プラント群……アプリリウス 市にあるクライン邸………

花が優雅に咲き誇り、遠くに 見える湖は湖面を煌かせている。

そして…邸の主の娘であるラ クスは、庭でハロ達と戯れている。

その時、ハロの一つがピョン ピョン飛び跳ねながら、庭の突き出した部分で佇んでいる人物のもとまで向かっていく。

「あ……ブルーちゃんがそち らへ行かれましたよー」

控えめに叫ぶと、その人物は 振り返る……吊った右腕ではなく、左手でハロを受け止める。

軽く溜め息をつく姿に、ラク スが微笑を浮かべると……今度はピンク色のハロが別の方角へと飛び跳ねていく。

「…ピンクちゃん、いけませ んよ……そちらは……」

ラクスの静止も聞こえず、ハ ロは中庭に突き出したテラスへ入り、そこに置かれていたベッドの上に飛び乗った。

その微かな衝撃で……ベッド で眠っていて人物の瞼がゆっくりと動く。

ラクスが小走りでテラスに駆 け込み、ハロを持ち上げると……寝かされていた人物が身じろぎする。

それに気付いたラクスは柔ら かな笑みを浮かべる。

「あら………おはようござい ます」

その人物……キラ=ヤマトは 夢見心地の気分の中で眼を覚ました。

 

 

機動戦士ガンダムSEED 

TWIN DESTINY OF  DARKNESS

PHASE-30  蠢き

 

 

ベーリング海を、アークエン ジェルは他の連合艦に随行されて陸地へと真っ直ぐ進んでいた。

アラスカ…ユーコン川支流の 河口付近に存在する地球連合軍統合司令本部:JOSH−Aが鎮座している…地下の大空洞に設立された巨大な人口地盤と無数のサスペンションによる接合に よって外部とは完全に遮断された特殊構造…地震どころか、核の直撃にも耐えうる構造を持つ強固な防御機能……それによって護られた施設は、地球軍の強大さ を表しているかのごとく見て取れる。

哨戒機が上空を飛び、他の艦 がアークエンジェルを先導する。

《X−ααチャンネル、オメ ガ3にて誘導システムオンライン…シークエンスGO》

管制局へと哨戒機からの情報 が飛び、管制局は誘導電波を送る。

「入港管制局より入電…オメ ガ3にて誘導システムオンライン……シークエンスGO」

誘導を受け、パルが報告す る。

「シグナルを確認したら操艦 を自動システムに切り換えて、少尉…あとは、あちらに任せます」

マリューの指示に、ノイマン が素早く操縦システムを切り換える。

「誘導信号を確認……ラブコ ムエンゲージ…操艦を自動操縦に切り換えます」

前方に見える巨大な滝が割 れ……その奥に見えるJOSH−Aメインゲート内へと入港していくアークエンジェル。

だが、その船体は激しく傷付 き……またクルー達も異常なほどの疲労を醸し出し、艦内は沈みきっていた……

 

 

アークエンジェル入港の様 を、JOSH−Aの地下深くに設置された統合作戦室のモニターに映し出され、数人の将校達がそれを複雑そうな表情で見詰めていた。

「…アークエンジェル か………よもや辿り着くとはな………」

一人が、苦い口調で呟く…… そこには、とても僚艦の安堵を喜ぶものはなく…他の将校達も一様に困惑を示している。

このJOSH−Aは、地球連 合の統合本部とはいえ、実質には大西洋連邦がその中枢を担っている……だからこそ、将校達の困惑は強かった。

「ハルバートンも、厄介なも のを降ろしてくれたものだ……進言だけにしておけばいいものを……」

うそぶくように呟くと、一人 が揶揄するような口調で答える。

「護ってきたのは……コー ディネイターの子供ですよ」

「そうはっきり言うな…サ ザーランド大佐」

苦りきった表情を浮かべ、サ ザーランドと呼ばれた将校は手元の書類を持ち上げる。

「だがまあ…土壇場に来て、 ストライクとルシファー…そしてそのパイロットがMIAというのは……なんというか…幸いであったな」

書類にはキラ=ヤマトとレイ ナ=クズハの名が記載され、その上からMIAという文字が大きく捺されている。

「GATシリーズは、今後我 らの旗頭となるべきもの……それがコーディネイターの子供に操られていたのでは、話にならない……」

吐き捨てるように呟くサザー ランドに、他のメンバーも頷く。

「確かにな……」

「所詮は奴らに敵わぬもの と、眼の前で実例を見せるようなものだ……」

皮肉るように罵り合う将校達 の前で、サザーランドは端末を操作し、手元のモニターに違う映像を浮かばせる。

「全ての技術は受け継がれ、 さらに発展しています……今度こそ、我らのために」

全体モニターには、MSの映 像とスペックデータが表示される。

巨大な二門の砲を備えた重装 備の機体…甲羅のようなユニットを備えた機体…可変機構を備えたデルタの翼を持つ機体…両腕に龍の頭部を模った武器を備えた機体…戦闘機のような支援メカ に有線式の武器ユニットを備えた機体…スマートな機体形状に鳥を思わせる可変機構と翼を持った機体……だが、そのどれもがGと似通った形状を持っていた。

