第十五話      晴れのち、ドキドキなり……(前編)





もぐもぐもぐ・・・・・・

「うん、旨い」

ここはGパークの施設の一つ、Gパーク・ネイチャー。

もぐもぐもぐもぐ・・・・・・

「ああこれもいける!」

Gパークの施設の一つで、特にこれといったアトラクションはないものの、人の心をリラックスさせるのを目的とした場所である。

もぐもぐもぐもぐもぐ・・・・・・

「これもいいなあ・・・・・・」

公園は勿論のこと、植物園や自然博物館など、世界全土のあらゆる「自然」を体感できる。

もぐもぐもぐもぐもぐもぐ・・・・・・

「いやあ、いい嫁さんになるよ、これなら」

き、距離が離れてしまったカップルがここに来て、ふとしたことからよりを戻すことも少なくないという・・・・・・

「和樹も駄目だぞ、こんな子放っておいちゃ」

「俺モソノ意見ニハ賛成ダゼ、和樹」

「う・・・・・・うるさいなあ、二人には、か、関係ないだろ」

和樹は細々とかろうじて声を出すが、はっきり言って抵抗にはならなかった。
余りにも図星を指されたので・・・・・・

「三人とも苦労しているだろう、こんな人で」

「い、いえ・・・・・・そんなこと」

「まあ、苦労はかけるけどね・・・・・・」

「玖里子さん!あっ、そんなことないですよ!!和樹さんはほんとにいい人ですから」

三人の和樹に対する言葉を聞いて、雷王はこれ異常ないほどに幸せそうな顔をした。
もっともそれは、美少女たちに囲まれたことと、今食べているウナギが原因だったが・・・・・・

「あ、和樹はいいの?ウナギ」

雷王がそうたずねてくる。
確かに和樹はまったくうなぎには手をつけていなかった。

「僕がウナギ嫌いなの知ってるだろ」

「あり、そうだったっけ?」

「ツーカ、雷王ガ原因ダロ」

夕菜たちはもちろん知っていた。
父がとある日曜日に来ることになって、三人で認められようと必死にウナギの用意をしたのだが、結局仕事の都合で来ることが出来なくなり、おまけに和樹が実 はウナギ嫌いということが明らかになり活動の殆どが駄目になったということで散々だった。

しかしなぜ和樹がウナギ嫌いなのかは知らなかった。

「和樹さん、どうしてウナギ嫌いなんですか」

何を隠そう夕菜もウナギ嫌いなのである。
夕菜の嫌いな理由は『あのヌルヌル感』らしいが和樹は何故嫌いなのは三人ともしらないことであった。

雷王は夕菜の問いかけに暫く考え込んでいるようだった。
が、やがて何か思い出したのかはっとした顔つきになる。

「ああ! 和樹、お前まだ『あのこと』気にしてんのか?」

図星を指されたのか、和樹はまたも黙りこくってしまった。

「『あのこと』って?」

澟が聞いてみたが雷王はハッハッハッハと笑うだけで何も答えなかった。

「そ、そんなことどうでもいいよ。それに・・・・・・夕菜もウナギ嫌いじゃなかったの?」

明らかに話を逸らそうとしている。
夕菜達はさすがに不憫と思ったのか和樹に協力することにした。

「ええ、でも三人で作りましたから・・・・・・」

「ウナギは私が作ったのよね」

「え・・・・・・・・・」

和樹が硬直した。
玖里子は一瞬自分がウナギを作ったことに対してかと思ったがそうではないらしい。

「『三人』・・・・・・で?」

三人・・・・・・

彼女たちは確かにそういった。
三人とはつまり・・・・・・・・・

夕菜と、

玖里子と・・・・・・




澟・・・・・・・・・





「ち、ちなみに・・・・・・・・・」

和樹が恐る恐る口を開く。

「澟ちゃんの作ったのは・・・・・・何処かなあ〜〜〜なんて」

「ええっと・・・・・・・・・」

こわごわと夕菜が言った。
澟は必死に顔を隠そうと急いで弁当を食べていた。
そんな澟を尻目に玖里子が指を刺す。

「そのシュウマイ・・・・・・・・・ってあああ!」

玖里子が指差したシュウマイ、それはまさに今雷王が口に運ぼうとしているものだった。

「「「「ちょ、っと、まっ、た!!!!」」」」










パク!

