別れたレイナとリンは医務室 に足を伸ばした。

そこには、先程の6名の犠牲 者達がベッドを並べてグッタリとしていた。

「あ、レ…レイナ……う うぅ」

「キラさん、まだ話しちゃダ メですよ…胃も洗浄したばかりなのに」

呻くキラを嗜めるシル フィ……アスランは頭を押さえて項垂れ、ディアッカは腹部を押さえている。ラスティは点滴を繋がれ…ニコルはベッドの上で蹲っている。

そして……ムウはベッドの上 で魘されている。

「カ、カレーはもう嫌 だ…………」

呻き声と一緒に漏れる言葉に またもや溜め息が出る……

「……フラガ少佐が一番ダ メージが大きいみたいね」

いったいどんなカレーを作っ たらここまで魘されるのだろう……と…考えそうになって即座に思考を振り払った。真剣に悩んだらなんとなくおかしくなる気がして………

「なにか、精神にかなり異常 があって…よほどの衝撃を受けたんだと思います。精神障害にならないように注意しないと……」

あくまで真面目にそうカルテ を見ながら呟くカムイ……というよりも、精神異常が出そうなほどヤバイ物なら最初から食べなきゃいいのに……と内心毒づく。

「ラミアス艦長に看護させた ら? 少佐のことだから、案外すぐ治るかもよ」

意外と…ではなく、まんま現 金な性格だし………と内心に呟いて肩を竦める。

だが……マリューが介抱し て…また状態が悪化するという可能性もあるが………

「まあ、それは置いておい て……で…どれぐらいで回復するの?」

レイナ達の会話をスルーし、 リンが検査を担当したカムイに尋ねると、カルテを見ながらカムイが苦笑混じりに答える。

「そうですね…胃を洗浄しま したから、まあ3日ぐらいは……それまでは点滴ですね」

恐らく、数日はなにも喉を通 らないと思うが……とリンは思った。

身体的なダメージもそうだ が、今回は精神的にもかなりのダメージを喰らったようだし………

「まったく…この忙しい時 に……」

もはや呆れてなにも言えな い……だが、当面は自分達だけでなんとかしなければならないだろう。まあ、3日ぐらいで回復するようだし、その間ぐらいはなんとかなるだろう。

「で、あの子の方は?」

「フィリアさんが先程薬の調 合に成功したようで……今は少し落ち着いたみたいです」

伊達に遺伝子分野に携わって いない……すぐさま実験データからステラの肉体に施されている薬物を中和する薬を調合し、今は投与されて大分顔色もよくなったそうだ。

このまま薬を定期的に投与し ていけば、元の薬物を必要としない身体に戻れるようだ。

「それで安心したのか、彼の 方が今度は逆に倒れて………」

ステラの様子に安堵したの か、それまでずっと付きっきりにいたシンが今度は疲労で倒れたらしい……張り詰めていたものが切れたので、まあ仕方ないが………今は自室のベッドに寝かさ れている。

「そう……ああ、そう…カガ リ達が風呂に入るって言ってたから、一緒に来ないかって」

ここに来たもう一つの用件を 思い出し、シルフィに尋ねる。

「え…お風呂ですか?」

突然の言葉にシルフィが戸惑 う。

「ああ、行ってきたらいい よ……ここは僕が見ておくから」

カムイが笑顔でそう促すと、 シルフィはやや頬を染めて頷く。

「はい……」

「じゃ、行きましょうか」

シルフィを伴い、レイナとリ ンは医務室を後にした……その話を小耳に挟んだディアッカ…もし、万全の状態だったら、女風呂を覗こうといろいろ画策したかもしれないが……今は身体全体 にダメージを受けていて動けない。

ベッドの上でどこか悔しそう に嘆きそうになったが……再び訪れた腹部の痛みにディアッカは慌ててベッドを飛び出し、備え付けのトイレに駆け込んで行った。

(また妙なことを考えてた な……)

その様子を眺めながら、アス ランはどこか遠い眼でそう思った………女性が料理できるという先入観的固定概念を打ち砕かれた彼らの心傷はすぐには治りそうもない。

 

 

レイナ達はアメノミハシラ内 部のバスルームへと向かっていた。

ちょうど外壁に面した一画に 造られている。

その場所へと到着した時…… 視界に入った光景に思わず絶句した。

男女に区切られた入口にのれ ん……ここまではまだいい……だが、そののれんに『天界湯』と書かれていたのだ。

いや……確かにアメノミハシ ラを天界とも言い直すことができるが………それでも異様なものがあった。このアメノミハシラはミナが中心となって造り上げたもの…必然的にこののれんの文 字もミナの了承が入っているという結果になるのだが……なんとなく、ミナの考えが解からなくなりそうになり、レイナは頭を抱えそうになった。

「悩まない方がいい……慣れ ろ」

リンが慰めるように肩を叩 き、のれんをくぐっていく……意外と順応力が高い…いや、半ばもうなにが起きても動じなくなっているのだろう。

レイナも確かに悩んでも仕方 ないとばかりにのれんをくぐった。

 

