リンがアルテミスに向かい、 レイナもシルバラードとともにMSの引渡しに出向き、ともにアメノミハシラを留守にしていた時………

アメノミハシラの一画の休憩 所では、珍しい組み合わせが集まっていた。

「はぁ………」

シートに腰掛けるラクスが強 化ガラスの宇宙を眺めながら、軽く溜め息をついた。

「ん? どうしたんだ、ラク ス?」

「なにか、悩み事?」

そんなラクスの様子が気に掛 かったのか、ドリンクを飲んでいたカカリとミリアリアが覗き込むように尋ねた。

「あ、いえ……その……キラ のことでちょっと………」

「まだ……落ち込んでる?」

キラの今の状況を知りえてい るリーラが気遣うように問い掛ける……ラクスも頷きながら表情を俯かせる。

あの衝撃的な事実を知らされ てから、やはり数日は塞ぎ込む日々が続いていた……だが、ここ最近はなんとか以前の調子を取り戻そうと空元気でもいいから振る舞っている。

そういった前向きな姿勢に は、やはり同じように衝撃的な境遇を知りながらも今の自分を奮い立たせているレイナも関係しているのだろう。

「もう少し、私を頼ってくれ てもいい……そう思っているのですが………私にも、なにかできることがあればいいのですが……」

ラクスには今はできることが ない……各組織との交渉などは既にレイナやミナの領分であるし、かといってMSに乗ることもできないのだ。

そんな自分が、キラのために できることを……必死に模索している。

その時、黙っていたミリアリ アが唐突に口を挟んだ。

「私は、キラに何があったか は知らないけど……でも、貴方にだってできることはあるはずよ」

この場で唯一事情を聞かされ ていないミリアリア……だがそれでも、キラの様子などからなにかがあったのは察せられた。伊達に友達付き合いがあったわけではない。

だからこそ、ミリアリアもキ ラのためになにかをしたいと考えていた。

「ですが……」

「もう、落ち込んで…自分を 追い込んじゃってたらずっと暗いままよ。なにも大げさなことをしなくてもキラのためになることなんていくらでもあるって!」

未だ尻込むラクスに向かって ミリアリアが肩を叩き……そして、思案する。

「そうね……じゃあさ、キラ に手料理をご馳走するってのは?」

「手料理……ですか?」

ミリアリアの提案にラクスは キョトンとした表情で尋ね返す。

「ああ、それいいな! 絶対 あいつ喜ぶぞ!」

名案とばかりにカガリも同意 する。

だが、ラクスは考え込むよう に表情を顰める……逡巡するラクスに向かってミリアリアはなおも促すように言葉を紡ぐ。

「それにしようって! 私達 も手伝うから」

その言葉に決心がついたの か……ラクスも表情を和らげて頷く。

「そうですわね……お願いし ます」

自分にできる範囲でキラを元 気づけたい……そう思い直したラクスは微笑を浮かべて意気込む。

「んじゃ、早速やるか…… リーラ、お前も手伝ってくれよな!」

「え……わ、私もですか?」

カガリに指名され、若干戸惑 う……だが、カガリは当然とばかりに頷く。

「当然だろ、こういうのは大 勢でやった方が気分が晴れるもんだ」

わざとらしく胸を張っている が、無論カガリもまだ先の衝撃から完全に立ち直っているわけではないが、それでも彼女は悩み続けるのができない性分だ。下手に落ち込み続けるよりもなにか をして自分を奮い立たせ、そして自分のすべきことを模索するのは少なくともマシなことだろう。

