機動戦士ガンダムSEED 

TWIN DESTINY OF  DARKNESS

PHASE-05  混迷の戦い




 

ガモフより発進したデュエ ル、バスター、ブリッツは真っ直ぐにアークエンジェルへと向かう。

PS装甲がONになり、3機 は灰色からカラーリングが施される。

その接近を逸早くブリッジで 察知する。

「後方より接近する熱源3!  距離67…MSです!!」

チャンドラの報告にナタルは 素早く指示する。

「対MS戦闘用意! ミサイ ル発射管、13番から24番コリントス装填! リニアキャノン・バリアント両舷起動! 目標データ入力急げ!」

艦尾のミサイル発射口が開 き、両翼の外側にあるプレートから折りたたまれていたリニアキャノン、バリアントMK8が砲身を現わす。

戦闘準備が完了すると、機種 特定を行っていたチャンドラが声を上げた。

「機種特定…これは!……X ナンバー、デュエル! バスター! ブリッツです!!」

「何……?」

ブリッジが静まり返る。

「奪ったGを…全て投入して きたというの……」

絞り出すような声でマリュー は呟いた。

 

 

アークエンジェルの前面に展 開するストライク、ルシファー。

(前方から1機…後方から3 機………)

モニターを見詰めるレイナは 状況を分析する。

「キラ、前方の敵は任せる わ……私は後方の迎撃に回る」

《え……》

通信機から驚いたようなキラ の声が聞こえてきたが、それを無視し、レイナは反転してアークエンジェルの後方に向かう。

 

「レイナ……!!」

キラはすぐさま眼前に眼を向 ける。

前方のヴェサリウスから発進 したイージスの接近を告げるアラートが響いたからだ。

イージスのコックピットでア スランはストライクの姿を確認していた。

 

『GAT−X105   STRIKE』

 

機種特定を告げる文字が表示 される。

「キラ……!」

アスランが唇を噛む。

 

同じくストライクのコック ピットでもキラは接近してくる機影の特定が表示される。

 

『GAT−X303   AEGIS』

 

「あのMS……アスラ ン!?」

モニターに拡大される真紅の 機体にキラは息を呑んだ。

 

 

アークエンジェルに後方から 迫る3機。

「ヴェサリウスからはもうア スランが出ている…遅れるなよ!!」

先陣を切って進むデュエルに 乗るイザークが二人に告げる。

「フン! あんな奴に!」

ニコルは頷き、ディアッカも 獲物をとられてたまるかとブリッツとバスターが続く。

 

呆然となっているブリッジの 中でマリューが逸早く覚醒する。

「迎撃開始!!」

その声に全員がハッと我に還 る。

たとえ自分達が造った兵器で も今は敵である…自分達が生き延びるためには戦わなければならない。

「ミサイル発射管、13番か ら18番…撃てぇぇぇ!!」

戦闘指揮官のナタルの指示に 艦尾の発射口からミサイルが発射される。

休まず次弾の装填を急がせ、 次の発射管の指示を出す。

「7番から12番、スレッジ ハマー装填! 19番から24番、コリントス、撃てぇぇぇ!!」

続けて放たれるミサイルの 群。

それに続くようにレイナはル シファーを駆る。

コックピットに接近してくる 敵の情報が表示される。

 

『GAT−X102   DUEL』 

『GAT−X103   BUSTER』

『GAT−X207   BLITZ』

 

「残りの3機……一機はこの 機体から発展した前衛を目的とした初期機。もう一機はその発展型…後方から援護を目的とした機体……最後の一機、強行偵察を目的とした索敵機」

渡されたデータからレイナは 素早く敵機の情報を探る。

G計画は、レイナが乗るルシ ファーを3つのフレームに分けて開発された試験機運用を目的とした後の量産計画のためのプロジェクト。

本来はアークエンジェルを母 艦とし、初期に開発されたデュエルと汎用性の高い換装式のストライクが前衛を務め、それを後方から援護、または敵艦や拠点攻撃用の大火力を備えたバスター が務め、ブリッツが強行偵察、また戦闘における補佐を務め、最後の変形システムを備えたイージスが指揮を執るといった運用が計画されていた。

だが、逆にそれぞれの特性を 特化し過ぎた部分がある。

言わば、状況が限定されてし まい、一機でも欠ければ運用は難しくなる。

「ならば…先に火力を潰す」

レイナは目標をバスターに定 めた。

圧倒的な火力を持つ敵を先に 潰しておけば、少なくとも間合いを開けての戦闘は有利になる。

スラスターを噴かし、一気に 迫っていく。

 

 

