双方の戦場で激戦が繰り広げ られるなか……Gフォースもまた天使達と激しい攻防戦を繰り拡げていた。

天使が一斉にドラグーンを展 開し、攻撃するなかを分散し……インフィニティはデザイアを振り被り、トリガーを引く。放たれた連装ビームが数機を貫き、破壊する。だが、爆発に怯むこと なく向かってくるエンジェルは至近距離でランチャーのガトリングを放ち、ウェンディスを羽ばたかせ、離脱する。上を取ると同時にヴェスヴァーで狙い、頭部 とボディを貫き、爆発させる。

だが、インフィニティの後ろ を取るエンジェル…レイナが舌打ちし、振り払おうとするが…エンジェルはそれより早く双斧刀を振り上げる。次の瞬間…横殴りに撃ち込まれたビームに両腕を 破壊され、態勢を崩すエンジェル…間髪入れずバルカンを至近距離で連射し、破損部分や間接部に被弾し、粉々になる。

顔を上げ、今の援護をしたエ ヴォリューションに感謝を述べると、エヴォリューションもイーティアZEROの上に飛び乗り、高速状態で敵に突入していく。

ドラグーンと同じくリンの意 志に応じて機動・攻撃するミーティアZEROのビーム砲が火を噴き、エンジェルを牽制する。その隙を衝き、スコーピオンを発射し、アンカーがエンジェルの 頭部を掴み、それをミーティアZEROの急速方向転換の力を利用して引き寄せる…刹那、頭部が捥ぎ取られ、爆発する。

そして、もう一機に向かい レールガンを乱射し、吹き飛ばすと同時にヴィサリオンで撃ち砕く。ドラグーンを一斉射するエンジェル…網目のごとく放たれるビームの膜の間隙を縫うように 飛行し、右手にインフェルノを抜き……加速にのってエンジェルに突撃する。

エンジェルの横を駆け抜ける 瞬間、幾条も一閃が煌き……エヴォリューションが過ぎった瞬間、エンジェルがバラバラに斬り裂かれ、爆発する。

エンジェルの放つランチャー をデザイアで受け止めるも、その威力に僅かに押される……歯噛みする間もなく、ミサイルを発射し、周囲で炸裂させ、相手の体勢を崩した瞬間…フェンリルを 構え……トリガーを引いた。

真っ直ぐの伸びる光条がほぼ 直前にいたエンジェルを跡形もなく吹き飛ばし、その閃光が伸び、過ぎった瞬間に幾つもの爆発が咲き乱れる。

そして、その周辺でもエン ジェルと仲間達が激しい砲火を交わし、それぞれの因縁の相手に相対していた。

カラミティがスキュラを放 ち、メガバスターを狙う。

「なんのっ!」

だが、バックパックに追加さ れたリフターのおかげで以前よりも機動性を増したメガバスターはそれをかわし、お返しとばかりにアグニUを発射する。対し、カラミティもシュラークを発射 し、ビームが中央でぶつかり合い、火花が散る。

「ひゃははは! 面白れえ!  面白れえ!! ひゃははは!!」

心底愉しそうに叫び、オルガ という個体だったものは、トリガーを引き続ける。連射されるシュラークが照準もつけず、ただ正面に撃ち込まれる。それらの火線はメガバスターだけでなく周 囲のエンジェルにも僅かに被弾し、ディアッカは毒づく。

「おいおい! トチ狂ってん じゃねえぞ!!」

リフターのミサイルを開放 し、ミサイルが一斉に放たれる……弧を描くように発射されるミサイルが一斉に襲い掛かるも、カラミティはスキュラを連射し、広域に拡散させてミサイルを撃 ち落とす。

そして、爆発に飛び込み…爆 煙で視界が僅かに覆われたメガバスターの前に飛び出し、トーテスブロックを発射する。

だが、メガバスターはガトリ ング砲を連射し、弾頭を叩き落とし……爆発が2体の間に満ちる。

そのすぐ横では……ブリッツ ビルガーとフォビドゥンが激突していた。ヴェルヌを駆るブリッツビルガーのビーム砲が発射されるも、フォビドゥンはリフターを展開し、ゲシュマイディッ ヒ・パンツァーでビーム偏光させる。

