The magician of the Galaxy EW部、活動開始


宇宙という、壮大な空の下で視線が交差する。

「俺たちを呼んだのは・・君かい?」

夜、突如呼び出されたタクト、ミントの両名はそれぞれの機体に乗り前方の戦艦を視界に捕えていた。

『ええ、そうです。こちらの希望通り、ミントさんとお二人のみで感謝します。

そうでないと・・データも取れませんしね』

通信をわざと不安定にし、姿も声も特定できないようにされている。

ミントの機体、トリックマスターは情報処理や敵の探査などを得意としている。

しかし、その機体の逆探知でも特定はできなかった。

(つまり・・ミントの機体、いや、紋章機全ての情報はあるということか。となると、欲しいデータというのは・・)

『おや、こちらに何もデータがないと思ったのですか?簡単なものならありますよ。

紋章機、ロストテクノロジーの宝庫、白き月から発見された戦闘機。現時点で、皇国が保持する最強の兵器。しかし、そのパイロットは不明、なんてね。

まあ、パイロットの件は、全員が20歳をほとんど超えていない女性、というのも発表しない理由ですかね。

そして、1年前・・皇国上層部のみでもみ消された事件のことも知っています』

タクトの笑みがほのかに崩れる。皇国の上層部と、自分たちでしか知らない事件。

それを知っているとは・・。

『1年前、ある外敵が無人艦隊を操って皇国を襲った。それを沈め、皇国の誰もが知らないうちに

鎮圧した手腕から、タクトさんは皇国の英雄となった。しかし、おかしいんですよね』

「・・・なにがだい?」

『僕の目から見ても、最終決戦時、タクトさんたちには・・1パーセント以下の勝率しかなかった。

おまけに、相手が持ち出した艦隊には強固なバリアまであった。それを打ち破り、破壊し、勝利を治める・・

まさに奇跡ですよね』

そう、奇跡だった。全てが綱渡りで、負ける戦いをしていたようなものだ。

それでも、タクトたちは勝った。タクトの横に、彼女がいてくれたから。

『それで、僕は調べた。そしたら、おもしろいものが見つかったんです。

2人乗りの紋章機、というのがあるそうですね。お互いが信じあうことで、紋章機を越える紋章機になるという機体。

それに乗ったのが・・タクトさんと、ミントさん』

「・・そうだよ」

ミントは、最後まで拒否していた。タクトを戦場に、死に行くような真似をさせたくないと。

自分ひとりで行くと。それでも、タクトはミントと共に戦い、勝ったのだ。

『お二人の心の結びつき・・それがどんなものか。調べさせてもらいます』

突如、タクトの乗る戦艦、儀礼艦エルシオールのレーダーにトランスバール皇国ではない機体が出現した。

この反応は、1年前の無人艦隊だ。

『まあ、ここで倒れてくれればもうけもの。がんばってください』

声の主が乗っている艦は下がっていってしまい、交代する様に無人艦隊が出る。

「・・タクトさん、今回は苦しそうですわね」

「ああ。でもミント、君がいるんだ。それで十分だよ」

サブ画面に目を戻すと、味方を示す青いマークは1つしかない。今通信してきた、ミント・ブラマンシュのものだ。

対して、敵を示すことになった赤いマークは数多い。

「でも・・せめてもう3人ぐらい味方がほしいですわ」

ミントがつぶやくのもしょうがない。

「そうだな・・俺がミントを導く、それで我慢してくれないか?今、レスターにも連絡したし。時期にみんな来てくれるさ」

「・・・仕方がないですわね。でも、タクトさんがそばにいてくれる・・それだけで充分かもしれませんわね。では、行ってきますわ」

「ああ、頼んだよ。みんなが来るまで」

戦闘機1つ、戦艦1つ、タクトの挑戦が始まった。


ある行方不明者がでたのは、今朝になってわかったことだった。

「ミント・ブラマンシュ、タクト・マイヤーズの2名を見た人は連絡を」と書かれたポスターが学園中に貼られだした。

これを見て、千早が部室へ飛んでいった。そして、教師たちも慌てだしたのだ。

2人とも、優秀な生徒ということでこの学園に来てもらっているような存在だ。

しかも、タクトはトランスバールの貴族の血をもつ生徒、ミントは有名な財閥のお嬢様だ。

もし両者になにかあったら・・責任などとれたものではない。よって、多くの授業は自習、

もしくは散策になったのだ。和樹のクラス、1年B組は自習となっていた。ヴァニラも朝から見ていない。

「どうしたんだろ、タクトさん・・」

昨日の夜、ミントと共に見たのが最後だ。

