C.E.(コズミック・イラ)70

「血のバレンタイン」の悲劇に よって、地球、プラント間の緊張は、一気に本格的武力衝突へと発展した。

誰もが疑わなかった、数で勝る地 球軍の勝利……。が、当初の予想は大きく裏切られ、戦局は疲弊したまま、既に、11ヶ月という時間が過ぎようとしていた……。

 

 

 

地球の衛星軌道上に位置するL3郡。ここには中立国オーブの 保有する工業用宇宙コロニー『ヘリオポリス』。

ここではある計画が進められてい た。このコロニーに住む人間はそれを知らない。

彼らは平和を謳歌していた。外の 世界とは隔絶された変わらぬ日常。戦争とは疎遠の世界。ありふれた毎日がいつまでも続く。そう考えていた。

しかし彼らのささやかな願いは、 かくも無残に打ち破られる。C.E.71 125日。偽りの平和は崩壊する。

 

 

 

 

 

「で、完成度はどれくらいなん だ?」

ヘリオポリス内のオーブ軍、秘密 兵器工場。ここでは何人もの技術者達が日夜働いていた。

そう、オーブ軍が使用する新型の 兵器を開発するために。

その中の一人。まだ若い、少年と 言ってもない男が技術者の一人に尋ねる。背中まで伸びる流れるような黒髪。紫がかった瞳。黒い服を着たその少年は、自分の目の前にたたずむ二体の巨人を見 ながら聞く。

LOブースターの方はすでに完成 しており、あとは取り付け作業だけです。残すところは実際にテストするだけです。二号機もナチュラル用のOSに書き換えが進んでいますの で、数日中には完成すると思います」

「そうか。この試作機のデータ は?」

「はい。すでに極東領土にデータ は送られています。量産も軌道に乗っているらしいので」

「そうか。で、俺の機体の方は?  今回はアスクレピオスでのテストだったな?」

少年の乗る一号機は、今までに幾 度も改修を繰り返してきた。数多のデータを収集するためにも。その中でも接近戦に主目的が置かれたアスクレピオスと言うコードネームの機体は、カナードと の相性が一番よかった。

白を基調とし、肩などのパーツを 紫で塗り分けられた機体。目の前にたたずむ二体の巨人の片割れ。それがアスクレピオスである。

「はい。コロニー内部では遠距離 や中距離兵器などでは、コロニー自体にダメージを与えてしまいます。ゆえに接近戦重視したこの機体の性能の検証が主目的です」

「わかった。だが相手がいなくて はつまらない。二号機のパイロットにでも俺の相手をさせるか?」

「ご冗談を。三尉に匹敵するパイ ロットなど、このコロニーにはいませんよ。本国や極東にでもおそらくは皆無でしょう」

「ふっ、まあな」

少年は技術者の言葉に若干の優越 感を味わう。自分はコーディネイターの中でも、更なる高みへと上るために作られたスーパーコーディネイターである。

失敗作とは言え、その能力が評価 されたことがうれしいのだ。

今開発されている新型人型機動兵 器。通称MS。彼はこの機体のテストパイロットを勤めていた。

オーブ極東領土のシオン・テラ・ アスハが極秘裏に計画、実行に移した『G計画』の要。その試作機。すでにデータの収集も終わり、試作機から専用機へと改修されて いた。

最強のスペックを持つ、機体へと 進化させるために。

連合の開発中のMSに先駆けて完成したGUNIT。独自の技術を取り入れ た内部機構。特殊合金、通称『ガンダニュウム合金』を使用することにより、その強度を従来の数倍以上に伸ばすことに成功した機体である。

「だがいい機体だ。この俺の手足 のように動いてくれる」

「完成度はかなりのものですから ね。三尉の能力とあいまって、想像以上の力を発揮するんですよ」

「ああ、そうだな」

この機体の完成に喜んでいるのは この少年だけではなく、この工場内のすべての人間が同様であった。

すでに極東領土では試作機のデー タを元に、GUNITの量産期やカスタム機の製造が急ピッチ進められていた。

そこまで行き着けたのも、ここに いるメンバーの成果と言っても過言ではない。

「パルス特務三尉。機体の最終 チャックに入りますので、搭乗をお願いします」

「わかった。すぐに始める」

少年―――カナード・パルスは技 術者の一人に言われると、そのまま機体のコックピットに入ると、内部に取り付けられているキーボードを取り出しそのまま物凄い速さで打ち込んでいく。

「最終チャック開始。そっちでも モニターしておけ」

「はっ!」

オーブ極東方面軍の誇る最新鋭MSGUNIT』。それがいよいよ動き 始めようとしていた。

 

 

 

 

 

