第十七話      決意する力、その名は勇気





東京都庁・・・・・・・・・

日本の全てが総力を挙げて完成させたこの土地には、物があふれ、人があふれかえっている。
そしてその地下、
地下鉄や施設をかいくぐった先にある場所に、それはあった。

ドドドドドドドドドドドドドドドド!!!

けたたましい音とともにどす黒い物体が突き進んできた。
黒体は暫くの間地下を進んでいたがやがて目的地に到達したのか少しずつスピードを緩め、そして一つの空間にたどり着く。

「ただいま帰りましたよ〜〜〜〜〜〜〜ウ」

黒い物体はそう叫びながら空間の下から飛び出した。
丸まっていたものが少しずつ人の形を形成していく。

「遅いぞ、ギムレット」

ギムレットと呼ばれたそれは右の壁を向いた。
既に身体は人の形をしてはいたが、あくまでそれはシルエットでの話である。
人というよりは理科の実験室においてあるガイコツ人間だった。
さらに頭には紫色のドレッドヘアーを被せていてはっきり言って気色悪いことこの上ない。

「スイマセンねえ〜〜〜。
アステリのいる場所を見つけるのに手間取ってしまいましてねえ〜〜」

ギムレットにはまったく反省の色が無い。
それを見たためか壁の方から舌打ちを打った音が聞こえる。

「これは我らが主の勅命ぞ!それを忘れるな!!」

「そういう彼本人は何処へ行ったのでしょうかねえ?ガンベルクさん?」

ガンベルクといわれた人物はゆっくりと壁から浮き出ていた。
人々がモンスターと認識するギムレットと比べて彼はれっきとした人間の身体を持っている。
鈍く銀に光る鎧、腰にさした剣と真紅のマント。
そして端正な顔立ちと薄暗い闇に溶け込むような漆黒の髪は中世騎士を思い描かせるようだった。

「主は・・・」

「主は奥で瞑想中よ」

また一人、壁の奥から出てきた。
今度は左側から・・・・・・

「おやおや、久しぶりですねえ。アヌレットさん」

「三日前に会ったばかりよ」

「おやぁ、そうでしたっけえ」

アヌレットはその言葉使いからもわかるように女性だった。
こちらもまた中世ヨーロッパの貴族のような格好をしている。

「まったく、彼の行動は分からないわね。なんであんな捨て駒に、またゾンダーメタルを与える必要があるのか・・・・・・」

「主が望んだからだ。我々はそれに準ずるのみ」

ぶっきらぼうにガンベルクが答える。
そこへギムレットがもともと細い右目をもっと細くさせて答えた。

「とりあえず、式森和樹とやらの実力を見ておきたいのでしょうねえ。
果たして彼の喉を潤せるのかどうか・・・・・・」

「なるほどね。そういえば、ベイオルはどうしたの?」

「僕はここにいるよ・・・・・・・・・」

ドスンと上から落ちてくる音がした。
三人がそれに気付いた時、もうそれは部屋の中央に立っていた。

「これで、全員集合って訳だね」

中からでてきたのは緑色のローブにくるまれた小学生位の子どもだった。
もっとも子どもというのは声と身長からしか判断できないが・・・・・・

「もう少し、地味な登場は出来ないのですかあ?」

ふざけた調子でギムレットがたずねる。
ベイオルはそれに対して、同じく笑った調子で答えた。

「いいじゃない。別に誰も見てないのだし」

「ま、いいでしょお。それでは・・・・・・」

ギムレットが見やりと醜悪な笑みを浮かべる。

「もう少しですねえ・・・・・・・・・」



世界に・・・・・・闇が侵食しようとしていた・・・・・・・・・・・・




















ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……………



「これは………」

ベンチで休んでいた澟、そして玖里子はこの振動にただ驚くしかなかった。

「い、一体何が……」

しかしその中でただ一人、式森雷王だけは一人、苦虫を噛みつぶしたような顔になっている。

「ちっ! こんなときに来るとはな……」

「え?」

「あれが何か知っているのですか!?」

「……」

ピリリ……ピリリ……ピリリ……

雷王が口を開こうとした瞬間、携帯の音がなった。
いや違う、携帯の音に聞こえるが、これは念話だ。
その音源を鬱陶しそうに頭で叩く。カチッという音がした。これがつながった合図である。

