メンデルの前線ではMSが激 しい交錯を繰り広げる……5対5と、数の上での差はない。

ゲイルの振り被ったビーム サーベルをインフィニティが受け止め、蹴りで弾き飛ばす……そこへスペリオルが回り込み、ビームライフルで狙撃する。

エヴォリューションがディス ピィアに向かってスコーピオンを飛ばす…それに応じるようにディスピィアもライトニングで薙ぎ払い、スコーピオンを弾く。

フリーダムとジャスティスが 連携してディスピィアを狙撃し、ビームの射線に晒されたディスピィアは後退する。

「…っ」

イリューシアは微かに表情を 歪める。

「どけぇ、イリューシア!  このおぉぉっ!!」

オルガが吼えながらシュラー クを連射する……それを5機は散開して回避する。

そこへ突撃してきたレイダー とヴァニシングが構える。

「これでぇっ!」

「!」

互いに吼え、レイダーが右手 の2連装52ミリ超高初速防盾砲とヴァニシングがステルスライザーの220ミリ8連装ミサイルポッドで砲撃する。

高速弾とミサイルが雨霰と襲 い掛かる……フリーダムとジャスティスは後退して回避し、インフィニティとエヴォリューションがデザイアで狙撃し、弾丸やミサイルを叩き落とす。