暫し、逡巡していたリーラ だったが……やがて、顔を上げる。

「そうですね…それじゃ、ご 一緒させてもらいます」

リーラ自身、先の衝撃から立 ち直ったわけでもない……なにか、気晴らしがしたかったといった方がいいかもしれない。

「んじゃ、早速食堂に行きま しょう……キラ達はできる頃合を見計らって来てもらいましょう」

ミリアリアが促し、少女達は どこか弾むような軽い足取りで休憩所を後にする。

4人はそのまま、食堂にまで 向かい……ちょうど一休みに訪れていたマリューとかちあった。

「あら、貴方達…揃ってどう したの?」

少なくともまだ食事時ではな い……ゆえに、食堂は人影がなくマリューのみだ。

首を傾げて尋ねるマリューに ミリアリアが説明する。

「実は、私達キラ達に料理で も作ってあげようと思って……」

「料理?」

「はい……キラ、まだ落ち込 んでいますので………」

ラクスが表情を落としながら そう答えると、事情を知っているマリューもやや表情を顰めて納得する。それで、料理を作ってあげて少しでも元気を出してほしいのだろう。

そんな少女達の想いをマ リューはどこか羨ましく思った。

「そうだっ、艦長も一緒に作 りませんか?」

間髪入れず、ミリアリアが手 を叩いてマリューに向かって言うと、マリューは眼をパチクリと瞬かせる。

「わ、私も……?」

正直、少女達に混ざって料理 をするというのは少し抵抗を憶える。なにせ、自分だけが浮きそうだからだ。

「そうですよ、フラガ少佐も 怪我しちゃったし…お見舞いの意味も兼ねて料理でもしてあげたらどうですか?」

そう言われ、マリューは考え 込む。

確かに、ムウは心身ともに深 い傷を負った…今はいつもの調子を取り戻しているが……やはり、心配に思ってしまう。

なにかしてあげたいと考える のは人情家でもあり恋人でもあるマリューの所以だろう。

「そうね……それじゃ、ご一 緒させてもらおうかしら?」

「構いませんよ」

「んじゃ、早速始めるか!」

カガリの号令に皆は厨房へと 入っていく………そして、各自協力しながら料理を始める………

 

 

数十分後……ハロに案内さ れ、キラとアスラン…そして料理と聞いて同行したディアッカとラスティに付き合わされたニコル…そしてムウだった。

機体の整備をしていた彼らは 突然やって来たハロに料理を作るからと聞かされ、ここへとやって来た。

だが……半ば期待していたの とは程遠い現実に、一同は表情を顰めた。

厨房内からは、なにか不穏な 空気が流れている……時折聞こえる悲鳴となにかを破壊するような音…そして、奇妙な臭い………

「りょ、料理してるんだ よ……な?」

半ば現実逃避気味にディアッ カが全員に尋ねるが……誰も答えることができない。

今眼の前で起こっているのは 本当に料理なのだろうか…いや、それ以前にその中で作られた料理を自分達が食べなければならないということだ。

「もう少しですから、待って てくださいね、キラ」

「美味いもん食わせてやるか らな!」

一瞬、この場から逃げ出した い衝動に駆られたキラとアスランだったが、カウンターから顔を出し、ニコリと微笑むラクスとカガリの表情に足がその場に固定されたように動けなくなっ た……

「アスラン……」

「情けない顔をするな、キ ラ……食べられないものが出てくることはないだろう…多分」

泣き出しそうなキラにアスラ ンが言い聞かせるように呟くが…それは自分に対しても向けられているのだろう。

ちゃんとした食材を使ってい るのだから、食べられないものが出てくることはないと……

「……あんた、私の手料理ご 馳走してあげるんだから、ありがたく思いなさいよ」

続けて顔を出したミリアリア が割烹着を着込み、お玉をディアッカに向けて指す。

「お、おう……」

それだけで金縛りにあったよ うに逃げ出そうとする本能を必死に抑え込む。

この場での逃亡は少なくとも 身の危険だ……残っていても危険かもしれないが………

「ん…って、逃がすか!」

背中を見せて食堂から出て行 こうとしたラスティとニコルの服を後ろから掴む。

「は、放してください、ディ アッカ!!」

「そ、そうだ! 俺達には関 係ないっしょ! せっかくの手料理なんだし、俺らがお邪魔するのは………」

この中では比較的、女性陣の 好意を受けていない二人は何とか逃げ出そうとしたが、そんなことをディアッカが赦すはずもない。

「うるさい! お前らだけ逃 げようったってそうはいかないぜ! 道連れだ!」

「そ、そんな! 酷いです よ、ディアッカ!!」

「ニコルの言うとおりだ!  お前らがご馳走になればいいだろ!」

「ええっぃ! 俺が赦す!  お前らも一緒にあいつの料理を味わえ! こう言う機会は滅多にないだろうからな!!」

そりゃ、世にも恐ろしそうな 料理に遭遇する機会は滅多にないだろう。

つまり地獄への道連れは多い 方がいい……ラスティとニコルは表情を落とす。おそらく逃げられない。

「見損ないましたよ、ディ アッカ」

「俺達友達だと思ってたの に……」

「やかましい! 俺だって、 俺だってなぁ……」

半ば哀愁を漂わせながら。三 者三様に涙を流す。

ラスティとニコルは表情を落 とす。案外、脆い友情だ………

「くそっ……アルフの奴も連 れてきときゃよかったな………」

ムウがぼやくように肩を落と す……アルフはメイアと一緒にM1隊の訓練に付き合っているために一緒に呼べなかったのだ。

かくして、哀れ味見係(いけにえ)となった6名は厨房内で繰り広げられている 異様な光景に顔を揃って青くした。

少なくとも、戦場で感じる恐 怖よりも厳しい……乙女心と恐怖……四面楚歌…退路なし……果たして、自分達は無事(?)に生きて食堂から出られるのだろうか………

そして……食事時だというの に誰も食堂には来ない…いや……食堂から漂う異様な気配を近づく誰もが第六感で察して近づこうとしないのだ。

道連れは期待できない……か くして、6名の人物はもはや死刑台に向かう囚人のごとき表情で椅子に腰掛け…せめて、食べられるものが出てくることを切に願いながらただ待ち続けた……恐 らく、ここまで待つのが辛いと思った経験はないだろう………