その頃、ヘリオポリスの宇宙港に 一隻の艦が入港していた。

『軸性修正。右6,51ポイン ト。進入リフト良好』

『性能噴射停止。電磁バケットに 制御を移管する』

「減速率2,56。停船する。停 船コース上にいる者、退避せよ。」

一隻の艦がヘリオポリスの港に 入ってくる。

「着艦終了だ。これでこの艦の最 後の任務も無事終了だ。貴様も護衛の任ご苦労だったな。フラガ大尉」

「いえ、航路何もなく、幸いであ りました。」

無重力の中、ふわふわと浮きなが らその辺についている棒につかまる金髪の男。フラガ大尉と呼ばれた男は艦長に敬礼をした。

「艦長。周辺のザフト艦の動き は?」

「二隻トレースしている が・・・。なぁに。港に入ってしまえば、ザフトも手は出せんよ」

「中立国・・・。ですか・・・?  聞いてあきれますな・・・」

中立。それはいずれの陣営にも味 方せず、また敵対しないと言う意味である。だがオーブはそれに反していた。ほとんどのものが知ることはないのだが。

「そうだな・・・。しかし、その おかげでこの計画をここまで来れたのだ。オーブとて、地球軍の一国ということさ」

二人が会話をしていると、ブリッ ジの出入り口が開かれて6人の青年達が中に入ってくる。

「では艦長。我々はここ で・・・」

「うむ。」

若者達が6人は艦長に向け敬礼を し、ブリッジから出て行く。それを不安げに見送るのはフラガであった。

「上陸は・・・。本当に彼達だけ でよろしいので?」

「心配はいらんよ。ひよっこのよ うに見えても『G』のパイロットに選ばれたトップガン達だからな。・・・。お前がうろちょろしてる方がかえって目立つぞ?」
艦長がからかいながらそう言うと、フラガは苦笑する。

彼はエンディミオンの鷹の異名を 持つ連合のエースパイロットである。MA乗りでありながら、月ではMSを何機も落としたエース。そんな彼だからこそ顔も知られているのだ。

だが、フラガはどうしても頭から トレースしているザフト艦が頭から離れなかった。

このあと、彼の懸念は現実のもの になる。

 

 

 

ザフト軍ナスカ級戦艦 ヴェサリ ウス

そのブリッジでふわふわと浮いて る人物がいた。金髪に目元を隠す銀色の仮面を被った男。

見るものが見れば、その人物は奇 妙に思えただろう。

「そう難しい顔をするな。アデ ス」

その浮いている艦長であるアデス に話し掛ける。

「はぁ。いえ、しかし、評議会か らの返答を待ってからでも遅くは無いのでは・・・」

アデスと呼ばれた男の言葉をさえ ぎるように、浮いている男が言う。

その人物こそザフト軍が誇るエー スパイロット、ラウ・ル・クルーゼである。

「遅いな。私の勘がそういってい る」

デスクに置いてあった写真を取り アデスの方に投げつける。

そこには兵器の一部と思わしきも のが写っていた。人型機動兵器の頭部。通称MS。ザフトの誇る兵器であった。

だが写真に写っているのは彼らザ フトのものではない。彼らと敵対する地球軍が中立国であるオーブのモルゲンレーテ社と共同開発したものであった。

「ここで見過ごせばその代 価・・・。いずれ我々の命で支払わなくてはならなくなるぞ?」

どこか予言めいた言葉。しかし彼 の言葉にはどこか納得させられるものを感じた。

「地球軍の新型機動兵器があそこ から運び出される前に奪取しなければな・・・。それにもう一つ、気になる情報もある」

「気になる情報ですか?」

「ああ。オーブの獅子の子、シオ ン・テラ・アスハの一派が独自にMSの開発に着手していると言う情報だ」

「あのオーブ極東領土の!?」

アデスは驚いたように声を出す。 彼らザフトにもその名は轟いていた。為政者としては希代の存在であると。プラント最高評議会も彼には一目おいていると言う話だ。

そしてオーブが極東に持つ領土。 そこはユーラシア連邦、東アジア共和国、大西洋連邦、さらには大洋州連合や赤道連合と言った多くの集団に睨みを利かせるのに絶好の領土である。

ザフトとしては喉から手が出るほ どに欲しい領土である。今までも何度かシオン・テラ・アスハと協力を要請する交渉が行われたらしいが、中立であると言うことを理由に相手はそれを拒否して いた。

何とか強引にでも交渉を続けた が、こちらの意図することを明確に読み取られ、さらにはどこから漏れたのか、ザフトの不利になるような極秘情報まで持ち出される始末。これにより交渉は半 ば断念された。

「オーブと言うよりもあの男とは 事を起こしたくないのだが・・・・・・・下手をすればオーブ、いやあの男がどんな報復手段をとってくるかわからない」

かつてオーブの極東領土にちょっ かいを出した者で、今現在五体満足なものは一人もいない。個人であろうとも組織であろうとも、ことごとく何者かの手でやられている。

ザフトも連合も同じであった。し かもそれがシオンの指示であると言う証拠は何一つ見つかっていない。それゆえに始末に終えない。

「だがこの場合は仕方あるまい?  中立と言いながら、コロニーを地球連合軍のMS開発の隠れ蓑に使っているのだ。非は向こうにある。大義名分はこちらにあるのだし、あの 男も大きなことは言えまい」

