バリーやアサギ、マユラ、 ジュリらが帰還しようとしたスサノオ周辺では、激しい砲火が渦巻いていた。

スサノオの護衛に就くM1部 隊とダガー部隊が攻撃の応酬を続けている。

纏わりつくようにスサノオに 攻撃をくわえているのは、モーガン指揮下の月下の狂犬部隊……ストライカーパックを各々装備した105ダガーは巧みなフォーメーションでスサノオに攻撃を 浴びせるも、スサノオの対空砲火と護衛に就くM1隊が必死に阻む。

ランチャーダガーがアグニを 構え、スサノオに発射する。右舷ブレードに着弾し、ラミネート装甲でビームが吸収されるも、装甲表面に熱が帯びる。

「右舷ラミネート装甲、排熱 限界到達まであと130! 次に攻撃を受ければ、装甲が保ちません!」

「ECM上昇!」

「8時方向よりMS3!」

「近づけさせるな! 対 空!!」

絶え間なく届く報告に顔を顰 めながらも、キサカは指示を飛ばす。

スサノオに急接近するエール ダガーにソードダガー2機……一気に艦橋を墜とすつもりで向かってきたのか…近づけさせまいとレーザー突撃銃を集中させる。

隙間なく撃ち込まれるレー ザーの弾幕にソードダガー2機が集中砲火を受け、爆発する。だが、エールダガーはその爆発を利用し、機動性を駆使して弾幕を突破した。

「敵MS弾幕突破! ほ、本 艦正面!!」

刹那…スサノオのブリッジ正 面に現われるエールダガーがビームライフルを向ける。キサカらが息を呑む…だが、そこへ別の機影が割り込む。

「させんっ!」

次の瞬間、横から撃ち込まれ たビームに機体を撃ち抜かれ、エールダガーが爆発する。

クルー達がホッと安堵の息を 漏らす…そこへ現われる純白のアストレイ……

「大丈夫か?」

「すまん、助かったキャリー 一尉」

「いや…それよりも、残存部 隊を再編成してくれ。このままでは指揮系統が乱れる」

白いM2のコックピットで ジャンはそう述べると、すぐさま身を翻し、前線に向かう。

既にM1部隊も全体の約3割 近くを損耗している…部隊を再編成し、統括しなければ各個撃破にも繋がる。

「損耗が大きい部隊は!?」

「は、はい…現在第5、及び 第11M1隊が損耗率60%です!」

「両部隊の残存機に通達!  すぐさま後退し、第8部隊の指揮下に入れ!」

「はっ!」

スサノオを中心に展開する M1部隊はキサカの巧みな指示で部隊を再編成し、持ち直している。

ジャンのM2はダガー部隊に 対し、奮戦していた。

ガンナーM1がビームキャノ ンを放ち、ランチャーダガーを撃ち抜く。アーマードM1がミサイルを全弾発射し、周辺を爆発に包み、ダガー隊を牽制するも、その爆発を掻い潜ってきたソー ドダガーがシュベルトゲーベルを振り上げ、アーマードM1を一閃する。

爆発した瞬間、ソードダガー は上方から降り注いだビームにボディを撃ち抜かれ、爆発する。

そこへ降り立ち、ビームライ フルを連射して敵機を狙うジャンのM2。

既に大方の敵機は撃ち落とし た…残るは隊長機のみ………そして、月下の狂犬:モーガンの駆るガンバレルダガーと戦闘を繰り広げるグランのM2。

縦横無尽に動き、展開される ガンバレルが放つビームをグランは必死に回避しながら、ガンバレルダガーとの距離を詰める。

「おおおっ!!」

キリサメを振るい、一閃する もガンバレルダガーは身を捻ってかわす。

息を乱すグラン…既に、M2 も左腕を欠損している……その代償として、ガンバレルダガーのガンバレル二基を奪った。だが、あちらはまだ五体満足だ……なにより、オールレンジの敵機に 対し、グランのM2は近接用…分としては明らかに悪い。

だが、グランは退くなどとい う選択肢はなかった……幸いに、周辺には撃墜されたMSや戦艦の残骸が多数浮遊している。

障害物を利用したゲリラ戦 は、グランが南アメリカ合衆国にいた頃に得意とした。ガンバレルダガーの放つ攻撃をデブリに身を隠しながらやり過ごし、物陰からガンバレルを狙い撃つ。