「紅尉か?」

(そうだ)

「オイオイ、どういうことだ! 聞いてねえぞ俺は!」

(仕方あるまい、緊急事態だ。今すぐこっちに向かってくれ)

「わかった」

まずいコーヒーを飲んだような顔のまま頭に載せた手を静かに下ろした。
暫く考え込んでいるようだったが、やがて意を決するように玖里子と澟のほうに向き直った。

「………あの」

「すまん、二人とも俺の言うことをよく聞いてくれ」








ドーーーーーーーーン!!!!




「きゃあっ!」

「うわっ!」

(こ、これで五回目?!)

最初の爆発は中央の方から聞こえてきた。和樹たちのいた遊園地はそこからやや右に逸れた所にあったので事なきを得たが、あくまでそれは一回目だけの話であ る。
爆発の規模は段々と勢いを増し、ついには立っていることさえ困難になってきたのだ。

「夕菜、大丈……」

「か、和樹さん………」

夕菜の声は震えていた。
今の爆発音から来る恐怖ではない。
それが証拠に、彼女の視線、いや彼女を含めたその場にいる殆どの人間が一点を凝視している。

………未知の出来事に全身を震わせている。

これから起こるであろう事態が……拭おうと、目を覆うとも……身体に染み込む

「夕菜?」

「あ………あれ………!」

「!!」

ズオオオオオオオオオオオ!


そこに現われたのは、体長30メートルはあろうかという、金属の固まり、巨大なロボットだった。
両の二の腕にはコーヒーカップとメリーゴーランド、背中に先ほどまで自分たちが乗っていたはずの観覧車、おまけに尾ひれの変わりに、とばかりにジェット コースターが連結される。
かなり間抜けな格好だが、そこから発せられる殺気、威圧感、顔の形相、それらが人々に不安と恐怖を植え付けるものとしては十分だった。

ただ一人の例外を除いて………


「こ、この気配は………まさか!」

そんな、あの時倒したんじゃなかったのか!

和樹は地面に突っ伏しながら、今の有り得ない事態、しかし実際に今ここにある事態に驚愕していた。

(どうしよう……あの力を使えば………でも、ここで今使ったら、夕菜にバレてしまう、それに………どうすれば出せるんだ!)

夕菜を助けたとき、自分は紅尉から必要最低限のことしか話してもらってない。賢人会議のことも話すのは後だと言って聞けなかったし、偶然発動した力が、船 につくまで持続しただけだ。自分で出したわけじゃない。

彼は必死になってここから、この事態から脱出する方法を模索していた。
今の彼に、あの力は出せない。



「僕は………」

どうすればいい!!





ギュ!


和樹がそのとき妙な感覚を覚えた。
何だと思って下を覗くと、

「夕菜………」

夕菜が自分の服の袖を掴んでいた。もはや目はうつろでただ呆然とするしかない。自分が何をやっているのかも判別できない様子だった。

それは周りの人も同じだった。彼らから感じられるそれは、もう恐怖とかそういった次元を超越していた。何にもすがるものはない。何も出来ない、否、何した くない。何かをすれば、それだけで……

全ての動きを封じられている。
正常に自体を感じることも出来ない、

しかし、彼女はこうして今、和樹の裾を掴んでいる。彼にすがっている。




「夕菜………」

そのとき、和樹の中に何かが沸きあがってきた。
今までの、彼を動かしたものとは違う。彼がこれまで仲間たちを助けようとしたものとは、違う。
もっと大きな、もっと大きな何か、使命感にも似たその感情が彼を奮い立たせようとした。


(そうだ、僕がここでやらなきゃ! 誰が夕菜を、みんなを救うんだ!!)