爆発が周囲を明々に照ら す……その爆発の間隙を縫うようにスペリオルがビームドライバーとビームライフルで狙撃する。

ビームの射線を外すも、そこ へ後方からビームが迫りレイダーとヴァニシングが身を翻す。

敵と思ったが違った……それ は友軍機であるはずのフォビドゥンのフレスベルグであった。

ジャスティスにニーズヘグ、 リフターを損傷させられたフォビドゥンのコックピットでシャニが怒り狂ったように叫び上げた。

「お前お前お前おま えぇぇぇぇぇ!!!」

狙いもつけることなくひたす らトリガーを引き、フレスベルグが連射される。偏屈するビームが宙域内に幾状も飛び交い、5機は散開する。

だが、敵味方が入り乱れて混 戦している宙域にビームを撃ち込めば、当然ながら友軍機もターゲットに入っている。

狂ったように撃ちまくるフォ ビドゥンの行動に悪態をつく。

「ちっ……なにをトチ狂って やがる……!」

ゲイルが機動性を駆使し、そ の射線から逃れる……ヴァニシングもプラネットを展開した状態で回避しながら敵機を追う。

「シャニ!!」

「落ち着いてください」

オルガが嗜めるように叫び、 イリューシアが冷静に制するように呼び掛ける。

「なにやってんだ、ブァ カ!」

クロトが舌打ちし、睨みなが ら毒づく。

だが、そんな仲間の制止も聞 こえず、シャニはひたすらその怒りの矛先を自分をコケにしたジャスティスに向ける。

フリーダムがバラエーナ・プ ラズマビーム砲で狙撃するも、損傷しながらも未だ機能を維持しているゲシュマイディッヒ・パンツァーがビームを偏光させる。

「あいつがぁっ!!」

フォビドゥンはまるでそれし か見えていないかのようにジャスティスに向かってフレスベルグを連射する。

そのメチャクチャな動きに思 わずアスランは呆れたようにぼやく。

「メチャクチャだな、お い!」

先のオーブ戦でも感じたが、 この連合の新型特機の内3機は連携どころかまるで友軍機まで墜としかねないような攻撃を繰り出してくる。

攻撃を避けながら、ジャス ティスは追い縋るフォビドゥンに向かってフォルティス・ビーム砲で狙撃する。

執拗に迫るフォビドゥンに向 かってフリーダムがビームサーベルを抜き、援護に向かう。

スペリオルは機動性と火力を 駆使し、カラミティを抑えに掛かる。

重火器という点ではスペリオ ルとカラミティに差はない……だが、機動性でいえばスペリオルの方が圧倒的に上だ。

カラミティはシュラークを連 射するが、スペリオルは間隙を縫うようにビームをかわす。

「このぉぉぉ! チョロチョ ロ鬱陶しいぜぇぇっ!!」

苛立ちながらシュラークに加 えてスキュラを放つ……リーラはそれをブリューナクのシールドで受け止める。

刹那、ビームの熱量を抑え切 れずにブリューナクが分離し、離れる……スペリオルは回り込み、ビームドライバーを放つ。

圧倒的なビームの熱量がカラ ミティに向かう……オルガは歯噛みしながらかわすも、左手のケーファー・ツヴァイを蒸発させられた。

インフィニティはインフェル ノを抜き、ゲイルに斬り掛かる……接近して振り下ろすが、ウォルフは鼻を鳴らし、ビームサーベルを薙いで受け止める。

「フン…ん?」

その時、ゲイルのコックピッ トのモニターに暗号通信らしきものが表示された。

地球軍の正規の回線ではな い……その内容を読み上げると、ウォルフはやや愉しげに表情を緩ませる。

「ほう……奴もここに来た か…どうやら、次のステージの幕が上がるようだな」

一人ごち、ウォルフは近くで エヴォリューションの相手に回っているヴァニシングとディスピィアに通信を繋ぐ。

「おい、人形…それにイ ル………テルスの奴が来てる…動くぞ」

その内容を伝えた瞬間……ア ディンの身体がドクンと脈打ち、一瞬痙攣したように身体を張った瞬間……真紅の眼が黒く虚ろになり、操縦桿を握る。

「………仰せのままに」

イリューシアは厳粛に頷き、 行動に出る。

ヴァニシングとディスピィア はエヴォリューションの周囲を取り囲むように一定の距離を保ったまま攻撃する。

リンが怪訝そうになるが、払 いのけようとヴィサリオンを放つも、二機はその攻撃をかわすが、距離を必要以上詰めようとしない。

鬱陶しいと舌打ちし、その包 囲から抜け出ようとする……だが、進路上にビームが過ぎり、方向転換ができない。ならばと一機に向かって接近戦に入ろうとするが、背後から攻撃を仕掛けて くるため、迂闊に動けない。

しかも、これだけ一定の距離 を保たれていてはドラグーンブレイカーは使用できない……一定の距離を保ったままエヴォリューションを巧みに誘導していく。

「リン……」

その動きに気付いたレイナ だったが……不意に、通信が響いた。

「BA……」

「ウォルフ……!」

その声に反応してレイナは視 線を鋭くする……眼前で鍔迫り合いを繰り広げているゲイルから接触回線が割り込んできた。

「ックク……自分が何なの か……知りたがっていたよなぁ、BA……」

嘲笑を浮かべながら、射抜く ような視線を浮かべるウォルフ……その態度にレイナはやや意表を衝かれ、怪訝そうになる。

「教えてやるぜ……次のス テージの幕は上がったから…なっ!」

刹那、至近距離からファーブ ニルを発射する……やや唖然となっていたレイナは咄嗟に反応できず、ファーブニルに弾き飛ばされる。

コックピット内で衝撃に歯噛 みし、顔を上げると……ゲイルが身を翻し…メンデルへと向かっていく。

「さぁ来い、BA! 始まり の場所へとな!!」

揶揄するような通信とともに ゲイルがメンデルへと向かっていく……その背中にやや不審感を憶えるも、レイナは心持ちを決め、その後を追った。

だが……その動きはエヴォ リューションのリンからも捉えられた。

脳裏に走る感覚……リンが顔 を上げると、インフィニティの反応がメンデルへと向かっていく……

「姉さん……?」

一瞬、レイナの意図が掴めず に逡巡する……その時、ヴァニシングとディスピィアもエヴォリューションへの牽制を止め、身を翻してメンデルへと向かって飛び立つ。

「何?」

突然の行動に眼を見開く…… ヴァニシング、ディスピィアの2機も先行するゲイルとインフィニティを追っている。

「まさか……っ!」

リンは頭に可能性が過ぎった 瞬間、エヴォリューションを加速させ、メンデルへと向かった。

自分達にとって決して避けえ ぬ運命が待ち受ける場所へと……

 

 

 

その頃……未だメタポリマー ストリングに動きを抑制されていたクサナギではあったが、アサギのM1がビームサーベルでようやく最後のケーブルを焼き切った。

「すいません! 手間取っ て!」

アサギが謝罪すると、離脱し エネルギー補給のために一度クサナギの格納庫へと向かう。

「いや、こちらこそスマン」

キサカがやや安堵を滲ませた 声で答えると、周囲にケーブルが散乱し、ようやくクサナギは動きがとられるようになった。

「推力最大! ドミニオンを 追う! もう引っ掛けんなよ!」

やや嗜めるようにカガリが叫 ぶと、操舵士はやや苦い表情で頷いた。

刹那、エンジンが唸りを上げ てクサナギが前線に向かって加速する。

前方宙域ではネェルアークエ ンジェルとドミニオン、オーディーンとパワーが地球軍艦艇を交えて激しい砲火を浴びせていた。

その周囲ではMS隊が激しい 交錯を繰り広げている。相変わらずの数の差はあるものの、オーブの時ほどの圧倒的な物量差はなく、むしろ実戦の洗礼を得たM1隊や新しく加わったザフトの MS隊はストライクダガー隊を相手に優位に立っていた。

ジンがM68キャットゥス 500ミリ無反動砲やM66キャニス短距離誘導弾でストライクダガー隊を撃破・翻弄し、編成が崩れて浮き足立つストライクダガーをM1隊が撃墜していく。