その頃……先駆けて風呂に 入っていたカガリとラクス…そして道中誘ったミリアリアとリーラもいた。

「いい眺めですね……」

リーラが前面に備わった強化 ガラスを見やる……外壁に面したこのバスルーム…強化ガラスの向こう側は宇宙とその中に見える地球が映し出されていた。

まさに絶景というやつであ る……

「でも、このお風呂…凄く 凝ってるわよね」

ミリアリアは腰掛ける石を触 りながらそう呟いた……バスルームに設けられたのは石で囲まれた露天風呂風の造り……どこかのホテルのような造りだ。軍用艦であるネェルアークエンジェル では共同のシャワールームか個別シャワールームしかなく、このようなバスに入ったのは本当に久しぶりだ。

「はぁ……しかし、汗をかい た後の風呂って気持ちいいよな」

頭にタオルをのせ、石に背中 を預けているカガリ……ラクスも浸かりながら、お湯で顔を拭う……そこへドアの開く音が響き、全員がそちらを振り向くとそこには脱衣所で合流したメイアと マリューを伴い、レイナ達が入ってきた。

視線がレイナを捉えた時…… 驚いたように眼を見張った。身体に刻まれた無数の傷跡……それらが酷く痛々しい……ラクスは一度、プラントに運ばれた時にレイナの手当てをしたのでそれ程 驚きは少なかったが、それでもあまり気分のいいものではない。

レイナとリンはそのまま湯で 身体を流すと湯に身を沈める……ようやく一息ついたのか、大きく息を吐いて肩を落とした。

「あ、あのさ…レイナ……」

「ん?」

どこか躊躇いがちに声を掛け るカガリ……その視線から意図を察したレイナは苦笑を浮かべる。

「ああ…これ? 別に私は気 にしてない……」

腕を上げ…そこにも刻まれて いる傷跡を見詰めながら自嘲気味に肩を竦める。

別に悲観したところで傷が消 えるわけでもない…それに……この傷がある限り、自分は決して迷わない……この罪の証がある限り………

レイナのその表情に誰もが口 を噤む……人には話したくない過去もあろう…特に、その一端を知る者としては………

沈黙が降りるなか……湯に浸 かりながら気分を落ち着けていると、シルフィがポツリと呟いた。

「皆さん……胸大きいです ね、羨ましいです……」

自分のささやかな胸を見なが ら重い溜め息をつく……その言葉に弾かれたように何人かが自分の胸を見やり…そして……周囲に眼を走らせる。

やはり、彼女らも年頃の乙 女……胸の大きさというのは気になる点でもある。

メイアやマリューは…まあ、 成熟した大人の女性だ……胸が多少大きくてもなんとか納得するだろう………だが…ほとんど年が離れていないレイナやリンの胸を見やり………一同はどこか気 圧された。

「レ、レイナって胸大きいわ よね……」

ミリアリアが上擦った声で呟 く……レイナは気だるげに自分の胸を見やる。

実際に測ったことがないので 正確なサイズは解からないが……85以上はある……おまけに腰回りが細いスレンダーな体形でより胸の大きさが強調されている。

「こんなもの……邪魔でしか ないけど」

呆れたように肩を竦める…… レイナのような生き方をしていると、この胸というのは結構邪魔なものなのだ。動きは鈍るし、揺れると動きにくい……普段は抑制するためにきつめのスポーツ ブラをつけているが………

だが、レイナのその言葉は逆 に彼女らをさらに落ち込ませた。

「姉さん…それって多分説得 力ないわよ」

リンが呆れたように嗜め る……リンもレイナに負けずあるので、さらにズーンと落ち込む。

「はぁ…やっぱり、男性は大 きな胸が好きなのでしょうか?」

ラクスもまた自分の胸を見や りながら大きく溜め息をついた。

「まあまあ、ラクスさん…… 胸の大きさで女性の良し悪しが決まるわけじゃないし……それに、貴方達は肌がすべすべじゃない」

せめて慰めようとマリューが 声を掛け……その言葉に少しは落ち着きを取り戻したようだった。

「そんなに悲観しなくても、 これからどんどん大きくなるって……余計な心配はしない方がいい」

メイアも気遣うように言葉を 掛ける……そして、一同は自身を奮い立たせる。

「そ、そうですよね」

「ああ、これから大きくなれ ばいいんだよな!」

自分に言い聞かせるように呟 く。

そんな様子を横眼にレイナは またもや息を吐き……湯に身を沈めながらガラス向こうの宇宙を遠い眼で見やるのであった………

 

 

お風呂を後にした女性陣は、 何故か浴衣姿でアメノミハシラの展望室を訪れていた。

「なんか…ますますロンド= ミナ=サハクの考えが解からなくなったわ」

黒を基調とした浴衣を着て、 後ろ髪を首筋で束ねているレイナがそうぼやく。

レイナだけでなく、皆が浴衣 姿でここに居るからだ。

ラクスはピンクを基調とした 浴衣、カガリは赤…シルフィは白……リーラは藍色…メイアは濃蒼……マリューは翠を基調とした浴衣姿だ………

カガリが言うには、ミナがこ の浴衣を使いたまえと渡してくれたらしい……何故アメノミハシラにそんなものがあるのか……ここは一応軍事ファクトリーではなかったのだろうか?

