第3話 護衛獣

 

ハァハァ、た、たすかっ !!

 そういいながら、膝をついて何 とか倒れないよう踏ん張るアイツその右腕からは血がダラダラ流れている、

 

「だ、大丈夫か!?」

 私は心配になり彼に近寄った

 

「だ、大丈夫・・・ちょっと魔力 の使いすぎでバテちゃっただけだよ」

 そぅボロボロの体なのに笑い返 してくるこいつは、さっきまでの軟弱者の顔ではなくなっていた。

 

「血がでてる!!、腕を貸せ」

 私は、強引にコイツの腕をとり 懐から非常時用の包帯を取り出して血止めをしてやる、あの瞬間こいつは私を必死に庇って負った傷・・・こいつは私が思っているほど軟弱者ではないようだ。 そう思いながら包帯を巻き終える(ちょっと、不恰好になってしまったが

 

「・・・・・(じっと包帯を見つ めながら)あ、ありがとう・・・えっと」

 そう言って言葉に困るアイツ  そういえば、私はまだ名前を名乗っていなかったな・・・

「凛だ」

 

「ありがとう、凛ちゃん」

 

「なっ わ、私は別にブツブツブツ

 なぜだろう、笑顔でそう言われ た時自分の頬が熱くなるのを感じた。

 

 

 

 

 

 

 

「よくがんばったなカズキ よ・・・にして、本当によくやった」

 半ば半壊中の試験会場を見渡し ながらそう言うラウル師範

カズキの召喚したガイア・マテリ アルは、スライムだけでなく試験会場をも巻き込み押しつぶした、支柱は砕かれ、地面はえぐられ、壁には無数の隕石によってヒビやら穴やらがあいている。  もし、ここが試験会場ではなく普通の建物だったならこの程度では済まなかっただろう、この試験会場は、抗魔石で立てられておりちょっとやそっとの召喚術で はビクともしないのだが、カズキの召喚術はその抗魔石の力を大きく凌ぎこの試験会場をここまで傷つけたのである。(当の本人はそんな事に気づいてもいない が)

 

 

「まぁ、それだけの力があればも うお主は一人前の召喚士じゃろう、どうじゃな試験官のフリップ殿?」

 

 

「フンッ 見習い召喚士カズキよ  試験の結果を持って今よりお前を正式な蒼の派閥の召喚士とみなす」

 嫌そうな顔をしながら何時の間 にか復活したフリップがそう呼ぶ

 

「おめでとう、カズキ」

 そう祝いの言葉をかけてくれる ラウル師範

 

「ありがとうございますラウル師 範」

 

「尚、派閥の一員となったお前に は相応の任が命じられる、それまで自室へ戻り呼び出しを待つがいい・・・以上だ!」

 そういわれ、僕は自室に戻るこ とにした

 

 

 

 

 

自室に戻る途中中庭ネスを見つけ た。

 向こうは、気がついてないので 僕はそろりと後ろから近づいて

 

「やっほ〜ネス!!合格したん だよ〜」

 といいながら、ネスに抱きつこ うとするがヒラリと躱された。

そのままの勢いで思いっきり鼻を 地面に強打する

 

「フギャッ!!

 

「いきなり何をするんだ・・・全 く、まぁ試験合格おめでとう」

 そっけなく、言うネス

 

「なんだよ〜、折角受かったんだ からもう少し喜んでくれたっていいじゃん」

 まだ痛む鼻を押さえながらいう

 

「全く、真面目に勉強していれば あれぐらいの試験は受かって当然だ むしろ落ちる要素があったこと自体が問題なんだぞ?」

 そぅ、切り返されてぐぅの根も いえない・・・

 

「はっはっはっ 相変わらずお主 はカズキに対しては手厳しいのぉ」

 

「ラウル師範・・・いいのです か、師範本当にこの不真面目なヤツを一人前と認めてしまって?」

冗談半分なのだろうが冗談に聞こ えない声でそういうネス

 

「そりゃないよ、ネス・・・」

 

「試験官はあのフリップ殿じゃっ たんじゃぞ?」

 

「え!?」

 

「誰よりも平民上がりの『成り上 がり』を嫌う彼が認めざる得なかったのじゃ、それだけの結果をカズキは自分の力で示したのさ、立派なもカ〜ズ〜キ〜さ〜ん!!