鋭くはなった一射がガンバレ ルを捉え、また一基破壊される……刹那、ガンバレルダガーは突如M2の前に躍り出…ガンバレルストライカーをパージし、MA形態にして突撃される。先端の ガトリング砲から放たれる銃弾が着弾し、装甲が吹き飛ぶ。元々は装甲の薄いアストレイ……M2シリーズは内部装甲材にPS装甲を用いているが、外部装甲は 脆い。

そして、距離を詰めたダガー がビームサーベルを抜き、振り被る。

「ぬっ!」

グランも表情を顰めながらも 反射的にキリサメを振り上げ、ビーム刃を受け止める。

M2は脚部を振り上げ、ダ ガーを蹴り飛ばす……だが、相手も簡単に終わらず、バルカンで狙撃してくる。

バルカンの銃弾が装甲の崩 れ、露出したボディ部分を掠める。実体弾であるために効果はないが……弾かれたダガーは回転しながら態勢を戻し、ビームライフルで狙撃してくる。

頭部を掠めるビームに頭部側 面が微かに融解する。

「ちっ!」

舌打ちするグランはビームラ イフルを放つダガーに向かって真っ直ぐ加速させる。ビームに晒されるも、グランは回避せず…敢えてダガーに対して加速する。そして、キリサメを構える…ダ ガーもビームライフルを投げ飛ばすも、M2は回避しようともせず、敢えてそれ喰らう…衝撃に揺さぶられるも、歯噛みしながら加速する。

キリサメを構えて突撃し…フ ルブースとしたM2の突きをかわせず……キリサメはダガーのボディを貫いた。

腹部から突き刺さり、ボディ 上部に串刺しになったダガー……コックピット内でモーガンは機器が爆発し、ヘルメットが吹き飛ばされる。顔の半分が抉れ、鮮血が飛び出す……だが、もはや 意志など存在しないモーガンはただただ頭に渦巻く攻撃という概念に突き動かされ、左手にビームサーベルを振り上げるも、それに気づいたグランはハッとし、 キリサメを離し、弾き飛ばすように離れる。

そして、M2のバルカンで狙 撃し、銃弾がキリサメに着弾し…キリサメが爆発した。その爆発がボディの裂け目からダガーに及び……ダガーはボディから激しい爆発を発して閃光に包まれ た。

「……さらば、モーガン= シュバリエ」

その爆発を見届けながら、グ ランは息を吐き出す………ユーラシアの誇った牙は遂に砕かれた。

 

――――C.E.71.10.2 18:57……

――――月下の狂犬・モーガ ン=シュバリエ戦死…………

 

「ぐっ…一度、艦に戻らねば な………」

既に戦闘能力に乏しいM2で は的になる。一度、スサノオに帰還し、機体の修理か予備機で出ようと戻ろうとするも…そこへキサカからの通信が響いた。

《全機に通達! 新たに敵影 を確認した…識別コード:エンジェル! 各機、迎撃に向かわれたし!》

その指示に息を呑む……識別 コード:エンジェル…それは、ディカスティスが保有する量産機のコードネームだ。

それらが現われた…いや、充 分考えられる可能性だ……だが、M1隊ではあの敵機相手は些か荷が重い……

「まだ戻るわけにはいかん な……」

苦い口調で呟くと、近くを浮 遊していたビームサーベルの柄を取り、腰部に装着すると、同じくビームライフルを拾い、M2はスサノオの方角向けて加速していった。

 