ミサイルをかわしながら接近 する3機のコックピットにアラートが響く。

「敵MS…来ます!」

「X000…ルシファーだ と!! ふざけた名前をつけやがって!!」

モニターに表示される敵機の 名前にイザークは吐き捨てる。

「所詮ナチュラル…俺達の敵 じゃ……」

小馬鹿にするディアッカが言 葉を紡ごうとした瞬間、ルシファーは一気にバスターの懐へ飛び込んでいた。

「なっ……!?」

驚く間もなく、慌てて両手に 持った94ミリ高エネルギー収束火線ライフルと350ミリガンランチャーを構えるが、相手に懐へ入り込まれれば、砲撃武器しか持たないバスターでは対処で きない。

レイナはルシファーのビーム サーベルでバスターを斬りつけ、態勢が崩れたところへ蹴りをかます。

「どわぁぁぁぁ!!」

「「ディアッカ!」」

吹っ飛ばされるバスターに驚 く二人。

 

(こいつら…ひょっとして運 用も何も考えてないんじゃ……)

フォーメーションも組まずに まさか、それぞれが向かってくるとは流石に思わなかった。

レイナは思い至った…このパ イロット達は明らかに新米だと。

コーディネイターだから、多 少なりともパイロットとしての腕はいいのだろう…逆にそれが災いして、自意識過剰になっているのだろう。

(まあいいわ…なら次 は……)

レイナは次の目標をデュエル に定める。

次いでアークエンジェルへと 通信を送る。

「援護して……!!」

ルシファーがビームライフル を放ちながら後退する。

「きっさまぁぁぁぁ……逃が すかぁぁぁぁ!!」

怒りにかられたイザークの デュエルが追撃する。

「イザーク!!」

ニコルのブリッツも慌てて後 を追う。

 

 

その頃…イージスとストライ クがそれぞれの姿を射程に捉えていた。

イージスがビームサーベルを 抜き、ストライクもまた背からビームサーベルを抜く。

対峙した2機は高速ですれ違 う。

その時、ストライクのコック ピットにアスランの声が響いた。

「キラ!」

「アスラン!?」

2機は距離を取りながら通信 を送る。

「止めろキラ、剣を引け!  僕らは敵じゃない、そうだろ!」

キラはそれに答えられずに唇 を噛む。アスランと戦う理由など何もない。

「同じコーディネイターのお 前が、何故僕達と戦わなくちゃならないんだ!?」

アスランの言葉一つ一つがキ ラに突き刺さる。

「お前が何故地球軍にいる!  何故ナチュラルの味方をするんだ!?」
「僕は地球軍じゃない!」

キラは咄嗟に言い返した。

「でも…あの艦には仲間 が……友達が乗ってるんだ!」

 

 

アークエンジェルからの砲撃 の援護でデュエル、ブリッツを翻弄するルシファー。

先に砲撃のバスターを潰した ため、近接的な武器しか持たない2機ではアークエンジェルの砲撃に近づくことができない。

そしてルシファーも必要以上 距離を詰めずに、ビームライフルで攻撃してくる。

「くっそぉぉぉぉ!! コケ にしやがってぇぇぇ!!」

デュエルがビームの中に突っ 込んでいく。

「イザーク! 無茶で す!!」

ニコルの静止も聞こえずにひ たすら接近していく。

ビームサーベルを抜き、振り 下ろすが、ルシファーは機動性を生かして上昇する。

(頭に血が昇ったパイロット が……!!)

見下ろすレイナは後方からの 高エネルギー攻撃に気付く。

「くっ…!!」

スラスターを逆噴射させ、か わそうとするが、完全にかわせず、シールドを半壊させられた。

放たれた方向からはインパル スライフルを構えたバスターが向かってきた。

「ちっ…完全に仕留められて いなかったか」

舌打ちし、半壊したシールド を捨てる。

もう役にも立たないし、少し でも機動性を上げるためだ。

「さっきのお礼をしてやる ぜ!!」

何時ものひょうきんさが抜け たディアッカがミサイルを叩き込む。

襲い来るミサイルを、頭部と 胸部のバルカン砲で狙撃する。

イザークも後を追おうとする が、すぐ近くの場所で戦闘を行うストライクとイージスがモニターに表示される。

イザークはちょっとした思い 付きを浮かべた。

「ニコル…お前はディアッカ とあの黒い奴を……俺はアスランの援護に回る」

「了解!!」

イザークは2機の方角へと向 かう。

アスランの前でストライクを 撃破し、ライバルを出し抜こうとする心境が働いたのだ。

デュエルの動きに気付いたレ イナは驚く。

(ストライクの方へ……まず い!)