 

 

 

唐突にラウル師範のセリフを遮っ てそんな声が聞こえたと同時に少し離れた所から赤い髪の女の子が走ってくる

 

「はぁはぁ、試験合格おめでとう ございます」

 彼女の名前はユウナ この蒼の 派閥の中でも有数の魔力を持つ娘だその上かわいくて、面倒見がよくて派閥の中ではちょっとしたアイドルだ。 なんでこんな子がなぜ僕に親しげに話しかけて きているかというと・・・まぁ色々あった、 その親しげにしてるせいで派閥の中では結構イジメ等も起こっているんだが・・・まぁそれはいいか彼女も悪気が あってやってるわけじゃない(ハズ)だし。

 

「あ、ありがとうユウナ・・・と ころで、ユウナの方はどうだった?確か、ユウナも試験だったよね?そっちにいるのがユウナの護衛獣?」

 そういいながら、ユウナの立っ ている所から少し離れたところに背中に蝙蝠のような翼をつけた小さな少年がいた。おそらく、サプレスの悪魔なのであろう

 

「はい、もちろん合格しましたよ  えっとそれでこの子が私の護衛獣になることになったバルレル君です」

 そういいながら、ユウナは少年 の方を見る

 

「よろしくね、バルレル君」

僕がそう言って手を出すと

 

「人間が気安く俺の名を口にする な!!」

少年がそう吼える 見た目は子供 だがそこはやっぱり悪魔だ、凄い気迫が伝わってくる。

 

「こら、バルレル!!」

バルレルの暴言に対してユウナが 叱る

 

「ケッ」

 

「まぁまぁ、ユウナ護衛獣とケン カしてどうするんだよ」

 そういって、なだめるカズキ

 

「それにしてもすごいです、あの フリップ様の課題に合格するなんて」

 

「いやぁ〜、僕だけの力じゃない よ凛ちゃんのお陰だよ」

 そう言って、隣にいる凛を見る カズキ

「貴方がカズキさんの護衛獣です か? 私の名前はユウナ よろしく御願いしますね。」

 そぅ笑顔で自己紹介するユウナ

 

「神代 凛だ。」

 少女が素っ気無く言う

 

「ほぅ、シルターンのサムライ か? だがまだ子供のようだが」

 ネスが興味深げに覗き込む、そ れに対し凛は嫌そうな顔をする。

 

「カズキそろそろ自室に戻りなさ い呼び出しが着たら大変じゃ それから、お前の護衛獣にきちんと挨拶しとくことじゃな さっきから困り果てておるぞ」

 

「あ、はい わかりました」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ごめんね、凛ちゃん無理やり戦 わせちゃって・・・」

 自室に戻るなり謝る僕

 

「別に気にするな、私は召喚され た身だ。」

 

「それでも、ありがとうだよ凛 ちゃん、おかげで試験に受かることができたんだよ」

 

「そ、そうか…」

 

「本当にありがとう、君の事は忘 れないよそれじゃぁ『まってくれ!!』」

 凛ちゃんに別れを告げようとし て、ふいにその言葉が遮られた

 

「私を元の世界に戻してしまった らお前が困るのではないか?」

 

「そりゃぁ、護衛獣も従えること ができないなんて召喚士として半人前だと暴露してるようなものだけど・・・そんな事凛ちゃんには関係ない話だよ」

 無理やり召喚しといて、こっち の勝手な都合で自分に無理やり従わせるなんて間違っている・・・奇麗事かもしれないが僕は召喚術を使う上でそう思っている。

 

「なっ てやる

 