だが、彼らの願いは天には届 きそうもない……なにせ、メンバーが全員……まともに料理ができない面々なのだ。

ラクス、リーラは一応プラン ト有数の家の令嬢……当然、料理などは使用人がやるので自ら料理をする必要はない。これはカガリにも言えるが……カガリは今まで料理など一度もしたことが ない。いや……軍のレーションや缶詰ばかりの食事をしたことはあるが……

そして、マリューはずっと軍 で技術を学ぶために勉強ばかりしていたので家事がまったくできない……最後の砦たるミリアリア……多少は経験があるものの………味付けが下手であった。

この事実を彼らが知ったら… もはや絶望に染まっていただろう……加えて、これらの異常事態を察してストッパーたる役目を担えるレイナやリンは今現在アメノミハシラを離れており……も はや孤立無援であった。

そして……その刻は来た。

 

「お待たせしました」

ラクスが笑顔を浮かべて差し 出す……続けて全員が作った料理をテーブルに置いていく。

ラクスが差し出したのは野菜 スープ……カガリは黒コゲた肉…らしきもの………リーラはサラダ……ミリアリアは鯖の煮付け…そして最後のマリューが……カレー………

野菜スープは色は普通だ…肉 は……コゲてて怖い……サラダは…ドレッシングがかかってるだけで見た目は美味しそうだ。鯖は……何故骨がいっぱい見えていますか……そして何故……カ レーの色が緑なのですか………

「見た目は悪いけど…けど、 味はいけるはずだっ!」

力説するカガリ……リーラは なにも語らない………

「私が作ったんだから、あり がたく食べなさいよ」

まるで浮気した旦那を睨むよ うな視線を向けて胸を張るミリアリア……

「野菜カレーにしてみた の……まあ、色は野菜がよく出てるでしょう」

見た目は普通のものからなに か黒コゲたものまで……匂いは…まあ、悪くはない。

だが問題は……味だ………そ れを見詰める6名は本能で察していた………危険だと…これを食べれば……死して屍拾うものなし………

逃げ出すことはできない…… なにせ、不安そうな顔を向けられたら………彼らは今、初めて逃げてはいけないということを知った………

そして……全員が決死の覚悟 で……逝った……………

 

 

 

「はい、渡されたデータ」

シルバラードでの引渡しを終 えたレイナは、落ち合った輸送船に搭乗していたシオンの寄越した人物から実験データが入ったディスクを受け取り、アメノミハシラに帰還後、医務室を訪れて いた。

渡されたディスクを受け取る と、フィリアは素早く端末にセットし、ディスクをロードしていく。

モニターには、膨大なデータ が表示されていく……たかが一人に対してこれ程の処置を施すとは…と、内心嫌悪感に吐き気がした。

使用された薬物の詳細なデー タや人体改造……それらが使用された後の結果まで詳細に載せられていた。このデータを得るために、シオンは人脈をフル活用し、ロドニアのラボの研究員の一 人からなんとか持ち出せたのだ。

まあ、ここで少なくとも恩を 売っておこうと打算的な思いもあったかもしれないが……

「それで治るんですか!?」

半ば意気込むような焦燥感の 表情を浮かべるシン……それに対して、データに眼を通していたフィリアが振り向き、頷いた。

「ええ……まあ、すぐには無 理だけど…とにかくすぐに薬の調合に入るわ」

その言葉にシンは心底安堵し たような表情を浮かべ、大きく肩を落とした。

「よかったね、お兄ちゃん」

眠るステラの額に置く布を濡 らしていたマユも嬉しそうに笑い、シンはステラに顔を近づける。

「もう大丈夫だぞ」

その声に反応し……ステラは 弱々しい表情でシンを見やる……呼吸器で口を覆っているために声は聞こえないが…それでもシンの名を呼び……シンはその手を取って強く握った。

その様子に軽く息を吐き出す と、レイナはその場を後にした。

 

