アークエンジェルに戻ったレ イナは、連れていた少女…先程の手当てで手伝いをし、名前をリフェーラ=シリウスと知った……と老医師をアークエンジェルの一室へと案内し、手当てが終わ ると、格納庫へとやって来ていた。

格納庫で、レイナは運び込ま れたリベレーションを見上げていた。

「よ、嬢ちゃん」

そこへ、リベレーションの調 査をしていたマードックの声が掛けられた。

「どうですか、この機体?」

「ああ、大したもんだぜ。こ の機体、リベレーションっていうらしいけどよ、Gと同じくPS装甲やビーム兵器が標準装備してある」

Gが奪取されてからそれ程日 は経っていないというのに…ザフトの技術の吸収性には眼を見張るものがある。

「それより…少し、話がある んですけど」

レイナは本題を切り出す。

ルシファーのバッテリー効率 の低さと、武装の強化案。

「まあ、一応…装備のことは なんとかならないでもないけどよ」

マードックは言葉を濁す。

実は、先の第8艦隊との合流 で、補給されたものの中に、ストライクのストライカーパックと同系のパワーパックが搬入されていたのだ。

パワーパックの詳細のデータ を表示すると、レイナは眼を通す。

バックパックに取り付けるパ ワーパックで、ブースターノズルを2基搭載し、上部に大型120ミリビームキャノンが二対、パワーパック内部にミサイルポッドが装着されている。

しかし、レイナは顔を顰め る。

「確かに武装アップは可能か もしれませんが…エネルギーの消費量が倍化しては、パワーパックの意味もないわね」

マードックも反論をせず、頷 く。

元々、試作機は後の機体のた めのデータを取ることを目的としている。

だからこそ、スペックは上が るが、操縦性と運用性が極端に難しくなる。

レイナはこのオーバーハング パックとルシファーのデータを交互に見やり、思案する。

「これだけの装備を、使わな いのも勿体無いですしね。マードック曹長…このオーバーハングパックに予備のバッテリーパックを装備することができますか?」

「え? そりゃ、おめえ…で きなくはねえけど、どこに付けるんだ」

マードックの疑問に答えるよ うに、レイナは端末を操作する。

オーバーハングパックの内蔵 式ミサイルポッドを取り外し、そこに予備バッテリーを積み込み、そのミサイルポッドを脱着可能式の装備として、脚部に装着させる。

「これなら、大気圏内での飛 行も長時間可能になります」

「ほう…凄いじゃねえか」

感心したようにその設計図を 見る。

「すぐに作業は可能です か?」

「ああ、と言いたいところだ けどよ、今はストライクのパワーパックも調整を進めてるしな……」

つまり…人手が足りないので あろう。

レイナはルシファーの隣にあ るストライクのメンテナンスベットの前に吊られたストライカーパックを見やる。

 

IWSP…115ミリレール ガン二門、105ミリ単装砲二基、9.1メートル対艦刀二振り、さらにはマイダスメッサー装備の30ミリ6連ガトリングシールドが装着される統合兵装のス トライカーパック。

 

そのIWSPに、ブースター を装着し、大気圏内での飛行を可能とするための作業が行われている。

パワーパックの調整の後、恐 らくストライク本体ともドッキング調整をしなければならず、結局のところ時間が掛かる。

「ルシファー本体とパワー パックのOSは私が組みます…人手を何人か回してくれませんか? オーバーハングパックに予備バッテリーを交換するだけですから」

「ま、それなら……」

渋々と頷き、整備班の何人か をルシファーの方へ回すように指示する。

「あ、それと嬢ちゃん…坊主 の奴を呼んできてくれ。肝心のストライクが無くちゃ、話にもならん」

「……解かったわ」

レイナも軽く応え、格納庫を 後にする。

 

「いいっすよね、マードック 曹長。彼女と話せて……」

「何だ、お前年下好みか よ?」

ちゃかす整備班の一人に顔を 赤くして否定する。

レイナ=クズハは、整備班に 密かに人気があるのだ。

勿論、本人も…整備班のリー ダーであるマードックも知らない。

 

 