メビウスがリニアガンで加速 するも、シグーが重斬刀で両断し……爆発が明々と照らし、外れたリニアガンを拾ったM1がそれを投擲してメビウスを被弾させる。

アルフのインフィニートが2 機のイージスコマンドを相手に奮戦している。機動性を駆使して攻撃してくるイージスコマンドに砲戦用のインフィニートでは流石に分が悪い。

ガトリングガンを一斉射して 2機を狙撃するも、イージスコマンドはホバーモードに変形して掻い潜るように突撃してくる。

「へっ、遅いぜ!」

スティングが不適に笑い、 イージスコマンドのビームライフルで狙撃する。

高速に近い状態から放たれる ビームがインフィニートの機体を掠める。

舌打ちして回避するも、ビー ムがガトリング砲を掠り、爆発する。

衝撃に呻く間もなくスティン グのイージスコマンドがそのまま加速し、インフィニートに体当たりする。

「ぐっ!」

歯噛みするアルフ……だが、 次の瞬間別方向から割り込んだアウルのイージスコマンドが両足のクローからビーム刃を展開して振り被る。

咄嗟にかわせないと踏んだア ルフは左脚部のミサイルポッドをパージして振り投げた。

ポッドがビーム刃に触れた瞬 間……ビームがミサイルの信管に誘爆し、ポッドが爆発する。

「がぁぁっ!!」

爆発によってインフィニート は弾かれて離脱するも、アウルのイージスコマンドの右脚部が爆発の影響を直撃で受け、脚部が破損する。

「このぉぉぉっ!!」

怒りにかられたアウルがイー ジスコマンドの胸部のスキュラを連射する。

スキュラの火戦に晒されてア ルフは逃れようとするも……コックピットにアラートが響いた。背後からスティングのイージスコマンドが真っ直ぐに迫ってきた。

「これで終わり だぁぁぁぁ!!」

ビームサーベルを振り上げ る……かわせない、とアルフがビーム刃の軌跡に眼を見張った瞬間……横殴りのようにビームが降り注ぎ、スティングのイージスコマンドを被弾させる。

「うおわっ!!」

怯むスティング……それを見 たアウルが思わず叫ぶ。

「スティン……がっ!」

言葉が続く前にアウルの機体 も衝撃が降り注いだ……アルフが突然の援護に顔を上げると、そこには蒼の機体:イージスディープが向かってきていた。

「援護するぜっ!」

ラスティが意気込み、イージ スディープはMA形態に変形してスキュラを放った。

スキュラの一射がアウルの イージスコマンドにできた隙を衝き、リフターの一部を捥ぎ取った。

「ぐっ……やりやがった なぁぁぁ!!」

怒りにかられてアウルが狙い をイージスディープに向ける……ビームライフルを連射し、イージスディープはMS形態に戻り、シールドで防ぎながらビームサーベルを抜き、接近戦に移る。

一機が気を取られたため、態 勢を立て直したアルフは腰部のバズーカを抜き、バックパックのビームシリンダーでスティングのイージスコマンドを狙撃する。

「っ…こいつらっ!」

予想以上に相手がしぶといこ とに内心苛立つ……それを助長するようにビームバズーカの砲口が火を噴いた。

 

 

ゲイツ改とエールダガーが互 いに機動性を活かし、高速の銃撃戦を繰り広げる。

「ほう……なかなかやるな」

ゲイツ改のパイロットが予想 以上に腕が立つことに感嘆する。

「だが、まだ青い な……っ!」

モーガンがフッと口元を薄め た瞬間、ビームライフルが火を噴き、ゲイツ改に迫るもミゲルはそれをかわす。

だが、その一射は間近に浮遊 していたデブリに着弾し、デブリが粉々に砕けた瞬間、内部に張られていたメタポリマーストリングが弾き出され、それがゲイツ改に絡みついた。

「なっ!?」

いくら周囲のデブリに注意を はっていたとはいえ、突然のことにミゲルは眼を剥く。

脚部に絡み、動きを抑制され たゲイツ改に向かってエールダガーがビームサーベルを抜いて加速する。

「悪いが…これで最後 だっ!」

モーガンが吼え、ビームの光 状が迫る……ミゲルは眼を下へと向けると同時にビームを放った。ビームはストリングの先にあったデブリを吹き飛ばす。

「何!?」

眼を見開くモーガンの前で吹 き飛んだデブリの破片が2機に襲い掛かる……ゲイツ改はPS装甲で護られているが、エールダガーには致命的であった。

デブリの破片が機体に向かっ て迫り、エールダガーは弾かれる。

「ぐぉぉっ!」

あの状況から切り抜けるため にミゲルはゲイツ改のPS装甲を頼りにデブリの爆発を利用し、脱出したのだが、流石のミゲルもゲイツ改自体はともかく中のパイロットにまで衝撃が響くのは こたえた。

だが、ミゲルはなんとか素早 く態勢を立て直し、ゲイツ改のフォルティス・ビーム砲とクスィフィアスレールガンを斉射した。

モーガンは咄嗟にシールドを 前面に掲げるも、ダガー系のABシールドでそれを全て防げるはずもなく、シールドごと左腕を吹き飛ばされた。

「ぐっ……これまでか」

機体ダメージも大きいが、相 手のしぶとさにも予想外だ。

「仕方ない…撤退する!」

エールダガーはビームライフ ルを捨て、腰部のグレネードを周囲に放り投げると、爆発が煌く。

怯むミゲルの前で、エールダ ガーはバーニアを噴かし、後退していった。

 

