のろのろと帰路につくバルト フェルド隊。

炎天下の中をゆっくりと進む ジープの後ろを3機のバクゥがのろのろと歩く。

ジープを運転するダコスタ は、その暑さに軽く襟元を開け、助手席にふんぞり返っている上官に向き直る。

「隊長…もう少し急ぎません か?」

バルトフェルドは、閉じてい た眼を開けて、姿勢を変えずに口を開く。

「そんなに早く帰りたいのか ね?」

「じゃなくて……追撃されま すよ、これじゃ」

上官の意図が解からず、問い ただすと、バルトフェルドは背凭れに寄り掛かる。

「……運命の分かれ道だな」

「は?」

会話なのか独り言なのか解か らずに、ダコスタは首を傾げる。

「自走砲とバクゥじゃ、ケン カにもならん……」

そのまま空を見上げながら、 唐突に尋ねた。

「…死んだ方がマシ……とい う台詞は結構よく聞くが、本当にそうなのかね?」

ダコスタはどう答えていいか 解からずに言葉を濁していると、バクゥから通信が入った。

《隊長、後方から接近する車 両があります。6…いえ、8……レジスタンスの戦闘車両のようです》

思わず眼を見張り、ダコスタ は先程から隣でふんぞり返っていた上官を見やった。

バルトフェルドは…最初から こうなることを見越していたのだ。

改めて、この上官の合理的な 判断に感嘆する。

「……やはり、死んだ方がマ シなのかねえ?」

一オクターブ低い声で、バル トフェルドは呟いた。

 

 

砂丘を超え、数台のバギーが 迫ってくる。

「カガリ、アフメド! お前 らは戻れ!!」

後方から追いかけてくるバ ギーに向かってサイーブが叫ぶ。

「こないだ、バクゥを倒した のは誰だ、え!? 俺達だろ!」

アフメドは自信に満ちた笑み を浮かべるが、サイーブは顔を顰める。

「今回は地下の仕掛けはな い!」

流石にサイーブは前回の戦い も冷静に捉えている。

バクゥを倒せたのは、周到に 用意した罠と連合の協力者、そして敵の意表を突けたという偶然が重なったの過ぎない……だが、アフメドは若さゆえに敵に一泡吹かせたという事実に天狗に なっていた。

「サイーブ! いつからあん たはそんな臆病になったんだ!」

「仕掛けなどなくても、戦い 方はいくらでもある!!」

アフメドが叫び、カガリもた ロケットランチャーを片手に強気になっている。

カガリに触発され、アフメド はアクセルを踏み込み、サイーブのバギーを追い抜き、サイーブは唇を噛みながら、カガリの後方にいるキサカに目配せする。

アイコンタクトが伝わったよ うで、キサカもまた頷き返す。

先行しているバギーから、ミ サイルランチャーでバクゥに向かって砲撃する。

バクゥにミサイルが着弾する が、バクゥはまるで蚊に刺されたようにものともせず、モノアイを不気味に光らせて睨む。

「ジープを追え! 虎を倒す んだ!!」

それに怯むことなく、ラン チャーが火を噴き、ミサイルが先頭を走るバルトフェルドのバギー近くに着弾し、爆弾と共に砂柱を巻き上げる。

他のレジスタンスが放ったも のも、白い弾道を描きながらバクゥの1機を捕らえ、最も弱い部分とされる足首の間接に命中させた。

「隊長!」

「仕方ない! 応戦する!」
バルトフェルドの言葉に、バギーとバクゥがそれぞれ散開し、戦闘態勢に入った。

再度、バルトフェルドのジー プ目掛けて放たれたミサイルは、割って入ったバクゥが盾となる。前肢でバギーを踏み潰そうとするが、カガリが放ったミサイルがバクゥに頭部に命中し、それ によってバクゥの動きが鈍り、間髪入れずにキサカがバズーカを撃ち、他のレジスタンス車両からも砲撃が行われ、バクゥは膝をつく。