迷彩ネットをアークエンジェ ルにかけ終わり、キラはストライクから降りて息を吐いた。

そこへ、カガリが歩み寄って きた。

「さっきは悪かったな」

カガリはキラを睨みつけるよ うに上目遣いで見やる。

「殴るつもりはなかった…… わけでもないが、あれは弾みだ。許せ」

ボソッと呟くように締め括る が、乱暴な口調で、とても謝っているようには見えない。

「別にいいよ。殴られたわけ じゃないし」

キラは思わず噴出しそうにな り、カガリは睨みつける。

「何がおかしい! それにあ の事を思い出させるな!!」

彼女にしてみれば、レイナに 殴り掛かって、逆に投げ飛ばされたことが、余程悔しかったのだろう。

カガリは視線を逸らし、話題 を変える。

「ずっと気になっていた。あ の後、お前はどうしてるんだろうと……」

あの運命の日…ヘリオポリス 崩壊の前に、キラは彼女を満員のシェルターに一人だけでもと無理矢理押し込んだのだ。

「なのに…こんなものに乗っ て現れるとはな?」

どこか、憤怒を感じさせる口 調で、ストライクを睨みつける。

「おまけに…今は地球軍 か?」

咎めるような口調に、キラは どことなく俯いてしまう。

「いろいろあったんだ よ……」

何故、こんなことになってし まったのか……自分でもよく解からなくなる。

仲間達を護りたい…最初はそ れだけでよかった……だが、あの自由になれるチャンスを蹴ってまで自分は戦う道を選んだ…早く、戦争を終わらせたい……

だが…本当は、一人置いてい かれるのが怖かっただけなのかもしれない。

「……いろいろ、ね」

まるで、疲れたような表情で 語るキラに、カガリはそれ以上、追求しようとはしなかった。

「あの女は…ルシファーのパ イロットは…あいつは地球軍なのか?」

「…違うよ。元々は、僕と一 緒でヘリオポリスの学生だったんだ」

キラの脳裏に、ヘリオポリス でのレイナの姿を思い浮かべる。

自分より一つ年上の…どこか 神秘的な雰囲気をまとった少女だと印象的に覚えていた。

孤高の存在、とでもいうの か…事実、一緒に行動するようになってからも、一人でなんでもこなし、常に一人であろうとする。

だが、少なくとも…彼女だけ は、キラを受け入れも拒絶もしない……

「君こそ、なんでこんな所 に?」

不意に、キラは思い立った疑 問を口にする。

「オーブの子じゃなかった の?」

「え? あ……いや………」

カガリはどこか困惑した表情 で、視線を逸らすしかしなかった……

 

そんな二人の様子を遠巻きに 監視する巨漢の男、レドニル=キサカ。

「覗き見なんて、趣味が悪い んじゃない」

唐突に後ろから掛かった声 に、キサカは振り向くと、そこにはレイナが立っていた。

レイナは視線をずらし、カガ リを見据える。

……思い出した。

「…カガリ=ユラ=アスハ」

レイナが小さく呟いた瞬間、 キサカは睨むように鋭い視線を浮かべる。

だが、レイナは意にも返さ ず、どこ吹く風といった感じだ。

「驚いたわね…まさか、偽名 すらも使わずにこんな場所に……って、考えてみれば、普通ならこんな所にいるって思わないか」

軽く笑みを浮かべ、レイナは キサカの視線を真正面から受け止める。

「……中立国がレジスタンス の支援? それとも……あのお姫様の戯れかしら?」

だが、キサカは答えようとは せず、黙り込む。

「沈黙は肯定…と取っていい のかしらね」

一人完結させると、レイナは 肩を竦める。

「真っ直ぐすぎるお姫様 ね……戦争は、子供の遊びじゃない………半端な正義感でうろつかれると迷惑なのよ」

忠告のような言葉を呟き、レ イナはその場を後にしようとする。

「……私の邪魔をするなら、 誰であろうと……容赦はしない。たとえそれが……オーブの姫だとしても、ね」

背を向けて歩き出すレイナ に、キサカは鋭い視線を向けていた。

 

 

 