それとも、レジャー感覚で 造ったのか……そう考えそうになって思考を止めた。

真面目に悩むと余計疲れるよ うな気がする………

「別にいいんじゃないの…… 悩んだら余計疲れるわよ」

そんなレイナの逡巡を知って か……似た黒い浴衣に身を包み、こちらはポニーテールに髪を束ねているリンがそう呟く。

確かに……郷に入れば郷に従 えという言葉もある……もう慣れるしかないだろう。

展望室の備え付けの長椅子に 腰掛け……地球の放つ光が幻想的な雰囲気を醸し出す展望室内で、レイナとリンはそのまま地球を見やる。

蒼く輝く惑星……だが、そこ に生きるのは殺し合い、奪い合う……そんな生命しか存在しない………

「彼らも……どこかでこの地 球を見ているのかしらね………」

そう……この地球を…世界を 見て……彼らは人類を滅ぼす道を選んだ………自分自身さえ赦されず……ただ果てない欲のためだけに生み出された彼ら………

彼らは今……どんな思いで… この世界を見ているのだろう………

「……連中は…いったいなに をやろうとしているの…?」

リンは思わず口に漏らす…… いったい…彼らはなにをやろうとしているのか………レイナにも皆目見当がつかない………

「解からない……だけど…彼 らは待っている………滅びの刻を……」

そう……これだけは確信でき る……彼らは…いや……カインは待っている………人が互いに殺し合い、滅ぼし合うのを……そして……滅びの刻が訪れるのを………

沈黙が二人の間に降り る………レイナとリンも……彼らと同じ存在のはずなのに………きょうだいのはずなのに……なのに、自分達はこうして分かれて殺し合っている……結局…自分 達も人としての本能を捨てることはできないのかもしれない………

「連合とザフト……彼らが本 当の意味で滅ぼしあう刻………恐らく、その刻こそ彼らは動く………」

その二つを影から操っている 以上……その流れを止めることはできない………止められるとしたら……彼らが真に闇から光へと現われた時…………

そして…それを止めるの は………自分達に課せられた運命だということも………

二人はただ……静かにその場 に居続けた……まるで、世界から切り離されたような感覚……自分達は、本来は存在してはならないもの………人の形をした…禍がいものなのだから…………

どれ程そうしていただろ う……不意に、腕の通信機が鳴っているのに気づき、レイナは受信した。

「誰?」

《私だ……少し、話したいこ とがある。中央管制室まで来てもらえるかな?》

通信機から聞こえるミナの 声……互いに顔を見合わせると、通信を切って立ち上がる。

そして、ガラス窓付近にいる ラクス達に声を掛けた。

「私達、先に失礼する」

「あんた達ももう休みなさい よ……」

もう時間は深夜に近い……宇 宙にいると時間の感覚が狂いそうになるが、休養も重要なことだ。

二人はそのまま身を翻し、展 望室を後にする……それを見送ったリーラはどこか複雑な表情を浮かべていた。

あの二人と……自分の関 係………あの後……フィリアがリーラに語ってくれた。

リーラの両親であるマルスと アリシア……マルスはウォーダンの研究チームに入り、DEMシリーズを手掛けていたこと……その後、カインの存在に危惧と責任を感じたマルスはアリシアと の間にできた受精卵…つまりはリーラをフィリアの協力を得て、MSナンバー誕生に使用されていたパルスを用いての遺伝子調整を行った。

その結果……リーラは平均的 なコーディネイターよりも高い能力を持つことができた。

アリシアはそのマルスの決断 に従った……だが、やはりリーラではカインには対抗しえない……そう気づくのに時間はさして掛からず…マルスは己の早計さを悔やんでいた。

その罪滅ぼしとけじめもあっ たのだろう……受精卵であったリーラとアリシアがプラントに行った時も追いかけなかったのは……そんな資格は自分にはないと……

(自分を責めていたの……で も、お母さんは苦しんだんだよ)

覚えてもいない父……たと え、なにがあってもアリシアを護ってほしかった……もしそうであったなら…あんな辛い思いをせずに済んだのかもしれないと思わずにはいられない。

(勝手だよ……お父さん…)

宇宙を見詰めながら……リー ラはそう毒づく。

そして……レイナとリンのた めに……2体のDEMを遺し……マルスは逝った………

勝手だと思う……恨むなと言 われても無理だろう……だが、もうそれを嘆いてもどうしようもないことも自覚している。

自分は戦わねばならない…… そう決めたのだ………自分を生かしてくれた母と…自分自身に………

リーラは、無意識に浴衣の胸 元に揺れるペンダントを握り締める。

(イザーク………もう…私は 貴方を愛する資格はないよね………)

自身に言い聞かせるように呟 く……もう……自分にはその資格はないと……たとえ…イザークの立場を思ったとはいえ…大切な者にその刃を向けてしまった………それがリーラの心に影を落 とす。