医務室を後にしたレイナが通 路を歩いていると、ちょうど帰還したリンと合流した。

「お疲れ」

労うような言葉を掛けると、 リンも苦笑で応じる。

「手に入れたMSはさっき ファクトリーの方に回しておいたから……それと、例の機体の一機がアルテミスから脱走したわ」

リンはアルテミスでの経緯を 伝える。

同型機の1番機が半ば脱走に 近い形でアルテミスを離れたこと……レイナもその言葉に眉を寄せる。

「どういうことかしら?」

「さあね……」

ユーラシアの内情など知った ことではない……肩を竦めるリンにレイナも確かに余計な詮索をしても仕方ないとばかりに肩を落とす。

どういった経過かは知らない が、それで連合内に混乱が引き起こせるなら結構だ。

「それで、そちらは?」

「合流したジャンク屋にMS は引き渡しておいた……数日中にはあちらの手元にいくはずよ」

輸送船でカモフラージュしな がらいくつかのルートで分散してOEAFOに行き届くようにジャンク屋組合が動いてくれる。

あとは運次第だろう。

「例のデータは?」

「そっちも手に入った…… 今、ノクターン博士が治療に当たってる」

無論、実験データから薬物を 調合するのは時間が掛かろうが……まあ、少なくともあのまま衰弱死するよりは可能性があるだろう。

「ところで……あの機体…誰 を乗せるつもりなの?」

奪取したハイペリオン3号 機……現在、トウベエを筆頭に機体の調査を行っている。鹵獲したストライクダガーと並んで機体の性能を把握しておくのは戦争における重要なファクターだ。

そして…奪取した以上はこち らの戦力として使用した方がいいだろう……レイナも考え込む。

確かに……誰を乗せる か………リンの以前戦った時の戦闘データに眼を通したが、能力的には少なくとも熟練パイロットの方があの機体の能力をフルに発揮できるが……

「そうね……」

思案していたところへ……突 如、異常事態を告げる放送が鳴り響いた。

《緊急事態! 緊急事態!  第3エリアにて異常発生! 救護班はただちに行動せよ!》

その切羽詰った放送にレイナ とリンは意表を衝かれたように顔を見合わせた。

「緊急事態?」

「第3エリアっていえば、こ こから近いわね……行ってみましょう」

首を傾げていたが、ここで考 えていても答は出ない。二人はそのまま目的の区画まで駆ける。

しかし、緊急事態……破壊工 作…一瞬、そんな考えが浮かぶ。

そのまま目的の区画まで近づ いた瞬間、なにか異様な気配が伝わり……レイナとリンは緊迫した表情で立ち止まる。

「な、なに…この異様な雰囲 気………」

第3エリア……ちょうど、食 堂に当たる区画から漂ってくるこの異臭と異様な気配……警戒した面持ちでレイナとリンは壁に身を預けながら、ドアに近づく。

互いに懐に収めている銃のグ リップを掴み…顔を見合わせ、頷くと同時にドアを開く。

バッと飛び込み……次の瞬 間、眼前に拡がる光景に眼を見開いた。

「はあ………?」

思わず間抜けな声を上げてし まう……開いた口が塞がらない。

どう表現すればいいのか…… スプーンを持ったまま硬直しているキラとアスラン……椅子ごとひっくり返っているディアッカ……ラスティはテーブルに突伏し……ニコルは頭を抱えてぶつぶ つ呟いている……最後のムウは眼前のカレーの前で泡を吹いている。

つまり……いい感じにヤバ気 だ………死屍累々………そんな言葉が脳裏に浮かんだ………まさに地獄絵図……そして、その周囲ではおろおろとしているラクスら女性陣………

その光景から…大まかにこの 状況に陥った経緯を察した。

そこへ警報を聞いたミナも駆 けつけてきた。

「なんの騒ぎだ、これは?」

流石のミナも眼前の異様な惨 状に唖然となっている……レイナはやや情けないような声で応じた。

「幻想と現実よ……とにか く、倒れてる連中を医務室に運ばせて…それと、この区画封鎖した方がいいわよ」

呆れたような声で呟くと、ミ ナも頷いた。

「そうだな……救護班! 負 傷者の搬送! その後、総員この区画より退避! 調査後、区画を殺菌消毒する!!」

真面目な表情で指示を飛ばす ミナ……ひょっとしたら、半ば現実逃避が入ってるかもしれない。

待機していた救護班が担架を 持って食堂に入り…そして屍となっている者達を担ぎ出していく。少女達もそれに付き添って出て行く……当然、混乱していて周囲の状況に気づいていない が………

残ったレイナとリンは周囲に 散乱している料理……らしきものに眼をやる。

「原因は……コレね」

肩を大きく落とし、当惑しな がらその料理らしき物体を見やる……調べてみないことには解からないが……百歩どころか千歩譲っても可食物には見えない。

「げに恐ろしきは乙女 心……」

何気に呟く……落ちていた料 理を拾い上げ…指に取り、一口舌で舐める………刹那、舌を刺すような刺激と異様な圧迫感が身を襲った。

思わず嘔吐感に口を抑えそう になる……傭兵時代から毒物に慣れているレイナでさえ、この刺激には堪えたようだ。

(うぅぅ……いったい、なに をどうやったらこんなものができるのよ…………これ、兵器に転用できないかしら? 戦略兵器級に匹敵するような気がする……)