レジスタンス達は喝采を上げ るが、残りの2機のバクゥはそれによって怒りをかられる。

「ちょこまかと! 煩いアリ が!!」

他の2機は砲撃にビクともせ ず、一機が飛び上がり、バギーの上でキャタピラに切り替え、バギーを押し潰し、さらにはキャタピラ駆動で疾走するバギーを追う。

恐怖に狩られ、バギーは左右 に分かれようとするが、性能の差は大きく、あっさりと追いつかれ、次々と踏み潰されていく。

「ジャアフル! アヒド ―――!!」

サイーブが悲痛な声を上げ る。

仲間をやられ、アフメドは怒 りに燃えながら、別のバギーを追うバクゥの腹の下に潜り込む。その瞬間を狙って、カガリとキサカがランチャーやバズーカでバクゥを真下から狙う。

「このザコが!!」
叫ぶバクゥのパイロットが操縦桿を思い切り引き倒してカガリ達の乗るバギーを薙ぎ払いにかかる。

「飛び降りろ!!」
キサカは咄嗟に叫びや否や、カガリを抱えて一足先に高速で走るバギーから飛び降りる。

「え……!?」

咄嗟のことで、アフメドは状 況を飲み込めず、逡巡する……それが命取りだった。

バクゥの巨大な前肢が唸りを 上げてアフメドのバギーを弾き飛ばしたのだ。

金属同士の激しいぶつかり合 う鈍い音と共に、バギーは木っ端微塵に吹き飛ばされた。

そして、アフメドの華奢な身 体も投げ出され、砂漠の大地に高く舞う。

「……アフメド………」

キサカに抱きかかえられて転 がり落ちたカガリが、眼前の光景に息を呑んだ。

「アフメドォォォォ!!」

叫ぶカガリに向かって、バ クゥが眼下をモノアイで凝視する。

だが、注意を逸らすようにサ イーブの放ったバズーカがバクゥに着弾し、キサカはその隙に呆然となっているカガリをその場から引き摺っていく。

バクゥは狙いをサイーブのバ ギーに変更し、キャタピラに切り替えて突進してくる。

バギーは逃げようとするが、 バクゥの速度の方が速い。

向かってくるバクゥに、サ イーブは己の不甲斐なさに唇を噛む。

やはりあの時、無理にでも止 めるべきだったのだ……だが、もはや後悔しても遅い。

「ちっくしょう!!」

歯軋りしながらバズーカを構 えた瞬間……

レーダーを見詰めていたダコ スタが叫んだ。

「接近する熱源1! 隊長、 これは……!」

一条の光が、バクゥの横を掠 めた。

バクゥの動きが鈍り、サイー ブやキサカ、バルトフェルドも驚愕する。

カガリもハッと我に返り、光 が放たれた方角を見やる。

「……ルシファー!」

遥か彼方から漆黒のボディ に、紅の翼の天使が舞い降りた。

 

レイナはトリガーを引くが、 一撃目に続き、ビームが目標を逸れる。

「…逸れた?」

スコープを覗いていたレイナ は、状況を分析する。

ビームの射線が目標から逸れ る…確かに照準は合っていた。

そして…その原因に気付い た。

「そっか、砂漠の熱対流 で……!」

太陽によって、急激に温度が 上昇している砂漠の大地は、陽炎のようにぼやけ、大気のうねりが発生している。

その対流した大気によって、 ビームは直進できない。

Gはビーム兵器を主武装とし た機体だけに、肝心のビーム兵器の精度がこれではまったく役に立たない。

レイナは片手でルシファーの 姿勢を保ち、もう片方の手でキーボードを引っ張り出し、対流下におけるビームの照準精度を修正する。
僅か数秒でプログラムを変更させると、バクゥから放たれたミサイルが向かってきた。

両脚のホーミングミサイルを 放ち、ミサイルを撃ち落す。

爆発から姿を現し、両肩の二 連装ビームキャノンを構える。

そして、僅かに発射に間隔を 開けてトリガーを引く。

左右の砲口から放たれたビー ムは、一つがバクゥの横を掠め、それによって態勢を崩したバクゥのミサイルポッドをもう片方のビームが貫く。

だが、バクゥはポッドをパー ジし、逸早く爆発から逃れる。

レイナは舌打ちする。

「ちっ…まだ精度があまい か!」

先程のビームは、レイナの頭 の中では間違いなくバクゥのボディを貫くはずであったが、やはりまだ精度が完全に合っていない。

素早く、今の失敗を踏まえて プログラムを書き直しながら、状況を分析する。

「バクゥが3機……うち一機 は動けないか」

2機のバクゥが飛行するルシ ファーに向かってミサイルを放ってくるが、ルシファーはシールドで受け止める。

その時、モニターの隅に、横 たわるアフメドの隣に座り込むカガリの姿が浮かぶ。

「っ、世話を焼かせるわ ね……!」

誰かさんと同じで…レイナは 軽く毒づき、戦場を移す。

 

