ゼロのリニアガンを切り落と したクルーゼは不敵な笑みを浮かべながらストライクへと再接近する。

「今のうちに沈んでもら う!!」

 

「う わぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

ランチャーパックがアジャス トされ、武装が表示される。

 

120mm対艦バルカン砲

350mmガンランチャーコ ンボウェポンポッド

320mm超高インパルス 砲・アグニ

 

「ビーム兵器…!」

確認する間もなくシグーがラ イフルを放ってきたのでキラはフェイズシフトを作動させる。

灰色のボディに色が浮かび上 がり、ランチャーストライクガンダムが立ち上がる。

「ちっ!」

レイナも舌打ちしてフェイズ シフトを作動させる。

その装甲の前に銃弾はものと もしない。

ドカァァァァァァンンンンン!!!!

その時、凄まじい爆発と共に 壁は破壊される。

 

「何!?」

その爆発に驚き、動きを止め るシグー。

戦場に姿を現わす白い巨 体……

「新型…仕留めそこなった か」

軽く舌打ちをするクルーゼ。

「…戦艦?コロニーの中で」

蛇行するゼロの中でムウも呟 く。

 

「ア、アークエンジェル!」

その戦艦を見たマリューは一 際大きな声を上げた。

 

 

機動戦士ガンダムSEED 

TWIN DESTINY OF  DARKNES

PHASE-03  崩壊の大地

 

 

コロニー内に姿を現わした アークエンジェル。

「隔壁突破…コロニー内に侵 入」

「モルゲンレーテは大破」

「MS反応…2機?」

「うち一機はストライク…起 動中、いえ、戦闘中です!」

報告にナタルはモニターに眼 を向ける。

シグーがアークエンジェルに 向かって軌道修正し、向かってきた。

「回避、面舵いっぱい!」

ナタルの指示にノイマンは慣 れない動作でハンドルを回す。

それに連動してアークエン ジェルはシグーの放ったライフルをよける。

クルーゼは一瞥し、改めてス トライクとルシファーを狙う。

「フェイズシフト…これはど うだ!」

先程の攻撃が防がれたので、 ライフルのカートリッジを交換する。

「伏せて!!」

マリューの言葉に大地に身を 伏せるトール達。

「くっ!!」

キラはその盾となろうとスト ライクをしゃがませ、シグーの放った銃弾を弾き返す。

「ちっ、強化APS弾を」

予想を超える装甲の強度に舌 打ちする。

その間に態勢を立て直すアー クエンジェル。

「艦尾ミサイル7番から10 番まで起動…レーザー誘導。間違ってもシャフトや地表には当てるなよ」

その言葉にロメルは緊張しな がら照準を合わせ、ミサイルを発射する。

艦尾から放たれたミサイルが シグーに迫る。

「ちぃぃ!」

舌打ちをしながら追尾いてく るミサイルを一基落とし、シグーは上昇しながらシャフトの影に隠れる。

ミサイルは影に隠れたシグー に向かうが、その前に立ち塞がるシャフトに当たる。

同じくシグーを狙ったミサイ ルは次々と外れ、シャフトに被弾する。

その度重なる被弾にシャフト を支えるワイヤーが途切れ、シャフトは分解し、地表へと落下する。

「じょ!冗談じゃない!!」

その光景を目の当たりにし、 キラはインパルス砲・アグニを構える。

コックピットに照準スコープ がセットされ、照準がシグーにロックオンされる。

トリガーを引こうとした瞬 間、アグニをルシファーが抑える。

「な、何を……」

相手の突然のことに驚く。

「それを撃つのはやめなさ い…下手をしたらコロニーに穴が開くわよ」

通信機から飛び込んでくる声 に自分がやろうとした事に呆然となる。

「私が行く…!!」

刹那…ルシファーはウイング スラスターを広げ、空中へと舞い上がる。

 

「むっ…例の未確認機か!」

コックピット内のモニターに アラートと共に接近してくるルシファーの姿が映る。

「悪いが…墜とさせてもら う!!」

MMI−M7S重突撃機銃を 放つが、ルシファーはかわす。

「ZGMF−515…シ グー………ならば!!」

眼が細まり、一気に接近す る。

先程のスペック確認で、この 機体にはまだ近距離と中距離用の武器しか内蔵されていないが、下手に攻撃すればコロニー内にさらにダメージを与えてしまう。

だからこそ接近戦に持ち込 む。

「ちぃぃ!!」

クルーゼは攻撃をやめ、重斬 刀を取り出す。

レイナもビームサーベルを抜 き、斬り掛かる。

二つの刃が交差し、エネル ギーがスパークする。

「はぁぁっ!!」

だがレイナはそのままビーム サーベルを振り下ろす。

重斬刀と共にシグーの右腕が 斬り落とされる。

「くっ…!!」

被弾したシグーは煙を上げな がら離脱していく。

「これほどまでのパワーを持 つとはな……」

レッドシグナルが点灯する コックピットでクルーゼは舌打ちしながら港へと離脱していった。

「敵MS…離脱します」

その報告にナタルは思わず深 く息を吐き出す。

「着陸する…対地速度合わ せ、重力の発生に注意しろ」

そしてアークエンジェルは ゆっくりとコロニーに降り立つのだった。

 