だが、立ち止まることはでき ない………自分自身で決めた道である以上…もう変えることはできない……それが…レイナやリンと同じように生まれた自分の運命なのだ……

そう理解していた……それで も……辛かった…………不意に…リーラの瞳から雫が零れた……この同じ宇宙を見ているであろう愛しい者を思って………

 

 

 

アメノミハシラの中央管制室 を訪れたレイナとリン……だが、場所に不釣合いな浴衣姿にオペレーター達は一瞬眼を剥いた。

「すまなかったな……もう少 し後がよかったか?」

「別にいい…で、何?」

ミナの気遣いを流しながら用 件を尋ねる……まさか、ただ呼んだわけでもあるまい。

「ああ……実は、今朝未明に ジブラルタルへの侵攻が始まったという情報が入った」

その言葉に、二人の顔色が変 わり、表情がやや険しくなる。

地球軍がジブラルタル攻略を 行おうという動きはあったが……もう少し間をあけると思ったが、予想よりも早い。

「戦況は?」

「いや……戦況もなにももう ない」

ミナが首を振り、否定す る……その様子から、もう既に戦闘が終結しているということだ。

レイナ達がアメノミハシラを 離れていた間に地球軍はジブラルタルに侵攻……僅か一日で陥落させたということになる。

「ザフトは?」

「最終的にジブラルタルを放 棄……大西洋連邦の潜水艦と水中MS部隊が追撃しているようだが……」

ジブラルタルを陥とされたと いうことは、ザフトはもはやヨーロッパとアフリカ戦線の放棄を決定したということに他ならない。

恐らくジブラルタルはそのま ま地球軍の占領地になるだろうが……あの基地はマスドライバーを持たないただの前線基地……現在の地球での戦略的価値は低いだろうが、これでビクトリアへ の憂いの一つが断てたということだろう。

「残るはカーペンタリアだけ か……」

リンもモニターに映る地図を 睨みながら逡巡する。カーペンタリアはオーストラリア大陸の端に設置されている。言わば、四方が開けた非常に攻めやすい場所……無論、地上での最大の拠点 だけに防衛力もそれなりだろうが、最近の連合の通商破壊のせいで満足に補給物資も送れないはずだ。

それの意味するところは、最 新鋭であるゲイツやバルファスは愚か、ジンやディンといった既存のMSの整備パーツも届きにくいということに他ならない。

「連合は次にカーペンタリア を攻めるな……そのために、オーブと赤道連合の仮設基地に連合艦隊が集結中との情報もある」

苦々しい口調でミナは呟く。

オーブと赤道連合はカーペン タリア基地に面した立地だけに補給を行うには最適だろう……そして、艦隊が集結・補給に入っているということは少なくみても数週間のうちには攻略戦に入る 可能性がある。

「地上はほぼ連合の支配下に 置かれるわね……彼らにとってもやり難くなるわね」

主に地球で活動する反地球連 合組織…今は連合の注意がザフトに向けられているからいいが、もしザフトが地上から駆逐されれば、彼らにとっても動きが取り難くなる。

「最終的な目標がプラントだ とすれば……遅くとも一ヶ月後だな」

ジブラルタル陥落が異常に早 い分、この分ではカーペンタリアもそう長くは保たないだろう。そうなれば連合の目標は最終攻略であるプラントを目指す……そのための部隊編成を考えてみて も約一ヶ月といったところだろう。

「あまりこちらものんびりは していられないか……」

シオン達の連合政府内の政権 奪取プランをもう少し早めてもらい、早急に赤道連合とスカンジナビア王国に根回しとこちらはプラント政権の交代と連合内の抗戦派の排除だ。

これからの方針に思考を巡ら していると、突然オペレーターの一人が顔を上げた。

「ロンド様!」

「何だ?」

「何者かがこのアメノミハシ ラに通信を試みています!」

その報告にミナは驚愕す る……このアメノミハシラのメインコンピューターには幾重にも張り巡らされたプロテクトが存在する。部外者がおいそれとアクセスできるようなものではな い。ということは、必然的に相手は絞れるが………