なにか、思考がおかしな方向 に傾きかける……これを連合とザフトの上層部に送りつけるだけで、大ダメージを与えられるような気がする。

「お前達、早く退避しろ…… 防護服もなしにここにいるのは危険だ」

ミナの真面目なのか冗談なの か解からない言葉だが……今は確かにこの場にいるだけで気分が重くなる。

レイナとリンは急ぎ食堂を出 る……そして、素早く隔壁が閉じられ……ミナは表情を顰めてぼやく。

「恐ろしいものだな……アス ハの娘の生物兵器は…………」

生物兵器……確かに、そう言 えるかもしれない………と、レイナとリンは内心で大きく納得した………

この後……ラクスらは厨房に 出入り禁止を受け、キラ達は3日間の間、胃がやられて食事ができなくなった。

 

 

 

「うわっははは!!」

トウベエが豪快に笑い、同じ く話を聞いていたエリカやマードックも笑みを噛み殺している。

「そりゃ災難だな、少佐達」

レイナから事の顛末を聞かさ れたアルフは苦笑を浮かべ……ミゲルも隣で頷いている。

「笑い事じゃないわよ…… まったく」

話をしたレイナも呆れるよう な頭を掻きながら溜め息をつき、ジト眼で隣を見やる。

「な、なんだよ……ちょ、 ちょっと失敗しただけだろっ!」

ファクトリー内に呼ばれたカ ガリが顔を赤くして怒鳴った……その隣ではラクスが俯いて萎縮している。

流石に自分達の起こした騒ぎ に自責している……なにせ、キラ達は今ベッドの上で動けない状態なのだから………

「ははっ、んで坊主ども は?」

「まだベッド……というより も今は動けないと言った方がいいかも」

突然の患者に医務室は困惑し ただろう……理由が理由だし………ただでさえ今ステラの主治医を務めているフィリアは手が離せないのだ。そのために治療にはシルフィやカムイが手を貸して くれたが……6名ともなにやら生死の境を彷徨ったように未だ茫然自失している。トラウマにならなければいいが………

呆れてなにも言う気が起きな い……レイナは今一度溜め息をつくトウベエ達に呟く。

「それで……機体の方は?」

彼らの前に並ぶ3体の MS……ハイペリオン3号機にシンのダガーの改修型にもう一機…ストライクと同型の機体。

3機とも、未だ作業途中で、 機体各所にケーブルやパーツが吊られている。

「こっちの機体は内部バッテ リーを新型に交換すれば、以前よりも長時間シールドを展開できるぞ…まあ、あとはパワーセルというエネルギーカプセルの予備マガジンを持たせておけばいい じゃろ」

トウベエがボディの装甲を外 され、駆動路を交換途中であるハイペリオン3号機を見上げる。搭載されていたバッテリーはオーブ側やザフト側に比べてまだ錬度が低く、例のアルミューレ・ リュミエールは5分しか展開できないが、新型バッテリーの搭載で最高で15分の長時間展開とザフトの水素バッテリーを装着したバックパックをフォルファン トリーに接続することで機体バッテリーの効率を上げている。

「こっちのルージュももう完 成してる……直に慣らし運転に入れるぜ」

髪を掻きながらマードックが ストライク……いや、オーブで再現されたストライクのデッドコピー機であるMBF−02:ストライクルージュを見上げる。

先の大破したストライクを修 理する際に用意した予備パーツを組み立て、本体は既に完成していたが機体に搭載する支援AIの完成に若干時間が掛かり、遂数日前にようやく完成し、本体に 搭載されたのだ。

「ホントか!?」

その言葉にカガリが弾んだ声 を上げる。

なにせ、このストライクルー ジュはカガリのために組み上げられていたからだ。

「これで私も出られるな!」

やはり、生来の性格というの は抑えられないらしい……無論、指揮官としてカガリはクサナギのブリッジに立たねばならないが、やはりただ指示を出すというだけの立場は理解していても今 はまだ耐えられない。仲間達と同じようにMSを駆り、前線に立って手助けをしたいというのはカガリの本音だろう。キサカも難色を示していたが、最終的には 前線指揮官ということで了承した。

「でもその前に、まずはシ ミュレーションを受けてもらうわよ」

エリカが念を押すように呟 く。実機を扱う前にまずシミュレーションをこなさなければならない……カガリは不遜な表情で口を尖らせる。

「こっちの機体はどうな の?」

リンが残った最後のシンのダ ガーを見上げる……いや、もう半ば最初のダガーとしての面影が半ば消えているといった方が正しいが………

ボディは105ダガーのまま だが、脚部と腕部、頭部をM1Aのパーツで補修し、頭部にはサイドバルカンポッドを搭載し、バックパックには先日ロウ達が運んできたゲイツのパーツを改修 したものをバーニアに使用し、バックパックとの兼ね合いでかなりの長時間運用が可能となっている。だが、バックパックに装備されると思しき巨大なパー ツ……大型剣にも変形してビーム砲にもなる複合兵装:タクティカルアームズは未だ組み立て途中だ。

