第十一話      絶対無敵!『式森雷王』



事件は解決したものの一つ問題が残っていた。それは・・・

「仲直り・・・・・・ですか?」

「そ」

ここは葵学園の廊下。あの事件からに週間がたち、和樹達は普通に登校している。玖里子と澟は、とある目的地へ向かっている最中だった。

「いまだにあの二人、仲直りしていないみたいなのよね」

玖里子がいったとおり、確かに夕菜と和樹の中は余り芳しくなかった。基本的には夕菜が和樹を避けているだけだったが、その逃げ方たるや相当に周囲周到なも のだった。たとえば夕菜は毎朝和樹を起こしにいくのだが(もちろん誰が起こすかで人騒動起こすのだが)それをまったくやらない。他の誰かが起こしに行って 下りて来た時にはもう朝食を食べ終わって登校し、休み時間や放課後になったら必ず教室から消え失せる。場合によっては姿をくらます呪文を使うこともいとわ なかった。

「いまだにっていえば澟、アンタおなかの傷大丈夫なの?骨にヒビ入ってるって聞いたけど」

「いえ、それはもう直りました。それより式森です、あのままというのはちょっと・・・・・・・・・何とか私たちが間を取り持つことは出来ないでしょう か?」

「ふ〜ん・・・・・・」

ニヤついた目で玖里子は澟を見た。待っていましたと言わんばかりだ。

「そんなに和樹のことが心配?」

「ええ!?」

林の顔が見る見るうちに赤くなる。さくらんぼよりも林檎よりも真っ赤である。

「何を言っているのですか!私はただ、夕菜さんをことだけを心配しているのであって、式森の事はむしろもう少し落ち込んだほうが身のためだ と・・・・・・」

「和樹の株も随分と上がったものねえ、」

「ち、ちがいます!!」

そんな問答を続けているうちに、目的地まで着いてしまった。





「しかし、紅尉先生はどうして私たちを呼んだのでしょうか?」

「ま、とりあえず思い浮かぶのはあの事件のことだけど・・・・・・なんで二週間も待つ必要があるのかがわかんないわよねえ・・・・・・?」

二人は紅尉晴明に呼び出されたのだった。何故呼ばれたのかも、伝言役の伊庭からは聞き出せなかった。正確にいうとゲームのやりすぎの性で聞いても耳に届い ていなかったのだが・・・・・・

それはさておき、二人がいる場所は、やはり保健室だった。はっきり言って学校の中では、紅尉を保健室以外で見かけたのは数えるほどしかない。

「失礼します」

澟が落ち着き払った声でドアをノックする。

が、

反応がない。

もう一回ノックをしてみるが同じ結果だった。

「留守・・・でしょうか?」

「自分で呼び出しておいて留守って、それちょっと酷いんじゃない!」

憤慨した様子で玖里子が強引にドアを開けようとする。すると次の瞬間・・・



























 

ごぐごごごごごごごごごごごごごごおっぐぐぐ ぐぐぐぐぐうごおおおおおおおおおおおおっっっぐうっぐうっぐっぐううううごごごご・・・・・・!!!!!



































・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

「何・・・・・・今の?」

「さあ?」

目が点になるとはおそらくこの事なのだろう。玖里子と澟は暫く何も出来なかった。

そして・・・・・・・・・


 

ごぐごごごごごごごごごごごごごごおっぐぐぐ ぐぐぐぐぐうごおおおおおおおおおおおおっっっぐうっぐうっぐっぐううううごごごご・・・・・・!!!!!