「連合か? それともザフト か?」

「い、いえ……発信源の特定 は不明! あっ……」

「どうした?」

突然のオペレーターの戸惑い を不審に思い、声を掛けるとオペレーターもやや上擦った声で応じた。

「は、はっ…そ、それが…… 『From R To R』という文字が……」

その言葉に、レイナは若干眉 を寄せ……そして、次の瞬間にはミナに話し掛けた。

「その通信を繋いで」

「何……」

「恐らく連合やザフトじゃな いわ……まあ、少なくとも大丈夫のはずよ」

レイナの言葉にやや逡巡して いたが、ミナは顎をしゃくってオペレーターを促す。

「は、はい……通信繋ぎま す」

躊躇いがちに通信を受信する と……メインモニターにノイズが入り…それがやがてクリアな映像に切り替わると、そこに一人の男が映った。

「やっぱりあんたか……ル キーニ」

RからRへ……ルキーニから レイナへ……なんとも解かりやすいメッセージだ。

《久しぶりだね……君のコー ドにはアクセスできなかったが、君の居る場所は解かったからね……そこへ繋ぐのは私にとっては造作もない》

さり気に小馬鹿にされたよう でミナは表情を顰める。

「さっさと用件を言いなさい よ……まさかそんな嫌味を言うためだけに通信してきたわけじゃないでしょ?」

いや……案外そうかもしれな いと言ってから気づいたが、ルキーニは悪びれもなく肩を竦める。

《なあに…一つは君を驚かせ たかったというのもあるが……まあ、それはついでだ。アルテミスが崩壊したというのは聞き及んでいるかな?》

一瞬……言葉の意味を理解で きず眉を顰めた。

「どういうこと?」

リンが問い返す……そのアル テミスを数日前に襲撃し、ハイペリオン3号機を奪取したのは他でもない自分だ。しかし、自分が脱出した際にはまだアルテミスは健在だったはずだ。

アルテミスはあの宙域を中心 にかなり悪どいことをやっていたので、海賊にでもやられたかと思ったが……しかし、それでは崩壊という意味が解からない。

《言葉通りだよ……遂先 日……アルテミスが崩壊した。今はただの岩の塊になっている……生存者は不明……おかげで、ユーラシア上層部もかなり混乱しているみたいだがね》

それはそうだろう……アルテ ミスは辺境とはいえ、ユーラシアが唯一持つ軍事衛星であり、宇宙の拠点だ。そこが崩壊したとなれば………

「原因は?」

《その辺は解かっていないが ね……ただ、なにか強力な兵器かなにかで完全に破壊されている……》

やや低い声で呟くルキーニに レイナ達は言葉を噤む。

「なんで、そんな情報を私達 に?」

《いやなに……君らにこの件 は関わっているような気がしてね……個人的興味さ》

はぐらかすように肩を竦め る。

だが……ルキーニの言葉も確 かに的を外れていないだろう………

「情報提供、感謝する わ……」

《それはよかった……報酬は これからの見物料で結構さ。見ていて飽きない展開を楽しみにしているよ》

不適に笑い……ルキーニの通 信は途切れた………相変わらず、油断のならない男だ。

頭を掻きながら、レイナは思 考を巡らす。

「アルテミスの崩壊……か」

物理的に考えれば、通常兵器 では決して崩壊などできない……可能性があるとしたら、内部のエネルギーバイパスの暴走による崩壊か……核などの圧倒的な破壊力で外部から崩壊させられた かのどちらかだが………

だが、その二つとも外れてい るような気がする……アルテミスを崩壊させるほどの破壊力……ならば……その方法は…………そして…実行した者は………

「まさか、ね……」

どうにも嫌な予感がしてなら ない……脳裏に…きょうだい達の姿が過ぎる。

「だが、アルテミスが崩壊し たとしても混乱するのはユーラシアだけだ」

そこへミナが口を挟んだ。

「そうね……連合…少なくと も大西洋連邦にはどうでもいいことか」

あんな辺境の衛星など、大西 洋連邦にとってはどうでもいいことだろう……わざわざそんな調査のために労力を割く必要もない。

だがこれで、完全に宇宙のア ドバンテージも大西洋連邦に握られてしまうだろう。

プトレマイオスクレーターは 既に大西洋連邦の直轄なのだから………

「……他に何かある?」

他の情報を尋ねるが、ミナは 首を振る……だが、なにかを思い出したように顔を上げた。

「そう言えば、ごく最近だ が……アメノミハシラ内部から暗号通信のようなものが地上に向かって放たれているのを確認している」

「暗号通信? オーブのもの じゃないの?」

「ああ……発信された時間も 短いために詳細は解からないが、少なくともオーブのものではない…独自の暗号通信を使っていることから、少なくとも正規の回線ではない」

現状のアメノミハシラから外 部へと連絡を取る必要はほとんどない……どこか歯切れの悪い口調で答えるミナ……だが、暗号通信を使って地上と交信しているということは、少なくともミナ にとっては由々しき事態なのであろう。

「ここに来ている、オーブの 避難民のリストはある?」

「ああ……無論、部外者を簡 単に招くわけにはいかんのでな……チェックはしているが……」

無論、ミナとて疑いたくはな いだろう……自分を頼ってきたオーブの民を。

だが、そういった隙を衝かれ ることもあるのだ。

「敵はなにも外からだけじゃ ない……内からも来るってことよ」

獅子身中の虫……レイナは表 示されたリストに眼を通し………やがて、一人の男が映し出された時、視線を留めた。

 

 

 

深夜の時間帯……警戒体勢に ある部署以外では既に半数が眠りに就いている時間帯………照明の落ちたファクトリー内……メンテナンスベッドに固定されている3機のMS……その内の一 機……ストライクルージュに近づく人影……