クルーゼは微かに唇をつりあがら せる。意味ありげな笑みであった。

「中立コロニーで自国の防衛用兵 器を作っているのであれば、我らもうかつには手を出せなかっただろうが、奴らは同じところで地球軍の兵器を開発していた。それが運のつきだ」

「つまりこの機にそのMSも奪取すると?」

「そう言うことだよ、アデス。さ らにこれは交渉の材料としても使えるかもしれない。だがこちらの情報は眉唾物だ。開発は確からしいが、ヘリオポリスに未だにあるかどうかは不明らしい」

今まではまったく弱みを見せな かったシオン・テラ・アスハ。だが今回の件は確実に彼にとって弱みになるはずだ。仮にならなくても武力行使を行う理由にもなりえる。

オーブは地球軍に組している。 よって中立とは認めず、武力を持って排除する。と言う具合に。

戦局はザフトに有利でりかなりの 戦力を有している。確かに制圧できなければ被害は大きいが、制圧できた場合の成果は計り知れない。

しかしそのMSがこのコロニーに 存在するかどうかは確かではない。

クルーゼにもたらされた情報で は、オーブ極東領土が独自にMSを開発したのは確からしいが、このヘリオポリスに未だにあるのかは不明だった。

これはいくつものダミー情報が流 されていたらしいのと、不定期にヘリオポリスから持ち出されているらしいからだ。

「もっとも眠れる獅子と呼ばれる オーブを、本国が敵に回すとは考えられないがな」

クルーゼにもそれはわかってい た。いくら口実ができたからといって、これ以上本国が戦局を拡大させることはないだろう。プラントには長期にわたって戦争をしている余裕がない。それだけ にこれ以上敵を増やしたくないのだ。

「オーブが完全に地球軍につけば 状況も大きく変わるが。だがオーブはそこまではしないだろう」

「そうでしょうか? すでに組し ていると考えるべきだと・・・・・・・」

「それは早計だな、アデス。今の オーブにそこまで無茶をする理由がない。オーブの若獅子は慎重な男だからな。戦局がザフト有利に進んでいる今、進んで不利な方に取り入ろうとはしない。お そらくは一部のものが、連合の圧力にでも屈したのだろう」

クルーゼは冷静で客観的な判断を 下す。アデスもその理由には納得だった。

「しかし・・・・・・・」

口元を微かにゆがめ、クルーゼは 冷笑した。

「本人の指示かそれとも部下の独 断か。どちらにしても、これがオーブの獅子の子はじめての失策になるだろうな」

 

 

 

 

 

ザフト軍ナスカ級戦艦ヴェサリウ ス格納庫

ここでは今、機密服を着込んだ大 勢の人間が潜入用のカプセルの中に乗り込んでいく。

MSの奪取任務か。どうなるんだ ろうね、アスラン」

赤い機密服を着た少年が隣の席に 座る少年に話しかける。彼は茶色がかった黒髪。紫に近い黒の瞳が印象的のまだ幼さの残る少年であった。

彼の名はキラ・ヤマト。ザフト軍 クルーゼ隊のエリートパイロットにして、ザフトにその名をとどろかせる、パイロットだった。

「わからない。だが与えられた任 務はきっちりこなすさ」

キラにたずねられた少年が答え る。黒い髪に緑色の瞳が印象的な少年だった。

彼の名はアスラン・ザラ。プラン ト最高評議会議員パトリック・ザラの息子にしてキラと同じくクルーゼ隊のエースパイロットである。

「しっかしまあ、いいのかね〜」

彼らの近くに座る同じく赤い機密 服を着たオレンジ色の髪の少年が誰ともなしに、少しふざけた口調で呟く。彼の名はラスティ・マッケンジー。キラやアスランと同じクルーゼ隊のエリートだ。

「何がだ?」

彼の問いに答えたのは、赤い機密 服を着た銀色のおかっぱ頭の少年であった。こちらもまたクルーゼ隊のエリートであるイザーク・ジュールだ。かなりプライドの高い少年でもあるが。