その映像に、全員が納得した ように頷く。

「……アズラエルには、何 と?」

「問題は全てこちらで修正す る…と、伝えてあります」

指を組み、愉悦を思わせる笑 みを浮かべる。

「不運なできごとだったので すよ、全ては……そして、恐らくは………これから起こることも……」

サザーランドの言葉に、将校 達はまるで神託を聞くかのごとく厳粛に頷く。

「全ては……青き清浄なる世 界のために…………」

 

 

JOSH−Aのドックに格納 されたアークエンジェルのブリッジに、管制室から係官が通信に出ていた。

《統合作戦室より、第8艦隊 所属艦、アークエンジェルへ通達》

それに対し、マリューとナタ ルが敬礼する。

《発令、軍司令部:ウィリア ム=サザーランド大佐…『長きにわたる激戦の労を労う……事情聴取せねばならぬ事態でもあるので、貴艦乗員は別命あるまで、現状のまま艦内待機を命ず る』》

事務的に伝えられる内容に、 マリューは当惑する。

「現状のまま……であります か?」

《そうだ…パナマ侵攻噂のお かげで、ここも忙しくてな……ま、取り敢えず休んでくれ》

素っ気なく…淡白に伝え終わ ると、通信は途切れる……困惑した面持ちでマリューとナタルは顔を見合わせた。

ただひたすらにアラスカに着 くことだけを目的に、多くの犠牲を払って今迄の孤独な戦いも潜り抜けてきた…別段、歓迎されることを望んでいたわけではないが、もう少しハッキリとした対 応があってもよいのでは、とマリュー自身憤りを覚える。

バスター以外のGを全て失っ てしまったとはいえ、このデータこそ、これからの地球軍の希望となるとハルバートンの思いを継いでここまで来たが、そのデータも上層部の人間はあまり期待 していないように感じる。

マリューは、どこか虚しい思 いを抱かずにはいられなかった………

 

 

 

夕闇がカーペンタリア基地を 包み込む。

先程から基地内は慌しく思え る……次々と輸送機が到着し、ジンやザウートが降ろされてくる。

格納庫では、グーンやゾノと いった特機の整備も急ピッチで進められている。

この騒動も、オペレーショ ン・スピットブレイクを目前に控えているからこそであり、皆一様に気合いが入っている。

地球連合の最後のマスドライ バー基地:パナマ攻略に向けて宇宙や地上の各地から兵士やMSが次々と集結し、作業に追われている。

そして……そんな慌しい状況 を、本部施設の病棟で療養しているアスランはぼんやりと眺め、その隣のベッドでは、リンは僅かに起き上がっているベッドの上体に背を預け、天井部を…い や、それを通して虚空を見詰めていた。