もぐもぐもぐ・・・・・・・・・











「ん?何・・・・・・・・・」

雷王が皆静まり返ったのに少し驚いてきょろきょろと見る。

「あ・・・あの・・・・・・・・・美味しいの、ですか・・・?」

恐る恐る澟が聞いた。
本来ならこんな状況も変なものだが、澟の料理の下手さは自他共に認めるものであった。
ここで雷王が卒倒でもしたら自分への評価は相当下がるだろう。
それに、今回作ったものは過去の作品の中でも『最高』の出来といえた事も起因している。

「ああ、とても旨いぞこれ!!澟ちゃんって料理上手なんだな!!!」

「マジ?マジデ言ッテンノ御前?」

ミレイが突っ込みを入れるも他の皆には聞こえていない。


(澟ちゃんのが・・・・・・?)

(澟さんの作った料理が・・・・・・?

(とても・・・・・・旨い・・・・・・・・・?)





「ほ、本当ですか。あ・・・あの、他にもあるんです!」

「よし、いただきますか!」

そういって雷王はまた別のものに箸をのばした。

和樹たちはまだ、この茫然自失状態から抜け出せない・・・・・・

「アンタの父親って・・・・・・」

「いろんな意味で・・・・・・すごいですね」

「うん・・・・・・・・・ありがとう・・・・・・」

















「で・・・・・・次は何処行くの?」

昼食を食べ終わり、何とかジェットコースター酔いから脱出した一行。
もう時間が予定していた頃よりも三時間ぐらい過ぎていた。
後二つ三つぐらいできればいい方だろう。

「どうしましょうか・・・・・・」

「アレいってみる?スクラム百人切り」

「いいですね、それいきましょう」

またもや三人娘たちの意見で決定した。
それにしても、スクラム百人切りとはさっぱり要領を得ない。
『スクラム』と『百人切り』の部分がまったくかみ合っていない。

和樹はまたもや疑問の海の中に取り残されてしまった。
そうこうしている内に目的地に着いた。
トンネルのような建物で、看板にはドでかく『スクラム百人切り』とむかしのRPGのようなロゴが振ってあった。

「5人分お願い」

「かしこまりました」

玖里子の言葉を受けて受付嬢が手元のパソコンを打ち出す。

「コースはどうなさいますか?」

「適当でいいわ」

「はい」

暫くそんな問答が続いている。
和樹は何もやることがない。仕方がないので夕菜にもう一回聞いてみることにした。

「えっと、夕菜」

「はい?」

「具体的には・・・・・・どうするの?」

「ばったばったとなぎ倒すんです」

さっぱりわからない・・・・・・

それぐらいのことはタイトルからも想像がつくが・・・・・・

「あの・・・・・・」

「ん?」

「えっと・・・・・・和樹さん・・・・・・・・・」

夕菜が何か言いたげにこちらを向いている。
言うべきことはしっかりという彼女にしては珍しい事だ・・・・・・
しかも何か、うつむいてしまっている。。
なんだかこっちまでドキドキしてしまいそうだった。

「な・・・・・・なに・・・・・・・・・夕菜?」

「和樹さん・・・・・・」

「おーーーーーい!!!!」

「うわあ!」

突然ドアップで雷王が駆け込んできたので被きはその場でスッ転んでしまった。

「ナンだ・・・・・・人の顔見て大声上げやがって・・・・・・」

「いきなりドアップで出てくる父さんが悪いよ・・・・・・」

「ま、いいや。それより早く行くぞ」

「そうよ、これはアンタにがんばってもらわないと駄目だから」

「へ?」

玖里子が言った言葉に和樹はきょとんとなった。
わかったのは、自分が何か奇妙な事に巻き込まれようとしていること・・・・・・・・・







「な、何で僕が前衛なんですか〜〜〜」

「そりゃ男だからよ」

「いやだ〜〜〜!!!!」







ここで読者諸兄にこのアトラクションのルールを説明しておこう。

まずこのゲーム参加人数は何人でもよい。
そしてこのゲームは一言で言えばアクションゲームだ。
参加者はまずどんなステージかを選び、次に武器を選ぶ。
どんな種類の武器があるのかはその時選んだ武器による。
そして、ステージを進んでいく。
様々な敵、多彩な罠が待ち受ける中、自分達は己の知恵と勇気、そしてチームワークで乗り越える。
そしてステージごとに決められた条件をクリアすればよい。

要するにこれはバーチャルシュミレーションゲームなのである。
しかもこれまでと違い画期的なのは、自分の足で立って歩くということなのである。
つまり指先ばかり動かしている限り、このゲームはクリアできないということなのだ。

「ちなみにこれを考えたの、俺ね」

といったのは式森雷王。





「だからって・・・・・・」

「頼りにしてるわよ」

「はあ・・・・・・」

そして・・・・・・ゲーム開始。



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