「先生、帰ってこないな・・」

「ええ。どうしたのでしょう・・」

ちとせが横でつぶやく。多くの生徒が、テストもないので椅子を動かして話している。

あちこちで、株がどうとか、ホリエモンだとか、偽造だとかの話が出ている。

同じようにちとせも、席は斜め後ろだが横に来ている。

「・・すこし、見てくるよ。ちとせは教室で・・」

「私もいきます」

「・・・え?」

はっきりと断言し、立ち上がっているちとせに目を合わせる。

「お世話になってますし・・和樹さんのそばで、助けになるのが私の役目です」

ここまで言い切ると、この素直な少女はとても頑固な人間へと変わる。

「・・・はあ。じゃあ、行こうか」

ため息をつき、教室を出るのだった。



EW部、とかかれた看板がかかった部屋。いくつかの人影が呆然としている。

「なんでよ・・」

ランファがボソリとつぶやく。

「なんで、あたしたちに黙って行ったのよ!」

力任せに壁を殴る。わずかだが、コンクリートの壁に亀裂が入る。

「そうだな・・でも、それ以前に」

レスターが長細いカプセルのような機械を見る。

「誰かさんが接続を切ったってのが、問題なんだろ?」

フォルテがレスターの考えを代弁する。

「そうだ。俺たちが、EW部が・・エンジェル隊だということは皇国上層部しか知らないはずだ。

そのために、葵学園という理事長がトランスバールの上層者の学校に入れられているんだ。

なのに、なぜ気づかれた?いつ気づかれた?」

このカプセル、空間転移機はロストテクノロジーのひとつだ。紋章機とリンクさせることで、

瞬時に紋章機に乗り込める・・はずだった。

「俺たちの正体がばれないように使っていたこれが、逆に問題になるなんてな」

「タクトさんとミント・・2人が困ってるのに助けられないなんて・・」

ミルフィーユが顔を伏せて言う。

「そうだね。タクトやミント・・大丈夫かね」

フォルテも同意し、視線を動かす。6と書かれた機械だ。

「唯一、動くかどうかわからない6番機・・これに乗るパイロットがいればね」

「いや・・7番機だって第1リミッターを外せればわからない」

7番機。とてつもない魔力が必要で、特別にリミッターが2段構造になっている。

いつもは、第1リミッターがかかった状態で千早が乗っているがやはり全てで他の機体に劣ってしまう。

「私が・・もっと戦えれば・・」

「千早、そんなに責めないの。あんなもの、乗れるやついないのよ・・」

「・・0の可能性にはなにもいえません。千早さんは悪くありません」

蘭花、ヴァニラが声をかける。

「・・・タクト、ミント・・生きろよ」

レスターのつぶやき。それは、全員の願いだった。


「トリックマスター、標的の破壊に成功・・でも戦いが終わったわけではありませんわね」

ミントが、6機目の撃破を伝えた。

「ああ。あと・・6機」

しかし、不意に警戒音がなった。

「敵の増援!?8機も・・」

「・・タクトさん。私たち・・」

ミントが伝える。

「厳しいな・・エルシオールも、トリックマスターもエネルギーが少ない」

戦艦、エルシオールとトリックマスターは損傷もひどくなりつつあったが、問題はエネルギーのほうだった。

エルシオールは、紋章機の補給ができるがそのエネルギーまでも切れてはただの的だ。そして・・その時は近かった。

「ミント!3時の方向に巡洋艦が5機集まってる、一気に倒してくれ!」

「く・・フライヤーダンス!」

自動攻撃装置、フライヤーがダンスを踊るように敵に攻撃を浴びせていく。

しかし、同じようにエネルギーもなくなっていった。

「まずいな・・」

タクトはこぶしを強く握った。


校庭の端に、小さな小屋が見える。看板に、EW部、と書かれているところからあそこが部室だろう。

「ここだね。いきなり入るべきかな?」

「いえ・・ここは少し様子を見ましょう。ちょうど窓があります」

ちとせに促され、窓から見る。しかし、そこには誰もいない。ドアだけだ。

「・・・奥があるのでしょうか。そうは見えませんけど・・」

「空間を広げてるんじゃないのかな?ほら、禁止されてるけどやってる部あるし」

部室に、空間魔法でどこかとつなげるのは禁止されてるが、なんとなくタクトさんならやると思った。レスターもいるし。

「では・・音を立てないように」

ちとせが扉のノブをひねり、ゆっくりと扉を押す。音は出ていないが、和樹は思った。

(・・なんで音を立てちゃいけないんだろう。部員とも知り合いだし)