二人の胸中に渦巻くは、先日 の戦闘……

散っていった幼い仲間……

命を懸けて互いに殺し合った 相手……

そして……自分達を助けた少 女の顔が過ぎる……

アスランは、護れなかったと いう思いにかられ…リンはまるで自分の生きる意味が永遠に失われたように全てを虚しく感じていた……

だが、そんな二人も、電子音 が鳴り、スピーカー越しに響いた声に反応した。

《クルーゼだ、入るぞ》

とても部下の見舞いに来るよ うなタイプではなさそうなクルーゼが入室してきたので、二人はどこか無気力な状態で振り向いた。

「……隊長」

身体を起こし、敬礼しようと するアスランを、クルーゼはやんわりと制する。

「そのままでよい」

アスランとリンのベッドの間 に立ち、二人を見詰める。

「申し訳……ありませ ん………」

項垂れるようにアスランが表 情を俯かせた。ニコルが戦死…ディアッカは行方不明……リーラは重症…そして、隊の指揮官であった自分とリンは機体を失ってしまった。

隊長としての責任は重いだろ う…だが、そんなアスランの危惧も無用とばかりに鷹揚に答える。

「いや……報告は聞いた。君 らはよくやってくれたよ」

「いえ……」

アスランは特に無感動のまま 答え、リンも視線を逸らす。

「私こそ対応が遅れてすまな かったな……確かに犠牲も大きかったが、それもやむをえん……」

クルーゼは、どこか優しげに 愉悦を含んだ笑みを浮かべて呟いた。

「……それ程、強敵だったと いうことだ……君の友人や、地球軍のMSパイロットは」

クルーゼの言葉にアスランは 俯いたまま瞳を見開き、身体を強張らせる。

リンもどこか、ビクッと身を 萎縮させ、無意識に拳を握り締める。

改めて突き付けられた現実 に、アスランは胸の奥底に吹き荒れる嵐に苦しめられた。

そんなアスランの反応に、ク ルーゼは密かに口元に笑みを刻むが、それは俯いたままのアスランに見られることはなかった。

「辛い戦いだったと思う が……ミゲル、ニコル、バルトフェルド隊長、モラシム隊長………他にも多くの兵が彼らによって命を奪われたのだ」

名前を挙げきれないほど多く の兵が、ストライクとルシファーによって命を奪われた。

「それを討った君らの強さ は、本国でも高く評価されているよ…君らにはネビュラ勲章が授与されるそうだ」

「え……?」

アスランは驚いて顔を上げ る……部下を死なせ、機体まで失った自分に、何故勲章が……

戸惑うアスランの横で、リン もどこか困惑した面持ちでいた。

「リン…君にとっては、二度 目の勲章だな」

揶揄するようなクルーゼの言 葉に、憮然とした表情を浮かべる……そう、リンは以前…華南宇宙港を陥とした際に、ネビュラ勲章を受け取ったのだ…その功績が認められ、YFX−200の 試作用であった試作型ビーム兵器装備をヴァルキリーへと受領したのだ。

「私としては残念だが、本日 付で国防委員会直属の特務隊への転属との通達も来ている」

リンには再び特務隊へと戻れ ということだろう……英雄役のプロパガンダか……と、内心で吐き捨てた。

「そんな…隊長………」

呆気に取られるアスランの口 調が思わず上擦る……自分は昇進が決まり、賞賛されているという事実に身が震える。

「それと、リフェーラ=シリ ウスも君らと共にプラントに戻ることになるだろう。彼女には本格的な治療も必要だ。それに……」

クルーゼはそこで一旦言葉を 止め、仮面の奥に隠れた瞳に光を宿す。

その先の言葉を呑み込み、別 の言葉を出した。

「トップガンだな…アスラ ン、リン。君らは最新鋭機のパイロットとなる。その機体受領のためにも、即刻本国に戻ってほしいそうだよ」

「しかし……」

なおも混乱し、言い募ろうと するアスランに、クルーゼは唐突に尋ねた。

「お父上が評議会議長となら れたのは、聞いたかね?」

「あ……はい」

そう言えば、医療班の誰かが その事を伝えてくれたような気がする。

「………とうとう、ザラ委員 長が…いえ、議長が実権を握りましたか」

皮肉るようにリンが呟く…… パトリックが議長の座に就いた以上、もはや穏健派にはどうしようもない……

だが、その皮肉すらも汲んだ ようにクルーゼは笑みを浮かべた。

「ザラ議長は、戦争の早期終 結を切に願っておられる」

言葉を続けながら、クルーゼ がアスランの肩にその手を置いた。

「……本当に早く終わらせた いものだな。こんな戦争は………」

まるで冷水をかけられたかの ごとく、アスランの心は寒気を感じていた……戦争を終わらせるために…プラントを護るために自分は今まで戦っていた。

「そのためにも、君らもまた 力を尽くしてくれたまえ」

滑らかに伝えると、クルーゼ は静かに部屋を退出する……その様を見詰めながら、リンはフンと鼻を鳴らす。

(いったい、何を考えている の……ラウ=ル=クルーゼ…………)

クルーゼが、パトリックとは また違った思惑を持っているのは薄々感じていたが……だが、暫くはまだ従順なフリをし続けるだろう……あの男が何を考えていようと、一人で何かをできると も思えない……そして、自分には関係ない………

リンはそっと、包帯で巻かれ た右腕を見やる……この手で殺した者の顔が過ぎる………

互いに相手を欲し……ただひ たすらに全てをかなぐり捨てて殺し合った……あの戦いも…姉の死も…そして……自身の死も…自分だけのもの。それが勝手にプロパガンダに持ち上げられるな ど、気に喰わない………思わず、爪が喰い込み…血が流れそうなほど手を強く握り締める………自分自身が生きていることに、憤りを覚えずにはいられなかっ た。

アスランは未だ呆然としたま ま……唇を噛む思いでシーツを握り締めた。

頭では理解していても…心は それを受け入れようとはしない……ザフトにとって厄介な地球軍のMSを打ち倒したことは確かに周りから見れば賞賛に値することでも、その乗っていたパイ ロットは自分の親友だったのだ…そして……その命を奪うために憎悪に身を任せ、相手の命を欲し、そのためになら自身の死も惜しくないとさえ思った……だ が、時間を経て感じるのは、悪夢としか思えないことだけである……キラの命を奪うため、自ら自爆装置で決着をつけたのだ……呼吸を乱し、アスランは身体に 走る悪寒と恐怖に震える。

だが、既に悔やんでも…もは や遅い………時間は…決して戻りはしないのだから………

 

 

 