時を同じくして別宙域で は……ゲイツ改がMSと銃撃戦を繰り広げていた。

「こいつっ!」

ビームライフルを放つも、眼 前に立ち塞がるストライクとデュエル2機はかわし、デュエルがビームライフルで応戦してくる。それらをかわしながら、ミゲルは舌打ちする。

流石にGシリーズの量産型だ けあって性能は高い…元々初期シリーズのなかでも取り分け完成度の高かったX100シリーズの量産型…それが3機も揃えば充分脅威だ。

ミゲルは操縦桿を動かし、ス ラスターを噴かせ、デュエルに向かっていく。

ビームサーベルを抜いて迫る デュエルにゲイツ改はシールドのビームクローで受け止め、至近距離でレールガンを乱射した。

ほぼ零距離で発射された弾丸 の嵐にPS装甲といえど衝撃を同じ場所に喰らい、内部機器が破損する…身体をクの字に折り曲げたデュエルにビームライフルを放ち、破壊する。

「はぁ…っしゃ、まず一 機……っ!」

息を乱しながらもガッツポー ズを決めるミゲル……だが、そんなに喜んでいる暇はない。敵はまだあと2機いるのだ。

敵機も先程のような不意打ち は喰らうまいと距離を取って攻撃を続ける。ゲイツ改は流石にカスタム化されているだけあって機動性は上回っているが、肝心の反応が敵より遅れている。

だが、彼は魔弾なのだ……ど んなに苦難にあろうともそれを突破する鉄砲玉………ゲイツ改は加速し、全火器をフルバーストさせ、それらを打ち消しながら、一気に距離を詰める。爆発から 飛び出した瞬間、反応の鈍った敵機に向けてビーム砲を放ち、ビームがストライクの腕を吹き飛ばす。

そして、フルブーストで突っ 込み、ストライクの放ったビームが肩を掠め、融解するも怯まず…ビームクローでストライクのボディを貫いた。

爆発が遠くで轟くなか……フ リッケライとハイペリオンの2機はエインヘルヤル相手に苦戦していた。

高速で動くエインヘルヤルは 砲撃を前面に押し出した攻撃で懐に入り込ませない。これには近接戦が主体のフリッケライでは打つ手がなく、ステラのハイペリオンがなんとか応戦している が、武装の差が大きい。

あちらは広域に大火力を有す る機体だが、ハイペリオンでは砲撃装備に差がある…今はなんとか光波シールドで防ぎながら攻撃を繰り出しているが、光波シールドはエネルギー消費が大き く、長く持続はできない。

既にバッテリーカートリッジ の予備も残り一個……展開時間は残り約10分………だが、エインヘルヤルはそれを待っているかのように時間切れを誘い、踏み込んでこない。

「くっそぉぉぉっ!」

このような戦闘はシンにとっ て焦燥し、…また癪になったようで、シンは怒りに突き動かされ、フリッケライを加速させる。

多少の被弾は覚悟の上で突進 し、エインヘルヤルはハンドガンで狙い撃つも…フリッケライは驚異的な反応を見せ、それらを掻い潜りながら突進してくる。

ハンドガンでは効果が薄いと 察したのか、次はブラスタービームキャノンを構えるも…別方向より伸びるビームに気づき、咄嗟にそちらに向けてトリガーを引く。

ビームが激突し、エネルギー がスパークする……援護のために、ハイペリオンが放ったフォルファントリーのビームだ……迂闊にもそれによってフリッケライは懐に飛び込み、タクティカル アームズを構えて振り下ろすも……エインヘルヤルは凄まじい反応で左手のビームサーバーを展開し…それを横から叩きつけるように振るう。

ビームサーバーによって弾か れるタクティカルアームズ…行き場を失った刃に、エインヘルヤルは右手のビームサーバーを振り上げ、タクティカルアームズの刀身を破壊する。

「なっ!?」

叩き飛ばされた刀身にシンが 驚愕するも…それだけで終わらず…エインヘルヤルはバルカンを乱射し、密着した状態でほぼ直撃を喰らい、フリッケライのフェイスガードに装甲が僅かに弾け 飛ぶ。