「中立国のコロニーになんかに 手ぇ出して

「んっ! じゃあ中立国のコロ ニーがこっそり地球軍の兵器作ってるのはいいのかよ!」

その言葉に憤怒したイザークはラ スティを睨みながら言う。それにはラスティも苦笑いして答える。

「あはは、そりゃやっぱ、ダメっ しょ」

当たり前である。中立とはどちら にも干渉しないと言う意味だ。もっとも戦争下においては、それが破られることもしばしばある。

どちらにも恩を売っておいて、あ とあとうまく立ち回ると言う手法だ。だが今回は地球軍側に組していると、ザフトに思われるような行為をオーブはしてしまったのだ。

『おい、お前ら。あんま待たせる なよ』

通信回線が開く。そのには緑色の 機密服を着た男が映っていた。ミゲル・アイマン。黄昏の魔弾と呼ばれるザフトのパイロットである。

「わかってる。よし行こう。ザフ トのために、ってね」

オチャラケた口調のまま、ラス ティが言うとカプセルが射出される。目標はヘリオポリス内部で開発されている新型兵器の奪取である。

「地球軍に、MSを持たせちゃいけないね、ア スラン」

「ああ。戦火をこれ以上広げさせ るわけにはいかないさ。早くこの戦争を終わらせるためにも」

キラの言葉に深くうなづくアスラ ン。キラもそんな親友を見て微かに笑みを浮かべる。

「うん。早く終わらせようね、こ んな戦争。・・・・・・それでまた逢いに行こうね」

「・・・・・・・・そうだな」

アスランとキラはかつて月の幼年 学校で別れた一人の少女のことを思い出す。金髪の少女。まっすぐで正直で、気が強くてそのくせ寂しがり矢で泣き虫の少女のことを。

(こんな戦争、早く終わらせる さ。プラントのために。死んだ母のために。そして・・・・・・君にもう一度逢うためにも)

アスランは心の中で強く決意す る。だが彼は、彼らはまだ知らない。運命の神と言うのがとことん皮肉であることを。

彼らは再会する。決して望まざる 形で。敵同士と言う形で・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

外は戦争の 真っ只中なのだが、中立と言うこともあって内部の住民は平和に浸っていた、

様々な建築物 が立ち並び、人が行き交う大通りの喧騒は止まることは無い。

そんな情景の 一角、ヘリオポリス住居区の日よけ付きの休憩所。

そこでPCのキーボードを打って いる金髪の少女がいた。まだ幼さが残る顔立ち。

彼女は黙々とキーボードを打つ。 同時に専用の小型テレビのモニターの音声も聞き入っていた。

彼の名はカガリ・ユラ。オーブの 工業カレッジに通う少女である。その傍らでは、何か奇妙な丸い物体が転がっている。バスケットボールくらいの大きさで、緑色をしている。

『カガリ。ヒマ。アソボ』

と片言にしゃべっている。

「ダメだ。明日までに仕上げない といけないレポートがまだ終わってないんだ。だから遊ばない」

少女は少し女性としてはキツい言 葉でその球体に言う。この球体の名はハロ。彼女のペットロボットだ。昔、彼女の大切な友人にもらったものである。

『南アフリカの難民キャンプでは 慢性的に食料、支援物資が不足しており120万もの人々が生命の危機に立たされています』

カガリの持つ小型テレビから流れ る情報。それは外の戦争の情報であった。

『では次に、激戦が報じられてい るタオシュン戦線のその後の模様をお送りします』

モニターの場面が変わる。そこは 戦場の真っ只中であった。

『新たに届きました情報によりま すとザフト軍は先週、タオシュンの手前六キロの地点で・・・』

ザフトのMSジンが次々に降下していく激戦区の様子。爆音がモニター越しに聞こえてくる。

だがそんな外の世界とは裏腹に、 ヘリオポリスは至って平和である。キーボードを叩いているカガリにハロがそれでもじゃれ付いてくる。

『アソボ、アソボ』

それをカガリはぼんやりと見なが ら、感慨深そうな顔をする。

脳裏にある光景が浮かぶ。かつて の自分の記憶。懐かしい思い出の記憶であった。

 

 

 

桜の舞い散る歩道で、二人の幼い 男女が話をしている。

「本当にプラントに行っちゃうの か?」

目に半分涙を浮かべながら、少女 は少年に問う。少年もまた辛そうに少女を見る。

「・・・・・・ごめん。父の決め たことだから、どうすることもできないんだ。ほんとに、戦争になるなんてことはないと思うんだ。プラントと地球で・・・・・」

「もう、会えないのかな、私 達?」

今にも大泣きしそうな少女。それ には少年も戸惑いを隠せないでいた。

「そ、そんなことはないさ! ま た絶対に逢えるから! だから泣かないで。ねっ?」

必死で慰める少年。しかしついに 少女は泣き出してしまう。少女は少年と別れたくなかった。ずっと一緒にいたかった。だけどそれは叶わない。それが悲しかった。

「ひっく、ひっ く・・・・・・・・」

「もう泣かないで。これ、あげる から」

そう言って一人の少年は少女に緑 色のロボット、『ハロ』を手渡した。

「これ・・・・・・・・」

「本当はもっとちゃんとしたのを 作りたかったんだけど、時間がなくて・・・・・・・・・ごめん」

「えっ、いや、そ の・・・・・・・本当にこんなのもらっていいのか?」

驚きのあまり泣くのを止め、少女 は少年に聞き返す。すると少年はニッコリと優しく微笑んだ。

「いいよ。泣き止んでくれてよ かった」

「・・・・・・・・ごめん」

「いいよ。それにそんな顔、いつ もだったら絶対に見れないし」

「なっ!? か、からかう な!!」

悪戯っぽく笑う少年に少女は耳ま で赤くして激怒した。

「大丈夫だよ。戦争が起こらな いってわかったら、またすぐにでもここに帰ってくるから。絶対にまた逢おう」

「うん!」

再会を約束し、二人は別れる。 きっとまた逢える。そう信じながら。

 