 

オーディーンはパワーと編成 している艦隊に向かって主砲を構える。

「撃てぇぇぇ!!」

ダイテツの咆哮とともにオー ディーンの主砲が火を噴き、ビームが轟く。それに続くようにミサイルが放たれる。

「回避ぃぃぃぃっ!!」

イアンが思わず立ち上がりそ うなぐらいの勢いで叫び、パワーはスラスターを噴かして火線を外し、イーゲルシュテルンでミサイルを撃ち落とすも他の艦艇はそうはいかない。

ビームの火線を外せなかった 250m級戦艦の側壁を掠め、装甲が融解して誘爆し、戦艦が轟沈する。

爆発の余波が他の艦艇を襲 い、振動がブリッジを振るわせる。

「ヴェルダー轟沈!」

CICの報告にイアンはやや 歯噛みする……オーディーンの戦闘能力は予想以上に高い。最新鋭の特装艦とはいえ、イアンは知りえないがダイテツという歴戦の猛者が指揮しているのだ。こ ちらが不利な状況に追い込まれていることに歯噛みする。

その時、オペレーターの一人 が叫んだ。

「艦長、ロアノーク大佐より 入電! 『各艦艇を下げ、ファイヤー部隊を援護に残し、ファントム隊とともにミラージュコロイド展開、回頭30…敵艦の横っ面に主砲をおみまいしてやれ』 とのことです!」

最後はネオらしい締め括りで あったが、イアンは表情を引き締めて命令を復唱する。

「各艦艇に通達、一度距離を 取って後退…母艦を失ったMS隊は一時的に別艦の指示に入れ! ファイヤー部隊は援護に回れ。ファントム2、4を我が艦へと戻し、同時にミラージュコロイ ド展開!!」

すぐさま陣容を立て直し、 250m級戦艦一隻と駆逐艦4隻が後退し、援護するように105ダガー弐型が就き、M1やジン部隊を牽制する。

その動きをオーディーンのブ リッジから見詰めていたダイテツはやや眉を顰めた。戦術的後退にしてはパワーの動きがおかしい。僚艦を下げて一隻だけ別行動を取っている……なにか不穏な ものを感じたダイテツだったが、それに答えるようにオペレーターの一人が叫んだ。

「て、敵艦よりコロイド粒子 ガス発生を確認!」

その報告に眼を見開いた瞬 間……パワーの船体が淡い微粒子ガスによって覆われていき…その艦影が宇宙に同化するように消えた。

「敵艦、ロスト! ミラー ジュコロイドを展開したもようです!!」

レーダー・センサー類からも 完全に反応を消すステルス機能をまさか戦艦クラスに搭載してくるとは……流石のダイテツもやや表情を顰める。

「浮き足立つな……コロイド 粒子ガス探査レーダーを使え! それと、周囲の音源に気を配れ……音源ホンをこちらへも回せ」

焦ることなく落ち着いた面持 ちで指示を出し、クルー達はオーディーンに搭載されているミラージュコロイドを形成させている粒子ガスの探索に入った。MSサイズならいざ知らず……あの 戦艦クラスを覆うほどのガスの動きなら、探知できる。

切り換えたレーダーに映る巨 大なガスの塊……回り込むようにこちらに向かってくる。どうやら横から攻撃を仕掛けようとしているらしい。

「左回頭30、及び主砲発射 準備!」

オーディーンの主砲は左右に 動けず、それほど射角も上がらないためにほぼ直面しなければ主砲が当たらないのが難点だ。

艦首の向きを変えるオー ディーン…同時に主砲が狙いをつける。

「副砲塔準備……主砲、撃 てぇぇぇ!」

オーディーンの主砲からビー ムが放たれる……それが虚空を掠めた瞬間、宇宙空間から抜け出るように艦影の輪郭が姿を見せる。

ミラージュコロイドを解除し たパワーだ……右側面をビームが掠め、僅かだが煙を噴出している。

「31番から40番区画破 損! 隔壁閉鎖!!」

「出力、91%にダウン!」

「ええいっ! 何故こちらの 位置が……っ!」

歯軋りしながらオーディーン を睨むイアン……ミラージュコロイドはほぼ完璧なステルスシステムだという過剰な自信が仇となったようだ。敵国の技術を研究・対策するのは戦争をするうえ での重要なファクターだ。

だが、ダイテツは音紋探査の センサーから発せられる音に集中すべく眼を閉じる……暫し、センサーから周囲の戦闘の音が響く。音が飛び交う中で……彼の耳が何かを捉えた瞬間、ダイテツ は眼を見開いた。