態勢を崩したフリッケライに エインヘルヤルは拳を叩き込み、フリッケライは弾き飛ばされる。

「うわぁぁぁっ!」

シンの苦悶とともに弾かれる フリッケライにユウは無機質に呟く。

「一機排除…確認……次目 標………排除…排除………」

片言のように呟き、その眼が ハイペリオンへと向けられる。

「シン……」

フリッケライが弾き飛ばされ た光景に…ステラはなにかいい知れぬ悪寒が身体を襲った。

既に抑え込まれたとはいえ、 深層意識下に刷り込まれた強迫概念にも似た戦いへの恐怖が再び甦る…………

頭がクラクラする……そし て…眼前に迫るエインヘルヤルの影が彼女の眼にはまるで悪魔のように映る……

「い…いやぁぁぁぁぁっ!」

恐怖に突き動かされ、近づく のを拒むようにビームマシンガンを乱射するも、エインヘルヤルはそれを苦なくかわし……一気に距離を詰め、レールマシンライフルを発射する。

反射的に光波シールドを展開 するも、それらが着弾し、揺さぶる振動にステラはガタガタと震えだす。

だが、カートリッジ交換をし ていない現状で、展開のタイムリミットは残り2分……計器のタイマーが凄まじい速さで動き、やがてそれが0を刻んだ瞬間…アルミューレ・リュミエールが弾 け飛ぶように解除され、ステラは眼を剥く。

今まで護っていた加護の消 滅…そして、そこへ飛来する銃弾の嵐にフォルファントリーの一基が破壊され、ハイペリオンは弾き飛ばされる。

「いやぁぁぁぁぁっ!」

泣き叫ぶようにコックピット で絶叫し…吹き飛ぶハイペリオン………慣性に流されるハイペリオンのコックピットで、ステラは両腕で身体を抱きかかえ、震えていた。

「死ぬのは嫌…死ぬのは嫌… 死ぬのは嫌………いやぁ…………」

幼子のように啜り泣くステ ラ……感じる恐怖が彼女を覆う……そして…もはや身動きの取れないハイペリオンにトドメを刺そうとエインヘルヤルがハンドガンを構える。

「目標…ロック………」

相手の恐怖すら、どうでもい いように……いや……なんの感傷もない………無機質な表情と口調で照準を動かす。

照準が、ハイペリオンのコッ クピットにセットされ……トリガーに手をかけようとした瞬間………

「やぁぁめろぉぉぉぉぉぉっ!!!」

宇宙に木霊するかのような叫 びとともに、フリッケライが凄まじい勢いでエインヘルヤルに突進し、そのまま体当たりした。

態勢を崩し、その弾みでトリ ガーを引き…ビームが放たれるも……それは見当違いの場所へと過ぎり、バランスを崩したエインヘルヤルにフリッケライが左手のガトリング砲の砲口を押し付 け、零距離で放った。

弾丸が何十発と叩き込まれ、 装甲の隙間の間接に着弾し、小規模な爆発が内部から起こり、エインヘルヤルは弾かれる。

「はぁはぁはぁ…ステラ!」

先程の戦闘で負傷したのか… 額から微かに血を流しながらも、シンは漂うハイペリオンに接近し、呼び掛ける。

「ステラ! ステラ!」

その声が届いたのか……震え ていたステラの顔が上がる。

「シン………?」

「よかった、無事だったん だ……」

あまり機体の方は無事ではな いが…それでもステラが無事な姿に安堵の息を漏らす。

そして…ステラもまた安堵の 思いにかられていた……先程までの恐怖が薄れていく……

「約束しただろ…俺は、君を 必ず護るって!」

「護る……」

シンの言葉を反芻し……ステ ラのなかに甦る決意………護ると決めたもの………護るために戦う………それがステラのなかに渦巻いていた恐怖を薄れさせ…再びその眼に光を灯らせてい く………

だが、そんな二人の前に立ち はだかるように態勢を立て直すエインヘルヤル。

「損傷……ボディ…破 損…………戦闘続行…可能…………」

先程の攻撃により被弾したダ メージもまったく無関心というように立ち上がるエインヘルヤルに……シンは身構え……ステラは呟く。

「護る…ステラ……護る…… シンと…護る……っ」

「ステラ…いくよっ」

フリッケライとハイペリオン は飛び立つ……何度折れようとも…二人でいる限り…何度でも立ち上がる二つの星は……一つとなって飛び立つ…………

 

 

 

 