やはり、正面から攻撃は分が 悪い…その時、衝撃がコックピットを襲う。ハッと振り向くと、後ろに回り込んだエンジェルが双斧刀でヴェルヌのエンジンを斬り裂いていた。

片方のエンジンが爆発し、動 きが鈍る……ニコルは強引に機体を捻り、大型ビームサーベルを振り薙ぎ、エンジェルを一閃するも…斬り裂かれたエンジェルはアームに掴み掛かり…眼を見開 くニコルの前でエンジェルが閃光を発し……次の瞬間、左腕アームごと吹き飛んだ。

「うわああっ!」

吹き飛ばされた、態勢を崩す も…その隙を衝いてフォビドゥンが斬り掛かってくる。

いくら意志はないといって も、機械と直結されているために機体特性とさらには限界知らずの機動を行い、ニーズヘグを振り上げて加速する。

「くっ!」

ニコルは歯噛みして引き上げ た右腕アームで受け止め、鍔迫り合いになる…だが、パワーで押され始める。

「くたばれくたばれくたばれ くたばらぁぁぁぁぁ!!」

機械のごとく何度も繰り返 し…押し切ろうとするシャニの人形……押し切られようとした瞬間、ニコルは操縦桿を引いて機体を逸らし…相手の加速を流した……膠着していた力が突然流さ れ…そのまま前へとのめり込むように過ぎるフォビドゥン…その背中にスティンガーを飛ばし……背中に直撃し、弾かれる。

だが、吹き飛ばされながらも フォビドゥンはリフターを被り、フレスベルグを連射する。

湾曲するビームの軌跡に晒さ れ、偏光したビームがヴェルヌを貫く。

「っ!? いけないっ!」

今の一撃はヴェルヌの核エン ジンを掠めた…これでは間もなく爆発する……ニコルは咄嗟にヴェルヌをパージし…ヴェルヌを自動制御で加速させる。

加速するヴェルヌがフォビ ドゥンに真っ直ぐ突撃するが……フォビドゥンはフレスベルグとエクツァーンを連射し、その光条がヴェルヌを貫き…ヴェルヌが眩い閃光を発する。

咄嗟に、ニコルは閃光に紛れ てミラージュコロイドを展開し……ブリッツビルガーの機体を粒子が覆い、その姿を宇宙に溶け込ませていく。

完全に消え去ったブリッツビ ルガーにフォビドゥンが動きを止め……シャニは魚のように眼を縦横無尽に動かし、その姿を捜す……次の瞬間……ほぼ眼前に影が揺らめき、反射的にニーズヘ グを振り上げる。

姿を現わしたブリッツビル ガーは両手の対艦刀を連結させ、大きく振り被る。

振り下ろされた刃と振り上げ られた刃が交錯し、甲高い金属音が鳴り響く。

同じくヴェルヌを駆り、エン ジェルとの戦闘を繰り広げるイージスディープ…だが、やはり巨体分動きが遅い……エンジェルは機動性と小回りをいかした戦闘を仕掛けてくる。このヴェルヌ の弱点を見事に衝いてくる。

一斉にドラグーンを放ち、幾 条ものビームが掠め、ヴェルヌが撃ち抜かれる。

「まずっ!」

瞬時にドッキングをパージ し、MA形態へと変形して離脱をかける。だが、ただではないとばかりにエンジェル一機に噛み付き、零距離からスキュラを放ち、ボディを蒸発させる。刹那、 ヴェルヌが爆発した。

その爆発に彩られるなか… MS形態となり、ビームライフルで狙撃する。やはり、身軽な方が動きやすい…その時、弾丸の嵐が降り注ぎ、シールドで防御する。

攻撃を加えてきた相手は、黒 い怪鳥……レイダーが右手の2連装防盾を連射してくる。

ラスティは舌打ちし、機体を 変形させる。イージスディープとレイダーが変形し、MA形態で機動飛行を行いながらインファイトを繰り広げる。だが、レイダーの機関砲をイージスディープ が必死にかわす。

レイダーに比べて、この形態 での武装はスキュラとあとは近接用のビームクローのみ……前者は機体のエネルギーを大量に喰い、後者は接近しなければ効果がなく、厳しい状況だ。