「副砲塔回頭50! 撃 てぇぇぇ!!」

艦上部に設置されたビーム砲 台が動き、虚空に向かって放たれた……そのビームが虚空を過ぎる…刹那、ビームの直撃を受けたブリッツダガーが爆発する。

ミラージュコロイドを利用し た2段構えの戦法……ダイテツはパワーと艦載MSの性能を素早く頭の中でシミュレートし、相手が用いてくるであろう戦法をすぐさま構築させた。

そして……宇宙という闇の中 で動く微かな敵の動きを察する勘……闇の中でも獲物を的確にとらえる狼のごとく…これが鋼鉄の狼と呼ばれるダイテツの異名の本当の意味であった。

ブリッツダガーを撃破させた オーディーンは追い討ちをかけるべく全ミサイル砲門を開き、ミサイルを応酬する。

パワーはゴッドフリートとミ サイルの砲火でなんとかそれを防ぐ。

自艦が危機に陥っているのを モニターから気付いたネオは歯噛みする。

「ちぃ! なかなか腕の立つ 艦長さんが乗ってるじゃないの!」

まさかミラージュコロイドを 展開していたMSを一撃で撃破するほどの勘の持ち主とは予想外であった。

「おまけにこっちもまずいか な…!」

おどけながらも眼前で振り下 ろされるヴァリアブルのレーヴァティンの一撃をよけるストライクファントム。

「……っ!」

だが、メイアはストライク ファントムが後退したと同時に右手のレーヴァティンの銃口を向け、トリガーを引いた。

「おっと!」

ネオもその絶妙な攻撃をシー ルドを掲げて受け止める……ビームを受け止めると同時にガンバレルを展開して四方から攻撃を仕掛ける。

網目のように降り注ぐビーム の中を掻い潜るようにヴァリアブルは動き、レーヴァティンを腰部に帯刀し、両肩部に装備されたRQM51ビームブーメラン:パッセルを掴むと同時に投げ飛 ばした。

弧を描きながら迫るパッセ ル……ネオは舌打ちしてガンバレルを繋ぐワイヤーを戻そうとするも、その隙をメイアは逃さない。

素早く背腰部からスクリュー ウィップを取り出し……それを振るった。

しなりながら先端のスク リュードリルが回転し……ガンバレルのワイヤーを2本掻き切った。

ワイヤーを切り離されたガン バレルは二度と使えない……歯噛みしながらネオはコンソールを叩き付け、ストライカーを解除すると同時にプログラムを入力する。

刹那…ガンバレルストライ カーのコックピット部分が起動し、そのまま真っ直ぐヴァリアブルに突撃してくる。

メイアはヴァリアブルの頭部 と胸部、腕部のバルカン砲を斉射し、コックピットを撃ち落とす。バルカンの応酬で粉々に砕けるガンバレルストライカー……寸前で爆煙が周囲を覆いつくす。

視界が一瞬覆われ……だが、 コックピット内にアラートが響いた瞬間……ビーム刃の光状が迫った。

「ぐっ!」

反射に近い形でメイアは左手 でレーヴァティンを引き上げ……ビーム刃を受け止める。

エネルギーがスパークす る……ヴァリアブルは右脚を振り、ストライクファントム蹴り飛ばそうとする……だが、ストライクファントムはすぐさま逆噴射で機体を後退させる。

右手でレーヴァティンを抜 き、素早く追い討ちをかける。

「くっ……俺が墜とされちゃ シャレになんねーな……リー! 一度後退して体勢を立て直す! MSを呼び戻せ!」

ビームの火線から離脱しなが らパワーへと通信を送る。

「流石に手強いね……だが、 楽しませてくれそうな相手だよ、イレギュラーの諸君」

鼻を鳴らし、揶揄するような 口調で囁き、身を翻す。

そのまま後退していくパワー 目指して離脱するストライクファントム……

 