 

 

「みんな、元気か な・・・・・・・・」

ぼんやりと上を見上げながら、カ ガリは三年前に別れた旧友達のことを思い浮かべる。

「ラクス、キラ。二人とも元気だ といいんだけど・・・・・・・・」

月の幼年学校で一緒だった仲良し 二人。自分ともう一人の少年の四人はいつも一緒だった。楽しい時間、幸せな時間、ずっと続くと思っていた。

だがあの日を境に幸せは唐突に終 わりを告げる。

あの少年との別れのあとの、悲劇 が襲う。仲良しだった四人組の残り二人のうち、自分にハロをくれた少年の親友であった少年――キラ・ヤマトが両親とともにテロに遭遇した。

テロ事件はブルーコスモスと呼ば れる一派によるものと判明。死傷者の数は五十人以上にも上った。

幸い、キラは軽傷で済んだが、彼 の両親は死んだ。それからすべてが狂いだしたのかもしれない。いや、あの少年との別れがすべての始まりだった。

カガリにとっても大切な友人だっ たキラ。どこか放っておけない少年で、いつも自分が面倒を見ていた。

だが何もできなかった。心に深い 傷を負ったキラを癒すことは、カガリにはできなかった。

そのあと、キラはプラントへと移 ることになる。親友であったラクス・クラインとともに。

彼らとの別れは辛かった。涙を流 していたのを、今でも覚えてる。

 

 

 

「本当にお前らも行くのか?」

「はい。ごめんなさい、カガリさ ん」

ピンク色の髪の少女―――ラク ス・クライン―――が、親友でもあるカガリに答えた。その隣では、同じようにうつむいている少年がいる。

「キラも・・・・・・・」

「・・・・・・・・・ごめん、カ ガリ。僕は・・・・・・」

今にも泣き出しそうな顔。とても 幼い少年は辛そうに答える。キラも辛かったのだ。両親と死に別れ、今度は今まで一緒だったカガリとも別れなければいけないことが。

「な、泣くなよ! 男だろ!?」

カガリは強気に精一杯の虚勢を張 る。キラが泣いているのが耐えられなかったのだ。泣き虫で甘くて、優しくて。どこか放っておけない危なっかしい奴―――キラの親友に言わせれば、カガリも 十分同じだったらしいが―――

「それにあいつとも約束したん だ。また逢おうって。だからまた逢えるって! それにプラントにいけばあいつもいるんだろ? よかったじゃないか!」

笑顔を保ちつつ、何とかキラを元 気付けようとする。キラもそんなカガリを見て、自分が泣いていてはいけないと思ったのか涙をぬぐう。

しかしラクスだけは悲しそうな目 でカガリを見ていた。親友だからわかる。カガリが無理をしているのが。一番別れを悲しんでいるのは、他ならないカガリなのだから。

自分やキラはプラントに行けばも う一人と再会できる。仲良しだった三人がそろう。けどカガリだけが、彼女だけが一人ぼっちになってしまう。

「カガリさ ん・・・・・・・・・」

「ラクスも、キラのこと頼むな。 キラってほら、危なっかしいから。それにあいつにもよろしく言っておいて」

「・・・・・・・・・はい、わか りました。カガリさんもいつかプラントにおいでください。プラントはコーディネイターが多く住んでますが、ナチュラルもいます。それに情勢が落ち着けば、 すぐにでも行き来できるはずです」

「ああ、必ずみんなに会いに行く から! だから・・・・・・・だからまた!」

 

 

 

涙の別れ。三年前のあの日、自分 達はバラバラになった。再会を約束して。

だが情勢は緊迫し、ついに戦争に 突入した。あれ以来、自分達は再開することはなかった。

「おっ、なんか新しいニュース か?」

突然肩越しに覗き込まれて。カガ リは我に返った。

「トール・・・・・・」

カガリの通う工業カレッジで同じ ゼミのトール・ケーニヒだった。その隣にはトールの恋人のミリアリア・ハウの姿もある。ちなみに彼女も同じゼミだ。

カガリは二年ほど前に、このヘリ オポリスにやって来た。両親と義兄との喧嘩の末、半ば家出状態でだが。今は学生寮に入り、そこで暮らしている。

「ああ・・・。タオシュンだっ て」

『こちらタオシュン七キロの地点 からでは激しい戦闘音が聞こえてきております』

その画面にはジンが二機とそのジ ンが壊したであろう建築物が映っていた・・・。黒煙を巻き上げ、爆音がとどろく。逃げ惑う人々が映し出される。

「先週でこれじゃあ・・・。もう 落ちちゃてるんじゃない? 華南(カオシュン)・・・・」

トールは平気な顔をして言った。 これが客観的のいい例だろう。平和ボケもいい物だ。戦場に行かない少年達だから仕方はないが・・・。

「そうだな・・・・・・・・」

カガリはパソコンのディスプレイ を落とす。

「華南(カオシュン)なん て・・・。けっこう近いじゃない。大丈夫かな・・・本土?」

ミリアリアが心配そうに呟く。本 土は地球のソロモン諸島にある島国。十年程前には極東の島国をも手中に収めることになるが。とにかく華南とはある意味、目と鼻の先であった。

