地球軌道上を航行する数隻のザフト艦。

ヴェサリウスを中心とし、 ローラシア級戦艦が3隻航行している。

これから、地球に補給と部隊 を派遣するため、ローラシア級3隻の耐熱カプセルには、MSが格納され、その中にはイージスとブリッツの姿もある。

《ジブラルタル・サービス、 晴れ。気温12、湿度45、風、西北西27、バナローダ沖に低気圧警報》

オープンになっている通信回 路から告げられるジブラルタル上空の天候を、それぞれのコックピットで聞くアスランとニコル。

徹底に管理されたプラントと は違い、地球の気候はあらかじめのスケジュール通りにはいかない。

《大気圏突入カプセル、パー ジします》

ヴェサリウスからの通信と同 時に、カプセルが外れ、大気圏へと突入していく。

真っ赤に染め上がるカプセル 内に、微かな振動が起こる。

船外モニターには、眼前に 迫ってくる青い地球が映し出されている。

あの地にいるであろう親友を 思い、アスランは青い地球を見詰めていた……

 

 

機動戦士ガンダムSEED 

TWIN DESTINY OF  DARKNESS

PHASE-22  運命

 

 

先のザフトの猛攻を乗り切っ たアークエンジェルは、今現在静かな航海を続けていたが、いつまた敵襲があるか解からない状況だ。

通路を歩きながら、ムウとマ リューは以前、紅海で襲われた敵に対しての対策を練っていた。

「潜水母艦ということ?」

「ああ、この辺りの水中部隊 は、カーペンタリアの所属だ。いくらなんでもカーペンタリアから直接は無理だ…こっちだって動いてんだしさ。ギリギリ来て戦えたって帰れないからな」

ムウの言う通り、MSの搭載 バッテリーのことを考えると、オーストラリア大陸から直接攻撃に来るには遠すぎる。

運用のための潜水母艦が近海 に潜んでいると考えた方が自然だろう。

「洋上艦や航空機なら、いく らなんでも見逃さないだろうけど…水中はこっちも慣れていないしね」

「そうですね」

「今度来たらそっちも叩かな いと…下手すりゃずっと追い回されるぜ」

「ですね…しかし……」

果たしてそう上手くいくだろ うか…不安げになるマリューの背中を元気付けるように叩く。

「ガンバガンバ! どうにか なるよ、なるべく浅い海の上行くようにしてさ…これまでだってどうにかなってきたんだから」

「また根拠なくそんなこと を……」

前回の戦闘では、危うく死の 一歩手前を経験しただけに、マリューの表情も暗い。

「それが励ましってもんで しょ」

ジト眼でこちらを見るマ リューに笑い掛けると、歩いていく。

その後姿に、マリューは苦笑 を浮かべた。

 

 