インフィニート、イージス ディープ相手に苦戦するスティングとアウルのイージスコマンド……

「このおっ! そんな旧式 で!!」

スキュラを連射するアウルの イージスコマンド……ラスティのイージスディープはその中を掻い潜りながらデブリを盾に動き回る。

「チョロチョロ…! 鬱陶し いんだよっ!!」

いい加減痺れが切れたのか… 高機動形態に変形して加速する……その接近に気付いたラスティは口元に微かに笑みを浮かべる。

「なんのっ!」

イージスディープは周囲に浮 遊しているデブリを蹴り飛ばし……デブリがイージスコマンドに襲い掛かる。

その攻撃は予想外だったの か…アウルが眼を驚きに見張る間もなくデブリに体当たりを受け、弾かれる。

「これぞ物理法則の基本 しょっ!」

お茶らけた物言いながらも正 確にビームライフルを構え、イージスコマンドを狙撃する。

だが、そこへスティングの イージスコマンドが割り込み、リフターでビームを偏光させる。

「スティング! 邪魔すん な!」

「うるせえ! 墜とされそう になった奴が偉そうに言うな! それよりネオから一旦後退しろって命令だ!」

怒鳴るように叫ぶと、アウル は舌打ちして鼻を鳴らす。

「ちっ…あのボケ何やってん だよ!」

「いいから退くぞ!」

アウルの毒づきに被せるよう に言うやいなや、スティングのイージスコマンドがスキュラを放ち、周囲のデブリを吹き飛ばして視界を奪う。

周囲に拡散するデブリの破片 に視界を覆われ…防御する……だが、次の瞬間には既に2機のイージスコマンドは彼方へと後退していった。

「大丈夫か?」

そこへアルフのインフィニー トが近付く。

「大丈夫っすよ……他の敵も 撤退し始めましたっすね」

「ああ…こちらも一度後退し て体勢を立て直すぞ」

「了解っ」

身を翻し、2機はネェルアー クエンジェルとクサナギに未だ攻撃を続けるストライクダガー隊の掃討に向かった。

 

 

「こいつぅ、今日こそ!」

ステラが睨みつけながらイー ジスコマンドのビームサーベルを両手に両足の先端にビーム刃を展開して斬り掛かる。

勇むイージスコマンドに対 し、シンのダガーは防御に徹するだけだ。

「ぐっ…!」

シンは歯噛みしながら攻撃に 耐える……どうしても、オーブでのあの感覚が引っ掛かり、躊躇わせる。

「でぇぇぇぇぃぃ!!」

吼えながらステラは我武者羅 にサーベルを振るい、それがダガーのシールドを弾き飛ばした。

「しまっ……!」

一瞬、注意を逸らされた瞬 間……ステラの振るったビームサーベルの一閃がダガーの右腕を斬り飛ばす。

「これで終りよ…白い のっ!」

引いた腕を真っ直ぐに突 く……そのビームの光が真っ直ぐにコックピットに迫る。

真っ直ぐに向かってくるビー ムの動きがまるでスローモーションのように映る……乱れる呼吸……明確な『死』という感覚がシンを襲う。

(死ぬ……のか…俺 は………)

あのビームで焼かれて……そ の時、脳裏に記憶がフラッシュバックする。

 

――――オーブでの両親の 死………

――――護ると約束した妹の 顔………

 

それらが脳裏を掠めた瞬 間……シンの中で何かが弾けた。

眼が虚ろになり、視界がクリ アになる……刹那、ダガーの頭部イーゲルシュテルンUが火を噴いた。

何十発の実体弾がイージスコ マンドの頭部に襲い掛かる。

TP装甲もPS装甲も装備し ていないイージスコマンドの頭部はそのバルカンの応酬でカメラが破損した。

途端、コックピットのモニ ター画面が全てブラックアウトし、コックピットは暗闇に覆われる。

「っ! な、な に……っ!?」

突然の状況にステラは思わず 息を詰まらせ……動きが鈍る。

刹那、ダガーは残った左手を 伸ばし…イージスコマンドのコックピットハッチを抑え込む。

コックピットが振動に揺さぶ られ、内部モニターが全て落ち、計器パネルの光のみのコックピットはステラに恐怖を掻き立てる。

シンはそのままコックピット を拘束したまま、やや逡巡する……何故か、このMSを墜としてはいけないような迷いが駆け巡る。

思いきったようにシンは顔を 上げ、イージスコマンドをネェルアークエンジェルへ連れ帰ろうとした…その時、上空からビームが降り注ぐ。

それはダガーのエールストラ イカーに直撃し、ストライカーパックが破壊される。

「うわぁっ!」

「きゃぁっ!」

その爆発にダガーは掴んでい た手を離し、バックパックの爆発で機体の操縦系が麻痺した。

弾かれたイージスコマンド… そこへストライクファントムから通信が繋がれた。

《ステラ、戻るぞ…サブシス テムに切り換えて離脱しろ》

「ネオ…うん」

その声にやや安堵したのか、 ステラは僅かに見える計器パネルを叩き、イージスコマンドが離脱プログラムに従って離脱していく。

「ま、待て……!」

思わず手を伸ばすが……既に シンのダガーは大きなダメージを受けていて追撃どころか、戦闘さえ不可能であった。

 

 