 

横たわるアフメドを抱き起こ すカガリは、必死に呼び掛ける。

「アフメド! しっかりし ろ、アフメド!」

「…カガリ……俺…お前… が………」

弱々しい口調で呟いていたア フメドは、静かに事切れた。

カガリは眼を見開き、動かな くなったアフメドの身体を揺する。

「アフメド…アフメド……ア フメドォォォ!!」

アフメドの身体を抱き締め、 カガリの悲痛な叫びが響いた。

 

 

「ほう……」

スコープを手に、戦闘を見詰 めるバルトフェルドは感嘆する。

「何故、ルシファーが…救援 に来たのか、地球軍が………?」

ダコスタは、相手の意図が解 からずに頭を捻っているが、バルトフェルドはまったく違う内容を口にする。

「データには無かった装備だ な」

「は…あ、確かに……」

事前に報告されたデータの中 に、今ルシファーが装備している武装は無かった。

「それにビームの照準……即 座に熱対流をパラメーターに入れたか………」

バルトフェルドは不適な笑み を浮かべる。

彼にとって、何故地球軍がレ ジスタンスの救援に来たかなどどうでもよい。

そんな事よりも、もっとよく 知りたいと思うのは、アレの戦闘能力……そして、そのコックピットの中にいるであろう、堕天使を駆るパイロットに、バルトフェルドは魅せられる。

今の戦闘で確信した…パイ ロットは間違いなく、戦闘中にOSのプログラミングを変更している……プログラミング能力、艦砲をピンポイントで撃ち落すほどの射撃の手腕、そして卓越し た反射神経と運動能力を持つ地球連合のパイロット……気になる、とバルトフェルドは思った。

その時、先程のレジスタンス の攻撃で行動不調になっていたバクゥがゆっくりと立ち上がり、バルトフェルドは無線を取った。

「カークウッド!」

《はっ!》

「バクゥの操縦を私と代わ れ!」

《はぁ?》

虚を突かれたパイロットの声 が聞こえてくる。

「隊長!」

隣にいるダコスタが非難の声 を上げるが、バルトフェルドは、聞く耳持たぬといった様子で笑みを浮かべる。

「撃ち合ってみないと…解か らないこともあるんでね」

バルトフェルドはパイロット として、戦い抜き…今の地位を得たが、今も尚…彼はパイロットなのだ……強い相手を前に、パイロットとしての感覚が疼き、どうしても対戦してみたくなった のだ……あの、堕天使と………

 

 