柔らかな日差しが差し込むま どろみの中で、キラはゆっくりと眼を開けた。

未だ認識できない瞳に映った 少女の顔を見て……天使と錯覚した。

そして……自分は死んだの か、という考えが過ぎるが…それすらもはっきりと認識できない。

「……こ…こは………?」

キラは渇いた喉でなんとか声 を絞り出す。

気だるげに首を動かし、ゆっ くりとベッドの側に立つ天使を見上げる。

「……お解りになります?」

優しげな声と穏やかな表 情……そして、その顔に見覚えがあることに気付いた…よくよく見れば、先程から周囲で跳ね回っているピンク色の球体にも見覚えがある。

「ラクス…さん……?」

キラがその少女の名を呼ぶ と、呼ばれた少女…ラクスは嬉しそうに微笑んだ。

「あら……ラクスとお呼び下 さいな、キラ」

どうやら……ここは天国では ないようだ…もっとも、ラクスが先に死んでいては解からないが……

「でも……覚えていてくだ さって嬉しいですわ」

確かに……ラクスとは宇宙で 別れて以来だ…あれからゆうに数ヶ月の月日は流れていたが、自分の苦悩をやわらげてくれた存在を、そう忘れるはずもない。

【マイド、マイド!! ハロ ゲンキ! オマエ、ゲンキカ?】

彼女の傍を跳ねるアスランが 作った球体の物体も記憶通りだ……しかし、何故ラクスがここにいるのか…そもそも、自分が今どうなっているかさえ判別できず、呆然と思考に耽っていると、 足音が二つ近付いてきた。

「彼が眼を覚ましたのです ね?」

聞き慣れない声に、キラが眼 を向けると……そこには一人の眼を閉じた男が、どこかゆったりとした足取りで近付いていた。

「はい、マルキオ様」

ラクスが答え…キラがその横 に眼を向けると…見知った顔が飛び込んできた。

「……ようやくお眼覚め?」

いつもの……どこか呆れた口 調で呟くのは……レイナ=クズハであった。

もっとも…いつもの黒のジャ ケットではなく、黒のアンダースーツに右腕をギブスで固め吊り、頭には包帯が巻かれている。

「だけどラクス……なんで、 こんなにいるのよ?」

レイナは先程まで、ハロの大 群に囲まれ、今ようやく抜け出せてきた……ウンザリした口調で溜め息をつく。

「フフフ…レイナは、もう大 丈夫ですか?」

小さく笑みを浮かべ、尋ねる ラクスに、レイナは右腕を微かに振る。

「まだもう少し掛かるわ ね……」

世間話でもするかのように親 しく言葉を交わすレイナとラクスを、キラが呆然と見入っていると、マルキオと呼ばれた男が唐突に話し掛けた。

「驚かれたのではありません か? このような場所で」

どこか、神秘的な雰囲気の漂 うマルキオに、キラはこのままの体勢では失礼だと思ったのか、身体を起こそうとしたが、どうも身体が重くて動かない。

結局、身体を起こせず……首 だけを動かして周囲を見ると…ガラス越しに見える広々とした庭に面したサンルームにいると知り、やや戸惑いを浮かべる。

「ラクス様がどうしてもベッ ドはここに置くのだと聞かなくて」

「そうよね……いくらなんで も、これはどうかと思うけど……」

マルキオとレイナの批評に、 ラクスはやや口を尖らせる。

「だって、コチラの方が気持 ちいいじゃありませんか、お部屋より……ねえ?」

無邪気に笑いながら、ラクス はキラに同意を求める。

だが……キラの頭は未だ、釈 然としないものを感じていた……なにか、気を失う前に何かがあったような………

「…僕は………」

混乱するキラの気持ちを察し たのか、マルキオが静かに答える。

「貴方達は傷付き、倒れてい たのです……私の祈りの庭で………」

口調は穏やかであったが…… 事実は淡々と述べられた。

キラの脳裏に……アスランと の死闘が過ぎる………夢ではない…はっきりとした現実……刹那、呼吸が荒くなり、息苦しさを覚える。

そして……身体に寒気が走 り、汗がどっと噴出す。

「そして……私がここにお連 れしました」

マルキオの静かな言葉が、 ゆっくりとキラの心に染み込んでいた記憶の断片を浮かび上がらせていく……心臓が激しく脈打ち、その都度あの悪夢のような光景が現実となってキラに突き付 けられる。

