艦同士の激しい砲火の応酬が 轟く周辺ではMSの激しい交錯が繰り広げられている。

アルフが吼え、インフィニー トは右手のガトリング砲を放つも、エールパック装備のダガーLや105ダガーは機動性を発揮して回避に徹する。

「ちっ! 少し分が悪いぜ」

思わず毒づく……火力重視の インフィニートでは機動性重視のエールパック装備のダガー相手は辛い。それに、その動きも並みのパイロットのものではない……先程から見てる限り、ダガー が行なうのは恐ろしいほど切れのある回避だ。あんな殺人的な機動を何度も行なっていては、機体よりもまずパイロットが保たなくなる。にも拘らず行なえるの は、パイロットが問題にならないからだ……例のレイナやリンから提出されたデータや鹵獲した機体から解かったインヴェード・ナノマシンというシステムによ り、パイロットは半ば生体パーツと化しているのだ。

そのためにあんな殺人的な機 動ができる……インフィニートはミサイルを発射し、ダガーを追い込む。ミサイルが周囲に炸裂し、態勢を崩すダガーに向けてガトリング砲を放ち、捉えられた ダガーLが粉々に砕け散る。

「はぁぁぁっ!」

すぐ傍の宙域では、メイアの ヴァリアブルがレーヴァティンを振り被り、ゲイツとデュエルダガーに挑んでいた。

ゲイツはビームクローを… デュエルダガーはビームサーベルを展開してレーヴァティンを受け止め、捌く。

振り下ろされた刃をビームク ローで受け止めると同時にゲイツはヴァリアブルに掴み掛かる。体当たりを喰らい、弾き飛ばされるヴァリアブル。

「くぅぅぅっ!」

コックピット内で呻き、操縦 桿を引いて態勢を戻すもゲイツとデュエルダガーはビームライフルで狙撃してくる。

だが、メイアもまたヴァリア ブルのレーヴァティンをロングライフル形態に持ち替え、狙撃する。その威力はビームライフルよりも高く、デュエルダガーのボディを貫き、破壊する。爆発に 怯むゲイツに向かい、再度持ち手を変えて突撃する。

気迫とともに振り下ろされる レーヴァティンの刃にボディをX字に斬り裂かれ、ゲイツが一拍置いたあと爆発する。

その爆発を後退して見届ける と、軽く息を吐き出す…その時、背後に敵機接近のアラートが響いた。

「っ!?」

次の瞬間、ヴァリアブルは背 後から絞め上げられる……振動に歯噛みし、敵機を確認すると…そこにはブリッツの姿……どうやら、ミラージュコロイドを展開していたようだ。それで、ミ ラージュコロイドの索敵レーダーが反応したのだ。しかし、肝心のメイア本人の反応が遅れた。

「くっ…このぉぉぉっ!」

絞め上げられていた腕ではな く、脚部を振り上げて、後ろへと弾き飛ばす……弾き飛ばされたブリッツは態勢を崩すも、すぐさまミラージュコロイドを展開しようとする。

だが、横から飛来したビーム に機体を撃ち抜かれ、爆発する。

メイアがハッと見やると…イ ンフィニートがビームシリンダーを構えていた。

「大丈夫か?」

「ええ…なんとか……それよ り…やっぱ結構手強いな」

通常のMSでさえ、エースパ イロットクラスの能力がある……限界以上に引き出されているために極端な話、敵のMSはどれもがエースパイロットなのだ。

だが、愚痴っている暇はな い……ゲイツや105ダガーが一斉にビームライフルを構 え、放ってくる攻撃を回避し…アルフのインフィニートがガトリング砲を連射して群がってくるMSを狙い撃ち、牽制・撃破していく。

連携の崩れたその隙を衝き、 ヴァリアブルが懐に飛び込み、レーヴァティンを振り被る。振り下ろされた一撃が105ダガーのボディを斬り裂き、破壊する。振り向くと同時にスペクターを 発射し、ビーム刃を展開したアンカーがボディに突き刺さり、爆発するゲイツ。

接近戦を挑むデュエルダガー にインフィニートは機動性を駆使して回避し、距離を取ると同時にミサイルを発射し、動きを止める。ビームシリンダーを発射し、二条のビームが機体を撃ち抜 き、破壊する。

ガトリング砲を戻し、バズー カを構えて発射する……弾頭がバルファスのフィールドに直撃し、本体は無傷でもその反動で推し戻される。そこへ背後に回り込んだヴァリアブルがレイピアを 抜き、頭部を突き刺して破壊する。