少しずつ限界点に接近するユ ニウスセブンの周辺宙域では……Gフォースと天使達の激しい砲火が轟き、爆発の閃光が絶え間なく咲き乱れ、響いている………

カラミティのシュラークが連 射され、それをメガバスターがバックパックのリフターを噴かし、砲撃をかわす。

「死ね死ね死ね死ね! 世界 の終わり……End of the World!!」

眼球が飛び出さんばかりに叫 び、シュラークとトーデスブロック、ケファーツヴァイを狙いをつけることなく乱射し…そこにスキュラも加わる。

流石にそれ程の火力を狙いを つけずに放てば…それはメガバスターだけでなく周辺のデブリや展開していたエンジェルも巻き込んでいく。

デブリが粉々に撃ち砕かれ、 エンジェルも数機が被弾し…光波シールドで防御に徹している。その様子を確認しながらディアッカは悪態をつく。

「おいおい…なんて滅茶苦茶 なんだよ!」

まったく狙いをつけていない が…逆にそのせいで迂闊に攻撃できない……接近しようとすれば、あの火力の餌食だ。

そして、その流れ弾がメガバ スターに幾度となく降り掛かり、ディアッカは舌打ちしてメガバスターを回避させる……機動性が加わらなかった以前の形態なら、まず間違いなく破壊されてい ただろう。

弾幕を縫うようにかわしなが ら、ミサイルを発射する。

ミサイルの群が周囲に拡がる ように展開し、カラミティの攻撃を相殺させる。一際大きな閃光が両機の視界を覆い、ディアッカも一瞬眼を覆う。

「くそっ!」

閃光が収まる瞬間……閃光の なかから影が飛び出してくる。

「なっ!? ど わぁぁっ!!」

眼を見開いた瞬間、メガバス ターは飛び出してきた機影:カラミティの体当たりを喰らい、弾き飛ばされる。

流れるようにカラミティのス キュラが発射される……ディアッカは反射的に両脚部のミサイルポッドをパージし、振り上げて飛ばす。

スキュラのエネルギーにポッ ドが着弾した瞬間、残存のミサイルに引火し、爆発が炸裂する。そのエネルギーに両機は装甲表面を微かに焦がしながら弾かれる。

「ぐっ! こん のぉぉっ!!」

サイドレールガン、アグニU に単装砲を一斉射し、カラミティを狙う。

カラミティは脚部のホバー装 甲で軽やかにかわすも……その大きく回避行動を取った隙を衝き、ガトリング砲を連射する。

ビームの弾丸が襲い掛かり、 カラミティのシュラーク一門とケファーツヴァイを破壊する…ディアッカが内心にガッツポーズを決めるも…カラミティは破壊されたケファーツヴァイを投げ飛 ばし…一瞬の隙を衝かれ、ディアッカはその衝撃をまともに喰らい、弾き飛ばされる。

追い討ちをかけるようにス キュラが火を噴き……咄嗟に両腕を引き上げてガードする。

ビームがガトリング砲に突き 刺さり、ガトリング砲が2丁とも破壊され、ボディ装甲も僅かに融解する。

「くそっ…ヤベえな……こ りゃ」

冷や汗を浮かべながら、苦い 表情を浮かべる…主兵装が破壊され、おまけに機体本体もダメージが少なくない。

だが、そんな逡巡の間すらな く、カラミティのトーデスブロックが轟く。弾頭をかわしながら、両手のグレネードを発射する。

グレネードがカラミティの前 方で拡散し、分裂した弾頭がボディへと着弾し、致命傷にはならないが衝撃を与え、コックピット内でオルガは振動に眼を血走らせたまま、歯噛みする。

「がぁぁぁっ!」

カラミティはスキュラにエネ ルギーを集束させ、発射する。

この距離で発射するとは思っ ていなかったディアッカは操縦桿を咄嗟に切るも、回避し切れずに左脚部を捥ぎ取られた。

態勢を崩すも…リフターを全 開に噴かしてバランスを保ち、レールガンを放つ。

弾頭がスキュラの発射ででき た隙を衝き、着弾し爆発する。ディアッカは操縦桿を引き…メガバスターを加速させる。急加速で態勢を崩すカラミティに突撃し、体当たりする。

凄まじい衝撃が両機のコック ピットを襲い……弾かれる…ディアッカは振動に身体を強か打ちつけるも、肩にアグニUを構える。

「もらったっ!」

至近距離で自動照準のまま、 アグニUが放たれ…ビームがカラミティの右腕と左脚部を撃ち抜き、破壊する。

「こいつも全弾もっていきや がれっ!」

トドメとばかりに両肩のミサ イルポッドを開放し、一斉に発射する。

何十発というミサイルがカラ ミティに襲い掛かり……爆発がカラミティを包み込む。その反動に押し上げられ…弾かれるように離れるメガバスター………コックピット内で、ディアッカは大 きく息を乱す。