「…ああっ……ぁぁ…… はぁ……はぁ…ぁ………」 

震えるキラを気遣うようにラ クスが覗き込む。

「キラ……?」

レイナは正反対に、表情を険 しくしてキラの見詰める。

「どう……して…………?」

微かに涙を浮かべた瞳をラク スに向ける。

「どうして……僕…………」

どうして自分が生きてい る……あの時、死んだはずの自分が………

「親友との戦いでも思い出し た……」

遠慮の欠片もない口調で呟い たレイナ……その内容に、キラの身体が跳ね上がった。

何故……レイナはアスランの ことを知らないはずなのに………疑念を浮かばせるキラの心を読み取ったのか……レイナは静かに答えた。

「……途中から知っていた わ………ラクスを人質に取った時にね」

キラは顔を俯かせる……

「なんで………僕は………僕 は………」

「貴方は『SEED』を持つ 者……故に………」

マルキオの語った意味など、 今のキラには解からない……ただただ呼吸を乱し、シーツを硬く握り締めると身体をくの字に曲げて苦しそうに嗚咽を漏らす。

その瞬間……身体と心に鋭い 傷みが駆け巡る………その傷みが、逃れられぬ現実となってキラに突き刺さる。

「うっ……ぐっ……… うぅぅ…………」

哀しみと傷みに歯を噛み締 め、溢れる涙を堪えられず、ただ嗚咽を漏らすキラ。

そんなキラに寄り添い、ラク スが悲痛そうな面持ちでキラの手に自分の手を重ねる。

「僕は……アスランと戦っ て………」

「え……」

ラクスの眼が一瞬、見開かれ る……そうだ…自分が憎悪を抱き、殺そうとまで思った相手は眼の前の少女の婚約者なのだ。

罪悪感が押し寄せるも……キ ラの告白は止まらない…まるで、それが懺悔だとでもいうように………

「…死んだ……はず、なの に…………」

イージスがストライクに噛み 付いた瞬間……眼の前を閃光が覆った………そして…その炎に自分は焼かれて死んだはず………

トールがアスランに殺され て……アスランを憎んで……仲間を殺されたアスランもまたキラを憎んで……二つの憎しみが、今のキラに容赦なく突き刺さる……なのに…自分は生きてい る……再び俯き、歯を噛み締める。

そんなキラをいたわるように ラクスが手を触れようとするが……それをレイナが遮った。

驚いてレイナを見やるラクス に……レイナは静かに首を振った。

そう………下手な慰めなど、 相手を傷付けるだけでしかない……自身が罪を犯したなら、それを受け入れなければならない………その傷を…本人が受け止めなければ、なにも変わらな い…………

ラクスは言葉を掛けることな く……せめてもと、嗚咽を漏らすキラの背中をそっと擦った。

 

 

どれ程そうしていたのか…… ようやくキラが落ち着きを取り戻し、ベッドに身を横たえると、マルキオは席を外し、レイナはテラスのガラスに寄り掛かり、ラクスはベッドの傍に座り、慣れ た手つきで紅茶を注ぐ。

カップに立つ湯気と……ほん のりと漂う香りに、幾分か気分が和らいだのか……キラは静かに呼吸を繰り返す。

そして……吐き出すようにポ ツポツ語り出した。

「どうしようもなかっ た………」

テラスのガラス越しに……プ ラントの人工の空を仰ぎ……虚空を見やる。

ラクスはサイドテーブルに、 そっと淹れたばかりの紅茶を置く……レイナは、ガラス越しに外を見やりながら、独白を聞いていた。

「僕は……彼の仲間を…殺し て…………」

突如として現われ……イージ スを庇うように突撃してくるブリッツを弾き飛ばす……その感触は、未だに手から離れない……

そして……パイロットの名を 呼ぶアスランの悲痛な叫び………

「アスランは……僕の友達 を………」

言葉を呑み込む……イージス の投げたシールドがインフェストゥスの翼をもぎ取り………ヴァルキリーがコックピットを突き飛ばした……

粉々になるコックピットと飛 び散ったトールの肉片………アスランが直接殺したわけではない……だが、あの時のキラはそんな事を考えもしなかった。

ただひたすら……トールの死 を受け入れられず………その怒りをアスランへと向けただけ。

「だから………っ」

「……貴方はアスランを殺そ うとしたのですね……そして…アスランも貴方を………」

呑み込んだ言葉をラクスが紡 ぐ……罵倒されても仕方ないと思った。

だが、ラクスの表情はどこか 冷めた、冷静な眼を浮かべていた……先程までの穏やかな微笑が陰を帯び、真っ直ぐな瞳でキラを見やる。

「でもそれは、仕方のないこ とではありませんか………」

紅茶を一口飲み干すと……静 かに言った。

キラは見たことがない表情に 呆然と見入り……レイナは眼を細めた。

そう……今の彼女は、世間知 らずのお嬢様ではなく…ラクス=クラインという自分を見せているのだ。

「戦争であれば」

遠慮もなく言い切ったラクス に、キラは衝撃を受ける……責めることも、赦すこともなく…淡々と、現実だけを言ったことに………

「お二人とも…『敵』と戦わ れたのでしょう………違いますか?」

はっきりと言い切った言 葉……そう………確かに、あの時のアスランは敵だった………殺すために必死に戦った……殺されたから…いや…そもそもは友達を護るために敵になって……い や………戦争なのだから………たとえ親友同士であっても…殺し合わねばならないのが戦争………キラの中には、激しい疑念が渦巻く………