2機のバクゥは、飛行するル シファーに向かってミサイルを叩き込む。

いくら、砂漠の大地に特化し たバクゥとはいえ、所詮は地上でのこと。

地上戦において、空中戦を可 能とするルシファーでは、分が悪い……

ルシファーを地上に叩き落そ うとバクゥが跳躍するが、レイナは蹴りで弾き飛ばす。

空中で態勢を崩したバクゥは いい的だった。

「…もらった!」

バクゥ目掛けてビームライフ ルを構えた瞬間、横から衝撃を受け、ルシファーは態勢を崩す。

慌ててそちらに注意を戻す が、間を置かずに二撃目を喰らい、ルシファーは地上へと落ちる。

「三機目!?……まだ動けた の!」

小さく舌打ちする…自身の状 況分析が甘かったことに対する叱咤だ。

バルトフェルドが乗り込んだ バクゥがキャタピラ駆動で鋭く向かってくる。

「フォーメーションΔだ!  ポジジョンを取れ!!」

「「隊長!?」」

突然のことに、一瞬両名は驚 くが、すぐさま体勢を立て直す。

「いくぞ!!」

3機のバクゥは編隊を組んで 向かってくる。

「! 動きが変わった!」

3機のバクゥは高速に乗り、 地上に落ちたルシファーに向かって突撃していく。

レイナは急ぎ、飛び上がろう とするが、それより早くバクゥが突撃し、跳ね飛ばされた。

衝撃で揺れるコックピット内 で、レイナが注意を戻すと、眼前にミサイルが迫ってきた。

回避が間に合わず、頭部に直 撃を受ける。

カメラは潰されなかったもの の、激しい衝撃に怯み、続けて放たれるミサイルをかわすために上空へと逃れるが、同時にバクゥが直前に跳躍した。

「!…速い!」

咄嗟にイーゲルシュテルンで 迎撃するが、それをものともせず、バクゥは鋭い蹴りをルシファーの頭部に喰らわせた。

「くぅぅぅ!!」

叩き付けられるGを感じ、レ イナは何とかブースターを噴かして、大地との激突は避けられたが、上空にいたバクゥはすかさずミサイルを放ち、ルシファーに着弾する。

「くっ…! しまった、カメ ラを……!」

ミサイルが頭部に着弾し、先 程からの衝撃の過負荷で、ルシファーのメインカメラが潰されてしまい、コックピット内のモニターは全てブラックアウトする。

瞳から光が消え、よろつくル シファーに容赦ないミサイルの雨が降り注ぐ。

「メインカメラは潰れた…そ して、通常弾頭でもバッテリー消費でフェイスシフトはその効力を失う……その時、同時にライフルのパワーも途切れる!!」

集中攻撃を受けるルシファー に向かっていくバクゥ内でバルトフェルドは不適な笑みを浮かべる。

「さあ、これをどうする か……奇妙なパイロット君!!」

 

 

ミサイルの衝撃がコックピッ ト内を激しく包む。

このままミサイルを受け続け れば、いくら予備バッテリーを搭載しているとはいえ、いずれPS装甲もダウンする。

だが、反撃しようにも、モニ ターはやられ、敵の姿が捉えられない。

「私はまだ…殺られるわけに はいかないのよ……!!」

刹那…レイナの中で何かが目 醒めた。

レイナは瞳を閉じ、意識を闇 の中で集中させる。

 

感じろ…敵の気配を……たと え、闇に紛れようとも……殺気までは隠せない………

 

自分の周囲に延々と広がる闇 の中に、自分を狙う気配を感じる。

刹那、レイナはペダルを踏み 込み、操縦桿を駆った。

瞳から光が消えたルシ ファー、3機のバクゥに向き直る。

研ぎ澄まされた感覚が、敵の 気配をレイナに教える。

襲い来るミサイルの中に突っ 込み、ビームキャノンを放つ。

ミサイルを撃ち落し、周囲は 閃光に包まれるが、閃光を裂くようにビームが放たれ続ける。

レイナはビームキャノンを オートモードでパージした。

ルシファーから切り離された オーバーハングパックはビームキャノンを滅茶苦茶に乱射し、バクゥに襲い掛かる。

「くっ…無茶をやる……!」

予想を遥かに違える攻撃に、 バルトフェルドは舌打ちをしながらバクゥを駆る。

オートで撃ちまくオーバーハ ングパックに、バクゥ3機は完全に翻弄され、フォーメーションが崩れる。

固まっていた殺気が分散した のを感じ取ったレイナは、その隙を逃さず、ルシファーを空中へ舞い上がらせた。

そして…一機に向かって、急 降下していく。

腰部からビームサーベルを抜 き、一機のバクゥの翼を斬り裂き、バクゥが態勢を崩す。

確かに手応えがあった…レイ ナは次の殺気が放たれる方向へと全神経を向ける。

バクゥはミサイルで応戦して くる。

闇の中に…無数の気配を感 じ、レイナはルシファーを飛行させながらビームライフルで眼前の真下に向かってトリガーを引いた。

放たれたビームが砂漠の大地 に着弾し、砂を舞い上がらせる。

それは砂柱の壁となってミサ イルを防ぎ、周囲は激しい爆煙に包まれる。

バクゥが爆煙を避けようと跳 躍した瞬間、それを狙ったかのように爆煙から姿を現したルシファーがビームライフルを構えた。

レイナはトリガーを引く…一 条のビームがバクゥの頭部を貫き、二機目もまた砂の大地に足をつく。

完全に破壊したわけではない が、恐らくもう戦闘はできまい。

モニターがブラックアウトし ているため、敵機の状態は解からないが、小規模な爆発から、少なくともダメージは負っているはずであろうと推測する。

その時、後方から一際強い殺 気を感じる。

「このぉぉ!!」

ムキになったバルトフェルド の駆るバクゥが襲い掛かるが、レイナはビームサーベルで一閃する。

交錯した瞬間…バクゥの前肢 が斬り落とされ、バクゥはそのまま反撃しようとせず、離れていく。

「後退する、ダコスタ!」

《は、はい!》

指示を出し、ダメージを負っ た二機のバクゥも追従してくる。

「フッ……とんでもない奴だ な……久々に面白い」

負けたというのに、バルト フェルドの顔には笑みが浮かんでいた。

 