「はぁ、はぁ…こ、これでど うにかなったか………」

あの距離でのミサイルの応 酬……いくらTP装甲でも、破損した箇所から誘爆すれば…仮に機体が原型を留めていたとしても……内部はそうはいかない……爆発が収まり…黒い煙が充満す る空間を睨みながら、レーダーに索敵させる。

内心…もうアレで決着がつい てほしいという思いがあるが……その時…レーダーが爆煙のなかに熱反応を捉えた。

表情を顰めるディアッカ…… そして…やがて爆煙が周囲に霧散し……その奥から姿を見せたカラミティに息を呑む。

カラミティは右腕をほぼ全壊 し、フレームの隙間から爆発の余波が届いたのか、黒煙を噴出し……シュラークは既に残った一門が発射口がひしゃげ、発射不能になり…頭部のカメラアイも片 方が砕け…装甲が焼け焦げている。

だがそれでも…流石に地球軍 の技術の結晶である機体……あのミサイルの応酬で原型を留められただけでも驚愕だ。

だが、装甲は保っても内部は そうはいかない……コックピット内は、より凄惨なものであった。コックピットブロックは半ばひしゃげ、突き出した内部機器がオルガの下半身を半ば押し潰 し、散乱したコード類がショートし、破片が片眼に突き刺さり、血を流し…もはや半死人状態だ。