離脱と同時にヴァリアブルと インフィニートのバルカンが発射され、集中砲火を喰らい、間接部から火を上げて爆発する。

だが、ヴァリアブルはそのま ま両肩のパッセルを抜き取り、大きく振り被って投げ飛ばす。インフィニートもまたバズーカを正面に構えて発射する。

弧を描いて回転するパッセル はインフィニートの背後に回り込んでいたゲイツに突き刺さり、バズーカの弾頭はヴァリアブルの背後に回り込んでいたダガーLに直撃した。次の瞬間、2機の 後方で爆発が起こる……その閃光を受けながら、アルフとメイアはコックピット内で互いに笑みを交わし、2機は指を立てて互いに意志を確認し合う。

決戦前日まで何度もシミュ レーションで連携を組んだかいがあったというもの。

「ここら辺は終わったな…次 の場所へ……」

《こ、こちら! アポロ小 隊! 敵の反撃凄まじく、突破……っ!》

周辺空域の敵機をほぼ一掃し た二人は次のポイントに向かおうとするも…そこへ緊急コールを告げる通信が飛び込んでくる。

だが、その通信に応える前に ノイズが入り、通信が途切れる。

二人は急ぎ、その最期のポイ ントに向けて加速する……数分後、到着した2機の宙域には、敵機の残骸とともに友軍のデュエルダガーやM1の残骸が浮遊しているのに唇を噛んだ。

「どこだ…っ」

敵機の姿を捜し…周囲を警戒 する二人……刹那…高出力のビームが幾条も降り注いでくる。

「「ぐっ!?」」

舌打ちし、操縦桿を引いて火 線を外す……そして、その攻撃してきた方角を見やると…そこにはシュラークを構えるカラミティと左右に控えるバスターダガーの群………

「っ!? あのエンブレム は……っ!?」

敵部隊の中心に位置するカラ ミティの左肩に描かれた桜吹雪を表わし、そこに刻まれた文字……それは、アルフがよく知る者の名だった。

「レナ……イメリア……」

震える声でアルフが呟き…メ イアが怪訝そうになる……レナ=イメリア率いる桜演武隊……かつての戦友が……今…立ち塞がった………

 

 

その頃……ミナ率いるM1隊 は遊撃隊として奮戦していた。

黒と金のゴールドフレーム天 が宇宙に舞い、右腕のトリケロス改で狙撃する。ビームがシグーのボディを貫き、破壊する。

一斉にゴールドフレーム天に 襲い掛かる105ダガーがビームサーベルを振り上げる。だが、バックパックの蝙蝠のような翼が開き…軽やかにかわす。同時にバックパックのマガノイクタチ が起動し、アンカーが放たれ…105ダガーのボディを突き刺し、串刺す。

刹那、105ダガーが爆発 し…アンカーを引き戻す前に別の105ダガーがビームサーベルを振り被って斬り掛かるも、トリケロス改で受け止める。

「その程度の腕で…私が倒せ ると思うのか……っ」

鼻を鳴らし、左腕のツムハノ タチを展開して振り上げる……鉤爪がボディを弾き飛ばし、頭部のセンサーアイが破壊され、行動不能になる。

だが、一機や二機倒したとこ ろで数は一向に減らない……ゲイツにデュエルダガー、ダガーLが無数に襲い掛かってくる。

軽く表情を顰めるも…そこへ 援護射撃が轟き、数機が撃ち抜かれて破壊される。

後続のM1Aがようやくミナ のもとまで追いついてきたのだ……M1Aが放つビームライフルがデュエルダガーのボディを貫き、ビームサーベルを振り上げてゲイツのビームクローと鍔迫り 合いを繰り広げる。