ネェルアークエンジェルとド ミニオン、地球軍艦艇は激しい砲撃の応酬を続けていた。

たった一隻でドミニオンを含 めた数隻を相手にしながらもまったく劣らない。

その時、別方向から降り注い だミサイルがドミニオンの船体を激しく揺さぶる。

「距離20、オレンジ15 マーク1αにオーブ、イズモ級! 接近してきます!!」

オペレーターが上擦った口調 で慌しく叫ぶ。

ナタルは思わず舌打ちしてサ イドモニターに表示されたクサナギに毒づく。

ナタル自身もMS捕獲とネェ ルアークエンジェルの相手ですっかり座礁したクサナギのことを忘れていた。

「あらら…自由になっちゃっ たか」

緊張感が漂うブリッジでアズ ラエルが似つかわしくない陽気な声で呟く。

クサナギの艦首上下に装着さ れたゴッドフリートが火を噴き、強力なビームがドミニオンに襲い掛かる。

「回避! 面舵!!」

ドミニオンはその機動性も手 伝ってかその一射を回避するも、他の連合艦はそうはいかない。ビームの直撃を受けて駆逐艦が轟沈する。

その威力はAA級にも引けを 取らない……ナタルは歯噛みしながらこの戦闘に見切りをつけた。

「一時撤退する! 信号 弾!!」

「ええっ!?」

ナタルの指示にアズラエルは 不満げに声を上げた。

「状況は既に、こちらに不利 です!」

苛立ちながらナタルは覆せぬ 事実を突きつける……だが、アズラエルは子供のように不満顔を浮かべたまま駄々っ子のように言い募る。

「ここまで追いつめたの に?」

どこが…とナタルは反論した くなるのを溜め息で示した。既にこちらは友軍の戦艦を半数近く失い、またMSやMA部隊の損耗も大きい。パワーもどうやら被弾して後退した。おまけにドミ ニオンもかなりのダメージを負っている……下手をすればあの未確認のアンノウン艦がこちらに向かってくる可能性もある。そうなれば、こちらの敗北は必至 だ。

「展開している友軍機もそろ そろパワーが限界です……撤収せねば、敗退しますよ」

冷静な口調で呟く……だが、 アズラエルはそんなナタルをやや試すようなねっとりとした視線で見上げながら侮るように尋ねる。

「そう言うからには…今退け ば、次は勝てるんでしょうね……?」

取引の駆け引きをするような 物言いにナタルは冷たくジロリと睨み返す。

「……ここで戦死されたいの で?」

撤退か…それとも死か……… 元々、不可能に近いことを実行しようと欲張るからこうなるのだ、とナタルは内心に吐き捨てる。

やや無言で互いを見やってい たが、ネェルアークエンジェルから放たれたバリアントの光弾が船体に着弾し、先程よりも大きな衝撃がブリッジを襲う。

呻き声を上げるクルー達の中 で、流石のアズラエルも不利を悟ったようで忌々しげに舌打ちする。

その様子にやや呆れた溜め息 をつきながらナタルは再度命令を復唱する。

「信号弾撃て! 面舵10!  戦闘宙域を離脱する! MSを呼び戻せ! 母艦を失った機体は一時的に別の艦に着艦せよ!!」

ナタルの号令と同時にドミニ オンから信号弾が放たれた。

 

戦場を照らす信号弾にマ リューや戦闘を繰り広げていたキラ達も驚きに眼を見張る。

「くっ、タイムアップか よ!」

オルガが忌々しげに舌打ちす る……先程から薬の効果が弱まってきたのか、息苦しさが身体を襲っていた。おまけに機体のバッテリーも残り少ない。

「みたいだね…っ!!」

クロトが応じながらレイダー をMA形態に変形させて離脱しようとする。

だが、信号弾を無視してなお 攻撃を仕掛けるフォビドゥン……シャニの眼にはジャスティスしか映っていない。

「このっこのっこ のぉぉぉぉ!!!」

真っ直ぐに突っ込むフォビ ドゥンにジャスティスがビームライフルで応戦していたが、全てリフターに偏光させられる。その時、アスランはハッと気付いて機体を後退させる。

ジャスティスとフォビドゥン の間を掠めるビーム……警告のように放たれた一撃に続くようにカラミティがフォビドゥンの前に立ち塞がる。

「シャニ!」

「撤退命令だ、ブァカ!」

オルガが怒鳴るように制し、 クロトが小馬鹿に呟くとレイダーが先行して離脱する。

「でもっ! だってあい つ……!」

なおも言い募ろうとしたシャ ニだが、それを嗜めるようにオルガが叫び返す。

「今は退くんだよ! また苦 しい思いをしたいのか!?」

その言葉にビクッと顔を強張 らせる……流石にその言葉の意味を理解できないほどではない。カラミティが離脱し、シャニは今一度ジャスティスを睨むと続くように離脱していった。

 

 

パワーもまたMSを収容し、 撤退してくる友軍機を回収しながら後退していく。

「状況は!?」

ブリッジに駆け込んだネオが 尋ねると、イアンはやや苦い表情で告げる。

「艦の損耗率、11%…MS もかなりの数を損失しました。先程、ドミニオンより一時撤退の信号弾が上げられました」

すかさず要点を伝えると、ネ オはやや乾いた笑みを浮かべる。

「まあ、この状況じゃ仕方な いな…MSを回収後、こちらも一度退くぞ……体勢を立て直す」

「はっ!」

ネオの指示に応じてイアンは 残りのMSの回収を急がせ、オーディーンを牽制するようにゴッドフリートを放った。

 

 