「こっちはもうちっと掛かる わ……なにせ、このタクティカルアームズが結構複雑やし……あ、それとあんたの機体の方やけど、あんたが言ってたリフレクターシステムな、なんとかメド たったわ」

やや溜め息をついていたル フォンがなにかを思い出したようにレイナにそう呟くと、レイナはやや表情を緩める。

「ホント?」

レイナが確認を取るようにト ウベエを見やると、頷き返す。

「ああ……この機体に使用さ れているシステムが大分参考になったぞい」

そう言いながら、固定されて いるハイペリオン3号機を見上げる……現在、レイナのインフィニティもレイナのプランを基に改修が進んでいたが、この機体に使用されていたシステムを参考 にしたおかげで予定よりも早くロールアウトしそうだった。

その報告が僥倖だったのか、 レイナは表情を和らげて肩を竦める。

「連合の機体の方は?」

メイアが思い出したように尋 ねる。

鹵獲したストライクダガーを 解体・調査して効率な戦法を探るようにも整備班には回っていた。今まで何度も襲ってきた連合の機体だが、肝心の機体そのものを手に入れてなく、性能の把握 ができなかったのだ。

それを、今度鹵獲したストラ イクダガーを解体してその能力を隅々まで調査した。

「そっちはもう終わっと る……まあ、結果だけいうとあの機体は戦時量産型を絵に描いたような機体ってことだ」

「つまり、簡易量産型……そ の場凌ぎの機体ってことか?」

カガリがそう問い返すと、ト ウベエは頷く。

ストライクダガーはあくまで 戦時中の今の情勢に合わせて急遽製造した量産型……簡略化された機構により量産性は優れているが、当然、量産を考慮したうえでの問題点が多々ある。

まず機体機構が簡略化しすぎ ていて機体の誘爆率が高すぎる……下手に駆動路にでも攻撃が掠れば、その瞬間に機体は粉々になる。そして内部電子機器の精度が低すぎて、EMPなどの電磁 波に異常に弱い。

「つまり……電磁波を応用し た兵器かなにかあれば…機体を無力化させることができるってこと?」

論点を纏めたレイナがそう尋 ねる……連合の現在の主力機はこのストライクダガーだ。この機体を広範囲に無力化できれば、それだけで連合の戦力を半分以下にまで低下させることも可能と なる。

「そうや……まあ、その辺の 兵器の開発も進めとるで」

その弱点を発見した整備班は すぐさまそれを応用した兵器の開発を急いでいる。

彼らは知らないが……ザフト がパナマ戦で投入したグングニールというEMP兵器がそのストライクダガーにとっての最大の癌なのだ。

だが、肝心のザフト技術者で もあるルフォンはそれには加わっていなかったのでグングニールの詳細は解からないが、電磁波を放つだけの装備なら造れる。問題は、それだけの広範囲に放て るだけのエネルギー確保と出力に耐えられるように造らねばならないということだけだ。

「まあ、とにかくなんとか急 いで造るさかい」

「お願い……っ」

その時……視界の隅に一人の 人影が引っ掛かった。

モルゲンレーテの作業服に身 を包んだ男が物陰からこちらを一瞥した後……人目を忍ぶようにその場を離れていった。

その様子に怪訝そうに眉を寄 せる。

「あら…どうしたの?」

レイナの様子を不審そうに感 じたエリカが声を掛ける。

「あの男……」

「え……ああ、ケヴィンのこ と」

視線を追って視界に入れたエ リカが、その見覚えのある顔に名を呟く。

「ケヴィン?」

「ええ…ケヴィン=ユダ ル……地上にいた頃、モルゲンレーテで何度か話したことがあるわ」

エリカの説明にレイナは険し い表情を浮かべたまま……ケヴィンと呼ばれる男の背中を睨むように見る。

「彼が……どうかした?」

「……いや、なんでもない」

自分の心配し過ぎだろうと頭 を振って息を吐き出す……どうも神経を張り詰めすぎているようだ。

「それじゃ、あとをお願 い……私達、これからシミュレーションルームに行くから」

一応の経過を聞き終え、レイ ナ達が踵を返す……トウベエやルフォン達は再び作業に戻っていく。

レイナ達はこの後、カガリの シミュレーションの監督をキサカから任されていたので、シミュレーションルームへと向かう。

 

 

シミュレーションルームへと 入ると、そこにはMS用のシミュレーターが並んでいる。

「じゃまあ、とにかくやって みなさいよ」

「フン、私の実力に驚くな よ!」

強気で答え、カガリはシート に着く……無論、今までもM1のパイロット達とシミュレーションをこなし、カガリの腕はそこそこなのは解かっている。だが、これから先の戦闘はそこそこで はダメなのだ。