至る所で火花が散るなか…… グランのM2がゴールドフレーム天に近づく。

「ロンド様、ご無事です か!?」

「大事無い……将兵達よ!  恐れるな! 我らが祖国のため…そして、我らの信じるもののために…その力、存分に発揮せよっ!」

トツカノツルギを持ち、そう 高らかに宣誓するゴールドフレーム天とミナの姿にオーブ軍の兵士達の士気が上がる。

強力な指導者のみが持つ雰囲 気と威厳……そして、それに仕える忠誠心……それらがオーブ軍に反撃の機会を与えていく。

「ハーテッド二佐、6時方向 に敵部隊が密集している…貴様に部隊を任せる! そこを叩け!」

「はっ! M12個小隊!  俺に続けっ!」

鋭く応じ、グランの号令に付 き従い、M1隊がM2に続き、その場を離れていく。

向かう場所にはアガメムノン 級、そしてナスカ級と布陣した部隊……そこへ接近を阻もうと立ち塞がるバルファスにデュエルダガーが一斉にビームを放ってくる。

だが、勢いにのるオーブ軍は 怯むことなく突き進んでいく……ガンナーM1の放つビームがデュエルダガーを貫き、破壊する。

だが、バルファスはフィール ドによって無効化される。

グランのM2はキリサメを構 え、大きく振り被る……振り回された刃がフィールドを展開しているユニットを破壊し、フィールドが消失する。

同時に至近距離でバルカンを 放ち、頭部カメラアイが破損し、爆発する。そのままバルファスの残骸を掴み、大きく振り被って投げ飛ばす。

飛ばされた残骸は同型機に激 突し、爆発する。

「全機! 敵のフィールドは 強力だ! 正面からではなく側面から攻撃しろ!」

バルファスのフィールドは前 方展開……よって、それ以外には強度は変わりない……M1隊は連携を組み、一機が正面から攻撃を仕掛け、注意を釘付けにする。その隙を衝いて僚機が側面に 回り込み、狙撃して機体を撃ち抜く。

だが、バルファスもMMシ リーズだけあり、なかなか思うように攻撃をさせてくれない…動作は機械的だが…それでも機動性は異常に高く、また攻撃も鋭い。

手痛い反撃を受け、行動不能 に陥るM1や撃破されるM1も多い……回り込んできたM1に向けてビームキャノンを構え、側面から攻撃する。

ビームをシールドで受け止め るも、排熱量が追いつかず、表面が融解し、勢いに弾き飛ばされる。

その機体を受け止めるグラ ン。

「無事か!?」

「は、はい! なんとか…」

から返事で答えるも、既にそ のパイロットのM1は左腕の機能が麻痺し、脚部を破壊されている。この状態ではもう戦闘は不可能だろう。

「お前は戻れ…その状態では もう戦闘に耐えんっ」

幸いにすぐ近くにスサノオが 接近しつつある…それなら、無事帰還することができるだろう。

「し、しかし…」

歳若いパイロットはここで脱 落することを不本意に感じているのだろう…これが最終作戦であり、失敗が赦されないというのも解かる…だが、グランはそれを制する。

「命令だ…無駄死にはする な…いいなっ!」

「りょ、了解」

やや低い声でそう怒鳴ると、 被弾したM1はそのまま後退していく……気持ちは解かるが、ここで若い命を散らせるわけにはいかない。

グランのここでの役目は一人 でも多くの部下を生き残らせること……それが、彼の今の誓いだ。

「こい…俺の命、簡単にはく れてやらんぞっ!」

キリサメを構え、群がってく るように迫ってくる敵MS隊に向かって加速する。

バルファスやダガーLが一斉 に砲撃してくるも、その砲火を掻い潜り、懐に飛び込むと同時にキリサメでバルファスの頂点から突き下ろし、貫くと蹴り飛ばし、離脱する。爆発が煌き、周囲 が閃光に包まれる。M2は左手にビームサーベルを抜き、両手の刃を振りながら敵機の密集地帯に飛び込んでいく。

「おおおっっっっ!!!」

凄まじい気迫とともに振り回 される刃がダガーLやバルファスのボディを斬り裂き、次々と沈めていく。

だが、そんな無茶な突撃が長 く保つはずもない……放たれた高出力のビームに咄嗟にシールドを向けるも、排熱できずにシールドが半壊し、その勢いで弾き飛ばされる。

「うぬっ!」

シールドが外れ、態勢を崩 す…歯噛みするM2に向けてソードダガーLがシュベルトゲーベルを振り被って襲い掛かる。

防御も回避も間に合わな い……グランが半ば覚悟を決めかけた時……2体の間に割り込む機影……振り下ろされたシュベルトゲーベルを両腕をクロスさせ、右手の手甲で受け止める。

「はぁぁっおおっっ!!」

叫ぶと同時にその掴んだ刃を 支点に機体を回転させ、蹴りをダガーLのボディに叩き込み、弾き飛ばす。そして、離したシュベルトゲーベルを持ち、相手に向けて投げ飛ばす。

鋭く飛ぶシュベルトゲーベル がダガーLのボディを貫き、爆発する。

その爆発に機体を照り映えさ せながら両腕を脇に構えるGBM装備のM1A……その肩には『神無』と彫られた文字………『拳神』:バリー=ホーだ。

軽く息継ぎをするバリーの M1Aにデュエルダガーがリニアガンを放ってくる……瞬時に身を捻り、攻撃をかわす。照準を追わせるも…デュエルダガーは次の瞬間、ビームにボディを撃ち 抜かれ、爆発する。