今度こそ、二人は反応せざるを得なかった。

急いでドアを開ける。もう戦闘の用意までしていた。

戦闘があったばかりということも合って二人とも気が立っていることも要因かもしれなかった。

保健室には特に変わったところは無かった。紅尉の性格故かきちんと整理整頓されているし、怪しげなものもまったくない。

しかし・・・・・・

「なにあれ?」

「鳥・・・・・・ですね・・・」

紅尉の座るテーブルのすぐ隣にある棚の上に鳥かごが置いてあった。

特に変わったところは無く、中にオウムが一匹は行っていた。時々首を動かしているので死んではいないようだが、二人がドアを開けてもまったく反応しないと いうのは不思議なことだった。

「結構可愛いかもね」

「玖里子さん・・・」

澟が真顔で言う。玖里子が視線の先を追ってみるとそこは具合を悪くした生徒が寝るためのベッドだった。誰かが眠っているためかカーテンは閉まっている。

が、



ごぐごごごごごごごごごごごごごごおっぐぐぐ ぐぐぐぐぐうごおおおおおおおおおおおおっっっぐうっぐうっぐっぐううううごごごご・・・・・・!!!!!



もう、明らかに、どう考えても、覗くしかないと二人は思った。

澟が刀の鞘でカーテンを掴む。そして・・・・・・

バッ!

一気に開いた・・・・・・

「何・・・・・・ですか、これ?」

「私に訊かないでよ・・・・・・・・・」

中にいたのは巨大ないびきと歯軋りをたてながら寝ているオヤジだった。身長は二メートル近いだろうか。しかし、ぐしゃぐしゃの金髪と、少なくとも一週間は 剃っていないと思われる伸びっぱなしのヒゲ、そして黒いスーツとネクタイは皺だらけではっきりいって最悪のコンディションだった。もしこの学校の女子全員 に、「この男と付き合えば十万円差し上げます」といっても確実に付き合わないであろう。それほど、このオヤジの第一印象は悪かった。

