「……じゃあ、『組織』って外界宿のことなの?」


「うん、正確には、外界宿のスポンサーをやってる財団の事だよ。別に珍しくも無い。」


年々犯罪捜査が厳しくなる現代。

フレイムヘイズが生活資金を得る手段としての強奪は、容易である反面、余計な騒動を抱え込むことが多いため、余り好まれていない。

よって彼らの大半は、資金管理の財団を自ら作って加盟し、そこを通じて必要経費他の金銭を得ている。

組織の母体となっているのも、このような財団の一つだ。

…とはいえ、自前のフレイムヘイズ部隊なんてもの編成してるのは、組織くらいだろう。

フレイムヘイズは一匹狼気質の者が多く、徒党を組んで動くのを良しとしない者が多い。

しかし、東洋は欧州ほどフレイムヘイズの数が多くないので、組織的に討滅していかないと手が回らないのだ。

この辺の事情は、東洋人のフレイムヘイズを滅多に見かけないことからもわかると思う。


「…欧州のクーベリック記念財団と似たようなものさ。まあ、あそこと違って経営は殆ど人間に任せて、フレイムヘイズは実戦部隊を仕切ってるけどね。」


『何故、“徒”の貴様がそこまで詳しいのだ?』


アラストールが疑問の声を上げ、シャナも同意と言いたげに頷く。


「僕も、あそことは結構関係が深いから。…組織に身を置いてるわけじゃないけど。」


フレイムヘイズ用の装具(宝具)を送る代わりに目溢しもらってるんだけどね。


(…しかし、)


そこで悠二は、しばし首を捻る。

考えてみると今の状況はとんでもない。

“炎髪灼眼の討ち手”に“狩人”。

そして、新たに外からやって来たというフレイムヘイズに組織の部隊。

ここ2,3日の間に、御崎市は“徒”と“討ち手”が入り乱れる戦場と化しつつある。

いや、まだ本格的な交戦には至っていないが、時間の問題だろう。

住民の1人としては傍迷惑この上ない話だ。


(早いとこ何とかしないとな…)




































灼眼のシャナ 存在なき探求者

第12話 武装完了?




































「とりあえず、来るべき決戦に向けて装備確認といこうじゃないか。」


2階の自室に戻り、部屋のクローゼットを開けると、中からガラクタの山が雪崩を打って溢れ出してきた。


「これ、全部宝具!?」


シャナが驚いたように言う。

目の前には山のように積み上げられた“よくわからないモノ”の山。

まあ、個人で持ってる量としては破格だろう。

フリアグネみたいな例外もいるけど。

しかし、この量。明らかにクローゼットに収容できる限度を超えてる気がするのは気のせいだろうか?

床に散らばった宝具のうち一つをシャナが手に取り、不思議そうに眺めた後、こちらに見せてくる。


「これは?」


「『黄土の羽』。…超絶的に良く滑るバナナの皮らしい。」


「…じゃあこれ。」


「『雷帝の大喝』。隣町まで声が届く拡声器。」


「これは?」


「『毛虫爆弾』。読んで字の如く女の子の天敵。」


「…っ!みんなガラクタじゃないの!?」


いたくご立腹のシャナ。

ウゾウゾと蠢く“何か”が入った瓶を気味悪そうに放り捨て、怒鳴ってくる。

…僕もそんな気がしてきた。

だって、小学生の悪戯みたいなのばっかじゃん。


『なななな失礼な!!こぉの私の我学の結晶を…言ぃーーーうに事欠いてガラクタとは!』


「お……これは、まともそうだな。」


いきりたつ教授は放っておいて、足元に転がっていた一振りの剣を持ち上げる。

西洋風の、両手で持つ型の大剣だ。

技巧の粋を凝らされた装飾と、宝具自体の持つ風格が全体に漂っている。

相当な業物と、容易に察することができる。

―――というか、周りに転がってる品々がアレなので余計目立つ。


「良さそうな剣じゃないか。どう使うんだ?」


『柄元にスイッチがあぁーるでしょう?』


「…………これか?」


鞘から剣を抜き放ち、それを軽く頭上に差し上げる。

見ると、柄元の一部が微妙に盛り上がっていた。

その部分を…


「ほい。」


握りこんだ。


ギュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイン!!!


瞬間、刀身が凄まじい速度で回転する。


「な……これは!?」


『ドォーーーリルです。』


「いや、それは分かるけど。」


わざわざ剣に付ける意味があるんだろうか?

…いや、教授の作る物に意味など求めてはいけない。

この半年間、お前は散々学んだのではなかったか?坂井悠二。


『んーんんんん。んーふふふふ。いぃーーいですねえドリルは。浪ぉーー漫の香りがしますよ。』


「まあ、それに関しては同感だけど。」


確かに、こういうギミックは男心をくすぐる。

そしてまた柄元を握りこむ。


ギュイイイイイイイイイイイイイイン!!


「………これはこれで。」


我知らず顔がにやけてくる。






坂井悠二。


徐々に感性が教授に似てきていることに、彼が気づく日は訪れるのだろうか?




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