 

着陸したアークエンジェルの 甲板に着陸するゼロ。

そして、発進口に着陸するス トライクガンダムとルシファーガンダム。

ストライクが手に抱えていた マリュー達をそっと下ろす。

そこへ駆け寄ってくる士官 達。

レイナはコックピットから降 りるや否や驚いている顔が視界に飛び込んできた。

キラは仲間達に囲まれて気付 いていないようだ。

士官達の間に漂う微妙な空 気…MSを動かしていたパイロットが軍人ではなく子供だという事実は、先程の士官も同様に驚いていたのだから。

恐らく、訓練を受けた正規のパイロットでさえものろくさとしか動かせなかった機体をああも簡単に動かしてしまう。

というより、純粋にMSなんかにのっていたのが子供だったことが驚愕なのだろうけど……どちらにしろ、ナチュラルであるはず がないことに気付く人物がいないわけがない。

「へ〜こいつは驚いたな」

その時、軽い口調と共に一人 の男が歩み寄ってきた。

全員がそちらに眼を向ける と…ムウ=ラ=フラガが笑みを浮かべて歩み寄ってきた。

「地球軍第7機動艦隊所属、 ムウ=ラ=フラガ大尉だ」

ムウが敬礼したので、マ リュー達も慌てて敬礼を返す。

「あ、第2宙域第5特務師団 所属、マリュー=ラミアス大尉です」

「同じく、ナタル=バジルー ル少尉です」

その答えに満足すると、辺り を見渡す。

「乗艦許可を貰いたいんだ が…この艦の責任者は?」

その言葉にナタルが表情を歪 める。

「…艦長以下、主だった艦の 士官は、皆戦死されました。よって、今はラミアス大尉がその任にあると思います」

「え!?」

その重い口調に驚愕するマ リュー。

「無事だったのは、艦にいた 下士官のみです。自分はシャフトの中で運良くなお…」

「艦長が…そんな……」

マリューは思い掛けない衝撃 に凍りつく。

「やれやれ…なんてこった… あ、取り敢えず乗艦許可をくれよ、ラミアス大尉。俺の乗ってきた艦も落とされちゃってね」

「あ、はい…許可します」

呆気に取られたマリューが返 事すると、ムウはキラ達を見やる。

「で…あれは?」

「御覧の通り…民間人です。 襲撃を受けた時…何故か工場区にいて、私がGに乗せました。少年の方がキラ=ヤマトと言います。それとあの少女の方は…まだ」

「ふ〜ん」

その答えに笑みを浮かべる。

「あ、彼らのおかげで、先に もジン数機を撃退し、アレだけは守ることができました」

その言葉に驚愕するナタル 達。

「ジンを撃退した!?…あの 子供が!?」

信じられないといった表情で キラやレイナを見やる。

「俺は…あのXナンバーのパ イロットになる予定だったひよっこ達の護衛で来たんだが…連中は?」

「ちょうど…司令ブースで艦 長に着任の挨拶をしている時に爆破されたので…共に」

それに答えるように沈痛な面 持ちで呟くナタルにムウも肩を落とす。

「…そうか」

やがて表情を引き締めるとム ウはキラ達の前に進み出た。

「君、コーディネイターだろ?」

レイナは前置きもなく尋ねる言葉に空気が凍りついたように感じる。

その言葉にキラは表情を変 え、周りにいた者達は呆然となる。

だが、マリューは眼を細め る。

心の何処かで確信していたの かもしれない……

「……はい」

キラは一言そう切り返す…当 然のごとく、キラに銃口が向けられる。

今の戦争の愚かな構図だ。

「……滑稽ね」

肩を竦め、囁くように呟かれ た言葉は、その静まり返った空間に響き渡った。

発された心底呆れたような声。

「最初は自分達で作り出しておいて、恐くなったから排除しようなんてね」

民間人の少女が言った事に驚いてそっちにも銃口を向ける兵士。

唇の端を上げるような笑い方で、レイナは嘲るように笑う。

「貴様もコーディネイターか?」

マリューの隣にいたナタルの詰問口調の問いにもその笑みを崩さず……

「答える義務はないわ」

銃を向けられていると言うのに、動じることもなく、挑発的な態度も崩さずにレイナは佇む。

オロオロとするミリアリアや キラを庇うように前にでたまま固まってしまったトールは、レイナを伺うように見ている。

暫くは睨み合いの静寂が続いた。

 