「ああ、そりゃ、大丈夫で しょ。」

「そう?」

「近いったってうちは中立だぜ? オーブが戦場になることは無いだろ?」

「そう・・・。だったらいいんだ けど・・・」

「カガリもそう思うよな?」

「いや、私にはなんと も・・・・・・・・・」

歯切れが悪そうに答えるカガリ。 彼女には友人に明かしていない秘密がある。そしてそれを明かすことはできないでいた。

彼女はオーブ連合首長国の代表、 ウズミ・ナラ・アスハの娘であると言うことを。その彼女は本土が戦いに巻き込まれないかと、いつも心配していた。また安心できないでいた。

(お兄様が言っていた。何事にも 絶対はない、と)

かつて国を治める者としての心構 えについて学んだとき、そう兄が言っていたのを思い出す。

『いいか、カガリ? この世の中 は不平等なことばかりだ。そして理不尽で不条理なことも。俺達の仕事はいかにそれを最小限におさめるかと言うことだ。だがもし、プラントと地球で戦争に なったら、お前はどうする?』

『戦争を止めます!』

その答えに彼の義兄はニッコリと 微笑んだ。そして優しくカガリの頭を撫でた。

『ああ、その通りだ。だがな、カ ガリ。世界を二分する戦争になった場合、簡単には止められない。戦争はいい国と悪い国がするんじゃない。戦争に絶対的な正義なんて存在しない。それぞれに 主義と主張があるから起こるんだ。それを解決しなければ、戦争は終わらない』

『主義と主張?』

『そうだ。それぞれに譲れない想 い。オーブも同じだ。だがこの国の理念がすべての人に受け入れられるかと言えば、そうでもない。この国に住んでいる人も同じだ』

『どうして? この国に住んでい る人はこの国の理念を・・・・・・・・』

だがカガリの言葉にシオンは首を 横に振る。

『人と言うのは自分のことで精一 杯なんだ。だから他人に気を使う余裕なんてほとんどない。そしてそれが大きくなれば大きくなるほど、それは顕著なものになる。オーブにいるからと言って、 すべての人が父の理念に賛同しているわけじゃない』

その言葉にカガリは少し難しい顔 をする。義兄はそれを見て、苦笑している。

『まだカガリには早かったかな。 だがこれだけは覚えておいてくれ。この世界は本当に理不尽だと言うことを。そして為政者と言うのは難しい立場にいると言うことを。国を護るために、人民を 護るためには汚いこともしないといけないと言うことを』

正面からカガリを見据え、彼は言 う。兄の言葉とその真っ直ぐな視線にカガリは思わず引き込まれそうになる。

『この世界に絶対はない。仮にプ ラントと地球で戦争が起こり、オーブがそれに参加しなかったとしても、いつの日か戦争の渦に巻き込まれるかもしれない。その事を肝に銘じておけ』

兄の言葉はどこか予言めいてい た。だが彼の言ったことは、恐ろしいほど的中する。二十代前半の若さで、政治のトップにまで上り詰めた男。その男の言葉は今でもカガリの脳裏から放れな い。

「心配性だな、カガリは」

「悪かったな、心配性で」

「トールとは大違いね。だって トールって楽観的だし」

「あっ、ひでぇねミリィ」

そんなやり取りをキラは苦笑しな がら見ている。そこには年相応の笑顔があった。

(・・・・・・・・心配しすぎ か。そうだな、私の考えすぎだ。オーブにはお父様とお兄様がいる。あの二人だったら、絶対にこの国を戦争に巻き込むようなことはしない)

絶対的な信頼だった。幼い頃から 二人の政治手腕のことは聞かされていた。オーブの獅子と呼ばれる父。オーブの獅子の子にして才能を開花させた若獅子。あの二人なら絶対にこの国を戦争に巻 き込ませないと思っていた。

だが彼女の思いは無残にも裏切ら れる。彼女は知らなかった。オーブ内部でも陰謀が渦巻いていることを。彼女のらないところで、世界は動き続ける。

極東のMSとオーブの本国のMSとともに、地球連合のMSがヘリオポリスで同時に作ら れていることを。それを奪取するために、ザフトが動いていることに。

そして護ろうと決めた偽りの平和 が崩壊しようとしていることに、彼女はまだ気が付いていなかった・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