同じ頃、食堂に集まる一同の 中で、端末を操作しながら、カズィが溜め息をついた。

「……やっぱダメかな」

「だって、目的地はアラスカ だぜ? オーブへ寄るなんて、大回りになるだけじゃないか」

「だいたい、寄ってどうすん の? 私達、今軍人よ。作戦行動中は除隊できないって言われたじゃない」

サイとミリアリアがうんざり した口調で、ここ最近同じことを繰り返すカズィに言った。

だが、カズィはなおも言い 募った。

「でも、こんな予定じゃな かったじゃないか…アラスカへ降りるだけだって。だったら…って僕もさ……」

サイとミリアリアはこっそり 顔を見合わせ、溜め息をついた。

この期に及んでオーブに帰り たいと言い出すカズィの女々しさに……

3人の会話を盗み聞きしてい たカガリは、飲んでいたドリンクを置くと、足早に食堂を出る。

複雑な表情で歩くカガリの後 を追うように歩くキサカが、声を掛ける。

「カガリ」

「解かってる、何も言う な……私はあいつらに何も言ってないぞ」

無言でこちらを見るキサカ に、カガリは抑えたような口調で呟く。

「なら、いいですが……」

「そりゃ、何かあれば…とは 思っているが……」

「カガリ」

今度は、口調に明確な非難が 入る。

「しょうがないだろ! いき さつも、解かってはいるが…この艦とあいつらは沈めちゃいけないって……どうしてもそんな気がするんだから」

半ばムッとした表情で呟き、 彼女は冗談めかした口調で言った。

「きっと、ハウメアのお導き なんだろ、うん」

困惑した表情で見るキサカ だったが、その時、向こうの通路からキラが現われ、カガリは挨拶を交わす。

「よ」

「やあ」

軽い挨拶を交わし、二人はす れ違っていく。

背を向けていくカガリに、キ サカは無言のまま見詰める。

「……まったく、あの子…自 分の立場解かってんのかしら」

そんなキサカに声が掛けら れ、キサカが振り向くと、そこには…通路の壁に凭れ掛かるレイナがいた。

「……あの子は、自分の行動 の危険さを何も解かっていない。彼女が片方に入れ込めば、そちらの立場が悪くなるんじゃない?」

何かを言い回す口調に、キサ カは無言のままだ。

「……獅子の娘ならぬ、じゃ じゃ馬娘ね」

カガリを評したレイナの言葉 に、キサカは軽く溜め息をついた。

 

 

 

ザフト軍・ジブラルタル基地 では、先程降下した大気圏突入カプセルから、『ジン』、『シグー』、『ディン』といったMSが次々と降ろされてくる。

そんな様子を控え室から見詰 めるイザークと、雑誌を読んでいるディアッカ、壁に寄り掛かり、腕を組みながら、瞳を閉じているリン。

そこへ、扉が開き、リーラが 入ってきた。

「アスラン達が到着したっ て…これから、第2ブリーフィングルームでミーティングを行うみたい」

先程、担当の者から伝えられ た内容を伝える。

「あいよ」

ディアッカは軽い口調で答え るが、イザークは一度、こちらを一瞥すると、またもや窓の外を見やる。

イライラしているのが、背中 からオーラとなって立ち昇っている。

「イザーク…少し、落ち着い た方が……」

「落ち着けだと!? こうし ている間にも、足付きはどんどん離れていってるんだぞ!?」

イザークの怒りももっとも だ。

リーラは嗜められず、後ずさ る。

「だからと言って…勝手な行 動は慎みなさい……」

「何だと!?」

辛辣なリンの口調に、イザー クが怒鳴る。

「MSでここから足付きを追 うなど…無理無茶無謀の話ではないからよ。クルーゼ隊長も一緒に降りてきている。うまく掛け合えば、追撃用の潜水母艦を回してもらえるかもしれないわ」

その瞬間、イザークの動きが 止まる。

ディアッカは、どこかイザー クを煽るように言葉を紡いだ。

「成る程。クルーゼ隊長はオ ペレーション・スピットブレイクの準備で動けないし……となれば………」

「別部隊を結成する可能性も あるということ」

「別部隊……」

リンが言葉を繋ぎ、リーラは 思わず反芻し、その意図を察したリーラは思わず不安げな視線をイザークに向けた。

「まさか…私達だけで足付き を追うの? イザーク」

「当然だ! ストライクは俺 の手で倒すっ!!」

恥辱の記憶が甦ったのか、イ ザークが拳を握り締めてキツイ視線を向ける。

「……だけどまあ、取り敢え ずは話を聞いてみないことにはね。とにかく、第2ブリーフィングルームに行こう。ジブラルタルに到着次第、クルーゼ隊長がそこに来るみたいだし」

リンの促しに、全員が控え室 を後にした。

 