 

モニターが消えているため、 肉眼で確認はできないが、先程まで感じていた殺気が急速に離れていくのを感じ、敵が撤退したのを悟ると、レイナは軽く息を吐き出し、荒くなっていた呼吸を 整える。

不意に…自分の手を見や る……手が微かに震え、掻き消すようにぐぐっと強く握り締めた。

レイナは、ラダーを使い、呆 然となっているレジスタンス達の前に降り立つ。

ヘルメットを取り、首を振 る…汗が周囲に舞う。

気まずそうにレイナを見詰め ているレジスタンス達……そんな彼らに向かって、レイナは冷たく呟いた。

「…バカじゃないの、貴方 達?」

そう思わずにはいられない… こんなランチャーやバズーカでMSに立ち向かうことを、『バカな行為』以外に言い方があるだろうか。

ルシファーが救援に来なけれ ば、全滅していた可能性が高い。

「こんな…まったく無意味な ことを……世話を焼かせないで」

今のレジスタンス達の神経を 逆撫でするような言い草に、レジスタンス達は悔しそうに歯軋りする。

「貴様…見ろっ!」

カガリは我慢できずにレイナ に噛み付き、レイナの胸元を掴み、片手で背後を指した。

そこには、先程の戦闘で死ん だ者達が横たわっている…だが、自分達が身勝手にいきり立って無謀なことをした結果ではないか。

皆必死で戦った! 戦ってるんだ! 大事な人や、大事なものを護るために、必死でな!!!」

なおもヒステリックにわめく カガリに対し、レイナの心は冷めていく。

「だから……何よ」

底冷えするような冷たい視線 を向けられ、カガリは動揺する。

誰かを護るために戦って、そ して誰かを護るためと言いながら、誰かを殺し続ける……

その連鎖の繰り返し…愚か過 ぎる……

なのに…この少女達はその過 ちに気付こうともせず、同じ事を繰り返そうとしている。

キラと同じだ……

「相手の挑発にのって……いきり立った挙句が、この結果でしょう。自業自得よ…支配されるぐらいなら死んだ方がマシ……大方、そんなくだらないプライドで挑んだんでしょう。そういう 奴に限って、自分が死ぬとは思わず、バカみたく戦いを挑む……何の考えもなしに、MSに立ち向かうなんて…勇気じゃない、無謀っていうのよ」

容赦のないレイナの言葉に、 レジスタンス達は反論できず、口を噤む。

「前の戦いでバクゥを倒した のを自分達の力だと過信した…その慢心が、そこに横たわっている連中を殺したのよ……確かに、殺したのはザフトかもしれない…だけど、原因をつくったのは 貴方達自身の驕りよ」

そう、指摘され…悔しさに拳 を震わせる者もいる。

だが、カガリだけは先程から 掴んでいた胸倉をさらに強く握り、睨む。

頭では理解できても…感情が 納得しない。

「…気持ちだけで…思うだけ で、いったい何ができるのよ」

吐き捨てるように呟く。

思うだけなら誰にだってでき る…だが、それを実現する力さえ持っていない……

レイナは手を振り上げて、カ ガリの左頬を強く叩いた。

乾いた音と共に、カガリの瞳 から雫がその衝撃で飛び散る。

「…自身の身さえ護れないく せに……思い上がらないでっ!!!」

カガリは叩かれた頬を押さ え、呆然とレイナを見詰めていた。

冷めた心情の中で…レイナは 自身がらしくないことをしていると思った。

何故自分は…他人に向かって こんな事を言っているのだろう、と……

ただ…無意味なことを繰り返 そうとする者達に、苛立ったのは確かだった。

 

 

 

 

 

《次回予告》

 

 

敵将との出逢い……

仇との再会……

 

二つの出逢いが、レイナの心 に刻まれる……

封印した憎悪が……少女の中 に燃え上がる……

 

 

次回、「仇」

 

記憶を解き放て、ガンダム。

 


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