「やっと来てくれたか……遅いぜ!!」
『すいません! 式森さん!!』
モニター越しに聞こえてくるその姿と声は、明るい青年を思わせるものだった。
そして、その場にいる全員が、それに覚えがある。特に玖里子は、その姿をよく知っていただけに、口がパクパクうごめいている様だった。
それを見て、驚かないということは出来ない。驚いていないのは雷王だけだ。
「く、玖里子さん……あの人って、確か…」
「うん。彼…確か………」
そうだ。間違いない。
ヘルメットを被り、赤いジャケットを着ているが、あの顔と声を思い違うはずがない。
「ま、舞人君!?」
『ええ、そうです。お久しぶりです、風椿さん!』
彼の素性を考えれば、玖里子と面識があっても当然だろう。
そして彼の顔自体ならば、知っていても不思議ではなかろう。
しかし、それと、メインスクリーンに映っている姿とはどうしても結びつかない。
なぜ旋風寺コンツェルンの若き総帥がこんな所にいるのか。
しかも、新幹線型の戦闘機に乗って。
「あの……なんか状況が飲み込めないんだけど……」
『話は後です。ガイン、合体だ!!』
モニターの向こうの青年、旋風寺舞人が叫ぶと同時に、戦闘機は空高く上昇した。
「了解!」
ガインと呼ばれたロボットは、その場から跳躍した。
ガオファーとほぼ同じぐらいのサイズの機体が、遥か天空に消える。
そして、叫ぶ。
「ロコモライザー!!!!」
勝利への一言を!
「レェッツ!! マイトガイン!!」
蒸気機関車型の支援メカ。ロコモライザーがガインとともに飛び上がる。
それは、皆が舞人と呼んだ青年の乗るメカ、マイトウイングと共にトライアングルを作り出す。
ガインとマイトウイングが新幹線へ、そしてそこから両腕となり、ロコモライザーへとドッキングする。
「マイトガイン、起動!!」
その言葉が引き金となり、二つの新幹線から手が飛び出す。
そう。
三つの光は、巨人となったのだ
まるで、勝利への道標を指し示すように。
そして、その巨大ロボットは、第三新東京市のふもとに降り立った。
一体、彼等が何者なのか?それを説明しよう。
花の都、ヌーベルトキオシティにおいて、近年悪党が跋扈するようになって行った。
警察では手に負えないほどに大きくなり、もはや事態は絶望的に思われたその時だった。
颯爽と現れた正義のヒーロー。それが勇者特急隊である。
その組織の正体は一切不明。だが、彼等の所有する人型のロボットたちは、次々に悪党の野望を打ち破り、その噂は日本にとどまらず、世界中に広まったのだ。
勇者特急隊が、今GGGとネルフの目の前に立っている。
その現実を、和樹は未だに受け入れられなかった。
しかし、次第に感覚がよみがえってくる。そしてそれは、これが実際のことだと教えてくれる。
(本当に……本物の…)
「あれが………噂のマイトガイン…」
ようやく振り絞って出した和樹の言葉も、舞人の耳にはしっかり届いていた。
「そう……その通り!」
舞人の言葉を受けて、ガインが……いや、マイトガインは、高らかに宣言する。
「銀の翼に、望みを乗せて! 灯せ、平和の青信
号!!」
巨大な腕にうなりが上がり、額のシグナルが華麗に煌く。
「勇者特急マイトガイン! 定刻通りに、ただいま
到着!!」
第四十話 天使の刃! 撃てポジトロンライフル!!(逆転編)
その勇姿は、ゾンダーをも震わせた勢いだった。
ガオファイガーすら上回る熱気が、周りに渦巻いている。
その傍らで、赤木リツコが「非常識だわ」と呟いたかどうかは、定かではなかった。
しかし、このロボットの登場で、士気が上昇したのは確かだった。
なぜ旋風寺コンツェルンの総帥が、あのマイトガインに乗っているのか、という疑問はのこるが、幸運なことにGGG隊員は皆、些細なことは隅に置くことので
きる人間である。
自分の職務を全うすべく、すぐさま自分のデスクへと向かい始めた。
それは夕菜達とて例外ではない。いや、一人いたが…………
「和樹さん! 大丈夫ですか?」
『ああ、うん。平気だよ。それよりも、あの人は一体……』
和樹は突然現れた勇者特急隊のことを、尋ねようとした。
だが悲しいかな。彼にはその権利はなかった。
「式森、GSライドの稼働率が落ちているぞ。もっと気合を入れろ」
『わ、わかった……。って、いやそうじゃなくて、なんで勇者特急隊がここに?』
「和樹。パーツの強度を考えると、ヘル・アンド・ヘヴンが撃てるのは一回きりだからね。エヴァンゲリオンと、マイトガイン。協力して倒すの。いいわね」
『あの、玖里子さん。事情がよく……』
「いいから、やりなさい!!」
『は、はい! 了解です! 玖里子さん!!』
「二人とも、話は聞いている。敵が復元能力を使う前に、一気にケリをつけよう!」
「は、はい!」
「ふん。かっこつけちゃってさ!」
質問に答えてもらえず、疑問だらけの和樹。少し驚きはしたものの、すぐに事態を飲み込んだアスカ。対称的だが、今やることは一つだ。
WIZ−03を、共に倒すこと!