「だからぁ、そんなんじゃないん だってばーっ!」

華やかな嬌声が上がる。大学のレ ンタルエレカポートで騒いでいる少女達。カガリはトールとミリィとともにカレッジに向かうためにこの場に来ていた。

そんな彼女達の目に入る少女達。 その中でもひときわ大きな声を上げているのは、フレイ・アルスターであった。

流れるような髪は燃えるような赤 であり、整った顔立ちとしとやかな振る舞い。カレッジでは人気者の少女である。

余談だがカガリも人気は高い。た だしそのきつい性格のせいで、言い寄る男はあまりいないらしい。

「うっそ〜」

「ちゃっちゃと白状しちゃいなさ いよ〜」

「だから〜。」

「あ、ミリアリア〜! カガリ!  ねえぇ、あんた達なら知ってるんじゃない?」

カガリやミリィの存在に気が付 き、女の子たちがこっちに気づいて話しかけてくる。

「え? な〜に?」

「何の話だ?」

ミリィもカガリもフレイとは友達 である。若干、お嬢様のフレイと男勝りの性格のカガリが喧嘩することもしばしばあるとか。

「もうっ、やめてよって ばぁ!!」

フレイが大声で叫ぶが、友人達は 取り合わない。

「この子ったら〜。サイ・アーガ イルに手紙もらったの〜。なのに『なんでもない』って離してくれないのよ?」

「ええ〜!!」

「あのサイが、ね え・・・・・・」

ミリィは驚きのあまり素っ頓狂な 声を上げ、カガリはいささか感心するかのように呟く。

「もう。あんたたち!いいかげん に!!」

フレイが怒るのだが、それでも少 女達は追及を諦めない。そんな折、カガリ達の背後から声がかかった。

「乗らないのなら、先によろし い?」

サングラスをかけた黒髪のショー トカットの女性が呟く。その後ろには二人の男性が立っていた。いずれもまだ若いが、学生と言うわけではあるまい。

それに発せられた言葉丁寧だが、 彼女の口調には妙な威圧感があった。カガリはどこか、その女性に違和感を感じた。

(なんだ、こいつ。まるで軍人み たいだ・・・・・・・・・)

カガリは一時期、軍の訓練を受け ていた。その時に出会った軍人と雰囲気がよく似ていた。まさかオーブの軍人か何かか、と一瞬思った。しかしこんなところになぜ。

確かにヘリオポリスにも防衛のた めに軍人がいる。だがこんなところに来る理由が思い浮かばない。ここはモルゲンレーテとその付属のカレッジに向かうポートなのだから。

「あ、スイマセン…どうぞ。」

トールが謝り、カガリと共に道を 開ける。女性達はきびきびした動きでエレカに乗り込み、走りあさっていく。

「もう知らないから! いくわ よ!」

暗い雰囲気を一変させたのはフレ イの言葉だった。フレイの声で先程の雰囲気に戻る。次のエレカを捕まえ、すぐに飛び乗る。

「あっ、ちょっと待ってよ!!」

騒ぎしくあとに続く少女達。すぐ にエレカは走り去った。

「あのサイが手紙か。意外だよ な」

「そうよね〜、サイが手紙を書く なんて考えなかったわ」

「まあいいんじゃないか? サイ もそれなりに気があるみたいだし」

「おっ、珍しい発言。そういうカ ガリは恋愛はしないのか?」

カガリが色恋沙汰に関して言うの が珍しかったので、トールがからかい口調で聞く。その言葉にカガリは少しむっとなる。

「私だって恋愛の一つや二つする さ! ただ言い男がいないだけだ!」

「そうよね。カガリって好きな人 いるのよね。確か昔離れ離れになった人のこと、今でも思ってるのよね?」

ミリィがふふふと笑いながら、か なりの爆弾発言をした。これにはさすがのカガリも顔を赤くし、トールは驚きの声を上げた。

「うそ、マジ!?」

「み、ミリィ!」

「だって前にカガリが言ってた じゃない。それにそう言う恋って憧れるのよね」

うっとりとしながら言うミリィ。 どこかロマンチックなものを感じるのだろう。だがカガリとしては溜まったものじゃない。

「わ、私はあいつのことなんかこ れっぽっちも・・・・・・・・・」

「ほんとにいるんだ。なあなあ、 どんなやつ?」

「トール! いい加減にし ろ!!」

顔を真っ赤にしたカガリの怒声が ポートに木霊するのであった。

 

 

 

 

 

 

「なんとも平和なことだ……全 く」

エレカに先ほど乗った女性が小さ く呟くとサングラスをはずし、周囲を眺める。彼女の名はナタル・バジルール。ある極秘の目的地に向かう途中であった。

「アレぐらいの歳で…もう戦線の 前線に出ている者もいるというのに……」

いらだった様子を見せるナタル。 彼女としてはこの平和が赦しがたいのだろう。

なぜなら彼女は戦火で窮乏する地 球をその目で見てきた。その激しい落差に苛立ちを感じたのも無理はない。

だが彼女は気が付いているだろう か? 戦争とは本来軍人が行うもの。歴史の中で護られたことはほんのごく少数でしかないであろうが、戦争に民間人を決して巻き込んではいけないのだ。