反転し…ビームクローを展開 してレイダーに向かって加速する……相手もまた機関砲を放ちながら向かってくる。機関砲に晒されながら、ラスティとレイダーの眼が交錯した瞬間、イージス ディープの装甲が僅かに融解し、レイダーの装甲が抉られていた………

交錯して距離を取ると同時に MS形態になり、互いに振り向く。

「はっはっはっ! いやっは あっ!」

獣のように吼え、涎を満悦さ せながらレイダーのツォーンが火を噴き、イージスディープのビームライフルが放たれるも、熱量の差が大きく、中央で激突した瞬間、ビームが掻き消され、 ツォーンのビームがボディを掠める。

「くっ!」

歯噛みするラスティに向か い、レイダーは再度MA形態になって突撃してくる。

「必殺! クラッシュッ ドォォォォォンンン!!!」

怪鳥が凄まじい加速で突撃 し……イージスディープは直撃を受け、弾き飛ばされた。

いくら物理的ダメージには最 高を誇るPS装甲でも内部はそうはいかない…激しい振動にシェイクされるコックピット内でラスティは呻く。

浮遊するデブリに激突し、な んとか動きは止まったが……身を強かに打ちつけ、苦悶している。そこへ再度アラートが鳴り……咄嗟にシールドを引き上げると、ミョルニルの鉄球が鋭くぶつ かり、シールドが弾き飛ばされる。

ミョルニルを引き戻し、再度 狙いをつけて発射する……ラスティはそのスピードを読み……イージスディープの両手のビームサーバーを展開し、タイミングを合わせてミョルニルに振り下ろ し……鉄球が真っ二つにされる。

メガバスターとカラミティ… ブリッツビルガーとフォビドゥン…イージスディープとレイダー……ともに、同系統のカスタム機と次世代改良機……きょうだいとも取れるMS達は、己が主の 信念とともに……哀れな機械人形となった主のために……その身を削り、火花を散らす。

各個バラバラに行動するなか で…シホのシュトゥルムは単機で無数のエンジェルを相手にしていた。

「そこっ!」

ビームライフルを放つも、エ ンジェルは悠々とかわし…シホは歯噛みする。

「っ! 速い……っ!」

そのあまり非常識な機動性能 に圧倒される……シュトゥルムの反応を持ってしても捉えられない。せいぜい牽制がいいところ……だが、シホは懸命にトリガーを引く。

連射し、エンジェルを牽制す ると同時に両肩のブラストビームキャノンを展開し、発射する。巨大な熱量が解き放たれ、エンジェルに襲い掛かるも……エンジェルは腕の光波シールドで受け 止める。

だが、熱量が大きすぎ、周囲 に拡散した余熱が機体を焼く……それによって動きの鈍る機体に向けてビームライフルを放ち、撃ち抜く。

「やった……うあっ!!」

ようやく一機墜として声を弾 ませるも、敵は無数にいる……一機墜として喜ぶのは早い。まだ戦士としての経験が不足しているシホは油断してしまい、その隙を見事に衝かれた。

被弾して態勢を崩すシュトゥ ルムに向かい、エンジェルらが一斉にドラグーンを展開し、四方からビームを浴びせる。

シホはすぐに態勢を立て戻 し、両肩のルフレクトシールドで防ぐ。

振動に歯噛みするも……エン ジェルは双斧刀を振り上げて眼前に迫り…反射的にトライデントを引き抜き…カウンターの要領で叩き込む。

ボディを貫かれ……動きを止 めるも……そこへ他のエンジェルが一斉にライフルを構える。

ビームとビーム弾丸の嵐が降 り注ぎ、シュトゥルムは爆発に晒される。

「きゃあぁぁぁっ!!」

シホの悲鳴を糧とするよう に……白き天使達は不気味な様相のまま攻撃を行なう。

 

 

エンジェルのドラグーンが狙 い撃つなかを鋭い機動で回避する白い機影:ストライクテスタメントは網目のようななかを掻い潜る。

ムウの持つ持ち前の反射神経 と先のクルーゼとの戦いでドラグーンの特性をある程度だが経験したためになんとか対処できているが、それでも殺人的な小刻みな機動を幾度となく行なうのは パイロットに相当の負担が掛かる。