バルファスがAIに反応し、 顔を上げると同時にビームキャノンを放つ。その先にはビームライフルを構える白いM2…『煌く凶星J』:ジャン=キャリー。

スラスターを拡げ、鋭い機動 力で幾条ものビームを回避し、螺旋を描くようにバルファスに迫り、翻弄する。周囲を纏わりつくように飛行するM2の機動性にAIの照準が混乱する。

そのために攻撃がやや緩む… その一瞬の隙を衝き、ビームライフルで狙撃し、バルファスを破壊する。

「二佐! ご無事です か!?」

バリーとジャンの登場にやや 呆然となっていたグランもその呼び掛けにハッとすると、アサギら3人のM1Aがスサノオとともに接近してきた。

「コードウェルか…状況はど うなってる?」

合流してきた部隊に現在の戦 線の状況を問い返す。

「はい…今現在、左翼にはイ ズモ及びクサナギがオーディーンの援護に回っています! ロンド様とアルタイル、ヴェガ隊がそちらに回りました! 中央にはネェルアークエンジェルとエ ターナルにシン君とステラちゃん、それにクオルド大尉達とヴァーミリオン隊が就いています!」

ここ右翼はスサノオとグラン 率いるアイゼン隊とアサギ達の属するアサルト隊が布陣している。

「カガリ様達は?」

「はいっ、Gフォースは全て 包囲網を突破しました!」

Gフォースの面々は無事全機 が敵艦隊の包囲網を突破し、ユニウスセブンに向かえた…なら、自分達の役目は次のフェイズまでに敵艦隊を撃破し、艦隊の砲撃ポイントまでの誘導と援護だ。

「よしっ…損傷の激しい機体 をスサノオに誘導! 我らはこのまま敵艦隊を叩く……っ! 散開っ!」

作戦を続行しようとした瞬 間……グランが咄嗟に叫び、アサギ達も半ば反射的に操縦桿を引き、その場から離脱する。刹那…高出力のビームが過ぎり、数機の友軍機が遅れ、爆発する。

「ああっ!」

僚機の撃破にアサギ達が悲痛 な声を上げるも、グランの叱咤が飛ぶ。

「くるぞっ! 全機迎 撃!!」

ここで浮き足立っては間違い なく被害が大きくなる……指揮官はそれを避けるために冷静に徹しなければならない……グランは内心に大きく不甲斐なさを罵りながら敵機を確認する。

「あ、あいつら……っ!?」

ジュリが上擦った声を上げる 先には、幾度となくぶつかったトライ・スレイヤーのストライククラッシャー隊が向かってきた。

「あいつらもあっち側にいっ ちゃったってわけ!?」

その疑念を肯定するように2 体のストライククラッシャーが砲撃し、アサギ達は回避する。それに乗じて急接近するドリルアーム装備のストライククラッシャーがバリーのM1Aに襲い掛か る。

ドリルを捌き、密着状態で繰 り出すデルタクローを左手で受け止める……膠着するなか…コックピット内で口から涎を溢れ出させ、眼を大きく見開いて奇声を上げるワイズだったもの……既 にもうあの見境無しの突撃ではなく…ただ敵と認識したものだけに襲い掛かる。

それを察したのか…バリーは 表情を顰める。

「……哀れだな」

この敵の戦い方には一定の敬 意を持っていたバリーも表情を顰める。膠着を破るように脚を振り上げ、ストライククラッシャーを弾き飛ばす。

「せめて……お前の魂、俺が 解放しよう………」

それが、戦場で拳を交えた者 の務めだとでもいうように……ドリルを振り上げて迫るストライククラッシャーに向かい、バリーのM1Aも加速した。

その横では、グランのM2ら に襲い掛かるカミュとクルツのストライククラッシャー……だが、M2の前に出るアサギ達。

アグニUが火を噴き、ストラ イククラッシャーを牽制する。

「二佐! ここは私達が抑え ます!」

「敵艦隊の方をお願いしま すっ!」

口々にそう叫び、3機の M1Aが分散し、ストライククラッシャーに向かって加速する。

その背中を見詰めながら、グ ランは頷く。

「アイゼン隊、私に続け!  ジャン、お前は私とこいっ!」

「了解!」

戦闘を託し、グランのM2に 続くジャンのM2にM1部隊……それに気づいたカミュのストライククラッシャーはロングライフルを構えるも、させまいとアサギのM1Aがビームライフルを 放ち、牽制する。