4人が、第2ブリーフィング ルームで待機していると、馴染みとなった仮面の上司が姿を現わした。

4人は一斉に席を立ち、敬礼 を行うと、クルーゼも敬礼をしながら4人に視線を向ける。

「リン、イザーク、ディアッ カ、リーラ…4人とも、無事でなによりだ。こうして、全員無事であったことに私自身安堵している」

「はっ、ありがとうございま す」

クルーゼの言葉にイザークが 先立って返答した。

こういう場合は大抵、イザー クがリーダーシップを取りたがる。

ディアッカはイザークのそん なリーダー意識を理解してるし、リンは元々そういったものに興味がない、加えてリーラはあまり自分を主張したがらない。

そんな訳で、結果こういうこ とになる。

「時に、リーラ」

「はい」

「君が地球に降下後、バルト フェルド隊に救助されるまで、何処にいたのかね?」

突然の質問に、リーラは言葉 を呑み込む。

足付きにいたというべきなの だろうか…しかし、そうなれば追求されることは間違いない。

イザークらはともかく、ク ルーゼ相手だと、どうも萎縮してしまう。

「あの…降下後、地元の民間 人に助けられました……ですが、その後…近くに足付きらしき地球軍がいると聞き、すぐさま脱出しました…その後は、バルトフェルド隊に……」

言葉を濁しながら呟くリーラ に、クルーゼはやんわりと微笑む。

「そうか…解かった。とにか くかけたまえ。直にアスランとニコルもここへやって来る。全員揃い次第、オペレーション・スピットブレイクについてのミーティング行うとしよう」

クルーゼの言葉に、改めて敬 礼をするとそれぞれの席に腰掛けようとするが、イザークが一呼吸置いて叫んだ。

「お願いします、隊長! アイツを追わせてください!」

ほとんど食って掛かるような 勢いのイザークに、ディアッカは溜め息をつき、リーラは思わず眼を丸くし、リンは淡白な反応でデスクに腰掛け、腕を組む。

「イザーク、感傷的になり過 ぎだぞ」

嗜めるようなクルーゼの言葉 と、ほぼ同じタイミングで電子音と共にブリーフィングルームのハッチが開かれ、赤い軍服に身を包んだアスランとニコルが現れた。

「失礼します」

足を踏み入れたアスランとニ コルは、イザークがクルーゼに食って掛かったことよりも、その顔に過ぎる傷跡に衝撃を受けたようだ。

「イザーク、その傷……」

イザークは無視するように顔 を逸らす。

「よう、お久しぶり」

久方ぶりに出逢った同僚に、 ディアッカが右手を挙げて声を掛ける。

視線をずらすと、デスクに腰 掛ける…というよりは寄り掛かっているリンの姿が眼に止まる。

だが、リンは眼を閉じたま ま、こちらを向こうともしない…素っ気ない態度は相変わらずだと、アスランは心の中で苦笑を浮かべた。

「クルーゼ隊、全員集合です ね」

同じく座っていたリーラが笑 顔で挨拶し、アスランも軽く会釈する。

一通りの挨拶が済んだような ので、クルーゼが再び話し出す。

「傷はもういいそうだが、彼 はストライクを討つまでは跡を消すつもりはないということでな」

その説明に、アスランは思わず息を呑み、複雑な心境になる。

「足付きがデータを持ってア ラスカに入るのは、なんとしても阻止せねばならん。だが、それは既にカーペンタリアの任務となっている」

「我々の仕事です、隊 長!!」

再度、噛み付かんばかりの勢 いでクルーゼに叫ぶ。

「アイツは…最後まで、我々 の手で!」

イザークが右拳を固く握り締 め、険しい表情で上司であるクルーゼを真っ直ぐと見る。

その表情には、強固な決意が ありありと浮かび上がっている。

「私も同じ気持ちです、隊 長!」

今まで黙っていたディアッカ もその場で立ち上がり、イザークに同意するような意見を述べる。

普段は、自身から意見をほと んど言わないディアッカに、ニコルが意外そうな表情でディアッカに視線を向ける。

「ディアッカ」

「フン! 俺もね、散々屈辱 を味合わされたんだよ

ディアッカも、やや憎々しげ に表情を顰める。

バルトフェルド隊に意気込ん で参加したにもかかわらず、アークエンジェルを撃破するどころか、取り逃がすという失態をえんじてしまった。

おまけに、リン以外は敵MS と戦うことすらできなかったのだ。

砂漠に無様に足を取られ、身 動きの取れない彼らの前で、飛行能力を得たストライクやルシファーは砂漠用のバクゥやラゴゥといった機体相手に互角以上の戦いを見せた。

唯一、リンのヴァルキリーだ けがストライクにダメージを与えたものの、イザークにしてみればおもしろくもなく、流石のディアッカも屈辱を感じずにはいられなかったらしい。