だが、ムウは歯噛みしながら もそれに耐え…ドラグーンを展開する。

「いけっ!」

ムウの意志に従い……ストラ イクテスタメントより離脱するドラグーンは鋭く周囲に舞い、小刻みに動きながらビームを放ち、エンジェルのドラグーンを撃ちぬいていく。撃ち落とされるド ラグーンに怯むエンジェルに向かい、一気に加速する。

「おおおっっ!」

加速と同時にオクスタインの ビームサーベルを展開し、懐に入り込むと同時に振り下ろし、エンジェルを一閃する。

縦に走る剣撃の跡が光を放 ち、エンジェルが爆発する……それを見届ける間もなくムウは次の目標に向けてオクスタインを発射する。

ビームの光条をエンジェルは シールドで受け止め、拡散させる。

「ったく! 厄介なもんだよ なっ!」

まさに攻防に優れた機体…… 今更ながら厄介な相手だと毒づく。

遠距離戦であれを攻略するに は膨大な熱量を持って強引に突破するか、懐に飛び込んで攻撃するかのどちらかだ。

しかし、もう一つある…ムウ はオクスタインを連射し、エンジェルを狙うもシールドに阻まれる。その状態にムウは笑みを浮かべる。

「もらったっ!」

刹那…エンジェルの周囲を包 囲するように展開したドラグーンが一斉に攻撃し、シールドを展開部分以外から撃ち抜かれ、爆発する。シールドをこちらに向けて固定させ、ドラグーンで狙 う……これなら、多少の集中力を擁するが攻略は可能だ。

エンジェルを相手しながらム ウは周囲の敵機に視線を走らせる……そして…奴を捜す。

「何処だっ!? 何処にい る、クルーゼっ!?」

先程の集中砲火のなか、周辺 に分散した友軍と敵機……そのなかで、ムウは宿敵の駆る機体を必死に捜していた。

たとえ奴がもう奴ではなく なったとしても……奴自身が存在し続ける限り、自分は奴を討たねばならない…それはムウにとっての使命だ。

ガトリング砲を放つエンジェ ルの攻撃をシールドで防ぎ、一瞬の隙を衝いてオクスタインを放ち、ボディを撃ち抜く。

次の敵機に注意を向けた瞬 間……ムウのなかにあのザラリとした感覚が走った。

「ぐっ!」

ほぼ反射的に操縦桿を切り… その場から身を翻した瞬間、ストライクテスタメントの周囲を幾条ものビームが掠める。

エンジェルのドラグーンでは ない……このドラグーンの切れは、奴だ………そして…ムウは意識を集中させ……感覚が捉えた方角に向けてビームを放つ。

ビームが放たれた方角…その ビームをシールドで防御し、受け止める鈍い輝きを放つ機体……バックパックに後輪のように突起物がドッキングし、佇む………

「クルーゼっ」

睨むように見るムウの視線の 先に佇むのは、哀れなピエロ…ラウ=ル=クルーゼの駆るプロヴィデンス……姿を確認すると同時にプロヴィデンスはビームライフルとシールドを構え、砲撃し てくる。