「ぐっ…ぐぐぐぐっ がぁぁぁぁっごぽっ」

だが…そんな傷みなど感じて いないように……オルガは口から大量の吐血を吐き出し、コックピットを紅く染める。

既に彼の内にあるのは……た だの破壊衝動のみ………軋む音を上げながら…カラミティは残ったスキュラにエネルギーを集束させ……メガバスターを狙う。

「………いいぜ…これで終わ りにしてやるよ」

その姿に同情のようなものを 憶え…そして……決着をつけるために……ディアッカもメガバスターのアグニUを構える。

両機の周囲を静寂が支配する なか……高速で動き回り、軌跡を描きながら交錯する機影が2つ………甲高い金属音を交錯の度に響かせている。

「ええええいいいっ!!」

ニコルの気迫とともに…ブ リッツビルガーは連結させた対艦刀を振り被り、フォビドゥンに突撃する。

だが、フォビドゥンもまた ニーズヘグを振り上げ、その突き出された刃を弾くも…ブリッツビルガーは連結の逆刃を流れるように回転させ、フォビドゥンにぶつける。

フォビドゥンは回転しながら 弾き飛ばされるなか、フレスベルグを乱射する。

狙いをつけずに乱射される湾 曲ビームは厄介だ……ニコルは歯噛みしながら操縦桿を動かし、その湾曲のなかを掻い潜るように回避する。

だが、態勢を戻したフォビ ドゥンがリフターを被り、エクツァーンを発射する。

「っ!?」

咄嗟にトリケロスUを引き上 げて防御するも……その威力に推される。堪えながら吹き飛ばされるのは耐えるも……釘付けにされ、懐に飛び込んでくるフォビドゥン。

上を取り、覆い被さるように 迫るリフターの内に輝くツインアイ……一瞬、気圧された瞬間……フレスベルグがほぼ零距離で発射された。

「うわぁぁっ!」

直撃を受けたトリケロスUの シールド表面が融解し…ブリッツビルガーは吹き飛ばされる。

もし、シールドがなければ… 腕ごとコックピットを灼かれていただろう。

振動に揺さぶられるコック ピット内で、ニコルは片眼を開き……操縦桿を戻してバーニアを噴射し、バランスを戻す。

だが、ニーズヘグを振り上げ て迫るフォビドゥン……ブリッツビルガーは両肩のマシンキャノンを発射するも、フォビドゥンはリフターでボディを覆い、弾丸が跳ね返される。

「実体弾では効果が…っ!」

実体弾ではやはり有効なダ メージは与えられない…下手をすれば兆弾になって自身に跳ね返ってくる。

距離を取り…牽制にビーム キャノンを放つも、やはりリフターによってビームは偏光させられ、フォビドゥンの脇へと逸れていく。

「防御に特化した機体……奇 襲を前提としたブリッツはまったく逆ですね」

戦闘中だというのに苦笑いを 浮かべながら…ニコルは対抗策を考える。

実弾はTP装甲のためにダ メ…ビーム兵器も遠距離からの攻撃では相手のゲシュマイディッヒ・パンツァーに無効化される。もっと膨大な熱量をぶつければ、強引に突破は可能かもしれな いが、そんな大火力を生憎ブリッツビルガーは装備していない。

「やはり…懐に飛び込むしか ないでしょうね………」

ならば…取れる手段は一 つ……相手の懐に飛び込み、至近距離でビーム兵器を撃ち込むしかない……だが、あちらは格闘戦も高い…危険が大きいが……現状ではこの手段しかない。

そう決意するニコル……ブ リッツビルガーは構え…フォビドゥンに向けて加速する。

フォビドゥンがニーズヘグを 構えるも…ブリッツビルガーがミラージュコロイドを展開する。あちらが防御の特殊装備なら、こちらは電撃に特化した特殊機能で……レーダーから姿を消した ブリッツビルガーにシャニは眼を血走らせながら周囲を見渡す……歯を鳴らし、噛みつかんばかりに周囲を見渡しながら…機影が発見できないことに苛立ち… フォビドゥンはフレスベルグを発射する。

乱射するフレスベルグのビー ムが周囲を埋め尽くさんばかりに伸びる。だが、敵の姿は発見できない……刹那、虚空より発射された飛行物体がフォビドゥンに激突し、弾かれる。

コックピット内でシャニは姿 を見せない相手に獰猛な息を漏らし…威嚇するように呼吸する。

だが、やはり姿を消している 分、ブリッツビルガーの方が分がある……虚空から飛ぶビームに反射的にリフターを向け、ビームを偏光させるも、防戦一方だ。

「ウザイウザイウザイウザイ ウザイ……」

狂ったように繰り返し……呼 吸を乱す……フラストレーションを溜めるかのごとく、苛立ちが頂点に達し、シャニはトリガーを何度も引いた。

フレスベルグ、エクツァーン が一斉に発射され…狙いをつけることもなく周囲に轟く。エネルギーの無駄と思われたが……放たれるなかの一射が虚空でなにかに着弾した。機械に脳神経が接 続され…その微かな音もシャニの耳に聞こえ……ニタァと醜悪な笑みを浮かべ……その虚空に向かってフォビドゥンが急加速する。

「うらあぁぁぁぁぁぁっ!」

奇声を上げながら振り下ろす ニーズヘグ……次の瞬間、虚空に金属の激突音が響く。虚空より浮き出る輪郭……ミラージュコロイドが解除され、ブリッツビルガーの姿が浮き出る。

「くっ!」

ニコルは歯噛みする……まさ か、あそこまで無秩序な攻撃をしてくるとは思わなかった。迂闊に接近しすぎていたせいで、あの一射がブリッツビルガーのボディの一部……コロイド粒子を散 布する開口ハッチを破壊した。