「悪いけど…私達の相手して もらうからねっ!」

軽口を叩きながらも、アサギ 達の表情は強張っている……相手の能力は少なくとも自分達より上……しかも相手は限界以上に戦闘能力を引き出させられている。そんな相手に果たして生き残 れるのか……だが、それでもせめて時間稼ぎ…そして……最悪の場合は……

「いくよっ、マユラ! ジュ リ!!」

「うんっ!」

「解かってる!」

アサギの問い掛けに強く頷 き、3機はフィーメーションを組んでストライククラッシャーに立ち向かっていく。

先陣を切るM1AのアグニU とストライククラッシャーのシュラークが放たれ、中央で激突し、火花が散る。

激戦が繰り広げられる空域を 過ぎり……グラン率いる部隊が敵艦隊に迫る。

護衛艦及び駆逐艦の周囲につ くバスターダガーが砲撃してくる……その砲火を掻い潜り、M2のビームライフルがバスターダガーのボディを貫く。そして、ガンナーM1のキャノンが火を噴 き、ビームが駆逐艦の機関部や主砲を破壊する。

刹那、集中砲火を受けた駆逐 艦が轟沈する……その爆発に怯む護衛艦の対空砲火を駆け抜け、M2がキリサメを振り上げる。

「おおぉぉぉっ!!」

雄叫びとともに振り下ろされ たキリサメの一撃が護衛艦のブリッジを斬り落とし、誘爆が引き起こり、護衛艦が爆発に包まれる。

「よしっ! 敵アガメムノン 級を叩く…各機、フォーメーション……っ!?」

刹那、グランのM2に向かっ て4方向からビームが轟き…左手のライフルを破壊される。咄嗟に離し、シールドを掲げて爆発は防いだものの……4方向から同時という奇妙な攻撃に顔を上げ ると…正面には一体のMS………105ダガーが佇んでいる。

「アレは…モーガン=シュバ リエか!?」

前方に佇む105ダガーのボ ディに刻まれたエンブレム…そして……バックパックにワイヤーが戻り、装着されるガンバレル……次の瞬間、ガンバレルダガーの背後から無数の105ダガー が飛び出してくる。

モーガン配下の狂犬部隊…… エールパック装備の2体がジャンのM2に襲い掛かる。

「くっ!」

歯噛みし、スラスターを噴か せて回避するも…2体のエールダガーはビームライフルを構え、グレネードを放ってくる。

鋭く迫るグレネードをバルカ ンで撃ち落とすも、周囲が爆発に包まれる…その爆発を裂いてビームサーベルを振り上げるエールダガーをシールドで受け止める。だが、もう一機が別方向から 迫ってくる…ジャンは持ち前の反応で右手にビームサーベルを抜いて受け止める。2体のエールダガーのビーム刃を受け止める交錯からエネルギーがこもれ る……エールダガーは密着したまま、脚部を振り上げてM2を弾き飛ばす。

コックピット内で呻くジャン は素早く態勢を戻し、距離を取る……ビームの砲火に晒されながらも懸命に回避する。

その周囲では、ソードダガー とランチャーダガー、そしてM1部隊が激突していた。

ランチャーダガーがアグニを 放ち、M1隊を牽制する……態勢の崩れた隙を衝き、懐に飛び込んだソードダガーがシュベルトゲーベルでM1を一閃し、ボディを斬り伏せられ、M1が爆発す る……僚機の撃破に怒りにかられ、ガンナーM1がガトリング砲を放ち、ソードダガーを狙う。

弾丸の嵐にシュベルトゲーベ ルごと右腕を破損させられるも、ソードダガーが加速し、ガンナーM1に掴み掛かる。刹那、至近距離でマイダスメッサーを抜き、コックピットを突き刺す。次 の瞬間、2体は爆発に消える。

互いに激しい戦闘を繰り広げ るなかで…M2とガンバレルダガーが対峙し合う。

対峙しながらグランは冷たい 汗を流していた……モーガンがMIAとなったのは報告されたが…まさか、こうして対峙することになるとは思っていなかった。

「狂犬も…本当の狂犬になっ てしまったか……」

思わずそう吐き捨てる……だ が、実力的にはモーガンの方が高い…それはグランも承知している。だが、ここで退くわけにはいかない……M2は近くを浮遊していたダガーのビームライフル を手に取ると、即座に発砲する。

だが、ガンバレルダガーも軽 やかにかわし、ビームライフルで攻撃してくる…シールドで受け止めながら応戦するも、ガンバレルダガーがガンバレルを展開し、四方から迫るガンバレルの攻 撃にグランは危機に晒される。

