は宇宙へと消え、ローラシア級戦艦ガモフへと飛んだ。

 

 

 

未だ二機のMSを残す格納庫 では激しい銃撃戦が展開されていた。

トレーラーに寝かされたMS に向かって迫るザフト兵達に対し、地球軍兵士達がトレーラーの陰から応戦している。激しい銃弾が宙を疾走し、トレーラーの装甲に当たった銃弾が跳弾し、火 花を散らす。

必死に応戦している地球軍兵 士達だが、ザフトが相手では分が悪いのは確かだった。

ザフト兵はコーディネイター と同意義だ。運動能力、視力、判断力すべてにおいてナチュラルを凌駕している。加えてここで戦っているのは殆どが技術士官なことも不利な要因だった。

そんな下の攻防に眼もくれ ず、キラは少女の手を引いて必死に走っていた。

「はぁ…はぁ…はぁ…」

息を切らし、下を向く少女。

「大丈夫、大丈夫だから!」

少女の錯乱の真意は解からな いが、今はこの少女を助けたいとキラは励ましながら走り、あるシェルターの前へと辿り着く。

「ほら、ここに避難している 人がいる」

安心させるようにそう話し掛 けると、シェルターの回線スイッチを入れる。

《まだ、誰かいるのか?》

男の声が回線の向こうから聞 こえる。その声に微かにホッと胸を撫で下ろす。

「はい、逃げ遅れたんです。 僕と友達もお願いします」

《二人!? 駄目だ、こっち はもう一杯だ、東ブロックの37番シェルターには行けるか!?》

キラは東ブロックの方面を見 ると…瓦礫の奥に炎が上がっている……二人で行けるはずが無い……唇を噛み締めながら再度話し掛ける。

「だったせめて、一人だけで も…女の子なんです!」

その単語に…僅かな逡巡のあ と、返答が返った。

《解かった…すまん!》

男の謝罪の声がした途端、 シェルターのエレベーターが登ってきた。

ロックを示す点灯ランプが青 に切り換わり、扉が開いた……このエレベーターを降りればそのままシェルターへと繋がる。

「さぁ、入って」

「え……?」

「早く!」

戸惑う少女の肩を掴み、エレ ベーターに押し込む。

「お、おい! お前はどうす るんだ!?」

「僕は向こうのシェルターに 行く…!」

抗議する少女を無理矢理押し 込める。

「ま、待て…お前!」

まだ何か言いたそうだった が、キラはスイッチを押す。それ連動してエレベーターは降下していった。

そしてキラは再び工場区に向 かって走り出した。

「ハマナ! ブライアン!  早く起動させるんだ!!」

マリューは近くにいた二人に 指示を出し、銃を撃つ。

その姿は駆けるキラからも見 えた……銃声に混じって飛ぶ怒号と悲鳴………その時、オレンジ色のつなぎを来たマリューに、照準を合わせているザフト兵を見つけた。

「危ない! 後!!!!!」

キラがそれに気づき、思わず 叫んだ瞬間、マリューは反射的に反応してMSの装甲を盾にし、その銃弾をやり過ごした後、弾の切れた自動小銃からハンドガンに持ち替え、敵を撃った。

短い悲鳴と共に崩れ落ちるザ フト兵。

そして上の通路に立つキラを 見つける。

「さっきの子供…何で!?」

その疑問を反芻する間もなく 近くにいた一人の作業兵が撃たれる。

舌打ちしてマリューはその 撃った兵士を撃ち返し、牽制する。

弾倉を交換しながら、マ リューはキラに向かって怒鳴った。

「来い!!!」

少なくても自分の所は安心だ と思ったのか、マリューはキラを呼んだ。

「東ブロックの37番シェル ターに行きます、お構いなく!」

「あそこはもうドアしかな い!」

ドアしかない……つまり破壊 された後だということ……その時、今から行こうとしていた非常通路が爆炎に包まれ、鉄屑が吹き飛んでくる。

もし、キラがマリューに呼び とめられなかったら、あの鉄くずと運命を共にしていただろう。

キラは意を決してタラップを つたってGの元まで走っていく。

「こっちへ!」

マリューもキラに近づき、 コックピット付近まで走る。タラップの途中でキラは数メートルはある上から飛び降りる。

その見こなしに驚き、一瞬動 きを止めるマリュー。

未だ銃火のやまない戦場…… 応戦していた作業兵の放った銃弾がラスティの肩を掠る。

「ぐあ!」

「ラスティ!!!」

アスランがラスティに駆け寄 る。

「大丈夫か!?」

「あ、ああ…」

赤いスーツの上から流れる 血……弾は掠っただけのようだが、利き腕をやられた以上、これ以上は危険すぎる。

そう判断したアスランは銃を 構え、ラスティに言い放つ。

「ラスティ、お前は後退し ろ…その怪我では無理だ」

「しかし…!」

喰い下がるラスティをアスラ ンは怒鳴りつけるように嗜める。

「俺一人でもやってみせる… 早く!!」

腰からグレネードを掴み…そ れを連合兵の固まっていた場所へと放り投げ、爆発が巻き起こる。

「解かった…アスラン、後を 頼む!」

やや悔しげに歯噛みし、ラス ティは数人のザフト兵に連れられ、後退していく。

それを見送るとアスランは キッと前を睨みつける。

雄叫びと共に銃を乱射しなが ら飛び出した。

「うおおおおおおおおおおお お!!!!」

銃火のなかに突っ込み、手当 たり次第に乱射し…残っていた作業兵も全滅した。

「ハマナ!」

同僚を撃たれたマリューは銃 を向ける。

だが、不意に自分達を狙う銃 口を眼にし、それに向かい銃弾を放つ。

「う!…ぐぅ……っ」

その弾はマリューの右肩に当 たり、血を流しながらマリューは力なく倒れた。

「!!」

崩れ落ちるマリューに眼を見 開くキラ。

弾が切れた銃を投げ捨て、軍 用コンバットナイフを抜き去り、マリューにトドメを刺そうと跳躍した。

キラは右腕を押さえるマ リューの元まで駆け寄るが、その間に相手はナイフを振り上げて接近してくる。

その気配に気づいたキラが顔 を上げる。

アスランは息を切らしながら 顔を上げる…その炎の照り映えるバイザー越しに顔を見た瞬間…キラの脳裏に幼い頃の光景がフラッシュバックする。

不意にキラが口を開く……

 