その頃…未だヘリオポリスの 周辺を航行するヴェサリウスとガモフ。

ヴェサリウスのブリッジでは 今後の対策が議論されていた。

「ミゲルがこれを持ち帰って くれて助かったよ……でなければ、いくら言い訳したところで、地球軍のMS相手に機体を損ねた私は…大笑いされていたかもしれん」

モニターにはジンによって映 されたストライクガンダムの戦闘の映像が映し出されていた。

最初の頃はなんともぎこちな い動きが、途中から見違えたようにシャープに変わり、ジンに迫ってくる。

その様子をミゲルをはじめと したメンバーとアスランも見詰めていた。

「そしてこの機体と…直後撃 破されたジンが最後に送ってきた映像がこれだ」

クルーゼが端末を操作すると 画面が変わり、空中に浮かぶルシファーガンダムが映る。

ジンがライフルを放つが、相 手は悠々とかわし、ビームサーベルを抜いて眼前に迫ったところで映像が途切れる。

「知っての通り…情報では地 球軍の試作MSは全部で5機であった。だが、今回の戦闘で6番目の未確認の機体が存在していたことが明らかになった」

クルーゼの言葉に全員が押し 黙る。

当初、ザフトが掴んだ情報で は地球軍の新型MSは5機であった。

ゆえに突如として出現した未 確認の6機目に衝撃を受けていた。

「オリジナルのOSについて は、君らも知っての通りだ…なのに何故、この2機がこんなに動けるのかは解からん…だが、我々がこんなモノを残し、放っておくわけにはいかんということは はっきりしている!」

クルーゼの言葉に頷き返す一 同。

「捕獲できぬとなれば、破壊 するしかない。戦艦もだ…侮るな」

最後にそれだけ伝えると、全 員が敬礼を返す。

「ミゲル、オロール、マ シューはすぐに出撃準備に掛かれ!D装備の許可が出てる!今度こそ確実に息の根を止めてやれ!」

隣に立っていたアデスがそう 伝えると、3人は敬礼し、ブリッジから出ていく。

それを見送るアスランは意を 決して話し掛ける。

「アデス艦長…私も出撃させ てください」

予想外の申し出に思わず聞き 返す。

「何……?」

「機体がないだろ…それに、 君はあの機体の奪取という重要任務を既に果たしている」

「しかし!」

クルーゼの言葉に反論する が、アデスが止める。

「今回は譲れ、アスラン!ミ ゲル達の悔しさも、君に遅れは取らん」

だが、アスランは納得でき ず…密かに決意を固めるのであった。

 

 

「…銃を下ろして、彼らは敵 じゃないわ」

そんな静寂を破ったのはマ リューだった。

「貴方も挑発するような言動は謹んで」

「従う義務はないと思いますけど……

……だから、そういう言い方を止めて頂戴って言ってるのよ」

溜め息交じりに呟く言葉にも、笑みで誤魔化す。

「ラミアス大尉…」

納得できないナタルが追及す るが、マリューは苦笑を浮かべる。

「そう驚くことでもないで しょう…ヘリオポリスは中立国のコロニーですもの。戦火に巻き込まれるの嫌で…ここに移ったコーディネイターがいたとしても不思議じゃないわ……違う、キ ラ君?」

そう尋ねると…キラは難しい 表情のまま頷く。

「ええ…僕は一世代目のコー ディネイターですから」

「一世代目?」

「両親はナチュラルってこと か……騒ぎにしちまってわりいな…俺はちょっと確かめたかっただけでね……」

この騒ぎの原因をつくった本 人は、悪びれた様子も見せずに謝罪の言葉を口にする。

意図が掴めないムウの態度に レイナは考え込む。

何の考えもなく尋ねただけの バカか…それとも、地球軍の艦であるこの場で後の厄介事を避けるためにわざと話題にしたのか…後者だったら相当頭の切れる人間だが、前者だったらあまりに 情けない……