この国の国民が、民間人が平和を 謳歌するのはむしろ正当な権利といえる。地球の戦渦の広がる地域の人々には申し訳ないが。

「はあ・・・・・・」

ナタルの隣に座るアーノルド・ノ イマンはただナタルの言葉に相槌を打つしかできない。彼と知れも理不尽な思いを禁じえないのだろう。

そんな彼らを乗せた車は疾走し、 港に近い方向へと進路を向けた。

 

 

 

 

ザフトのヘリオポリス突入部隊 は、すでにコロニーの外壁に取り付いていた。

赤と緑の機密服の集団。赤い機密 服を着ている6人。その回りには緑の機密服を着た何人もの人間がいた。彼らは宇宙空間から非常脱出用の隔壁を開ける。

だが、そこには無数の赤外線が張 り巡らされていて、とても人が入り込むスペースは無い。

しかし一人が腕時計型の装置のス イッチを入れると、その赤外線センサーは消滅した。ザフト兵は足早に進入をはじめ、中に入ると同時に、彼らは二班にわかれた。

一つは「G」奪取の班、もう一つ は陽動班。

「G」奪取の班はそこからコロ ニー内部への入り口へ向かい、

陽動班は「G」を格納するべき最 新鋭戦艦「アークエンジェル」のドックに爆弾を設置し始めた・・・・・・

残りのタイムリミットが10分を 告げる・・・・・・

それはすべての始まりを告げる巨 大な花火。その火が上がろうとしていた。

 

 

 

ヘリオポリス工場区

カガリ達の乗った車は、「カトウ ゼミ」と呼ばれるカトウ教授の受け持つ、電気工学の講義を聞くため、研究所の中に入る所だった。

厳重に封鎖されたゲートに車は止 まり、カガリはカード型のIDを入力装置に指し込み、下までスッと下げる。すると、モルゲンレーテと書かれたゲートは開いた。

「カトウゼミの学生四名確認、追 尾に切り替え。」

セキュリティルームで職員が言 う。

このシステムは犯罪などを未然に 防ぐために効果があり、入る時はIDの提示を義務付けていた。

「なあ、少しくらい教えてくれて もいいじゃん。そいつってカッコいいの?」

カードパスを滑らしてゲートを開 くカガリに対してトールが言う。

「いい加減にしつこいぞ! 私と あいつはそんな関係じゃない!」

「ムキになるところが怪しい」

「もう、トールもしつこいわよ」

「だってカガリのこういう話、今 まで全然なかったじゃんか。今聞かなくて何時聞くんだよミリィ」

「それもそうね」

「ミリィ!」

カガリはこの恋人達に怒鳴るが、 一向に効果無し。色恋沙汰と言うのは、得てして話の肴にされることが多いのである。

そんな会話をしながら、カレッジ の中に入っていく四人。とある教室に入った。その教室はいかにもプログラムか何かを作ってますという雰囲気を漂わしていた。だが、何故か宇宙服もあった。

「おっ、やっと来たのか。カガ リ。教授がさっさとレポート出せって催促してたぞ」

教室にいた同じゼミの仲間のサ イ・アーガイルが顔を上げた。色つきメガネをかけ、派手なジャケットを着ているが風貌は理知的で穏やかだ。カガリたちよりも一つ年上の彼は、やはり彼らの 中で最も常識的で思慮深く、自然とまとめ役になることが多い。

「えっ!? ほんとかよ、それ。 私まだ全部終わってないのに・・・・・・・・」

カガリはサイの言葉にまずいと小 声で呟く。

「大変だな、カガリも」

「はぁ、そう思うんだったら少し は手伝ってくれよ」

「それは無理だな。俺だって忙し いし」

「やっぱりか? じゃあ自分です るよ。今日も徹夜かな・・・・・・・・」

そんな何気ない会話。ありきたり な日常の風景。しかしそれは崩れ去ろうとしていた。

 

 

ヘリオポリス内部では、ザフトの 兵士が次々に爆弾を仕掛けて行く。カウントダウンが進む。悲劇と言う名の舞台の幕開けを告げる合図のカウントが・・・・・・・・

 


 

ヴェサリウスブリッジ

「時間だな」

クルーゼが腕に巻いた時計の時間 を確認すると命令を出す。それはすべての始まりであった。この命令がのちにどんな事態を巻き起こすのか、まだ誰も知らなかった。

「ヴェサリウス、発進する!」

命令を聞き、操舵士はエンジンの 回転率を上げた。それに伴い、ブースターが蒼い筋を吐き出したかと思うと、すさまじい轟音が機関部に鳴り響く。

「さあ、はじめよう。舞台の幕開 けだ」

 


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