「でも………」

震えるように囁くが……言葉 が呑み込まれる。

「でも……戦いたくはなかっ た……殺したくはなかった……そう言いたいの?」

ガラス越しに外を見ていたレ イナが言葉を紡ぎ……言い訳めいた言葉を呟きそうになったキラは表情を逸らし……ラクスはそんなキラを覗き込む。

「……キラは、どうしたかっ たのですか?」

答えられず……口を噤む。

「では……アスランがお嫌い になられましたか?」

それも違う……無言と顰めた 表情で否定の意を表す

キラ自身が答を掴みかねてい るのを見て……促すように話を続ける。

「それでは……貴方が戦う理 由は、何だったのですか………?」

母親のように優しい口調で促 され……キラは静かに答えた。

「僕は………護りたかったん だ……友達を……」

「それで……地球軍に入られ たのですね?」

……そう…護りたかったか ら、地球軍に志願した…………

「そして貴方は……いえ、貴 方達はコーディネイターを殺す道を選択した」

レイナが冷めた口調で呟 き……キラは思わず反応する。

「違う……っ」

「何が違うの? そうでしょ う……地球軍の戦う相手はザフト………地球軍に入るということは、ザフトと戦うこと……ひいてはコーディネイターを殺すこと………戦争を終わらせるために 軍に入った…なんて安っぽい正義感なんか、聞きたくない………反吐が出るわ」

吐き捨てるレイナに……キラ は言葉を失う………言い返せなかったからだ……事実、自分は多くのザフトのMSや戦艦を墜とした……それは、紛れもなくコーディネイターを殺したことに他 ならない……友達が戦争を終わらせるために軍に残り…そしてそれを護りたいから自分も志願した………その意味も考えず………

「……安っぽい正義感や自己 満足で戦うことほど、後で後悔することはないわ………そして結果が………これでしょ」

喪失と後悔………軍に入るこ となど……いや…戦う道を選べば、得られるものはそれしかない……いや……喪うということしかない……

「貴方の親友……アスラン= ザラといったかしら………貴方は、コーディネイターの親友よりもナチュラルの友人を選択した」

冷たく言い切ったレイナに、 ビクッと身が硬直する。

「……親友と戦ってでも、友 達を護りたいから………軍に志願したんでしょ?」

「本当は……戦いたくなんて なかった。でも……そうしなきゃ………」

「じゃ、仕方ないでしょ…… 貴方が親友を殺しても………それが戦争なんだから……殺らなきゃ殺られる………戦場ではその二つしかないわよ」

さも当然のように断言したレ イナに……キラはハッと顔を上げる……言い訳じみていても、結局はそれしかないのだから。

「仕方ないでしょ……敵を倒 すのが軍人の役目であり……それが戦争なんだから…その相手がたまたま親友であっただけのこと……たとえ親だろうが、兄弟だろうが、恋人だろうが………敵 ならば倒さなくちゃいけない………別に、貴方が思い悩む必要なんてないでしょ」

キラは呆然とレイナに見入っ た……あまりにストレートに…そして変えようのない現実を突き付けたのだから……

だが…とキラは頭を振 る………『仕方ない』……その一言で自分を無理矢理納得させてきた。しかし、それで残るのは後悔と罪悪感だけ……

「納得……いかない?」

相変わらず……心を見透かす ような言葉を呟くレイナ………

「キラ……人の生き方には、 常に選択が付き纏うわ………もし、貴方があの時MSに乗ることを拒否したら……地球軍に志願せず、そのまま降りていたら………」

時間にIFはない……だが、 そう考えずにいられないのもまた人という生き物なのだ。

キラは項垂れる。

「人は時として、頭ではなく 感情に突き動かされる場合もある……その時の選択がどういう未来を招くのか……その時には解からない。人の想いなんて、決して一つじゃない…ナチュラルの 友人を護ろうとした貴方も…親友を思う貴方も……結局は貴方自身。表と裏……人は常に二面性を併せ持つ」

レイナの言葉を聞き逃さ ず……必死に聞き入るキラ……まるで、怒られた幼子のように……ラクスもまた、静かにそれを見守る。

「そう……貴方が友人を護ろ うとした行為も、第三者から見れば決して正しいとは言えないのよ……貴方が友人を護ることは、引いてはあの艦とMSを護る……そしてそれは……コーディネ イターの排除に繋がる」