「え?」

 少女が小さな声で何かを言っ た、が聞き取れなかった為反射的にそう聞き返す

 

「お前の護衛獣になってやると 言っているんだ!!」

 

「え!?え!?」

 今度は、しっかりと聞き取れた が僕の頭の中はその一言でパニックに陥った

 

「私では、護衛獣として不服 か?」

 

「いや、そんな事はないけ ど・・・凛ちゃんはそれでいいの? あんなに嫌がっていたのに」

 

「私は軟弱者の護衛獣になるのは 嫌だと言ったんだ、それにどうせ向こうの世界へ戻っても父も母ももういない・・・」

 そぅ言って少し暗い顔をする凛

 

「凛ちゃん・・・」

 

「こんな私だが、お前の護衛獣に してくれるか?」

 

「もちろん、じゃぁ これからもよろしくね 凛ちゃん」

 

 そう言って、手を出すカズキ

 

「あぁ、こちらこそ我が主よ」

 

 そう言って、二人は握手する。

 

 

 

『コンコン』

 そういう音と共にトビラが開き ネスが入ってくる

「呼び出しがきたぞ、僕と一緒に くるんだ」 

 

 

 そういわれ、僕はネスに連れら れフリップの元に連れて行かれた

 

 

 

 

 

「カズキよ、お前に最初の任を与 える、心して聞くがよい」

 そう勿体ぶらしながらフリップ がいう

 

「お前は、これより護衛獣と共に 修行をかねた見識を深めるための旅にでるのだ 尚、視察の旅の期限は定めのこととする」

 つまり、半無期限の追放という わけか まぁ、俺みたいな成り上がりの召喚士はいらない、そういうことだろう

 

「蒼の派閥の一員としてふさわし き活躍を示すことができたとき、それをもってこの任務を完了とする」

 

「おまちくだされ、フリップ 殿!!何をもってふさわしき活躍とするのか説明すべきではあるますまいか!?」

 

「それは、カズキが自分で考える べきことでしょう、いくら後見人とはいえ、過保護は困りますなラウル殿?」

 

「じゃが・・・」

 

「それに、この任務は幹部一同が 協議した上での決定ですぞ?不満があるのならグラムス議長や総帥におい言いなさい」

 勝ち誇った顔でいうフリップ  つまり、上の方々も俺のことはいらないってわけだ・・・はは、こりゃいいや 勝手に連れてきておいて、勝手に追放か・・・

 

「わかりました、フリップ様その 任務お受けいたします」

 

「ふっふっふ、殊勝な心がけだな カズキ」

 

「君は、馬鹿か!?、これは任務 の名を借りた君を追放するための命令だぞ!?」

 ネスがフリップに聞こえないよ うに僕に助言してくる

 

「わかってるさ、でも俺はこれ以 上僕をかばったりして師範の立場を悪くするのは嫌なんだよ」

これ以上、師範には迷惑かけられ ない・・・僕はそう思ってこの任務を受ける決断をした、いやさせられたのか

 

「以上だ、自室へ戻り旅の準備を しろカズキ」

 

 

 

 

−こ うして、僕は旅立つことになった−

 

 事実上の追放に等しい任務を受 けたのにも関わらず、僕は何故かすごく落ち着いていた

 

それは、そうだここは所詮その程 度の所でしかないのだから

 

ここにあるのは、辛い修行とイジ メの日々だけだ

 

考えてみれば、あの日と同じだな

 

強引 に連れてこられ召喚士となることを強制された時と同じでまた、強制的に追放される

 

同じだ、あの時と・・・

 

だから、落ち着いているんだろ う、納得することができるんだろう

 

 

どうせ、選択の余地はないのだか らと・・・

 

 

 

 

 

 

 

余談(夜の会話)

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

 沈黙が続く空間・・・

 

現在の状況を言うと次の日見聞の 旅に出るため今日は宿舎で寝ることになったのだがカズキ達しかし、カズキの部屋は一人部屋でベットも一つしかないという状況である・・・

 