 

 

キラは未だイージスと距離を 取りながら通信を送っていた。

焦りを感じつつ、だが攻撃も できず、キラはやり場のない怒りをアスランにぶつけた。

「君こそ……何でザフトにな んか。何で戦争をしたりするんだ……!!」

その言葉にアスランも眼を一 瞬見開き、怒りを含んだ瞳へと変える。

「戦争なんか嫌だって、君 だって言ってたじゃないか! その君がどうしてヘリオポリスを……!!」

アスランは苦悩しながら…や がて叫ぶ。

「キラ…ユニウスセブンを 知っているか!?」

「え…? あの、血のバレン タインの……?」

突然のことにキラも声が上擦 る。

「そうだ…あそこには軍事施 設など何もない、ただの農業プラントだった…穏やかで心やすらぐ平和な土地だったんだ…なのに、地球軍は……!!」

思い出したくもない光景がア スランの脳裏を駆け巡る。

 

放たれる核ミサイル……

崩壊していくユニウスセブ ン……

 

「二十四万三千七百二十一名 もの命が一瞬で奪われた!! たった一発の核ミサイルで!! こんな事が許されていいはずがない!!」

その告白にキラは息を呑む。

「だからって…何で君 が……!!」

「キラ! ここまで言ってま だ解からないのか!! 俺の母の職業が何だったのか…覚えていないのか!!」

「アスランのお母さんの…… ま、まさか……!!」

そこまで言われてキラは思い 出した。

「そうだ! 俺の母もあの時 あそこに…ユニウスセブンにいたんだ!!」

ビームサーベルを振り上げ、 怒り任せに薙ぎ払う。

ストライクはシールドで防ぐ が弾かれる。

そこへ、一条のビームが2機 の間に割り込んできた。

「何をモタモタやっている… アスラン!!」

「イザーク…!!」

アスランは瞬間に拙いと思っ た。

キラの方も突然割り込んでき た機体に驚く。

「X102、デュエル…じゃ あ、これも!!」

ビームをシールドで防ぎなが ら後退する。

エールストライカーの機動力 を生かしてひたすらに回避し続ける。

「くそっ…チョコマカと、逃 げの一手かよ!!」

「くっ……!!」

回避し続けていたキラは遂に 攻撃に移る。

照準スコープを眼前に引き出 し、ビームライフルを掲げてトリガーを引く。

だが、放たれたビームはデュ エルに掠ることもなくかわされる。

何度も攻撃するが、かわさ れ…やがてそれは恐怖を掻き立てる。

「ふん…こいつはどシロウト かよ……!!」

ビームサーベルを抜き、スト ライクに斬り掛かる。

「うわぁぁぁ!!」

かろうじてシールドで攻撃を 防ぐが、ストライクは弾き飛ばされ、デュエルがそれを追う。

2機はそのままアークエン ジェル側へと縺れ合うように流れていく。

 

 

ルシファーはバスターとブ リッツを相手に持ち堪えていた。

アークエンジェルからの援護 でなんとか対処できているが、何時までも持ち堪えられない。

そう…プロトタイプであるル シファーは、スラスター制御に予想以上のバッテリーを消耗する。

「試作機だと思って…随分と 無責任なものを……!!」

エネルギーゲージに眼をやり ながらレイナは2機を相手にする。

「へえ、中々やるじゃない か…だがな!」

ディアッカがバスターの 94mm高エネルギー火線収束ライフルと350ミリガンランチャーが火を噴き、それはルシファーを通り抜けてアークエンジェルに着弾するが、アンチビーム 粒子にあえなく弾かれてしまう。

ルシファーは2機を誘導し、 アークエンジェルの射線上に誘い込む。

そこへアークエンジェルの ゴッドフリートが放たれる。

エネルギーが2機を掠め、機 体表面に火花が散る。実体弾を受けつけないPS装甲でもビーム粒子を防ぐのは無理である。2機は体勢を立て直すために一旦、射程外へと退く。

そこへストライクとデュエル が流れてきた。

すると…バスターとブリッツ はストライクへと標的を変える。

「っく、世話を焼かせ る…!!」

舌打ちして、レイナはストラ イクの援護へと向かう。

 

 

戦闘を離れた場所から見詰め るヴェサリウス。

「ガモフより入電…『本艦に おいても、確認される敵戦力はMS2機のみ』とのことです」

その返答にクルーゼは考え込 んだ。

確かに敵艦への攻撃はMS2 機によって阻まれている。だが、そこに宿敵の姿はない。

「あのMAはまだ出られんと いうことなのかな?」

「そう考えてよろしいので は」

呟くクルーゼに答え返すアデ ス。

だが、何かが引っ掛かる…あ のムウが戦局を任せきりにしているということに。

メビウス・ゼロにはクルーゼ 自身がかなりのダメージを与えた。

機体がなければ流石のムウも 何もできないと結論付けた。

「敵戦艦、距離630に接 近! まもなく本艦の有効射程圏内に入ります!」

その報告にクルーゼは顔を上 げる。

「こちらからも攻撃開始だ、 アデス」

「しかし、我が方のMS隊が 展開中です。主砲の発射は……」

狼狽するアデスにクルーゼは 素っ気なく冷笑する。

「友軍の艦砲に当たるような 間抜けは我が隊にはいないさ……主砲発射準備! 目標、敵戦艦!!」

 

 


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