絶句するキラ………その表情 を見て、自分が齎した別の結果をまったく考えていなかったことが窺え、レイナは思わず目眩を起こした。

その場の勢いだけでしか道を 決められない子供では、仕方ないことかもしれないが……

「貴方……間接的にコーディ ネイターを殺す手助けをしたことに気付いてないの?」

「え……っ」

「いい……私達が乗っていた MSは、地球軍の試作機と試験機……当然、それを基に量産計画に移行するためのデータ収集機よ。貴方が乗ったストライクの戦闘データは、さぞ地球軍にとっ て有用なデータとなるわね………恐らく、アラスカに着いた瞬間…多分貴方はアークエンジェルから無理矢理降ろされて、下手をしたら抹殺ね……そして、残っ たストライクの戦闘データを基に開発された量産機が大量に生産されて、一挙にザフトに攻勢に出る………ここまで言えば、いくら貴方でも解かるでしょ?」

視線を向けると……キラの表 情はどこか青ざめている。

どうやら、本気で予想してい なかったようだ。

物量では圧倒的にザフトは 劣っている……それが膠着に持ち込めたのも、MSというアドバンテージを得ていたからだ…だが、その有用性が失われれば、結果は容易に想像できる。

現に……未だ、キラ達に話し てはいないが……レイナは地球で地球軍…いや、大西洋連邦のものと思しき量産型MSと戦闘を行った……さらに…これはまだ推測の域を出ないが…ウォルフが その中に紛れていたことで、大西洋連邦とブルーコスモスの関係も確信できた。

元々、地球に降りてから調べ た結果…今回のG計画にはブルーコスモスの盟主の軍需産業が絡んでいることも知った。

だからこそ……レイナは一応 の保険をかけておいた。

そんなことは億尾にも出さ ず、話を続ける。

「……後悔しない生き方をす るなんて絶対にできない…でもね、後悔するにしろ…自身の信じた道を進む覚悟がなきゃいけない………周りに流されず…感情だけに突き動かされず……自分が 信じるに足る道を選ばなきゃいけない………」

「道を……選ぶ………」

思わず反芻し……そして、同 時に思った……

護りたいとは思っていて も……結局は、置いていかれるのが嫌で……孤独が嫌で戦う道を選んだ……でも…それは、結局は流されただけに過ぎない……落ち着いて考えれば…もっと違う 道があったかもしれない………

トール達とも…そして、アス ランとも……もっと話し合えばよかったかもしれない………自身が甘えた結果が……これなのだ。

自分が我慢して戦っていれ ば……嫌なことから眼を背けてさえいれば、それで問題はないと思っていた……身勝手だと思う。

嫌なことのみを避けて通るこ となど不可能なのだ……そして…それはアスランに対してもだ。

どれだけお互いに覚悟を決め たつもりでも……アスランに自分が殺せるはずがなく…自分もアスランを殺すなんてないと心の中で信じている自分がいた。

そして自分達は、単に殺し合 いを演じていただけだ……周りを巻き込んで……そして…アスランの仲間が死に……トールが死んだ………それは自分達の身勝手さが招いたものだ。

その瞬間……互いに持ってい た安っぽい 自己満足は吹き飛んだ。

互いの甘えで仲間を死なせた のに……その責任を相手に求め、相手を憎んだ。

自分の身勝手であまりに幼稚 な独り善がりが、ここまで事態を悪化させた。

中立国で安穏と暮らしていた 自分に解かるはずもない……外の世界は、種の存亡を懸けて戦っていることを……だが、キラにはそれ程の覚悟もなく…護りたいものとはそれ程大きなものでも なかった……キラが護りたいと思ったのはあくまで身近な親しい者達……そんな覚悟しかもてない自分が、この戦争の中ではどれだけ異端であるかも考えず に……

「僕は………どうすればいい んだろう……?」

今更……この罪を償うことは できるだろうか……仮にできたとしてもどうやって……

もう地球軍に戻ることも…ザ フトに入ることもできない……そんな事をしても、何も変わらない気がする……結局は、同じことの繰り返しにしかならない……

ならばどうすればいい……こ の力で……できるだけのことがある力で………だが、そこでキラは気付いた。

できるだけの力があれば…… できることをやれ……それは別に戦うというだけの意味ではない………キラは今迄、戦うことしかできないと混同していた………

「僕は………」

今一度反芻するキラに、レイ ナが素っ気なく答えた。

「その答えは……自分で見つ けなさい………一度や二度悩んで答えが出るなら…誰も生き方を間違ったりなんてしない………貴方が今迄感じたこと…後悔したこと………それらを踏まえ て……これから自分がどうしたいかを考えなさい………少なくとも、考える時間はあるはずよ……あとは…貴方自身の問題」

言葉を締め括ると、レイナは 軽く息を吐き出した……改めて…自分が何故これ程他人にこんな言葉を掛けたのか理解できない………ただ、無意識に………話さずにはいられなくなった。