舌打ちしてそれをかわし、応 戦する……ビームを撃ち返す。

「ムウ……ムウ=ラ=フラ ガ! 素晴らしい! 素晴らしいよ! これこそ私の望み! これこそ私の理想! 私の真実!!」

高らかに叫び上げるクルーゼ にムウが眉を寄せる。

「クルーゼ! 貴様、まさ か……っ!?」

そんなはずはないと思いつつ も、それを肯定するようにプロヴィデンスはビームサーバーを展開し、斬り掛かる。

ストライクテスタメントも ビームサーベルを展開して振り上げ、ビームが交錯し合い、エネルギーがスパークする。

「私は選ばれたのだよっ!  今! この瞬間…神になっ!?」

クルーゼは己の意志を保って いた……それがムウを驚愕させる。

哀れなピエロとして三文作家 から役者に成り下がったはずの道化は、神の祝福を受けた……吼える天帝に、ムウは戸惑い…そして……宿命に翻弄されし二人の男は激突する。

そして……ストライクテスタ メントとプロヴィデンスの激突を右眼のインターフェイスに浮かべ、笑みを浮かべるウェンドはほくそ笑み、眼前で翻弄されている機体を見やる。

悪足掻き……彼の視点からは そう見える行為を繰り広げるジャスティス、アカツキ、マーズの3機……

ジャスティスはミーティアを 駆り、大型ビームサーベルでエンジェルを狙い、大きく振り被って一閃する。

だが、やはり巨体故に反応が 鈍い……対MS戦用にはできていない。

ミサイルを発射し、牽制する と同時にビームサーベルを振り上げ、勢いよく加速し、ビーム刃をエンジェルに叩きつけた。

機体を真っ二つにされ、爆発 する。だが、エンジェルのランチャーが発射され、後部エンジン一基を破壊され、振動が襲う。

舌打ちし、態勢を立て直そう とするも、それを見逃さず、一気に懐に飛び込み、双斧刀を振り上げ、アームを斬り裂く。

続けての被弾に立ち往生する ジャスティスに向かって一斉にドラグーンが放たれる。

幾条ものビームがミーティア を撃ち抜き、アスランは歯噛みしてドッキングを解除する。

抜け出たと同時にミーティア が爆発し、ジャスティスはビームの間隙を縫うように加速していく。

強襲機であるジャスティスは その高速性を駆使し、素早い動きでエンジェルを翻弄しながら一瞬の隙を衝き、フォルティスで機体を撃ち抜く。流石に実戦慣れしているだけあってアスランの 動きはキレがあるが、ラクスやカガリはそうはいかない。

特にラクスのマーズは砲撃支 援機……機動性が高いエンジェル相手では分が悪い。半ばその場に機体を固定しての砲撃で相手を狙い撃つ。

ジークフリートとウラヌスを 振り上げ、高出力のビームとビーム弾が一斉に発射され、エンジェルを狙う。エンジェルは回避するも、その弾幕に迂闊に近寄れない。だが、エンジェルはドラ グーンを展開し、遠距離から狙い撃つ。四方から襲いくるドラグーンの機動ポッドの動きをラクスは眼を動かし、その軌道を読む。

「させませんっ!」

両肩のシヴァU、そしてミサ イルポッドが一斉に開放され、周囲に弾幕を張る。その間隙もない程の弾幕に晒され、ドラグーンが撃ち落とされる。

そして、周囲が激しい閃光に 包まれ、エンジェルが目標を一瞬見失う……だが、閃光の内から飛来したビームがエンジェルのボディを貫き、爆発させる。

閃光が収まった後から姿を見 せるマーズはバックパックのフォルティスUを構えていた。

煙を上げる砲口にラクスは微 かに呼吸を乱す。

「はぁ、はぁ……」

これだけの火器運用と敵機の 動きを読むのは想像以上に集中力を擁し、ラクスは疲労を負う。だが、すぐに呼吸を呑み込み、再度ウラヌスを構え、ガトリング砲で砲撃する。

それらを回避しながら、エン ジェルは一気に距離を詰めてくる。遠距離戦は効果が薄いと踏んだようだ……鋭い機動とシールドで攻撃を回避、防御しマーズにとって死角である接近戦を仕掛 けてくる。

近づけさせまいと必死に応戦 するも、エンジェルもそれでどうにかなるほど甘い相手ではない。何機かが被弾し、動きを鈍らせるもそれらを盾にして突破してきたエンジェルがマーズを蹴り 飛ばした。

「きゃぁぁぁぁっ!!」

激しい振動に吹き飛ばされる マーズ…コックピットで呻くラクス……ラクスは衝撃に呻きながらもレバーを押し、バーニアを噴かしてなんとか機体重心を戻す。

よろめきながらもなんとか態 勢を戻すが……再度急接近してきたエンジェルが双斧刀を振り被る。

息を呑むラクスはウラヌスを 引き上げて受け止める……止められた刃を力で押し切ろうとするエンジェル……だが、ラクスはマーズのビームガトリングガンを発射し、硬直していたエンジェ ルはよけ切れず、粉々に砕かれて弾かれる。