彼が立ち上がった。


自分が、僕がやるんだ、誰かがやるんじゃない、誰かがやれと言ったからじゃない、僕が………式森和樹がやるんだ!

「夕菜!」

夕菜を何とか抱え起こす

「和樹さん……?」

「夕菜は、ここの人たちを連れて、遠くへ逃げて、あいつは・・・・・・・・・僕が何とかするから」

「え……」

彼女にも状態が戻ってきた。しかしそれと同時にある感情が出てくることも、又予想できたことだった。

「ほら、早く!」

「で、でも和樹さん!」

「僕なら大丈夫!」

和樹はその言葉を最後に夕菜に背を向けた。

「和樹さん!」

もう彼女の声は届いていない。届く前に彼はもう駆け出してしまっていた。
ダッダッダッダッダッダ!!

(そうだ! 能力なんて関係ない! 何が出来るかなんて関係ない!)

ただやると決めた。
それは漠然とした気持ち。論理づけなんて出来るわけがない。
それでも………今の彼には十分すぎるほどだった。 




(そうだ、迷うことなんてない)

一歩
彼の右手にGの文字が輝くとき、彼は翠緑の衣を身にまとう

(闘う………)

二歩
彼は金色の鎧を身に纏う。



(僕は……………闘う!)


三歩
そして彼の元に、彼の僕(しもべ)たる機械鳥、――――ファントムガオーが舞い降りる



「フューーーージョーーーーーン!!!」




「ガオファー!!」



バキィ!


「グオ!」

巨大ロボットの後頭部に、ガオファーの容赦ない一撃が飛ぶ。
思わぬ襲撃者にたまらず倒れてしまうロボット。









「か……和樹さん?」

夕菜は今日何度、この言葉を言ったのかわからない。
何度彼の名を呟いたのかわからない。

わからないこと尽くしだった。

けど、

「皆さん、ここにいちゃ危ないです! 早く逃げないと!」

夕菜が皆を奮い立たせる。
常識でいえば、こんなところで常識なぞあるはずもないが、それでも常識に当てはめれば、そんな一言で彼らの恐怖が拭えるはずもない。

そんなはずだったが………

「あ、ああ」
「そうだな……」

一人、又一人と、立ち上がっていく。皆、夕菜の勇気に感化された様だった。

「こっちです! 急いで!」

夕菜たちはここに来る前、下準備としてGパークの構造をほぼ全部理解していた。結果としてそれが功を奏したのである。
今の夕菜には、何処へ行けば、一番出口へ近いか、被害が少ないか、それが自分でも驚くほどにわかっていた。今の彼女の頭の中には、最短経路の地図が克明に 映し出されている。

(和樹さんは、逃げろって言っていた。 だから……)

だから今はそうする。自然と体が動く。

(………和樹さんは、自分は大丈夫って言った! だから、信じる)

もちろん確証があるわけない。こんな状況で「大丈夫」なんて言葉に説得力なぞ、ある訳ないのだ。それでも彼女は信じていた。彼が笑顔で帰ってくることを信 じて疑わなかった。

後ろを振り返と、巨大ロボットの二体は腕のつかみ合ったままの押し合いが続いている。

「死なないで……」

誰にも聞こえないような、小さな声でつぶやくと、自分の職務を果たすため、走り出した。

自分と最愛の人の絆を、

二人の間の勇気を信じて………









あとがき

どうもこんにちは、東ひじりです。スイマセン、又予定の所まででいけませんでした。次回こそ必ず、あのセリフを言います!
さてここからは、テレビ風に次回予告をして見たいと思います。

君たちに最新情報を公開しよう!
突如現われた巨大ロボットに対抗するため、ガオファーとなって出撃する和樹。しかし敵の能力ははるかに想像を絶するものだった! 
ガオファーに、危機が訪れるその時! ついに『承認』が降りる!

そうだ! そうなのだ! 我らはこの時を待っていた!!

まぶらほ〜獅子の名を継ぐもの〜 『勇者王降臨!』
次回も、この小説に、ファイナルフュージョン承認!

これが、勝利の鍵だ!『ガオーマシン』



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