「無論私とて思いは同じだ」

含むような口調で、クルーゼ が何かを企むように仮面を持ち上げる。

「スピットブレイクの準備が あるため私は動けんが……そうまで言うなら、君達だけでやってみるかね?」

待ち望んでいた返答に、イ ザークは声を上げる。

「はい!」

「ではイザーク、ディアッ カ、ニコル、リーラ、リン、アスランの6人で隊を結成し、指揮は……そうだな………」

周囲を見渡し、クルーゼの視 線がアスランに止まる。

「アスラン、君に任せよう」

短くそう告げた。

「えっ?」

指名されたアスラン自身も驚 きを隠せずに声を出す。

そして、自身が選ばれなかっ たイザークは、険しい視線だけをアスランに向ける。

またもやアスランに出し抜か れたというライバルとしての敗北感が、彼のプライドを大きく傷つけたようだった。

だが、クルーゼの話はまだ終 わってはいなかった。

「そして、副官は……リンに 任せようと思う」

その言葉に、全員の視線が先 程からデスクに寄り掛かっているリンに向けられる。

興味なさげに傍観していたリ ンも、その指名には、若干眉を寄せる。

「隊長、でしたら…リンの方 が……」

思わずアスランが声を上げ る。

経験や立場から言っても、自 分よりもリンの方が隊長に向いていると思う。

「ふむ…リンはどうかね?」

こちらを試すような口調に、 リン自身、やや不快感が込み上げる。

やはり、この男とはそりが合 わないようだ。

「…私は構いません。それ に、隊長という役は、私には合いません」

内心の不快を押し隠し、言葉 を紡ぐ。

リンにまでそう言われては、 アスランも反対することはできない。

「決まりだな…カーペンタリ アで母艦を受領できるように手配する。直ちに移動準備にかかれ」

淡々と事務的内容を口にする クルーゼに対して、アスランはまだ動揺を隠せない様子だ。

たとえ、たった6人だけの隊 とはいえ、自分には隊長という役割は正直荷が重いと思わずにはいられない。

なにより、イザークやディ アッカに命令しなければならないということが、彼の心配になっている。

なにより彼をここまで戸惑わ せるのは…自分自身の手でストライクを……キラを討つということに他ならない。

いや、そこまで事実を知って いるからこそ、クルーゼは自分を隊長に任命したのではなかろうかと勘ぐってしまう。

「隊長……」

「……いろいろと因縁のある 艦だ。難しいとは思うが……君らに期待する。アスラン、リン……以上だ」

見透かすような口調で言わ れ、アスランは黙り込んでしまった。

クルーゼはアスランの肩に手 を置くと、ブリーフィングルームを後にする。
ドアが閉まるのを見詰めながら、ディアッカが皮肉をこめた口調で呟く。

「ザラ隊……ね」

「フン、お手並み拝見といこ うじゃないか」
それに続くかのように、イザークが忌々しげに吐き捨てた。

二人はそのままブリーフィン グルームを後にし、リーラが慌てて後を追った。

ニコルの不安そうな視線も気 付かず、アスランは拳を強く握り締めた。

そんなアスランを…リンは、 どこか冷めた視線で見詰めていた………

 

 

 

海上を航行するアークエン ジェルに再び、アラートが鳴り響いた。

「ソナーに感! 7時の方 向…MSです!」

「間違いないか!? 数 は!?」

ナタルの問い掛けに、トノム ラはソナーを駆使し、MSの機種特定を行う。

「音紋照合、グーン4! そ れと不明1ですが、間違いありません!」

不明1というのが気になる が、今は迎撃する方が先決だ。

「総員、第1戦闘配備!」

マリューの指示に、アークエ ンジェル艦内にアラートが響く。

 