「えっと、僕が床で寝るから凛 ちゃんがベット使ってよ」

私を気づかってベットを進める 主… 

 本当に、他人思いというかお人 よしというか…

 

「駄目だ、私は護衛獣であってお主は私の主だ、主が床で寝ているというのに私がベットで 悠々となど寝られぬ」

 

「え、でも…」

 

「えぇい!!口答えは許 さん!!私は床で寝るお前はベットで寝るわかったな!!」

 まだ口答えしようとするアイツ に私はピシャリといった。

 

「は い」

 

 

 どちらが、主かもわからないよ うな会話の末、最終的にカズキが折れカズキがベット、凛が床で寝る事になった。

 

 

 

 

 

「凛ちゃん…起きてる?」

 唐突に主が私に声をかけてきた

 

「あぁ、起きてるがどうした?」

 毛布を被り部屋の壁にもたれか かりながら答えた

 

「いや、凛ちゃんは向こうの世界 に戻っても父も母もいないって言ったけど本当に誰もいないの? もし、僕に気を使って言ってくれたんなら…」

 どこか、緊張した声でそういう 主

 

「父も母も私が幼いころに死んで しまった…私の家系は古くから妖怪や魔物を相手に戦ってきた一族だった それ故にその妖怪や魔物等から恨みを買う事も多かった」

 私は、静かな声で言った。

 

「凛ちゃん…」

 

「でもな、一人ぼっちだったわけ じゃないんだ 駿司がいてくれたから」

 

「駿司?」

 

「血は繋がってないが私の兄のよ うな人で強くて、とても優しくて…父と母が死んでからも一人で私の面倒を見てくれてな」

 気がつけば私は、兄の事を楽し そうに話していた。

 

「駿司さんかぁ、会ってみたい な」

 なんとなく呟いた言葉なのだろ うが、それが私に現実を思い出させる…

 

「でも、もぅ会えない… 一週間 前駿司は光に飲まれて消えてしまった」

 そぅ、二人で野宿していた時だ  急に光が駿司を包み込んで、駿司は一瞬にして消えた。

 

「それって…」

 

「おそらく、召喚術の光だろう、 どこへ行ってしまったかも今生きているかもわからない…だから、もう会えない」

 いくら同じこの世界に召喚され たからといって何処にいるかもわからない、むしろ生きているかもわからない相手だ…会えるはずがない私はそう思った。

 

しかし、

そんな事無い!! 死んだと決まったわけじゃない」

 アイツはそんな私の思いを真っ 向から否定した。

 

「なぜそんな事が言える…どこに いるかも、生きているかもわからないんだぞ?」

 根拠もないのに、

 

「凛ちゃんのお兄ちゃんは強いん だろ?簡単に死ぬような人じゃないんだろ?」

 

「当たり前だ!!駿司は強いん だ、私よりもずっとずっと」

可能性も限りなく低いのに

「じゃぁ、諦めちゃダメだ!!  駿司さんもこの世界のどこかに居るならきっと出会える、なんなら探しにいけばいい」

 

「でも、それじゃあお前に迷惑 が…」

 無謀とも言える難問だというのに

 

「迷惑だなんて思わないよ。それ に僕は見聞の旅に出るんだ、その途中で会えるかもしれないし、なんなら駿司さんを探すのを目的にしてもいいし」

 

「すまない…」

 自分の事より人の事を優先してしまう。

 

「こういう時は ありがとう だよ凛ちゃん」

 

「あ、ありがとう」 

 

 

だから、私は思う

 

     この人に召喚されてよかった

 

 

 

−あとがき−

どうも、なんだかんだでやっと本 編で言う所の0話が終わらせることができた、りゅうです。(長かった、本当に長かった

さて、次回は 遂に旅に出るカズキ派閥を離れ初めての外の世界へそこで出会う様々な人々 との出会い はてさて、彼は一体何処へ旅する事になるのか? 次回をお楽しみください。



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