灯りもつけず、人目を憚るよ うに薄暗いなかを周囲を警戒しながら近づき……ストライクルージュを見上げながら、懐からなにかを取り出そうとした瞬間………

ファクトリー内に灯が灯り、 周囲が照らし出され……人影がビクっと硬直する。

「……そこまでよ」

後ろか掛けられた低い声…… 男は振り返ることなく背中を向けたまま佇むその後ろには、レイナの姿があった。

「うまく戸籍は誤魔化したみ たいだけど……流石に人の記憶は消せなかったようね…カール=イカテリオス…いや……オーブセイラン家のケヴィン=ユダル」

その名を呼ばれた瞬間……男 の眼が驚愕に見開かれた。

「考えたわね……オーブ本国 のゴタゴタでこのアメノミハシラ内部もチェックが甘い…偽名でここの状況を探るために送り込まれたか…セイラン家に」

ストライクルージュのコック ピットから顔を出すリン……ミナから聞かされた暗号通信の話から、それが送られた時間帯と監視映像のチェック…そして、アメノミハシラに移ったオーブの民 間人の戸籍記録の調査で浮かび上がった人物……エリカがケヴィンと呼んだ男は、偽名でこのアメノミハシラを訪れていた。エリカが名を発したおかげで監視映 像の改竄と人物の特定ができたのだ。

そして……その問題の人物が 狙うもの……当然、限られてくる。アメノミハシラの管制室かこのアメノミハシラ内部の技術……だが、レイナ達が使用している機体のほとんどが艦で整備され ているために手を出すとしたらここで製造中の機体しかないと踏んだ。

動き出すのは深夜……警戒が 一番薄くなる時間帯…だからこそ、ここで張っていたのだ。

「私も迂闊だったな……余 程、セイランはこのアメノミハシラが気に入らないとみえる……」

レイナ達の後ろから姿を見せ るミナ……その表情は苦い。

「しかし…何故セイランがア スハの娘の機体を狙う……」

唯一腑に落ちないことがあっ た……それは、ケヴィンが抱えているもの…それは、小型の爆弾……何故…アスハの分家であるセイランがカガリの機体を破壊する指示を…いや…カガリを狙う のかが解からなかった。

「それについても調べた わ……セイランは、ブルーコスモスの一部と密かに連絡を取っていた………そして…あんたの本当の雇い主はセイランではなくブルーコスモス」

その言葉に、今度こそケヴィ ンの表情が変わった。

ミナも驚きを隠せない……サ ハク家が密かにアズラエルと接触していたようにセイランもまたブルーコスモスと接触し、自らの力を強くしたのだ。

だからこそ、現在のオーブ暫 定政府を治めるセイランは大西洋連邦に協力的なのだ。

そして……セイランに指示 し、アメノミハシラの内部調査とイザという時の破壊工作を受けて潜入した。

だからこそ、ケヴィンはアス ハの生き残りであるカガリを狙ったのだ。

「さぁ……いろいろ訊きたい ことがある。大人しくしてもらおうかしら? 爆弾を置いて手を挙げなさい」

銃を構えるレイナ……もう逃 げ場などない……その時、ケヴィンは爆弾を自棄になって投げ飛ばそうとした。

息を呑むなか…ストライク ルージュのコックピットハッチからリン銃を放った。

弾丸が掠め、爆弾が放り投げ られる……リンは跳躍してそれを受け止め、そのまま着地する。

「無駄なことを……」

睨むリン……ケヴィンは歯噛 みし………懐から銃を取り出し…構えるレイナ達の前で銃口を自らの顎に当てた。

その行動を目の当たりにし、 意図を理解したレイナ達が動くが………

「蒼き清浄なる世界のため にっ!!」

刹那……静まり返るファクト リー内に乾いた銃の音が響く………薬莢が落ちる音と何かがドサっと倒れる………

顎から吹き飛んだケヴィンの 死体を見詰めながら、レイナ達は歯噛みした。

「死して語らず……か…少し 甘く見ていた」

自身を嗜めるように呟く…… このケヴィンという男もまたブルーコスモスだったのだ。

そして……証拠を残さず死ん だ………狂信者として…………

やや沈黙が支配していたその 場へミナの連絡でやって来た保安部が死体を片づけていく……それを横で見やりながら、レイナはミナに呟いた。

「今回のこと……カガリや他 の連中には黙ってて」

言うまでもないことかもしれ ないが……オーブ国民のなかに裏切り者がいる…その事実は国の中枢を成そうとする者にとっては計り知れない苦痛だろう。

「ああ……済まぬな、今回は 君らに助けられた」

詫びるミナ……だが、レイナ は肩を竦める。

「契約だからね……ここを借 りる間の護衛は……それに…どんなに尽くそうとしても…全ての人が従い…解かるなんてことはできないのよ…絶対にね」

国を治めるとはそういうこと だ……多くの思惑が渦巻くのが人の生きる社会…そして国というシステムだ。一人一人、深淵は違う……だからこそ、こういった事もあるのだと………ミナはと もかく、純粋なカガリにはなかなか受け入れられないだろう。