《総員、第1戦闘配備! 繰 り返す、総員、第1戦闘配備!!》

艦内は慌しくなり、パイロッ ト達がそれぞれの機体に向かって駆けていく。

そして、自室で船酔いのフレ イを看病していたキラも立ち上がった。

「キラ……」

不安げに見るフレイに、キラ は微笑む。

「ゴメン、いかなくちゃ」

「…うん。護ってね…あいつ ら、皆やっつけて……」

以前なら、その言葉には頷け ただろうが、今のキラには…それに頷き返すことができない。

無言のまま、部屋を出ると、 もう一度フレイに向かって誤魔化すように呟いた。

「寝られたら寝ちゃった方が いいよ…その方が楽だから」

その時、前方からザイ達がブ リッジに向かって駆けてきた。

なんとなく顔を会わせ辛く、 キラとサイは顔を逸らす。

「……頼むな」

低い声で囁かれ、キラはぎこ ちなく頷いた。

「うん……」

サイはそのまま見向きもせ ず、ミリアリア達と共に走っていった。

その後姿を見詰めながら、キ ラは一抹の寂しさを感じた。

何故、こんなことになってし まったのだろう、と………

 

 

海中を、闇に紛れて進む機 影……

グーン4機編成に、中央に は、モラシムの搭乗するUMF−5:ゾノの姿がある。

グーンよりも、水中戦に特化 した機体だ。

巨大な3本のクローを持ち、 水中での高速移動を可能としている。

「フン、浅い海を行ってくれ るとは…このゾノにはかえって好都合」

いくら水中用にチューニング されたとはいえ、MSでは深い海の水圧に耐えれない。

敵の潜水母艦を警戒して、浅 瀬の海を選択したのはアークエンジェルにとって致命的なミスであった。

「クルーゼも降りてきている からな…今日こそ沈めてやるぞ!」

モラシムのゾノがボディの発 射口を開き、魚雷が放たれる。

続けてグーン各機からも魚雷 が発射される。

水中を尾を引きながら、真っ 直ぐにアークエンジェルに向かっていく。

 

 

「魚雷接近! 雷数 15!!」

「離水! 上昇!!」

マリューの指示に、ノイマン は操縦桿を引き上げる。

海上を航行するアークエン ジェルは、水しぶきを上げながら急上昇する。

魚雷は浮上したアークエン ジェルの海面を薙ぐ。

だが、安心する間もなく、浮 上したグーンが背面の47ミリライフルダーツでアークエンジェルを攻撃してきた。

海上を疾走する姿は、まるで 獲物を狙う鮫のようである。

衝撃がブリッジを揺らす。

「底部イーゲルシュテルン、 迎撃開始! バリアント照準!!」

イーゲルシュテルンがグーン を牽制している間に、バリアントが起動する。

「てぇぇぇっ!!」

放たれるバリアントを、グー ンは水中に潜りながら回避する。

 