それこそ、死ぬ気で操縦技術 を上げてもらわねば………

レイナ達はシミュレーターが 並ぶ部屋の横に設置されたモニター室に入り、カガリのシミュレーターでの動きをチェックする。

シミュレーションが起動 し……モニターの向こう側に宇宙が映し出され、カガリは真剣な面持ちで操縦桿を引き、仮想世界に全神経を委ねる。

シミュレーションに出現する のは連合のストライクダガーだ。それらが数機レーダーに映り、それに照準を合わせてトリガーを引く。

ビームが敵機を撃破し、反応 が途絶える……シミュレーションのストライクダガーもビームを放って攻撃してくる。

「おっと!」

シミュレーションとはいえ、 当たるわけにはいかない……瞬時に操縦桿を動かし、機体を傾けてかわす。同時にトリガーを引き、敵機を撃ち落とす。

そのシミュレーションを見詰 めながら、レイナは顎に手をやって考え込む。

(成る程……言うだけはある か……)

確かに腕は悪くない……この シミュレーションの難易度レベルも高めだ。

だが、シミュレーションをい くらこなそうとも実戦はまったく違う……実機に乗せたら、やはり宇宙空間でのバランス維持と精密射撃能力の強化と接近戦の向上をやらせた方がいいだろう。

同じくその横でシミュレー ションを見詰めていたリンは、隣でやや表情を顰めているラクスに気づき、声を掛ける。

「どうしたの?」

「あ、いえ……」

突然声を掛けられ、ラクスは 戸惑う……そして、なんとも言えないような気難しそうな表情を浮かべる。

「少し、カガリさんが羨まし くて………」

どこか、消え入りそうなか細 い声で言葉を濁しながら呟く……MSのシミュレーションをこなし…さらには搭乗機を持って戦場に立てるカガリをラクスは羨望するような眼差しを向ける。

無論、自分の指揮官としての 立場も理解しているが……ラクスもできるのならMSに乗ってレイナやキラ達と共に肩を並べて戦いたい……ただ戦艦に乗って自分だけがどこか安全な場所にい るのが辛いのであろう。

その意図を察したリンは頭を 掻き……どこか溜め息をつくように肩を竦める。

「なら……ちょっとやってみ る?」

不意打ちに近い形で掛けられ た言葉にラクスは面を喰らったように眼を瞬く。

「姉さん…シミュレーターの 2番機をラクスに使わせて」

カガリのシミュレーションを 見ていたレイナは、唐突に掛けられた言葉に戸惑い…周囲も呆気に取られたように眼を瞬く。

「ラクス嬢に…MSのシミュ レーションを?」

同じく見学に来ていたメイア が素っ頓狂な声を上げる……驚くなと言う方が無理だろう。

ラクスにMSのシミュレー ターをやらせるというのは……

コーディネイターにもMSが 動かせるかどうかの適正がある……反射神経や動体視力などの身体的特徴が秀でていなければ、いくらコーディネイターでもMSを上手く扱うことはできない。

メイアの怪訝そうな表情に無 言で頷き、視線でラクスを促す。

「操縦のレクチャーは?」

「何度か、マニュアルは読み ました……でも、実際にやるのは初めてです」

プラントにいた頃にMSの操 縦マニュアルを一通り熟読し、コックピット内の機器の大まかな操作は既に知っているが、実践するのはこれが初めてだ。

ラクスもやや驚きに眼を見 張っていたが、やがて意を決してモニター室を出て、シミュレーターへと歩み寄る。

このまま塞ぎ込まれるよりは 実際にやらせてみて、それで適正があるかどうかを本人に自覚させた方が納得するという考えだった。

シミュレーターに入り、座っ たラクスは初めて座るMS用のシートと操縦桿やレバー…ペダルを手探りで確認しながら操縦方法をチェックする。

「それじゃ、レベルはBぐら いでいくわよ」

「いつでもどうぞ……」

素人ということでまずは低い レベルでシミュレーターを起動させる。

小刻みに振動しながらシミュ レーターの正面モニターに宇宙が映し出され、ラクスは全神経を集中させる。

『MISSION  START』という文字とともにシミュレーションが始まった。

ラクスはペダルを踏み、ぎこ ちない動きで操縦桿を動かしながらシミュレーション内の宇宙を飛行する。

まずは基本動作……そして、 障害物が迫り、ラクスはやや歯噛みしながら操縦桿を切り、それらをよける。だが、微かに機体を掠めシミュレーターが振動し、小さな悲鳴を上げる。