砂漠の上に停止しているレ セップス。

内部の、バルトフェルドの私 室を訪れたダコスタはノックする。

「ダコスタです、失礼しま す」

入ると同時に、凄まじい臭気 が襲い、思わず鼻を押さえる。

だが、肝心の部屋の主はそん な臭いを気にもせず、並び立つ多くのコーヒー豆や器具に囲まれ、竹べらでフラスコ内を掻き混ぜている。

「ぐっ……隊長、換気しませ んか?」

臭気に耐えながら、なんとか 口にするが、バルトフェルドは気にも掛けない。

「そんなことわざわざ言いに 来たの?」

「い、いえ…そういうわけで は………」

普段から、何かと常識外れの ことばかりやりのけるこの上官に正論を説いてもはじまらないとダコスタは思い直し、用件だけを伝える。

「出撃準備、完了しました」

「……はいよ」

バルトフェルドはできあがっ たばかりのコーヒーをカップに注ぎ、その湯気を吸い込み、満足そうに溜め息をついた。

「あんまりキツイことはした くなかったんだけどね。ま、しょうがないか」

「はぁ……?」

マイペースにコーヒーを飲 み、幸福を表情に貼り付ける。

「うん、いいね……今度のに はハワイコナを少し足してみたんだが、これもいい」

「………はぁ」

曖昧な返事を返しながら、ダ コスタは胃にかかる痛みを抑えながら心の中で溜め息をついた。

以前、迂闊にも口を滑らせ、 延々とバルトフェルドにコーヒー蘊蓄を聞かされる羽目になった覚えがあるだけに、下手に返事はできない。

バルトフェルドはコーヒーを 飲み終えると、レセップスの外に向かっていった。

既に艦外では、バクゥ3機と 装甲車が待機し、兵士達が整列している。

「ではこれより、レジスタン ス拠点に対する攻撃を行う……夕べはおいたが過ぎた。悪い子にはきちんとお仕置きをせんとな」

笑みを浮かべて余計な一言を 付け加えるが、兵士達は軽く笑みを浮かべる。

「目標はタッシル! 総員搭 乗!!」

ダコスタの指示に、兵達はそ れぞれの機体に乗り込み、バルトフェルドも指揮車に乗り込んだ。

 

 

 

陽も落ち、砂漠を夜の冷たい 空気が襲う。

明けの砂漠の拠点も、あちこ ちから焚き火の炎が燃えている。

そんな中、静けさの漂うアー クエンジェル内の廊下を、フレイは狂気を潜めた瞳で、ある部屋に向かっていた。

そして…目的の部屋に辿り着 くと、フレイは隠し持っていたナイフを取り出した。

あの時、レイナを刺したもの だ。

護身用に隠し持っている収納 ナイフを手に、フレイは部屋の扉を睨む。

この中に…コーディネイター がいる。

フレイは見たのだ…レイナ が、一人の気を失っている少女を担いできたのを。

レイナと一緒にいた老医師と の会話から、ここにコーディネイターが運び込まれ、さらには手当てされたらしい。

(あの女…自分はコーディネ イターじゃないって言ってたくせに、コーディネイターを助けるなんて、やっぱりコーディネイターじゃない…!)

自分勝手な論理で、レイナへ の憎しみを募らせ、フレイは部屋に入る。

照明がつけられていない部屋 の中は薄暗かったが、キラの士官室に寝泊りしているフレイは部屋の構造を理解している。

部屋の端に備えられたベッド に、目的の人物が寝かされていた。

脱がされた赤いパイロット スーツを横に、シーツをかけられ、頭と右腕に包帯を巻かれ、眠る少女。

右腕には、包帯の上から点滴 のチューブが繋がっている。

フレイはゆっくりと近づいて いく。

廊下からの僅かな光が、ベッ ドに眠る少女の顔を照らす。

ショートカットの黒髪に、幼 い顔立ちをした、自分と同い年くらいの少女……

だが、相手がまだ少女だから といって、フレイの意思は変わらない。

たとえ、見た目は少女でも、 コーディネイターなのだ…父親を殺したコーディネイターなのだ。

「………コーディネイターな んて……皆死んじゃえばいいのよ………」

コーディネイターは全て滅び なければならない……一人でも生かしておいてはいけない。

狂気を宿した瞳で、フレイは 鬼気迫る表情で、眠る少女に向かってナイフを振り上げた。

このまま…永遠に眠らすよう に………

 

 

迫る危機に、リーラの意識は 未だ覚醒せず、深い闇に捕らわれていた。

リーラを襲う、苦痛と孤 独……

リーラは、プラントの有数の 資産家の娘だった……幼い頃から、家の跡継ぎとして、徹底された管理のもと、監視された囚人のような生活を送ってきた。

リーラに求められたのは、た だ人形となること……

そんな生活に拘束される自分 が、酷く情けなく、嫌いだった……

だからリーラは決意したの だ。

自身の生き方は自分で決める ため…自身の眼で見、自身の肌で感じようと……世界を。

家を飛び出したリーラは、知 り合いであったラクスの手引きで、戸籍を偽り、長かった艶やかな赤い髪を切り、自身の紅い瞳を隠すため、髪と眼を黒で隠したのだ。

名を変え、別人となってザフ トに身を隠した。

そんなリーラの想いを支える もの……それは昔、ある人物から贈られたペンダント。

ペンダントを握り締め、リー ラは苦痛に耐える。

その時、意識を覆うように深 い闇が襲い掛かってきた。

(……いやぁっ! 来ない で!)