格納庫では、各機の発進準備 が進められる。

修理の完了したストライクも 今回は迎撃に加わる。

カタパルトに接続され、キラ はマードックに通信を送る。

「マードック曹長、ソードス トライカーを!」

《ソードストライカー…?》

マードックが怪訝そうな声を 上げる。

「レーザーを切れば、実剣と して使えますから…!」

《解かった!》

計器類を調整しつつ、ストラ イクにソードパックが装着される。

だが、キラは初の水中戦に不 安と戸惑いを隠せない。

対し、レイナは前回で水中戦 を経験しているために、落ち着いている。

ルシファーには、先と同じよ うに左腕にアーマーシュナイダーが2刀マウントされた固定具が装着される。

同じく、左舷カタパルトデッ キでは、スカイグラスパーの発進準備が進められている。

《少佐、大尉…お願いしま す》

「了解」

敵潜水母艦を叩こうと、ムウ とアルフは準備を進める。

「CIC、敵母艦の予測位置 は?」

《航路から割り出した予測 データを送ります》

アルフの問いに、素早くデー タが送られてくる。

敵MSの航跡から、移動距離 を算出する。

そして、いざ発進しようとし た時、怒鳴り声が響いてきた。

「だからなんで機体を遊ばせ ておくんだよ!」

ムウとアルフが怪訝そうな表 情で、並び立つインフェストゥスを見やると、眼前でカガリがマードックに噛み付いていた。

「私は乗れるんだぞ!」

「バカ言うな! 前回のこ と、もう忘れちまったのか!」

マードックにそう怒鳴られる と、カガリも僅かに怯む。

前回の戦闘で、意気込んでジ ンに乗り込んだが、まともに戦うこともできずに、ジンを大破させ、レイナに殴られたばかりだ。

「戦闘機なら、私だって操縦 できる! スカイグラスパーのシミュレーションはこなしている!!」

「いや、でもあんたは……」

根本的な問題からしてカガリ は論外だ…なにしろ、軍人ですらないのだから。

「前回は何もさせなかったく せにっ! 死ぬかと思ったんだぞっ! アークエンジェルが沈んだら、皆終わりだろ!? なのに何もさせないでやられたら、化けて出てやるぞ!!」

なおも噛み付くカガリに、流 石のマードックもたじたじになる。

もっとも、アークエンジェル が沈むようなことになれば、当然ながらカガリもマードックも死んでしまうので、化けるも何もないのだが……

すると、そのやり取りを見て いたムウが笑い上げた。

「はははっ、お嬢ちゃんの勝 ちだな、曹長…インフェストゥス、用意してやれよ」

「うえ!?」

さも心外そうに振り返るマー ドック。

「少佐…いいんすか?」

見かねたアルフが思わずマー ドックの援護に回る。

アルフにしてみれば、カガリ の無鉄砲な性格ははっきり言って厄介なような気がする。

「母艦をやりにいくんだ、火 力は多い方がいい」

ムウの言葉に渋々頷き、コッ クピットに身を沈める。

「だが、遊びじゃないんだ ぜ、お嬢ちゃん。言い出した以上は、解かってんだろうな?」

「カガリだ! 解かってる さ、そんなこと!」

カガリは口を尖らせて言い返 した。

 

海上では、未だにグーンによ る攻撃が続いている。

アークエンジェルはイーゲル シュテルンやバリアントで弾幕を張る。

その間に、戦闘機が発進スタ ンバイにつく。

《スカイグラスパー1号、フ ラガ機…発進位置へ》

左舷カタパルトが開き、ムウ はヘルメットのバイザーを下ろす。

「出るぞ!」

ムウの乗るランチャーグラス パーが発艦し、続けてアルフのエールグラスパーがカタパルトにセットされる。

《スカイグラスパー2号、ク オルド機……どうぞ》

「いくぜ!」

エンジンが唸りを上げ、エー ルグラスパーが発進する。

最後に、カガリの乗るイン フェストゥスがカタパルトにつく。

識別信号を変更し、武装には 左右にサイドワインダーを追加してある。

《カガリ機、発進どうぞ!》

カガリがペダルを踏み込む と、身体に強烈なGが掛かり、僅かに顔を歪めるが、発進すると同時に操縦桿を引く。

インフェストゥスは上昇し、 飛行する。

先のジンとは違い、うまく操 縦できる。

3機はそのまま、敵潜水母艦 を求めて飛び立っていった………

そして、海中のMSの迎撃に 回るため、ソードストライクとルシファーが発進し、グーンの攻撃を受け止めながら、海中へと潜行していった……

 

 

ジブラルタル基地から、5機 の輸送機が飛び立っていく。

MS一機分しか搭載できない ながらも、かなりの飛行速度を有し、超距離運輸には欠かせない機体だ。

輸送機には、リン、イザー ク、ディアッカ、ニコル、リーラの5人と、各自の機体が共に乗船している。

輸送機がカーペンタリアへと 向かって飛び立って行くのを、アスランは一人、待機室から見詰めていた。

自分もすぐに後を追う手筈に なっている。

その時、手元の通信機から呼 び出し音が鳴り、回線を繋ぐ。

「待機室、アスラン=ザラ」

《すまんな、君の機体を載せ た機は、航法機材のトラブルで少し出発が遅れる。通達あるまで、そこで待機してくれ》

「解かりました」

そして…アスランがジブラル タルを立ったのは、一時間後のことであった……

 

 


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