しかし、その答えはちとせがすぐに言った。

「なんとなく、スパイみたいで楽しいですね。あ、和樹さん。手袋使います?」

どこからか出した手袋を見て・・ただ楽しんでるのだと気づいた。

「指紋残しちゃいけないのかな・・」


突然、6番機の転移装置が動き出した。慌ててレスターが近寄る。

「な、なんでこいつが!?」

「・・・パイロットに反応してるのか?」

フォルテが言う。確かに、パイロットとなる、その素質がある人間が近づくと、なぜか転移装置は動き出す。しかし。

「ここには・・俺たちしかいないぞ!?」

「・・・ネズミがいるね」

笑みを浮かべ、服のポケットから小さな銃を取り出す。

「レスター、使いな。あたしは・・これでいく」

部屋にある棚から、リボルバーを抜く。

「お前・・銃刀法違反で捕まるぞ・・」

「銃に安全装置はかけれるけど・・あたしに法律はかけれないのさ」

そして、弾を確認してから扉に銃口を向けた。扉の近くからすこししたところに蘭花が付く。

「・・・いくよ。死なないように気をつけな!」

大きな銃声が鳴った。


扉に大きな穴があく。

「な!魔法?」

「いえ・・銃、ではないでしょうか」

すばやく身を隠してつぶやく。

「・・・なんでこの部は、実銃があるんだろ」

「わかりません。・・ですが、用心したほうがいいですね」

そして、ちとせの手にはいつのまにか弓がもたれていた。

「・・打ち合いなら負けですが・・確実に倒せば勝てます」

矢を準備し、時を待つ。

「1発で倒すってこと・・?」

「はい。・・・5,4、3、・・0!」

タイミングを計り、影から飛び出し、矢を放った。風の精霊魔術つきらしく突風が舞う。

しかし、和樹の近くで銃弾がはじけた。ちとせがすばやく隠れる。

「ち!向こうと同じタイミングだったか・・」

むこうから声がする。この声は、フォルテだ。

「ちとせ、ここは僕たちだって知らせたほうが・・」

「だめです。おそらく、みなさんには隠したいなにかがあります。

私たちだとわかれば、適当にはぐらかされてしまうでしょう。そうならないためには・・強行突破です」

「ちとせ・・」

いくつか疑問もあるが、確かにこのままではいけない。

前に進まなければ、事件は解決しない気がした。

「・・・わかった。やろう」

「了解です。和樹さん、これを」

ちとせが胸元から、ペンダントを取り出す。魔力をこめると、それは日本刀へと姿を変えた。

おそらく、弓もこうなっているのだろう。

「・・ちとせ、銃刀法違反で捕まるよ?」

「必要なときにこそ武器は力を発揮します。それ以外には、決して使ってはいけません。

今は、必要なときです。そうしていれば、誰にもわかりません」

「それって、ばれなきゃ大丈夫、って聞こえるんだけど・・」

そうつぶやいた瞬間、床に重たい銃弾が突き刺さる。

「向こうもやる気です。いきますよ、和樹さん」

「ああ、いいよ」

多少、父の対策のため心得がある。

抜刀なら、あの飛天○剣流の奥義くらいの速さでいける。

「ちとせ・・敵が来たら言って。僕が守るから遠くの敵は・・」

「私、ですね」

いつのまにか、和樹も気分がのっていた。


「・・・なかなかやるネズミだ。蘭花、あんたつっこむ勇気あるかい?」

「まっかせてくださいフォルテさん。あたしがネズミを捕まえますから」

フォルテは言う蘭花に防具を投げた。

「つけときな、なんかあったら危ないからね」