そんな風に思い悩んでいるレ イナに…ラクスが声を掛けた。

「ではレイナ……貴方は、何 故戦うのですか………?」

不意を衝かれたようにレイナ が顔を上げ……キラも視線を向ける。

視線を微かに逸らし……眼を 伏せる。

「私が戦うのは……自分自身 のため………話してなかったわね………私……生まれてから10年ぐらいまでの記憶がないの………」

まるで他人の過去のように語 るレイナに、キラが眼を見開き…ラクスも口を噤んだ。

「別に悲観してるわけでも… 同情してほしいわけでもない。でも……自分が何なのか、知りたいと思ったのは確かよ……自分が何処で生まれ…何のために生み出されたのか……その答が知り たくなった………」

『BA』だった頃の自分な ら……そんな事に拘りはしなかっただろう……自分の周囲には常に敵がいた………殺すことのみに生きていた自分にとって、そんな過去など興味がなかった…… 変わったのは……『レイナ=クズハ』として生き始めた頃からだろう。

何故、自分は生まれたの か………自分という存在は何なのか……それが知りたくなった。

しかし……その過去を教えて くれるものはなにもなかった……元々まともな戸籍すら持っていない自分の事など、調べられるはずもない………

「…私にとって、戦うことは あくまで生きるための手段に過ぎない………たとえ、何を犠牲にしようと、生き残る………私の生き方はそれだった」

「でも……それは哀しいこと です」

いたたまれない表情でラクス が呟く。

その姿に、苦笑を浮かべた。

「言ったでしょ…同情は別に してほしくないって………私は別に自分の生き方が正しいなんてこれっぽっちも思っていない……でも死ぬわけにはいかないから、誰かを犠牲にする……それ は、生きる上では決して否定できないこと」

自身を知るまで死ぬわけには いかない……レイナが戦う理由は最初はそうだった……あの時……ヘリオポリスが崩壊した時、そこにたまたまルシファーという力があった……生き残るための 力があったからレイナは戦った……ルシファーがなくても、戦う手段があるならレイナは迷わず実行するだろう………たとえそれが、誰かを犠牲にすることで も……

生きるということは、何かを 犠牲にすること……それは変えようのない現実。

ラクスも、その正論を否定す ることはない……いや、むしろそれが事実であることを受け入れているのであろう………

「……そして私は出逢っ た……自身を知る者と………」

「リン様……ですね?」

キラは頭を傾げる……それを 見たラクスが答える。

「リン=システィ……漆黒の 戦乙女と呼ばれる方です」

脳裏に……ヴァルキリーの姿 が甦る……あれのパイロット……それがレイナの過去を知る人物……思わずレイナを見やる。

肯定するように頷く。

そう……もしあの時……リン と出逢わなければ、自分は恐らくアークエンジェルに残りはしなかっただろう………また自身を探す旅を続けていた………だが出逢ってしまった……それが運命 であったのか、必然であったのかは解からない………だからこそ、レイナはアークエンジェルに残った……自身を知る者と戦うために………自身を知るため に………

「もっとも……彼女が私をど こまで知っていたかは解からない……だけど、彼女と戦うたびに、私はずっと知りたかった記憶を少しずつ思い出した……」

「レイナ……その記憶は貴方 にとって、知るべきものでありましたか?」

「……どうして?」

「凄く……辛そうな顔をして います……人には、知らない方が幸せなこともあるのでは」

相変わらず鋭い娘だ……と、 内心に囁く……だが、レイナはラクスのそんなところが気に入っていた。

「価値があるかどうかは、私 自身が決める……知らなければならないことも、時にはある……」

「それで、ご自身の命が危険 に晒されても、ですか……?」

正直……レイナがここに運び 込まれた時の容態はキラよりも酷かった。

一応の応急処置はされていた とはいえ、全身打撲に内出血…特に右腕は皮膚の表面がほとんど焼け爛れ、もう使いものにならないとさえ思ったほどだ。

「……私にとって、生も死も 関係なかった……自分でこの生き方を選んだ時に……殺されても……それは私が誰かの生きるための犠牲でしかないって割り切っていた……だから私は………」

一瞬、言葉を呑み込む……そ して、右手が握り締められる。

「そう……私と彼女は、互い に相手の死と…自身の死を求めた…………」

脳裏を過ぎる光景……幾度と なくぶつかり合い、互いに殺し合った………

「私は……あの時、死ぬはず だった………なのに…………それを拒否したっ」

どこか、唇を噛むように語尾 が荒くなる。

「頭の中では……あの時に死 んでも構わないと思った………だけど……心はそれを拒否した………」

だからこそ……今、自分は生 きている………必要ないと思っていた心に…その命を救われるとは……皮肉を通り越して茶番だ……と、内心で嘲笑を浮かべる。

「私は……自分の心が解から ない……いえ………結局のところ、私は自分自身のことをよく解かっていないのかもしれない………」

胸を押さえ……思考に耽 る………あの時…死を求めたのは誰であったのか…そして……生を求めたのは誰だったのか………己が内に棲みつく別の自分に……レイナは問い掛けた………




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