「……アスラン?」

「…キラ?」

 

その存在に気づいたアスラン は動きを止める。

2人は金縛りにあったかのよ うに一瞬硬直する。

2人の会話の間に入る爆音と 金属音……炎が舞い上がる中、2人は呆然と見詰め合う。

しかし、そんな2人の間に水 を差すようにマリューが傷ついた右手で銃を構える。

「ちっ!」

間一髪でそれに気付いたアス ランは、バックステップでそこから飛びのく。

その光景をキラは呆然と見送 る。

敵の撤退と見たマリューは横 に立っていたキラを弾き、GAT−X105ストライクガンダムのコックピットに自分も飛び込む。

爆発が迫る中、その光景を見 送ったアスランはGAT−X303イージスガンダムに乗りこんだ。

 

 

爆発の中、ストライクガンダ ムの左腕が動き、脚を拘束していた拘束具を弾き飛ばす。

拘束具が次々と外れ、次第 に、ガンダムは上半身を起こしていった。

背中に取り付けられていた コードが抜け、ガンダムは手で上体を起こし、地に脚をついた。

そして、まだ光の灯っていな いアイセンサーに光が灯る……

鳴り止まない爆音の中、スト ライクガンダムが今、大地に立った………

 

 

 

 

その頃……薄暗いダクトの中 を進むレイナ。

少なくとも、方向は間違って いないはずだが……しかし、一向に外へと出られる気配が感じられない。

それに、先程から遠くで聞こ える爆発音……どうやら、コロニー内でもなにか激しい戦闘が行われているようだ。

(連合もザフトも……コロ ニーを潰す気………)

内心、舌打ちする……内部で 戦闘が行われている以上、最悪ヘリオポリスが崩壊するという事態もありうる。

急ぎ、ここを脱出してシェル ターなりに行かなければ……しかし、こんなことなら銃を携帯しておくべきだったと自身の迂闊さに毒づく。

(ったく、何時まで続くの よ……)

いい加減、狭いダクト内を進 むのが鬱陶しくなって…愚痴をこぼし、手を前に出した瞬間……下にあった通気口が外れた。

「え……きゃぁっ!!」

一瞬、呆然とした瞬間……重 力に従い、まっさかさまに落ちていく。

「くっ!!」

だが、態勢を戻し…重心を戻 して激突ギリギリで着地することに成功する。

「はぁ…危なかった」

ホッと溜め息をつくと、自分 が落ちてきた場所を見渡す。

薄暗い…格納庫のような一 室。

しかし、妙に天井が高い…自 分が落ちてきた天井を見上げながら振り向く。

「!!」

振り向いた先にあったものに レイナは眼を見開く。

ハンガーに固定された一体の MS……薄暗くてその全貌を確認することはできないが、明らかに自分が知っているザフトのMSとは違う。

訝しげに歩み寄る……徐々に 明確になってくる形状………人型のボディはMSとして、なによりジンに通じるものがあるが……頭部の形状がまるで違う………

人間と同じ2つのカメラアイ の瞳……そして巨大なマルチプレートアンテナを持つ頭部………

(これが…ルキーニの言って いた………)

その時になって、レイナはボ ディ付近の開かれたコックピットハッチに気づいた……静かにハッチを開けて佇む姿は、まるで主を待ち続けているようにも見れる……

レイナは意を決したように コックピットへと続くラダーを掴み……そのままハッチ付近まで昇ると、コックピット内に入る。

シートに着くと同時に呼応し てハッチが閉じ、計器類に光が灯っていく。

眼前のモニターにOSの起動 画面が表示される。

 

welcome to  M.O.S

 

地球軍のマークを背に文字が 浮かび、セットアップが始まる。

(やはり…このMS……地球 軍のもの………)

ルキーニの情報通り……ザフ トのMSとは確かにまったく違う………

 

-eneral

-nilateral 

-euro−Link 

-ispersive 

-utonamic 

-aneuver

 

「G…U…N…D…A… M………ガン…ダム……?」

続けて機体名が表示される。

 

GAT−X000  LUCIFER

 

「ルシファー…堕天使、か」

その名に、自嘲気味な笑みを 浮かべる。

APUが起動し……機体の瞳 に真紅の光が灯る。

それに呼応して全身に黒の色 が走る…だが、背中のウイングスラスターだけは血のような紅が施される。

両腕を抑え付けていた拘束具 を引き千切り、続けて両の脚の拘束具を弾き飛ばす。

ボディを抑え付けていたアー ムが外れ、真紅の翼を拡げる……

 

 

レイナとルシファーという名 のMS……

この邂逅が…彼女を過酷な運命へと導く始まりであることを…彼女はまだ知らない………

 

 

 

 

 

《次回予告》

 

 

それは必然だったかもしれな い……

運命の道が彼女の前にひらか れる………

少女は運命に……黒き機体へ と導かれる………

 

紅の戒めを背負い…少女は力 を得る……

堕天使という名の力を……

 

次回、「堕天使」

 

紅き翼…舞え、ガンダム。




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