もうミラージュコロイドは使 えない…それは、相手の意表を衝くという奇襲が使えないということ……同時に…ニコルの勝算がかなり低下したことを意味する。

歯噛みしながら押し切ろうと するフォビドゥンのニーズヘグを両手で支える対艦刀で耐えるも……フォビドゥンは鎌を振り上げて何度も叩きつけてくる。

「がっがっがっがっ!!!」

容赦なく幾度も振り下ろされ る衝撃に激しい振動が襲い、またブリッツビルガーの両腕が痺れてきた。そして、対艦刀の柄に亀裂が走る。

ニコルがギョッと眼を見開い た瞬間…微かに力が緩み……タイミングよく振り下ろされた一撃を耐え切れず、弾かれる。

その空いたボディに至近距離 からフレスベルグを放つフォビドゥン…だが、ニコルも反射的に右手のトリケロスUを放った。

互いに着弾する閃光……2機 は爆発に包まれ…弾き飛ばされる。

その爆発より数分前……程近 い宙域では、シホのシュトゥルムがエンジェルからの集中砲火を浴びていた。

展開されるドラグーンの攻撃 を両肩のリフレクトシールドで防いでいるものの、いつまでも保たない……シホは衝撃に呻きながら…コンソールのボタンを押す。

それに連動し…シュトゥルム はスラスターとバーニアを噴射し、強引にその砲火から飛び出す。それを間髪入れず追い…エンジェルがドラグーンを向けようとしたが……次の瞬間、シュトゥ ルムのバックパックが立ち上がり、ボディが倒れてMA形態になり…脚部とバックパックのバーニアが火を噴き、シュトゥルムは加速する。

その形態に戸惑い、エンジェ ルは一瞬混乱する……その隙を衝き、シュトゥルムが反転し、エンジェルに向かって加速してくる。

機関砲を放ち、エンジェルの 装甲を弾丸が掠める…立ち往生する一機に突撃し……右側面に固定したビームライフルの銃口を突きつけ、零距離で放った。

ボディを撃ち抜かれ、爆発す るエンジェル……その爆発を機体に浴びながらも、飛び出すシュトゥルム……コックピット内でシホは大きく呼吸を乱す。

「はぁはぁ…少し、無茶だっ た……ですね」

集中砲火から逃れるためとは いえ、タイミングが一歩ずれていれば飛び出した瞬間に機体が蜂の巣にされていたかもしれない。その上、敵に特攻まがいに突撃して零距離での撃破で爆発の熱 が装甲を焦がしている。

だが、一機墜としたところで 突破口を開いたとはいえ、敵はまだまだ多い……混乱から立ち戻ったエンジェルが一斉に反転し、襲い掛かってくる。もう先程と同じ戦法は使えない……シュ トゥルムをMS形態に戻し、シホは両手にビームライフルを構える。

ランチャーで狙撃してくるエ ンジェルの攻撃をシールドで防御しながらできる限り回避する……エンジェルが広域に包囲するように展開した瞬間、シュトゥルムは両肩のブラストビームキャ ノンを展開する。

「そこっ!」

砲身にエネルギーが集束し… シホはトリガーを引くと同時に機体を大きく捻った。迸る閃光が発射され、まるでうねりを帯びて振られ、ビームの奔流が展開していたエンジェル数機を呑み込 み、破壊する。

だが、攻撃を誘ったその誘導 に乗らなかったエンジェルが双斧刀を構え、斬り掛かる…反射的に肩を引き上げるも、重いその一撃にシュトゥルムは弾かれる。

「きゃぁぁぁっ!」

吹き飛ばされ…左肩のシール ドに亀裂が走る………呻きながら、ペダルを踏み込んでバーニアを噴射し、堪えきる。

だが、そこへ追い討ちをかけ るように飛び込んできたエンジェルが左手の光波シールドを突き出し、体当たりするように激突し、そのエネルギーにビームライフルの砲身が融解する。

バルカンを放ち、シュトゥル ムを狙う…そして大きく双斧刀を振り上げる……シホは無意識にトライデントを引き抜く……次の瞬間…大きく振り被ったエンジェルのボディが伸びたトライデ ントのビーム刃に貫かれた……呆然となるシホ……だが、慌てて我に返り、トライデントを引き抜き、離れると同時にエンジェルが爆発する。

その閃光を見届けると……シ ホは暫し呆然となる……そして…ようやく自覚すると、すぐさま機体状態を確認する……

「左シールド破損…ライフル 消失……フレームは…まだ大丈夫………」

なんとか凌ぎきったもの の……シュトゥルムのメインフレームは無事なようだが、左肩のリフレクトシールドのシステムが破壊…ビームライフルも損失している。

だが、まだ戦える……その 時…モニターの隅にすぐ真横の宙域での戦闘が表示された。

「アレは…ニコル…さ ん……」

確認できたIFFはブリッツ ビルガーのもの……シホはなにか奇妙な胸騒ぎに突き動かされ、シュトゥルムをその宙域に向けて発進させる。

 


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