皆が全て同じ考えとは限らな い……たとえそれが…自分の信じる国であっても。

「それよりも、地上にいるセ イラン家の動きにも気を配った方がいいんじゃない?」

「ああ、そうだな……すぐに 地上と連絡を取ろう。サハク家の情報部がオーブで状勢を探っているからな」

ここまであからさまに行動に 出られた以上、警戒は怠らない方がいいだろう。

ミナはすぐさま指示を出そう とファクトリーを後にする………残ったレイナとリンも、やや肩を落としながらその場を去り……こうして、気づく者が少ない事件は終え……夜が静かにふけて いくのであった………

 

 

 

 

数日後……アメノミハシラ付 近の宙域では、MSの演習が行われていた。

完成したカガリの機体…スト ライクルージュの慣らし運転だ。パイロットは当然カガリだが……実機を操縦するのは初なだけになかなか悪戦苦闘している。

紅い装甲の機体がバランスを 整えられず、回転している……空気的な抵抗も摩擦もない宇宙空間では一度掛かった力はまったく衰えず止まらない…つまり、自身でバランスを整えない限り、 半永久的にその動作を繰り返すことになる。

「カガリ、機体のバランスを 上手く整えろ。宇宙空間じゃ全方位から攻撃が来るんだ…それに、うまくバランスを取らないと機体はいつまでたっても止まらないぞ」

カガリを嗜めるのは演習に同 行しているアスランのジャスティス……あの数日前の料理事件からようやく回復したらしい…それでもまだ病み上がりに近いが………

「わ、解かってるよっ」

言い返すも、カガリは必死に 操縦桿を操る……カガリをここまで苦戦させているのは実機ということだけでなく、ストライクルージュが装備している装備にあった。

IWSPストライカー……ス トライクルージュとともに組み上げられたキラやムウのストライクが使っているIWSPストライカーのモルゲンレーテ社製だ。

あらゆる多機能を組み込まれ たこの装備はかなりの操縦技術をパイロットに求める…うまく扱えなくともカガリを責めるのは酷であろう。

だが、実戦でそんな甘い考え は通用しない……なにより、強力な装備の方がパイロットの生存確率も高くなる。

「危なっかしくて見ていられ ないな……」

演習を見守るレイナのM1A の隣に立つリンのエヴォリューション……こんな調子で、本当に実戦に投入できるのかという疑問以前に慣れる頃にはもう遅いのではないかという危惧……扱い にくいのなら、他の装備を使えばいいものを……あまりの非効率さに溜め息をつく。

それはレイナも察している が、カガリが頑なにこの装備を使いこなすと言い放ったのだ。

そもそもストライクルージュ を組み上げたエリカらにしてみれば、ストライクルージュは最初実戦に投入するつもりではなかったらしい。言わば、カガリの乗る機体として戦意高揚の士気の ために組み立てたのだ。このIWSPストライカーもそういった存在感を出すための飾りであったが……カガリはお飾りになるつもりなどない…という以前に ジッとするのができない性格だ。だからこそ、なんとしてもこの装備を使いこなし、前線に立たねばならないのだ。

操縦桿を動かし、ペダルを踏 みながら制動をかけ……ようやくバランスが整ってきた。

安堵の息をつくのも束の 間……そこへレイナからの通信が入った。

「カガリ、それじゃ模擬戦を 始めるわよ…仮想は一対三……死ぬ気でやりなさい」

「なっ!」

流石のカガリも眼を見開 く……まだ実機に乗るのが初めてな相手にいきなり一対三は辛いのではないかと……

「泣き言は聞かない……時間 はないのよ。殺すなみにやらないと上達しないでしょうが……文句は言わない……始めて」

「はーい! カガリ様、それ じゃ遠慮なくいかせてもらいますよ!」

演習相手に出てきていたアサ ギ、マユラ、ジュリの3人の乗るM1Aが動き出す。アメノミハシラで譲渡されたM1Aはクサナギ内の一部の熟練者に渡された。彼女ら3人も初期の頃からの テストパイロットとしての経験と実戦経験からクサナギ内でもエースとなり、M1Aを譲渡されていた。

3機のM1Aが一斉にストラ イクルージュに襲い掛かる。

「ちょ、ちょっと待てお前 ら!」

「待ちませーん!」

「そうですよー! これは訓 練ですから…カガリ様にも死ぬ気で頑張ってもらわないとー!!」

心底上擦った口調のカガリに 対して軽薄な口調で返し……仮想のビームを放つ。

「うわっとと!」

カガリは慌ててペダルを踏み 込んでスラスターを噴かし、軽やかにかわし……とはならず、出力に振り回されて機体がまた回転した。だが、仮想のビームは回転して態勢を変えたストライク ルージュの真下を過ぎる。

「さぁさぁカガリ様! まだ まだいきますよ!!」

どこか弾んだ声を上げてビー ムを放つM1Aに向かって、カガリは歯噛みとなぜか怒りを憶えた。

「お前らぁぁぁっ、私に恨み でもあるのかぁぁぁっ」

吼えながら、回転する機体を 制御し、IWSPの仮想のエネルギーを放つ。

「わわっ」

予想できない反撃にアサギ達 も戸惑いながら回避する……でたらめで予想もできない…振り回されているだけとも言うが…動きをするストライクルージュとそれに戸惑ってなかなか決定打が 出ないM1A3機………