「ガイン、行くぞ!」
『了解! シグナルビーム!!』
舞人の指示を受け、マイトガインの額から、二色の閃光が迸った。赤と青のコントラストが美しいと思えるほどに、強力な光。
それがゾンダーに襲い掛かる。
だが、甘んじて受け入れはしない。すぐさまバリアを展開する。
シュバババババ!!!
だがそれは、ブロウクン・ファントムと同様の結果だった。
少しずつ、敵の結界を侵食している。
「ゾーーンダーー!!」
このままでは破られる。
そう判断を下したのだろう。WIZ−03はゾンダーバリアを解くと同時に、触手を振り回し、シグナルビームを弾いた。
防いだ。そうゾンダーは信じ込んだ。
が、それが彼の敗北につながる。
「ガイン、今だ!」
『マイティ・スライサー!』
マイトガインが両足に仕込まれた円形状の物を、手裏剣のように飛ばす。
二本のマイティ・スライサーは、それぞれ別の軌道を描きつつ、WIZ−03の腹部を直撃した!
「ゾ、ゾゾゾゾゾ!!???!?」
余りの速さに何が起こったのか理解できない。
ただ、腹部に激しい衝撃が襲っていたのは事実だった。触手を使って叩き落とす間もない。ただ、黒い何かが近づいたようにしか、見えなかったであろう。
アスカは今マイトガインが何をしたのか冷静に分析していた。伊達にドイツの大学を中学生で卒業している訳ではない。
「そっか! そういう事だったのね!!」
敵はゾンダーバリアと触手を一緒に発生できない。つまり、攻撃と防御は同時には行えないのだ。ここに勝機があった。
「いける!」
弐号機からネルフへ、武器を飛ばすようにと信号を送る。次々とハッチが開き、必殺の刃が飛び出してくる。
アスカと弐号機が、いっせいにそれを構えた。
「うりゃ、うりゃ、うりゃ、うりゃあ!!!」
パレットライフルが、掃射される。
「つぎぃ!」
ロケットランチャーがいっせいに打ち出される。
「今までの、お返しよ!」
そして、地面に突き刺された、槍―――ソニックグレイブをブン投げる。
「これで、最後!!!」
一発の乱れなく、寸分の狂いなく、全て、WIZ−03に命中した。
「よし! チャンスだガイン、和樹君!」
「わ、わかりました!」
『了解!』
ここで何をやるべきか、以下に和樹と言えど理解できる。
長きに渡って相棒を務めたガインに至っては言わずもがなだ。
指示を受けて、和樹は両腕に力を込める。次の瞬間、ガオファイガーの全身は翠緑のオーラに包まれた。
「ヘル・アンド・ヘヴン!!」
膨大なエネルギーが、自分の周りを渦巻いていく。残りのエネルギーをすべてこの一撃へ注ぎ込むつもりだ。
一方マイトガインも、必殺の一撃を繰り出そうとしていた。
「ガイン、動輪剣だ!」
『おお! 動・輪・剣!!』
動輪剣―――
それは、圧縮したエネルギーを刀身部分に集中させることで、その切れ味を数十倍に高めることができる、マイトガインの必殺武器なのである。
腰から抜いた剣を掲げ、背中のブースターを噴射させる。そのまま瞬時に上昇し、マイトガインは天空へと消えた。
そして、敵の真上まで飛び上がると、一気に下降を始める。
折りしもそれは、ガオファイガーと和樹が、必殺技を繰り出す瞬間と重なった!
「動輪剣! 縦、一文字切り!!」
「ギム・ギル・ガン・ゴー・グフォ………はあああああ!!」
金色に輝く動輪剣が、辛うじて展開させていたゾンダーバリアを破り、敵を頭上から貫通する!
組み合わされたガオファイガーの両拳が、WIZ−03のコアをしっかりと掴みつつ、その巨体を根元からへし折る!
ヘル・アンド・ヘヴンと、動輪剣・縦一文字切り。
スーパーロボットの二大奥義を組み合わせたそれは、まさに壮観と呼ぶにふさわしい光景だった。
「やった!」
「WIZ−03、エネルギーレベル0! 完全に沈黙しました」
「今度こそ……最後ね…」
「手間が掛かったけど………」
GGGの間から一気に緊張が降りる。
とりあえずは、これで一段落ついたのだ。その場にいる全員から力が抜けていった。
「初野……舞穂ちゃんは?」
さすがの雷王も疲れ気味の声で、華にたずねる。
「もう向かっていますよ……元気にはしゃぎながら……」
「けけけ……俺の若い頃にそっくりだ…」
「アノ時ノ不良ト、同ジニスルナヨ」
そういったミレイと再び喧嘩を始める雷王を見て、第三飛行甲板空母は、よりいっそうひどい倦怠感に見舞われたのだった。
「使徒型ゾンダー、殲滅を確認」
「既に、核の摘出にも成功していると、報告が入っています」
ネルフ本部では、未だに緊張の糸は切れてはなかった。
向こうの敵は倒れた。これで後ろを心配する必要はない。
「それじゃあ、こっちも始めるわよ!」
「はい!」
「ヤシマ作戦、開始!」
使徒対ネルフ、
人類対未確認生命体。
その火蓋が、今切って落とされようとしていた。