必死に拒絶する。

その時、大切な人の声が聞こ えた気がした。

『……リーラ!』

その瞬間、リーラの意識は覚 醒した。

 

「!!」

眼を開いた瞬間、リーラの瞳 に映ったのは、自分の上に振り上げられた光る刃。

「コーディネイターは死なな きゃいけないのよ!」

ナイフを持つフレイが叫びな がら振り下ろす。

リーラは瞬時に身の危険を感 じ、頭を捻った。

勢いよく振り下ろされたナイ フは、枕を突き刺した。

寝返りを打つと同時に上半身 を起こしかけるが、激痛が身体を襲う。

「ぐっ」

小さく悲鳴をあげ、リーラは 眼前のフレイを見やる。

ピンクの軍服に…殺意に染 まった瞳……そしてなにより、軍服の肩に付けられた地球軍のマーク……

その瞬間、リーラはここが、 リベレーションのコックピットではなく、しかも敵の中にいるということを悟る。

フレイは突然、リーラが眼を 覚ましたことに驚き、ナイフを向けたまま、やや後ずさる。

何とか、この状況を切り抜け ようとするが、身体を襲う痛みに上手く動けない。

リーラは自覚していなかった が、大気圏突入後の砂漠への落下の際、肋骨にヒビが入っていたのだ。

「うぅぅ…」

零れそうになる悲鳴を噛み殺 しながら、リーラは立ち上がろうとする。

その苦しむ様を見て、フレイ は醜悪そうに笑みを浮かべた。

眼前のコーディネイターが動 けないと知り、勝ち誇ったような笑みを浮かべる。

その…まるで傷ついている獲 物を狙うかのような瞳に、リーラは僅かに身震いする。

フレイは恐れを消し、ナイフ を再び構えた。

今のリーラには、それを防ぐ 手はない。

「コーディネイターなんて… 死んじゃえばいいのよ!!」

叫び、ナイフが突き出され る。

リーラは胸元のペンダントを 握り締め、大切な者を想いながら、訪れるであろう痛みに眼を閉じた。

だが、何時まで経っても痛み が襲ってこない…リーラは恐る恐る眼を開けると、そこには突き出されたナイフを持つフレイの腕を、誰かが握り締めていた。

その人物の顔を見た瞬間、 リーラは驚愕する。

(えっ?……リン…さん?)