「まあ、初演習にしてはマシ だけど……アレでホントに実戦に出すの?」

傍から見ているとなんとも言 えない……というか危なくて見てるこっちが疲れそうだ。

レイナも同意見だが……かと いって、カガリが実戦に出るのをやめるはずがない。

ならば、多少無茶でもなんで も荒療治で機体に慣れてもらうしかない。

「とにかく、あと数日中には なんとかまともに動ける程度にはなってもらわないと……」

通常のナチュラルが宇宙空間 でのバランス調整に慣れるには一ヶ月以上の期間が掛かる……平衡感覚を適応させるのにかなりの時間が掛かる。それを僅か数日で身体に叩き込まなければなら ない。

その時、視界の隅で回転して いたストライクルージュが制動をかけられずに周辺を浮遊していたデブリに向かっていく。

あのまま激突すれば機体が無 事でも中のパイロットに大きな衝撃が伝わる。

だが、すかさず静観していた ジャスティスが動き、激突寸前に回り込み、ストライクルージュの腕を掴み、動きを止めた。

「大丈夫か?」

「あ、ああ…ありがと」

バツが悪そうに声を濁らせる カガリ……だが、そこへアサギ達の不満めいた声が上がる。

「ひゅうひゅう! お熱いで すねぇ!」

「なっ! お前ら……」

マユラのからかいにカガリが 羞恥に頬を染めて怒鳴り返そうとするが、そこへ大げさな溜め息で遮られる。

「ああもう、見せつけてくれ て……やだやだっ」

「私も危ない時に助けてくれ る素敵な彼氏が欲しいな〜〜」

コックピット内で手を振り、 ちぇしゃ笑いを浮かべる3人にカガリは顔を真っ赤にして怒鳴り返す。

「お前らいい加減にし ろっ!」

「うわぁ、カガリ様こわー い!」

「ダメですよ、愛しい彼氏の 前じゃちゃんと可愛く振る舞わないと」

「ああ、でもカガリ様には絶 対無理か、きゃははは」

女3人寄れば姦しい……一 瞬、アスランは横で聞きながらそんな言葉が脳裏に浮かんだが、次の瞬間、唐突に声を掛けられて眼を見開いた。

「アスランさーん…こんな乱 暴者で女らしさが欠片もないカガリ様ですけどぉ、よろしくお願いしますね〜〜」

「あ〜〜でも、遂この前料理 作って迷惑かけたんですよね〜〜〜」

その一言にカガリはぐっと心 底悔しそうに歯噛みする。

「もしカガリ様に嫌気がさし たらいつでも私達に………」

「サービスしますよ〜〜」

口々に言われる言葉にアスラ ンはタジタジになる……元々女性の扱いが下手なアスランはこういった女性の押しに極端に弱く、しろどもになって口ごもる。

「お前ら………後で絶対に泣 かせてやるぅぅぅぅ」

地を這うようなカガリに低い 声にまたもや悲鳴が上がる………その通信回線を開いて聞いていたレイナとリンも頭を抱えそうになっていた。

模擬戦中に舌戦に突入してど うするのだ……と。

模擬戦はどうした……頭痛が しそうで溜め息をついた。

「こんな調子で本当に大丈夫 なのかしら………」

不安と呆れ……そして、次は 必ずもっとキツイ課題を課そうと密かに決めるレイナだった。

そこへ、モニターに接近する 熱量を捉えた。

「敵……じゃないか」

少なくとも連合かザフトなら アメノミハシラからすぐさま連絡が入るはずだ……それに、キャッチされた熱量は戦艦クラスが一つ………

識別は……ジャンク屋組合の ものだ………だが、疑念を浮かべる。少なくともジャンク屋組合からアメノミハシラに来るという連絡は受けていない。

「姉さん……この識別…リ・ ホームよ」

識別信号を受け取り、艦種を 特定したリンが声を掛ける……ロウの乗る艦だ。

だが、何故ロウがアメノミハ シラに……疑念を憶えていたレイナ達の真横の宙域を航行するリ・ホームは真っ直ぐにアメノミハシラへと向かっていく。

「とにかく、一度戻る……カ ガリ、模擬戦はまた次にするわ。それと……口喧嘩なら戻ってからタップリしなさい」

やや憤怒と皮肉を漂わせた物 言いに、カガリらは硬直したように一瞬静まり返り……そんな彼女らを横にレイナはM1Aをアメノミハシラへと帰還させた。

その先にある……アストレイ 達との邂逅を知らず…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《次回予告》

 

 

動き出す世界……アストレイ 達の運命が渦巻く………

着々と集結する連合の艦 隊……

そして……彼らを待つの は……かつての仲間達………

 

 

混迷を切り裂く邂逅が齎すも のは………

そして……混沌する戦場に白 き影が蠢く………

 

 

破滅の使徒たる白き影達 が……………

 

 

次回、「望まぬ追撃者」

 

闇の白き使徒…打ち砕け、 ルージュ


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