「・・・はい、じゃあ行ってきますね」

そして、蘭花が飛び出した。同時に、向こうから刀をもった少年が飛び出る。

蘭花の蹴りと、少年の抜刀術、スピードしだいの勝負だ。

(・・・おそらく、相打ち。勝負はさっきの・・黒髪のとだ!)

フォルテは銃を構えた。向こうのも、すでに後ろにいるようだ。

「「これで・・終わりだ(です)!」

矢と銃弾、勝つのはどっちか!


「タクトさん・・もうすこしでエネルギーが切れますわ・・」

「ああ。ミント、どうしようか?」

あと、必殺技は1回が限度だろう。タクトはミントの機体のエネルギーを見てそう考えた。

あと残り11機。ちょうど母艦らしきのがでている。

「ミント!正面のでかいのを落としてくれ!最後の必殺技だ!」

「はい!タクトさん・・逃がしませんわ、おいきなさい、フライヤーたち!」

あれを落とせば・・しかし、その考えはくずされた。

「な!他の機体が盾になった!」

「そんな・・もう、エネルギーがないのに・・」

フライヤーダンス、そのすべてが防がれた。盾になった機体5機は致命傷を負ったがもう、戦うすべがない。

「・・ミント!後ろから来てるぞ!」

「え?」

間に合わない、エルシオールを盾にするにも、ミント自身が防ぐのも。

「ミントー!」

そして、爆発が起こった。

「ミント・・・ミント・・くそ!」

パネルを強く叩いた。煙でなにも見えない。

「・・・タクトさん、聞こえますか?タクトさん!」

「・・・ミント、大丈夫なのか!?」

煙が晴れると、機体の真ん中をくりぬかれた敵の機体と壊れていないトリックマスターが見えた。

「よかった・・でも、誰が?」

「タクトさん、そこから6000の距離のところに・・機体の反応が!」

「なに!?そんなところからピンポイントで狙ったのか!?」

そして、攻撃した機体を拡大する。

「これは・・紋章機!?」

「間違いありません!・・6番機、シャープシューターですわ!」


「ああ、姉さんか。僕だよ、うん」

『・・やっておいたわ、ヴァイン』

「ありがと、おかげでミントさんたちだけだったよ、さっきまでは」

『・・なにかあったの?』

なんの感情もこもっていない声が通信機を震わす。

「ああ。動いていないはずの紋章機が来てるんだ。ある意味、大漁だね」

『そう・・』

「姉さん・・『目覚めよ』」

『ん・・・あれ、ヴァイン?いったいどうしたの、急に連絡して』

突如、声が変わる。明るく、陽気な少女の声に。

「いや・・学校は楽しい?」

『ええ。友達もできてね、それで・・』

適当に頷きながら、会話をする。

「うん、楽しそうだね・・あ、もう切らなきゃ。じゃあね」

『え、ヴァイ・・』

通信機をはずし、ガラスに映る自分の顔を見る。

「・・なにをやっているんだ、僕は・・」


あとがき

はい、今回はあんまり変わっていないですけど、修正版です。最近、学校の課題が多くて

正直きびしいです。執筆が遅いのはお許しください。

今回、MG(この作品の略)が2本上げれたので、次回はEMEwindの予定です。

エドっちさま、感想ありがとうございます。神武さま、最近感想も書けず、

無敵のフロンティアも書けていなくて申し訳ありません。

みなさまのご感想を、お待ちしております。  サザンクロスでした。


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