これがMSに乗る恐怖なのだ と……ラクスは身を以って感じていた。

だが、こんなところで挫けて いてはなんにもならないと自らを奮い立たせ、必死に操縦桿を操った。

その操縦をモニター室で見て いた一同はどこか驚きに眼を見張っていた。

「どう思う?」

リンの問い掛けに、レイナも 考え込む。

「少なくとも……見込みはあ る、かしらね」

いくら低いレベルとはいえ、 初めてシミュレーションをやったとは思えない程の操縦技術だ。

シミュレーションの中で、ラ クスは眼前に迫るストライクダガーをビームで撃ち落とす。

自動照準に頼っているとはい え、なかなかの反射神経だ。

レイナはシミュレーションの 難易度を少し上げる……複数の敵機が迫り、ラクスはぎこちない動きながらも懸命に応戦している。

固まっている敵機をビームで 狙撃し、分散させる。そして、分散した敵機をビームで追うように狙撃しながら撃破していく。

懐に入り込まれ、シミュレー ターが衝撃に振動するも素早く距離を取ってビームを放つ。

上がった難易度にもなんとか 対応している。

「驚いたな……射撃がどんど ん正確になっている」

「ああ…それに、なかなか順 応力も高い」

現役パイロットのアルフやメ イアもラクスの意外な操縦技術に感嘆している。

レイナやリンも驚いているぐ らいだ……相手に接近戦を取らせず、必死に距離を取っている……意識的なのか無意識なのかは解からないが、戦闘において自身の間合いを保ち、相手の動きを 読むというのはなかなかできるものではない。

「接近戦は難しいようだけ ど……距離を取っての銃撃戦なら鍛えればそこそこね」

その戦いからリンはラクスの 効率的な能力の機体を選ぶ。

確かに接近戦は卓越した反射 神経が必要なだけにラクスには難しいだろう……だが、彼女はかなり視野が広い……距離を取っての砲撃戦なら見込みがある。

「仮に乗せるとしたら砲撃用 の機体ね」

砲撃用のMSによる後方支援 などなら、彼女も訓練を積めば可能かもしれない。

そこでシミュレーション終了 の文字が表示された。

《はぁはぁ……ど、どうです か?》

スピーカーから、息切れを起 こしているラクスの不安げな声が響く……流石に慣れないMSの操縦ということに疲労を隠せないようだ。

「そうね……まあ、悪くはな いけど………」

その言葉にラクスはどこか安 堵した笑みを浮かべる。

「だけど、本当にいいの?  MSに乗れば当然死の確立も高くなるし、相手の機体のパイロットを…人を殺すことになる……その覚悟はあるの?」

低い声で問い掛ける……その 言葉にラクスはやや押し黙る。

安っぽい自身への後ろめたさ からMSに乗るのなら、少なくとも戦場では邪魔でしかない。

それにMSで戦う以上は相手 を殺すということ……自分も殺されるという覚悟を持たねばならない。そして……遺された者に対しての覚悟だ。

《私は、この戦いに身を委ね た瞬間に……自分で汚れようと決めました…それに……私は死ねません……絶対に》

そう……ラクスは既に覚悟し ている……自分が汚れようとも………そして、シオンの言葉通り、生きて生き抜いて……自分の責任を果たさねばならないのだ。

そのために……自分は絶対に 死ねないと………

ラクスのその決意を聞いたレ イナは軽く息を吐き……皆を見やると、3人とも肩を竦めている。

言っても聞くような性格では ない……ラクスの言葉を聞いていたカガリも同意するように頷いた。

《そうだな、ラクス……私ら は絶対に死んじゃいけない………絶対に生き抜く…シミュレーションでよかったら私も一緒に教えてやれるから、なんでも聞いてくれよ》

胸を張って答えるカガリ…… その様子に苦笑するラクス。

《はい…いろいろと教えてく ださいませね……カガリ先輩》

《せ、先輩……な、なんかそ う呼ばれると照れるな………》

シミュレーターの中で顔を赤 くして俯くカガリ……少なくともMSの操縦技術や運用に関してはカガリの方が知識は上だ。そういった意味では間違っていないだろう。

《そ、そうだ…汗かいたし風 呂入ろう!》

照れを隠すためか、カガリが そう提案する。

《そうですわね……レイナ達 もご一緒にどうですか?》

「先に行ってて……私達は後 で行くから」

まだもう少しやることがあ る……シミュレーターから出たカガリとラクスは汗で湿った服をパタパタとさせながらシミュレーションルームを出て行く。

「んじゃ先に行くぞ…ああそ うだ、ついでにシルフィの奴も呼んどいてくれ」

用件だけ伝えると、カガリと ラクスは真っ先にシミュレーションルームを後にした。

残されたレイナ達は今のシ ミュレーションデータを保存し、支援AIにロードさせる。シミュレーションでも経験は経験…それらをAIに蓄積させておけばさらに能力向上に繋がるだろ う。

「それじゃ、私達一度キラ達 の様子見に行くわ」

「ああ…じゃ、私らは哨戒に でも出るか?」

「いや……それは俺とM1隊 の方でやっておく。お前も一緒に風呂にでも入っておけよ」

メイアの言葉にアルフが苦笑 を浮かべて呟いた。

「そう? じゃ、お言葉に甘 えようかね」

軽く笑い合い、4人もシミュ レーションルームを後にした。

 


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