眼前でフレイの腕を掴んでい るのは、間違いなく同じザフトのリン=システィ。

だが、リンが何故ここに……

訳が解からずに呆然となる リーラを横に、フレイの腕を掴んだ少女、レイナは腕を掴み上げる。

「あんた、何するのよ!?」
仇を見るような鋭い視線で、フレイはレイナを睨むが、レイナは臆しもしない。

「捕虜への暴行は禁止されて いるはずよ……アルスター二等兵」

冷静に掛けられた言葉に、フ レイは歯軋りする。

「あんたやっぱりコーディネ イターじゃない! コーディネイターを庇うなんて!」

相変わらずの自分本位な論理 に、レイナは軽く溜め息をつき、握っていたフレイの腕を上へと引っ張り上げる。

「い…いたいっ!」

悲鳴を上げるフレイに、冷た く呟く。

「言ったはずよね…考えを改 めない限り、次は殺す……って」

冷たい真紅の眼光に、フレイ は先程までの勢いを失い、萎縮する。

レイナは掴んでいる腕を握り 締める力を強くする。

「また同じようなことを繰り 返すようなら……この腕をへし折ってやるわ」

刹那、手を離すと、フレイは 痣が残りそうな程、強く握られた腕を押さえ、睨みつけるように部屋を飛び出していった。

レイナは、未だ呆然となって いるリーラに向き直る。

「………」

「……大丈夫?」

「あ……は、はい」

「貴方、ここに収容された 時、肋骨にヒビが入ってたのよ。無理はしない方がいい」

言葉を掛けるが、リーラはレ イナの顔を見詰めたままだ。

「私の顔に何かついてい る?」

不審に思ったレイナが声を掛 ける。

「リンさん……じゃないです よね?」

誰かと間違えているのか、レ イナは肩を軽く竦める。

「人違いよ……私はレイナ= クズハ」

「す、すみません……」

萎縮して、頭を下げる。

「あ、あの…ここは何処です か?」

「地球軍のアークエンジェル の医務室よ」

足付き……アークエンジェル という名が解からなかった当初にクルーゼ隊が呼んだ名がリーラの脳裏に蘇る。

よりにもよって、アークエン ジェルの捕虜となってしまうとは……

「……とは言え、ここにはあ んなのもいるしね。貴方…生きたいと思う?」

「え…?」

唐突に掛けられた言葉に、言 葉を呑み込む。

「別に、死にたいんだった ら…私はもう関わらない。でも、もし生きたいんなら……」

レイナの言葉を反芻させる。

生きたい…自分はまだ、答え を見つけていない……そして、まだ……ぎゅっと胸元のペンダントを握り締める。

そして…俯いていた顔を上 げ、コクリと頷く。

「……決まりね」

レイナは懐から2、3のカプ セルを取り出す。

「これを飲んで…痛み止め よ。効果は大体数時間は持つはずよ」

呆気に取られ、リーラは受け 取る…正直、このレイナがどこまで信頼できるかは解からなかったが、今は信じるしかなかった。

カプセルをグッと一気に飲み 込むと、腹部に感じていた痛みが徐々に引いていく。

「急ぎなさい…クルーのほと んどが出払ってるし、チャンスは今しかない」

リーラは慌てて起き上がり、 置かれていた自分のパイロットスーツを担ぎ、レイナの後を追った。

レイナの誘導で、二人は人目 に見つかることもなく、格納庫までやって来れた。

格納庫は既に人気がほとんど ない……

それ幸いにとレイナはリベ レーションの元までリーラを連れてキャットウォークを上がる。

「ここまで来れば大丈夫ね… 後は自分で何とかしなさい」

「あ、あの……何で、私を助 けるんですか?」

シートに着いたリーラは思わ ず問いただす。

何故…ザフトの自分を、地球 軍は助けるのか……

「私は別に、地球軍じゃな い……それに、私の敵になるのは、戦場で銃を向ける相手だけ。貴方が次に私の前に現れた時…敵なら、迷わずに撃つわ」

底冷えするような冷たい真紅 の瞳…自分と同じ紅……そして、その瞳は、リンと酷似している。

(何でこの人は…こんなにも リンさんに似ているんだろう……)

その答えは、今は出ない……

だが、ふと…今の言葉に違和 感を抱いた。

自分の前に現れた時…迷わず 撃つ……ということは、自分で戦っているということ。

そこから導き出される答え は……

(この人が……地球軍のMS のパイロット………)

はっきりとはしないが、恐ら くどちらかのMSのパイロットであることは間違いないであろう。

こちらを凝視しているリーラ に、レイナは小さく告げる。

「さっき言っていた、リンと いう人物に会ったら、伝えて……また、戦場でって」

リーラは驚愕するが、それを 掻き消すように、鋭い笛の音が、まるで警報のように響いてきた。

「じゃね」

ハッチを閉じ、レイナは離れ た。

リーラは思わず止めようとし たが、思い止まり、今はここから逃げ延びることだけを優先し、起動スイッチを押した。

 

 

数十分前…レジスタンスの拠 点であるタッシルの郊外にバルトフェルドの乗るジープが止まる。

タッシルの街は、細々とした 明かりだけが灯り、夜の闇に静まり返っていた。

「もう寝静まる時間ですね」

声を潜めるダコスタに、バル トフェルドは呟く。

「そのまま永遠の眠りについ てもらおう……」

意外そうな上官の冷酷な言葉 に、ダコスタは一瞬、ギョッとする。

「…なんてことは言わない よ、僕は」

だが、続けて出た言葉に、思 わず頭を抑える。

「警告、十五分後に攻撃を開 始する」

「は……?」

意図が解からずに眼を丸くす るが、バルトフェルドは至って真面目だ。

「ほら、早く行ってきたま え」

急かすことから、慌てて別の ジープに乗り換え、タッシルに向かっていく。

 

そして……十五分後、バクゥ 3機がタッシルの街を炎で包んだ。

 

 

 

 

 

《次回予告》

 

暴走する想いは、新たな悲劇 を生む……

立ち塞がるバルトフェルド に、レイナは銃口を向ける。

 

堕天使と虎は……今、激突す る………

 

次回、「熱砂の攻防」

 

熱砂を切り裂け、ガンダム。



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