ムウ=ラ=フラガという人物 を、レイナも多少なりとも知っている。

開戦初期に月面のエンディミオンクレーターでザフト軍のジンをナチュラルでありながら5機撃墜した。 別名エンディミオンの鷹。

パイロットとしては確かに優 秀かもしれないが……

「道中…これのパイロットに なるはずだった連中のシミュレーションを結構見てきたけど、連中…ノロクサ動かすだけでも四苦八苦してたぜ」

苦々しげに呟くムウにナタル は口を噤む。

「それをあんな簡単に動かし てくれちまうんだからさ」
……嫉み、ですか?それがこの戦争の根源であるって解かってます?」

「嬢ちゃん…性格キツイな」
……褒め言葉としてもらっておきますよ」

棘があるような笑顔を浮かべ るレイナ。

「一つだけ言っておきま す……」

一呼吸置き……レイナは静か に言い放った。

「私は……ナチュラルでも… コーディネイターでもない………」

 

 

 

ガモフの格納庫では武器コン テナが開けられ、何基ものミサイルが出され、ジンに装備されていた。

その横のハンガーにはデュエ ル、バスター、ブリッツが固定されていた。

ジンに装備されるのを見詰め ているイザーク、ディアッカ、ニコルの3人。

「D装備だってさ…要塞攻略 戦でもやるつもりなのかな、クルーゼ隊長は?」

イザークが冗談風に呟く。

「でも、あんなものを使った らコロニーが…」

ニコルが不安げに呟く。

それに対し二人は冷淡だっ た。

「ま、しょうがないんじゃな い」

「自業自得だな…中立だとか いって地球軍の新型兵器を開発してればな」

その言葉にニコルも口を噤 む。

そして作業を見詰めるので あった……

 

 

数分後、アークエンジェルに 様々な物資が搬入されていく。

そして格納庫に移されたスト ライク、ルシファーとゼロの調整が始まっていた。

「ストライクとルシファーの 弾薬の補給が先だ!急げ!!」

マードックは指示を出す。

その横ではゼロの修理も行わ れていたが、何分人手が足りない状況であった。

「マードック軍曹、来てくだ さいよ〜」

部下の呼び掛けにマードック はあくせく動くのであった。

 

 

そして、キラ達はアークエン ジェル内の部屋に案内され、一時の休息を取っていた。

レイナも同じ場所へと案内さ れ…壁に凭れてキラ達を見渡していた。

2段ベットの上部にて壁に凭 れながら寝息を立てているキラ。

やはり、心労が溜まっていた のだ。

「この状況で寝られちゃうっ てのも凄いよな」

その様子を見たカズィがそう 呟く。

「疲れてたのよ…キラ、ずっ と大変だったから……」

「大変だった、か……ま、確 かにそうなんだろうけどさ」

その棘があるような言い方に 全員が顔を上げる。

「何が言いたいんだ…カ ズィ?」

サイが咎めるように詰め寄 る。

「別に…ただ、キラにとって はあんな事も大変だったって済んじゃうだってな」

そう言ってキラの方を見や る。

「キラ…OS書き換えたって 言ってたじゃん…アレの。それって何時だよ?」

「何時って…?」

全員が答えに詰まる。

「キラだってあんなもんの事 を知っていたとは思えない…じゃあ、あいつ、何時OSを書き換えたんだ」

キラ本人もあのMSのことは 知らなかった。

OSを書き換えたとしたら… アレに乗り込み、戦闘が始まってからしか考えられない。

ストライクの戦闘の様子は全 員が見ていた。

途中から見違えるようになっ たストライクの動きを……

 

あの…僅かな間に……しか も、ジンと戦闘しながら………

 

全員の表情が沈む。

「キラがコーディネイター だってのは知ってたけど…遺伝子操作によって生まれたコーディネイターには、あんな事も大変だったで済んじゃうんだぜ…ザフトってのは皆そうなんだ…そん な連中に勝てるのかよ、地球軍は……」

「さあ?」

答えたのは以外にもレイナ だった。

「ザフト…プラントと地球の 間には決定的な国力の差がある……だからこそ開戦当初は誰もが物量で上回る地球軍の勝利を疑わなかった…だけどプラントは逆に優れた技術でそのハンデを覆 した……ま、そのおかげで今の膠着になってるんだけど…それにしても…護ってもらったわりには随分な言い草ね」

カズィの呟きに答えるような 冷たい口調に全員の視線がレイナへと注がれる。

「怖いの?…友達が」

冷ややかな真紅の瞳がカズィを射抜く。

「彼がコーディネイターだから…自分達とは違うから……怖いの?」

カズィは答えられずに視線を逸らす。

(ホント…大した友情 ね………)

敢えて口には出さなかった が…レイナは軽蔑の眼で見下ろした。

気まずい沈黙がその場を暫し 支配した。

 

 


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