「づおりゃぁぁぁぁぁ!!」

「おおぉぉぉぉぉぉぉ!!」

相も変わらずの激しい格闘線 を繰り広げるワイズのストライククラッシャーとバリーのM1……ドリルアームをかわし、脚を振り上げて蹴り飛ばす。

カミュとクルツはストライク ダガーを連れて編成を組んでいたが、ジュリのM1とガンナーM1隊が濃密な砲撃を繰り返し、動きを抑制されていた。

「ええいっ! しぶとい!」

苛立ちながらカミュは砲撃か ら逃れるようにスラスターを拡げて離脱する……エクステンションライフルを構え、トリガーを引く。

正確な射撃がM1とジンを撃 ち抜き、爆発させる。

口元に残虐な笑みを浮かべ る……そこへアラートが響き、マユラのM1がロングビームサーベルを振り上げて迫る。

「このぉぉぉ!」

勢いとともに振り下ろされた 一撃をシールドを掲げて受け止める…エネルギーがスパークする中、またもやアラートが響く。

「マユラ!」

ジュリのM1がアグニUを構 えて援護する……身を捻り、ビームが2機の間を掠める。

カミュが舌打ちする……態勢 を崩したストライククラッシャーにマユラとジュリが追い討ちをかけようとしたが、そこへビームが過ぎり、2機は思わず急停止する。

クルツのストライククラッ シャーがシュラークをこちらへと向けていた……

「カミュ、撤退信号だ…一度 退く」

「ああ、解かった…ワイズ、 退くぞ!」

信号弾を眼にしたカミュがワ イズに通信を送ると同時にストライククラッシャーが身を翻し、離脱していくストライクダガーやメビウス隊に合流していく。

「逃がすもんかっ!」

ジュリがアグニUの砲口を向 け、トリガーを引いた……ビームの奔流が襲い掛かる。だが、カミュは口元を緩め、近くにいたストライクダガーを蹴り、ビームの射線上に飛ばした。

ストライクダガーのパイロッ トは突然のことに唖然となる間もなく…ビームによって機体を蒸発させられた。

「っ!?」

「な、なんてことを…!」

友軍機を盾にした行為にジュ リやマユラが絶句する。

カミュ達にとってそれが当然 なのだ……自分達以外に利用できるものはなんでも利用する…それが彼ら、トライ・スレイヤーの流儀であった。

呆然となる一同を前に、スト ライククラッシャー2機が離脱していく……そして、ワイズもまたやや勝負に水を差され、苛立たしげに舌打ちしてバリーのM1に距離を取るようにバルカンを 撃ち込む。

咄嗟に後退してかわす。そし て、やや睨むように見やる。

「へっ、またお預けかよ…… てめえとは絶対にケリをつけるぜ……じゃあな!」

身を翻し、ワイズのストライ ククラッシャーもまた離脱していった。

 

 

グランのM2とエドのソード カラミティも互角の戦闘を繰り広げていた…互いに近接戦闘型の機体ではあるが、能力でいえば僅かにソードカラミティが上。グランは腕でその差をカバーして いた。

「さっすがですね、グラン隊 長!」

「貴様もな…腕は鈍っていな いようだな!」

かつては共に戦った戦友であ りながら、今はこうして敵味方に別れて戦っている今の状況にやや憤りを憶えながらも相手の力量に敬意を表しているのも事実だった。

まるで、互いに相手の力の成 長を見極めようとしている師弟のごとく……ソードカラミティが胸部からスキュラを放つ。

M2はそれを機動性をいかし て回避し…一気に懐に飛び込んでキリサメを振るう……だが、エドもまた反射に近い形でシュベルトゲーベルを引き上げ、その一撃を受け止める。

互いに弾き合い、距離を取る と同時に戦場に打ち上げられる信号弾……その意味を知ると、両者ともややホッとするような面持ちで剣を下ろす。

しばし無言で対峙していた が………

「グラン隊長…あんたは今 も、祖国のために戦っているのか……無駄だと解かっているのに……?」

唐突なエドの問い掛けに…グ ランはしばし瞑目し、やがて静かに口を開いた。

「無論、祖国のことを忘れた わけではない……だが、私は全てを失い、国を捨てた身だ…今更、祖国のためなどということはできん」

「なら……っ!」

「だが、今の私には新しく護 るべきものができた……託されたものを護るために、私は戦う……それが今の私の戦う理由だ」

強く言い切ったグランに、エ ドはやや気圧されながら口を噤む。

「エド…私はお前に一緒に来 いとは言わん。お前はお前の信じる道を行け……そして、その道が私と違えるのなら、次は容赦せん!」

そう宣言した瞬間…エドは フッと口元を緩め……陽気な表情の中に鋭い眼光を宿す。

「望むとことですよ……グラ ン=ハーテッド!」

エドもまたそれに応じると、 撤退命令に従い、ソードカラミティは離脱していく。

その後姿を静かに見詰めてい たグランは、苦々しい表情を浮かべながら全機に帰還命令を出した。


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