縦横無尽に襲い掛かるガンバ レルの軌道を読むのは容易ではなく、機体をビームが掠め、グランは歯噛みする。

「だがっ! 接近すれ ば……っ!」

能力的には不利…だが、あち らは中・遠距離戦闘用…こちらは近接戦闘用の機体…懐に飛び込めば分がある。

ガンバレルの攻撃を掻い潜り ながら、一気にガンバレルダガーの懐に飛び込むM2…キリサメを振り被り、振り払う。

ガンバレルダガーもビーム サーベルを抜いて振り上げる……レーザーとビームが交錯し、火花が散る。

 

 

中央戦線ではネェルアークエ ンジェルとエターナルが艦同士の激しい砲火を咲かせ、その周辺ではミゲル率いるヴァーミリオン隊が敵MSと激突している。

バスターダガーが対装甲散弾 砲を放ち、襲い掛かるミサイルを撃ち落とす…それに続き、ゲイツアサルトがビームライフルを放つ。

爆煙を裂くように撃ち込まれ るビームがその奥にいる105ダガーのボディを貫く。

だが、その爆煙に怯みもせず 突破してくるMS部隊は鋭い機動性で攻撃を掻い潜り、反撃してくる。

ミゲルのゲイツ改もそれらを かわしながら、舌打ちする。

「ちっ! こいつらやっぱ反 則だろうがっ!」

見当違いの愚痴を零しなが ら、レールガンを乱射し、敵機を撹乱する。そこへビーム砲を放ち、ゲイツを撃ち落とす。

《隊長!》

「クオルド大尉殿とファーエ デンは何処いった!?」

先程から姿を見かけないイン フィニートとヴァリアブル……あの二人が簡単に墜ちるはずもない……それに対し、ヴァーミリオン隊のデュエルダガーのパイロットが上擦った声で応じる。

《現在、COψグリーン5に て敵MS部隊と交戦中です!》

その答えにまたも舌打ちす る……正直、あの2機がこの場にいないのはキツイ……だが、愚痴っても事態が変わるわけでもなく、気を取り直す。

「ヴァーミリオン3から6、 11、13はエターナルとネェルアークエンジェルの援護に回れっ!」

あちらも艦同士の砲火の応酬 が激しく周囲のMSにまで気が回らないはずだ……苦しいが、ここは部隊を分断しなければならない。

「残りは俺と一緒にここで敵 機を迎撃だ! いいか、怯むなよっ!」

《了解!》

一斉に散らばるヴァーミリオ ン隊…ミゲルの激励に応え、バスターダガーとデュエルダガー数機とM1隊が身を翻し、戦艦の援護に向かう。

「いくぞっ! 俺達の役目は ここで踏ん張ることだっ! 連中に遅れを取るなよっ!」

敵中枢へと突入していった仲 間のためにも……ここで自分達が倒れるわけにはいかない……ミゲルのゲイツ改に続くようにデュエルダガー、ゲイツアサルトが加速する。

デュエルダガーのリニアガン とミサイルランチャーが発射され、敵ダガー部隊を分散させる。分散したダガーLはバズーカを放ち、弾頭をゲイツアサルトが撃ち落とす。

ミサイルを一斉射し、何十発 というミサイルが迫り、ダガー部隊に被弾する。

ビームサーバーを展開し、同 じようにビームサーバーを振り上げるバルファスと斬り結ぶ。

「喰らえっ!!」

ゲイツ改が一斉射し、バル ファス2機を撃ち抜き、破壊する。ファトゥムの機動性を活かし、高機動を行いながら右手にラケルタビームサーベルと左手のビームクローを展開し、急加速で 敵機に迫る。

振り被ったビームサーベルで ダガーLのボディを斬り裂き、それに続けてビームクローを突き刺すと同時に機体を蹴り、反動で脱出する。

刹那、ダガーLが爆発す る……だが、横殴りのごとくビームを放ってくるバルファスに歯噛みする。

「ちぃぃぃっ!」

操縦桿を切り、ボディをずら し、ビームを捌く…そして上昇し、上を取ってレールガンを連射する。

バルファス2機はフィールド を展開してレールガンの弾丸を全て弾く。

「ヴァーミリオン8!」

ミゲルの言葉に反応し……バ ルファスの背後に迫る機影………シンの駆るフリッケライがブースターを噴かし、突進する。

「うぉぉぉっ!!」

気迫とともに突き付けられた リボルビングスピアーがバルファスのボディを貫き、引き抜くと同時に爆発する。振り返ったバルファスに向けて左手のガトリング砲を至近距離で連射し、カメ ラアイを粉々に撃ち砕く。