爆発するエンジェル……呼吸 を乱すラクス……動きもおぼつかない状態に、一斉に放たれるビーム……ラクスが眼を見開く。

その時、マーズの前に金色の 機影が割り込む。

正面に立つ機体が己の五体を 盾とし、マーズを庇う……撃ち込まれたビームが金色のボディに着弾した瞬間、ビームが周囲に拡散する。

「大丈夫か、ラクス!」

「カガリさん、助かりまし た」

真剣な声を掛けるカガリにラ クスは微かに安堵する。

だが、気を抜くのは早い…… カガリはキッと前を見据え、操縦桿を握る。

この機体には、自分だけでは ない……オーブの遺志が託されている……だからこそ、それに恥じるような無様なことはできない。

カガリは敵の注意を自分に引 き付けさせるために、ペダルを踏み込む……バックパックに装着されたIWSPストライカーUのスラスターとバーニアが火を噴き、金色の機体:アカツキは加 速し、敵のなかへと突入していく。

アカツキは脇に装着された二 対の対艦刀を掴み、引き抜く……長刀と小太刀………両刃にレーザー刃が展開され、アカツキはエンジェルに向かって斬り掛かる。

急接近するアカツキにエン ジェルも双斧刀を構え、振り上げる。アカツキが振り下ろした刃を受け止めるも、カガリは至近距離で単装砲を発射し、エンジェルの頭部を粉々に撃ち砕く。同 時に小太刀でボディを斬り裂き、離脱する。

爆発を見据えながら、レール ガンを発射し、敵機を牽制する……エンジェルは回避するも、ドラグーンで狙い撃ってくる。だが、戦艦クラスのビームの熱量ならいざ知らず、この距離での生 半可なビームはアカツキの装甲により無効化される。

遠距離攻撃の効果が薄いと即 座にデータとして処理したエンジェルは接近戦に切り替える。双斧刀を振り上げながら襲い掛かるも、アカツキは左手の小太刀を小刻みに動かして受け止める。 軽量のために小回りがきき、密着した状態でも融通がきく…そして、相手が踏み込んできた瞬間を狙い、右手の長刀で突き刺す。

迂闊に接近しすぎていたエン ジェルはボディを貫かれ、爆発する……呼吸を乱しながら、カガリはこの機体と今の自分に鍛え上げてくれたレイナ達に心のなかで感謝を述べる。

だが、僅かに気が緩んだ隙を 衝き、背後に回り込むエンジェル…カガリが息を呑む……だが、そこへビームが撃ち込まれ、エンジェルが被弾する。

驚いてカガリが見やると、 ジークフリートを構えるマーズの姿…そして、ラクスの声が響く。

「油断大敵ですわ、カガリさ ん」

軽く嗜めるように呟くと、ア カツキの横につく。

「さあ、参りましょう…敵の 牽制は私が……」

「ああ、解かった!」

意図を察すると同時に離脱 し、マーズがミサイルを一斉射し、周囲のエンジェルを狙い、炸裂する。その爆発に動きを抑制されるエンジェルにアカツキが爆発から飛び出し、対艦刀で斬り 裂く。

軍神の銃神と金色の獅子の牙 を誇り、少女達は戦場を駆け抜ける。

そして、それに負けじと奮戦 するジャスティス……ビームライフルを懸命に放ちながらエンジェルのドラグーンを撃ち落とす。

高速で動き回るそれらを撃ち 落とすのは相当の技量を要する……アスランは歯噛みしながら必死にそれらの軌道を読み、撃ち落としながら突破口を開き、敵機の懐に飛び込んでいく。飛び込 むと同時にシールドで敵機を叩きつけ、態勢を崩した瞬間を狙って離脱と同時にビームライフルを放ち、機体を撃ち抜く。