「んん・・・・・・」

男が目をうっすらと開けようとする。

思わず玖里子と澟は目を背けながら一歩引いてしまった。

「お?」

男が素っ頓狂な声を上げる。学校に入り込んだ不審者なら,ここで捕まえねばならない。玖里子と澟がさっきの通りに魔法の準備をしようとしたその時、

「おおおお!!」

男が驚嘆の声を上げた。その声のでかさといったら、学校中の気が一斉に飛び立ったほどだった。二人も耳を塞がずにはいられない

男はそんな二人の態度など気にすることなく喋り出した。

「キミが、風椿玖里子君か・・・・・・・・・・・・」

「え!?」

「で、そっちが・・・・・・神城澟ちゃんだな」

「は!?」

男はベッドから飛び降りると一路鳥かごの置いてあるかごに向かって歩き出した。

暫く玖里子と澟は何も出来なかったがすぐに我に返り、男を問いただそうとした。

「ち、ちょっとアンタ、一体何者よ!!何で、私たちのことを・・・・・・」

しかし、この質問はさらに二人の疑問を深くさせるだけに終わった。

「私はムスカ大佐だ」

 
「「はぁ??」」


二人はまた素っ頓狂な声を上げた。当たり前である。

男は手元の鳥かごを取ると、さらに続ける。

「この子はルシータ王女・・・」


「いいかげんにしたまえ」

後ろから妙な声がして、玖里子たちは後ろのほうを見た。もしかしたらこの時の彼女たちの気持ちはタイタニック号の乗員の気持ちだったかもしれない。

二人が予想したとおりそこにいたのはこの部屋本来の主である紅尉晴明だった。

「まったく、ここで寝るのはよせと、何度言ったらわかるんだ。しかもそんな格好で・・・」

「いやぁ、眠くてなあ・・・・・・長官があんな激務だったとは思わなんだぞ。大河さんも、よく耐えられたなあ」

「話をそらすんじゃない。まず風呂に入ってひげを剃れ。それからさっさと着替えてきたまえ。それと・・・・・・」

「わぁった、わぁったよ!」

男は鳥かごを元の場所に戻し、「ちょっと待っててね」とささやくとさっさと部屋から出て行ってしまった。後には沈黙のみ・・・・・・・・・

暫くしてようやく澟が口を開いた。

「先生、あの・・・・・・」

「まあ、待ちたまえ。君たちも色々と疑問はあるだろうが、まずは彼が帰ってきてからだ。しかし、まだ寝ているとは・・・・・・私も驚きだ・・・」

驚き、と彼は表現したが、結局彼の心情の殆どが「呆れ」で締められていることは二人の目から見ても明らかだった。

とりあえず、今の彼女たちに出来ることは紅尉の言葉に従うことだけだった。







30分後・・・・・・・・・

「「おそい!」」

玖里子と澟が同時に声を上げる。

「女でもないのに何で、こんなに時間がかかるのよ!」

「そうです。いくら何でも限度があります!!」

二人は憤慨した様子で怒鳴る。

「彼のことだから、おそらくタイミングを待っているのだろうね・・・・・・」

「「たいみんぐ?」」

「ああ、おそらく・・・・・・」



ドタドタドタドタドタ!!!




慌ただしい音が聞こえてきた。

三人はさっきほどの男が帰ってきたのかとも思ったが、違った。

入り口からあわてて入ってきたのは、式森和樹だった。

「紅尉先生!!」

和樹はこれ異常ないぐらい焦った声で叫ぶと、そこから堰を切ったように話しかけた。

「ら、ら、ら、ら、ら、ら、ら、らら、ら、ら、ら、っら、ら、」

「落ち着きたまえ、式森君」

「これが落ち着いていられますか!雷王が来るって訊いて落ち着いていられますか!落ち着けるわけないですよ!!ついさっき知らせを受けてきたんです。てい うか、何で先生、あいつを知ってるんですか!!!!」

いくら紅尉がなだめようとしても、和樹は訊く耳を持とうとしない。

まったく会話についていけない二人が、説明を求めようとした、次の瞬間・・・・・・

「『あいつ』はないでしょう!育てのおとーさ んに向かって!!!!」


何処からともなく先ほどの男の声が聞こえてくる。そして皆の視線が入り口に向かったその時、

ガラッッ!!

ドアが開き、和樹が入って来た時には無かった筈のスポットライトや証明が沢山男を照らしていた。なんだかジョ○ョに出てきそうな訳の解らないポーズをとっ ている。

「ハロ〜〜〜〜ウ!!エブリヴァディ!!!カワイイ二人の子猫たち、そして!!」

男はくるりと一回転すると、またさっきとは違った妙なポーズをとった。

「元気にしていたかね、わが息子よ・・・・・・」





































・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・・・・・・

・・・・・・・・・・

・・・・・・・

この一連の男の行動が終わったとき、まさに嵐が過ぎ去ったような感覚だった。いや、むしろこれから嵐が来たのかもしれない。

玖里子と澟は目が点になり、紅尉はあきれ返ったように顔を押さえ、和樹にいたってはガックリとうなだれてしまっている。

「「む、むむむむむ、息子ぉぉ!!??」

「そうだ、彼のなは式森雷王・・・・・・」

もはや、しゃべる気力も無くなってしまった。和樹に代わって紅尉がしゃべりだした。

「式森君の・・・・・・育ての父親だ」







あとがき

ここまで読んでくださって、ありがとうございます。
ああやばい、仲直りは一話で終わりそうだったのに、いつのまにか親父がバカやって、それで終わってしまいました。仲直り全然関係ねえし・・・・・・・・・
しかも何だよ、このタイトル・・・・・・
と、とにかく次回こそは夕菜を登場させて、二人を仲直りさせようと思います。
後、ムスカがどうとかは、知っている人は一発です。(もしか比したら4000マンさん辺りが知っているかも・・・・・・)

それでは、次回もこの小説にファイナルフュージョン承認!!
これが、勝利の鍵だ!『ルシータ王女』・・・・・・うそです、本当はこっちです。


これが、勝利の鍵だ!『ミレイ(雷王のインコ)』



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