バルファスを撃破したフリッ ケライに向かい、105ダガーやゲイツが一斉に襲い掛かるも、フリッケライはリボルビングスピアーを翳して突撃する。

猪突猛進のような戦い方だ が、シンにはいちいちの小細工ができるほど戦闘に熟知しているわけでもないので、仕方がないといえば仕方がない。

スピアーをゲイツの頭部に叩 きつけ、頭部をひしゃげさせて蹴り飛ばす。背中を見せるフリッケライにビームライフルやバズーカが一斉に放たれる。

歯噛みするシン…そこへ割り 込む影がバックパックを展開し、次の瞬間、2機は爆発に包まれるも……爆煙が晴れた後からは、エメラルドグリーンに輝く光の球体に包まれたフリッケライと ハイペリオンの姿が現われる。

アルミューレ・リュミエール のなかでフォルファントリーとタクティカルライフルを構えるハイペリオンとフリッケライ……トリガーを引き、ビームが光の壁をすり抜け、接近していたダ ガーやゲイツを吹き飛ばしていく。

瞬く間に周囲の敵機を一掃 し、アルミューレ・リュミエールを解除する……浮遊する2機に近寄るゲイツ改。

「お前ら、無事か!?」

「は、はい」

あれだけの敵機に囲まれてい たが、ハイペリオンのおかげで特に目立った損傷はない。

「そうか…よしっ、んじゃ次 の敵に……って、よけろーっ!」

ハッとミゲルが叫ぶと同時に ゲイツ改が身を翻し、フリッケライはハイペリオンを掴んでその場から離脱する。

刹那…強力なビームが過ぎ り、浮遊していた残骸を吹き飛ばす。

「新手かよ…っ!? って、 ストライクにデュエル…っ!?」

視線を向けた先にいたのは、 ストライクにデュエル2機……連合のGシリーズの中央にはそれとは違う機体……

「ありゃ確か…衛星軌道で見 た新型じゃねえか……おいおい、冗談じゃねえぞ」

中央に浮遊していたのは、衛 星軌道で見た機体……連合の新型機:エインヘルヤル……報告では、リンも手を焼いた程の腕……どうやら、その相手が今の攻撃をしてきたようだ。なんとも嫌 な相手にぶつかったと内心毒づくも、事態が好転するわけでもない。

「お前ら…迂闊に……っ!」

シンとステラは正直荷が重 い…そう考えたミゲルは二人の周囲のGシリーズを任せようとした矢先…G部隊が一斉に飛び立ち、ストライクとデュエルがゲイツ改に襲い掛かってきた。

ビームサーベルを振り払うス トライクを後退して回避するも、横からビームで攻撃してくるデュエルにゲイツ改はその場より突き離される。

リーダー機の引き付けによ り、その場でエインヘルヤルと対峙せざるをえなくなったフリッケライとハイペリオン……既に傀儡と化している彼らも戦闘の手段としては理解しているの か……コックピット内でユウは虚ろな眼を上げる。

「ターゲット……ロック…排 除……開始………」

その声はもう…機械的な信号 以外のなにものでもなかった……集団戦闘の定石である弱い相手から確実に減らしていくという戦い……エインヘルヤルは収集したデータから技能が低いと確定 した2機にターゲットを絞った。

反射的に両腰部のレールマシ ンライフルが火を噴く。ばら撒かれるように放たれる銃弾にハイペリオンが光波シールドを展開してフリッケライを護る。タイミング的に覆うのは間に合わず… 両手のシールドを展開し、その弾丸を防ぐも…周囲の残骸が撃ち抜かれ、爆発が2機を包み込む。

「「くぅぅぅぅっ!!」」

周囲から襲い掛かる爆風に コックピット内で呻く。

その間にもエインヘルヤルは 両腕のビームサーバーを展開し、一気に加速する…懐に春秋に飛び込み…大きく振り被る。

「え……?」

防御に気を取られていたため に、反応の遅れたステラ……次の瞬間、鋭い衝撃がコックピットを襲う。

「いやぁぁぁっっ!」

叩き飛ばされ……悲鳴を上げ るステラにシンの方も過剰に反応してしまう。

「ステラ…っ!?  がぁっ!」

気を逸らされたためにできた 隙を衝かれ、エインヘルヤルはフリッケライに蹴りを叩き込み、弾き飛ばす。同時にブラスタービームキャノンを展開し、放つ。

真っ直ぐの伸びるビームに弾 かれるフリッケライは無防備……直撃するとシンが迫る光状に息を呑むが……下方より放たれたビームが伸び、直前で激突し、相殺される。

ようやく態勢を戻したシンが 見やると……先程弾き飛ばれたハイペリオンがビームマシンガンを構えていた。

シンがステラの無事に安堵す るも…エインヘルヤル内でユウは独りごちる。

「ターゲット破壊…ミ ス………排除…続行………」

機械的な口調のまま……エイ ンヘルヤルは再度加速する……それに睨むシン…彼は知らない……眼前に立ち塞がる相手も……自身が護ると誓った者と同じだったということを………知ら ず……相手もまたそんな境遇を嘆く感情さえ、喰われてしまった哀れな人形に二人は立ち向かっていく。