「よしっ……っ!?」

次の敵機に向かおうとした瞬 間……突如として眼前に現われる同型の頭部……白銀のジャスティスが懐に飛び込み、至近距離でレールガンを放ち、ジャスティスを弾き飛ばす。

「がぁっ!」

衝撃に呻き、吹き飛ばされる ジャスティス……それに追い討ちをかけるようにビームライフルで狙撃してくる。

歯噛みしながらシールドで防 御に徹するも、反撃できずに防戦一方になる。

「アスランっ!?」

そのジャスティスの状況を確 認したカガリが眼を見張り、いてもたっていられず、操縦桿を引き、アカツキを加速させて援護に向かう。

「カガリさん…っ」

ラクスも後を追おうとする も……その眼前に割り込むように立ち塞がる機影に、眼を見開いて立ち止まる。

「あちらの相手はイヴィルと 彼女がしてくれますよ……貴方のお相手は僕がいたしましょう……歌姫」

侮るような物言いで呟き、重 装甲を纏った天使:ガブリエルが静かに唸りを上げる。

「イヴィル? 彼女?」

ウェンドが漏らした言葉に微 かに眉を寄せる。

「知りたいですか? イヴィ ルとは、あの機体のことですよ…E・V・I・L……それが、あの機体のコードネーム」

「邪悪……悪趣味ですわね」

その意味を察したラクスは毒 づくが、特に気を悪くした様子も見せず、逆に称賛されたような笑みを浮かべる。

「酷い言い草ですね…もう一 つは…企業秘密、ということにしておきましょうか?」

はぐらかすウェンドにラクス は表情を強張らせ、眉を顰める。

「そう睨まないでいただきた いですね…では、秘密公開の条件として、是非僕のお相手をしていただきたいのですが………」

「貴方のお相手をすれば、教 えていただけるのでしょうか?」

挑発するようなラクスにウェ ンドは愉しげに応じる。

「ええ…無論、それ相応の見 返りは必要ですよ……物事にはリスクリターンがつきもの…貴方ならお解かりいただけるでしょう?」

「勿論ですわ……では…見返 りは、私の命でしょうか?」

緊張を押し殺しながら相手を 窺うように言葉を紡ぐ……対し、ウェンドはやや考え込むような仕草を浮かべる。

「ふむ…それも魅力的ではあ りますがね……今は教えるつもりはありませんよ」

「……何故です?」

「その方が愉しいからです よ…でも、一つだけヒントを教えてさしあげましょう」

「ヒント?」

「ええ……面白いことが起こ る、ですよ…そう……面白いことがね」

冷たい笑みを浮かべて噛み殺 すウェンドに奇妙な薄ら寒さを憶える。

「では…これ以降のお話が聞 きたいのであれば…先ずは……私のお相手を頼みましょうか」

不適な笑みを浮かべながら、 鼻を鳴らす。

「貴方の噂は聞き及んでいま すよ……エンジェルを相手にしている腕となかなかの美貌と知略をお持ちのようですが……所詮はお嬢様のお遊びだということを…教えてさしあげますよ」

小馬鹿にするウェンドに、ラ クスはやや悔しげに表情を顰める。確かに…自分は所詮、政治も軍事も疎い……現実を知らない小娘と罵られても言い返せるだけの自信はない。

だが、この場に立っているの は決して遊びなどではない……それだけは胸を張れる。

「……お相手いたしましょ う。貴方様のお眼鏡に適うように……ね…私の歌を………」

お返しとばかりに皮肉めいた 物言いで呟き、マーズが身構える…それに対し、ウェンドは笑みを浮かべる。

「それでいいのですよ、お姫 様……せいぜい可愛がってあげますよ。貴方が赦しを乞うまでね」

ガブリエルも身構え……右手 の大型砲:ゲヘナを構える。

マーズもジークフリートとウ ラヌスを構え……対峙する2機の間に沈黙が満ちる…ラクスは震えそうになる腕で必死に操縦桿を握り締める。

遠くで爆発が響いた瞬間…… マーズとガブリエルの砲口からエネルギーが走った。

そして、ウェンドの示唆した 白銀のジャスティス:イヴィルの猛攻に晒されるジャスティス……イヴィルはビームライフルでジャスティスを防御に釘付けにし、一気に懐に飛び込んでくる。 アスランは舌打ちしながら機関砲とバルカンで狙うも、イヴィルは軽やかなトリッキーな動きでそれらをかわし、ジャスティスに蹴りを叩き込む。

「ぐぁっ!」

ボディに叩き込まれた一撃に 弾き飛ばされる……歯噛みしながら態勢を立て戻しながら、フォルティスで砲撃するも、イヴィルは悠々とかわす。

「くそっ!」

思わず毒づく……あちらは ジャスティスと同じ戦法を見事に使いこなし、自身の得意な間合いで攻めてくる。だが、こちらは同じ戦法相手なために翻弄され、反撃する隙が掴めない。

逡巡するその時、アスランの 耳に声が飛び込んできた。

「アスラン!」

「カガリ!? バカ! くる なっ!」

その声に反応し、顔を上げる とイヴィルに向かってビームライフルを放ちながら加速してくるアカツキが眼に入り、アスランは制するように叫んだ。

カガリではイヴィルの相手は 無理だ……アスランの危惧を証明するように、ビームに晒されるイヴィルはシールドで防御しながら、バーニアを噴かしてアカツキに向かって加速する。

「っ!?」

相手もフルブーストし、衝突 コースを取ったのに息を呑む。

だが、それが一瞬の隙を生ん でしまう……刹那、イヴィルの姿が視界から消え、カガリが混乱する。

次の瞬間…アカツキは下方に 回り込んだイヴィルに反応ができず、振り上げたビームサーベルにシールドを破壊され、吹き飛ばされた。

「きゃぁぁぁっっ!」

悲鳴を上げ、吹き飛ばされる アカツキにアスランが眼を見開く。

「カガリ!」

素早く機体を動かし…吹き飛 ばされるアカツキの進行上に回り込み、アカツキを受け止める。その衝撃で揺れる振動に歯噛みしながら、なんとか堪える。

「うっ…ぐぐ……カガリ、無 事か!?」

なんとか勢いを相殺し、動き が止まると、アカツキに向かって通信を繋ぐ。

「あ、ああ…助かった……あ りがと」

弱々しい声で答えながらも、 礼を述べるのに少なくとも無事であることにホッと息を吐くも、すぐに意識を前方のイヴィルに戻し、アカツキも態勢を戻してジャスティスと並び、対峙する。

「アスラン、あの機体……」

「ああ、一筋縄でいく相手 じゃない……単体で当たるのは難しい…」

相手の能力は自分達よりも高 い……一対一ではまず勝算が薄い……なら、数のフォーメーションで攻めるしかない。

「カガリ、君は目標を牽制し てくれ…俺が接近戦を仕掛ける」

アカツキもジャスティスに劣 らず近接戦闘のチューンナップがされているが、カガリの腕ではイヴィルの反応に追いつけないだろう。

「解かった…気をつけろよ」

流石のカガリもそれは理解し ているのか…反論せず素直に応じる。その謙虚さにアスランが軽く苦笑を浮かべるも、すぐに二人は引き締めて対峙したままのイヴィルを睨む。

こちらの攻撃を誘っているの か…動こうとしない……訝しがりながらも、仕掛けようとした瞬間………アスランとカガリの耳に声が聞こえてきた。

《ア……ス…ラン………》

通信から聞こえてきたのは女 性の声…だが、それは驚いたことに眼の前のイヴィルからのものだった。

そして、その声が呟いたアス ランの名に、カガリが眉を寄せる。

「アスラン……? アスラ ン、なんでお前の名前……っ」

訳が解からずに問うカガリだ が……アスランには聞こえていない……カガリよりもアスランの方がその声に驚愕どころか茫然となっている………

「そんな…まさか……」

信じられない……この声は… この声は、昔何度も聞いた………忘れるはずがない……忘れるはずが………

その時…ジャスティスのコッ クピットの正面モニターにイヴィルからの通信が入り、モニターにイヴィルのコックピットが映し出される。

その映像に息を呑むカガリ… そして……アスランは掠れたように声を出す……イヴィルの映し出されたコックピットには…エンジェルと同じく溶液が満たされ…その中心に人影が浮かんでい る……だが、アスランの眼はその人物の顔に向けられていた。

『アス…ラン……私…の…… 息子………』

今一度…人影の口が動く…… 片言のように呟くその人物を……アスランは知っている…いや……忘れるなど決してない………

「母……上………?」

茫然としたまま呟いた相手の 名は……レノア=ザラ……パトリックの妻にして…アスランの母……そして…もうこの世にはいないはずの人物だった………

運命は試練を課す…… 今………少年の前に最大の試練が立ち塞がった…………

 

 


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