 

 

 

一進一退の攻防が繰り広げら れる戦闘を背中に……戦闘宙域を突破したインフィニティらGフォースの面々はユニウスセブンへとひたすらに向かっていた。

彼女らを行かせるために、今 激戦を繰り広げている仲間達の戦闘を背中に受けながら……彼女らは仲間のためにただ突き進むだけ………

ユニウスセブンに辿り着くま であと少し……モニターには、その巨大さを知らしめるように大きなコロニーの残骸が映し出されている。

これが地球に落ちたら…そう 考えると薄ら寒いものが背中を這う………だが、すぐに意識を切り替える。

レイナは周囲の気配を探 る……先程の艦隊にはルン達は愚か、エンジェルやウォルフらの姿も見つからなかった……なら…この先に待ち構えているはずだ……闇に潜み…闇に紛れて…… ひたすらに気配を探っていたレイナは正面から襲い掛かる殺気に気づいた。

刹那…前方から巨大なビーム の奔流が襲い掛かる。

「くっ!」

歯噛みし…咄嗟にフェンリル を発射し……相殺するも、それだけでは熱量全てを防げず、閃光は拡散し、向かってくる。

舌打ちし、インフィニティは デザイアを掲げてウェンディスを展開する……左右に拡がる翼が盾となり、拡散したビームを防ぐ。

その後方につくリン達はそれ に護られながらもシールドで防御する。

「奴らか…っ!」

眼を見開くリン……やがて、 ビームが拡散し……動きを止めた彼らの前に姿が現われる。

闇のなかに浮かび上がる白い 影……天より遣わされし破滅を齎す使徒………無数の天使達がその場に現われる。

「おい、ありゃ例の奴らじゃ ねえか…!」

ディアッカが声を上げた先に は、カラミティ、フォビドゥン、レイダーの姿……そして、それを率いるように立つ機体にムウが眼を細めた。

「ラウ=ル=クルーゼ……」

低い声で宿敵が乗るプロヴィ デンスを睨む。

周囲を覆うように展開する天 使達の奥から……哄笑が響いてくる。

「アハハハハ……よく来たわ ね………待っていたわ………お前達をね……」

鋭い……冷たさを漂わせる 声……それに続くように天使達のなかから姿を見せる純白の機体……

「っ!?」

「ガルド…いや……テル スっ!」

リーラが息を呑み、イザーク がギリっと奥歯を噛み締めるようにその現われた巨大な四肢を持つMS:ウリエルを睨む。

「……アディン」

ルシファーのコックピットで カムイがポツリと呟く。

ガブリエルのすぐ傍に現われ る漆黒の傀儡…ヴァニシングと、ジャスティスに似通った形状を持つ例の機体…そして、アクイラの駆るラファエル………

そして……その中心に佇む機 体………キラ、リン…レイナにとって深い因縁を持つ者……

「…ルン……ウォル フ………」

純白の騎馬メカに跨った天使 達の長…ミカエル………そして、狂気に狂う鮮血をその身に浴びし双竜…ゲイル………

 

――――レイナとリンのク ローンであり…妹………

――――レイナの母親の伴侶 のクローンであり……キラの父親のクローン………

 

 

今……運命に導かれし宿命の 者達……それらが全て邂逅した…………

運命の刻というステージの上 で…………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

《次回予告》

 

 

運命……

それはこの世界に生まれし者 全てに課せられたもの……

その運命の糸に手繰り寄せら れ……宿命の相手と交錯する………

 

望まぬ戦い…望まぬ決着………

一人…また一人と戦場に散る命………

戦場を駆け抜ける砲火は…散 り逝く者への鎮魂歌か……それとも………

 

 

全ての運命を背負い…決着を つけるために…………

黒衣の堕天使は巡り合 う………

自らの運命をこの世界に齎し た者に………

 

 

次回、「鎮魂歌(散りゆく魂へのレクイエム)

 

その屍を超え…舞い戦え、 オーディーン。

 


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